まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

株式持合と預合い①

2008-05-06 19:48:39 | 商事法務

     会社法965条には、預合いの罪についての規定があります。即ち、「9601項1号-7号までに掲げる者(発起人・設立時のみならず設立後の取締役・監査役等の役員を含む)が、株式の発行に係る払込みを仮装するため預合いを行ったときは、5年以下の懲役若しくは500円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。預合いに応じた者も、同様とする。」とされています。結構厳しい罰則ですね。

     「預合い」とは、神田教授の会社法(7版P46)によれば、「発起人が銀行等から借入をしてそれを預金に振り替えて払込にあてるが、この借入を返済するまでは預金を引き出さないことを約束する行為」を言うと定義されています。会社法では発起人だけに限定していませんね。要するにこの規定は、株式払込の仮装行為の防止ですが、発起人・取締役と払込取扱銀行の役職員との通謀の有無・その範囲・程度を巡って争いがあり、判例も学説も分かれているようです。本来は、資本充実の原則に沿った規定で、中身の無いお金を回転させて資本金(設立時&その後の増資)を増やしてはいけないですよという規定ですが、この趣旨に反する事は、いくらでも世の中行われていますね。増資払い込みの資金を銀行から借り入れて引き受けることが行われているということですね。

○ 一方、持合株式の場合で、相互に第三者割当増資をする場合を考えましょう。(第三者割当増資では無く、株式市場でお互いが買うという場合もありますが、その場合は除外します)。募集株式の発行では、210条により、「株式の発行又は自己株式の処分が著しく不公正な方法により行われる場合には、株主は、株式の発行又は自己株式の処分をやめることを請求することができる。」としています。有名な事例は、忠実屋・いなげや事件ですね。1989年7月におこりました。不動産業を営む秀和が、忠実屋の株式33.34%、いなげやの株式を21.44%取得した上で、忠実屋・いなげやに対し、秀和の関係会社との合併を提案した。これに対して、両社は秀和からの提案を拒絶する一方、秀和による持株比率低下を狙って、相互に大量の第三者割当増資を行ったケースですね。野村企業情報(当時の社長は後藤光男氏、2002.4に野村証券に吸収合併)のアイデアですね。資金需要もないのに、特定株主の持株比率の低下と現経営陣の経営権を維持することを主要目的(「主要目的ルール」と呼ばれていますね)とするときは、不公正発行にあたると、東京地裁は決定しました。

     株式持ち合いと預合いに共通するのは、資本勘定の水膨れですね。預合いの場合は、預金は増えますが、これは拘束預金で、発起人・取締役等が銀行に返済しない限り拘束されて、会社としては自由に使用出来ないお金となります。株主持ち合いでは、A社がB社の増資を引受B社に一時的にお金が入りますが、逆にB社がA社の増資を引き受ければB社のお金はA社に環流します。A社が銀行から借金をしてB社の増資を引き受ければ、A社は返済しないといけません。結局、資本勘定は増えますが、中身は空っぽということですね。また、既存株主の持株比率の低下、1株利益の低下を招きます。

○ 預合いも相互の株式持ち合いも、共通するのは、極端なやりすぎは違法ということですね。預合いでも、発起人の親族なり親戚に頼んで、その人が銀行借入できる能力があれば類似の事はできます。忠実屋・いなげやの場合は、相互に直接第三者割当増資を企てたからですね。第三者を入れて、店舗開発資金の調達等と称して急遽店舗開発計画を立てて資金調達すれば、「不公正発行」という要素にベールを掛けて薄くする事が出来ます。即ち、本人同士直接するのではなく、第三者を入れて循環的、A→B→C→Aとやれば、セーフだったかもしれません。まあ当時は財テク資金を適当な名目で多くの企業が調達していましたね。

 まあ、会社法は、関係者に文句を言う人がいなければ、結構グレーな事をしても、そのまま済んでしまうことも多いですね。有価証券報告書虚偽記載で上場廃止になった関連で言えば、7年間一度も取締役会をやったことがなかった会社もありましたね。世の中、露骨なやりすぎは、通らないということかもしれません。

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