まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

特別取締役の取締役会

2007-03-04 16:22:45 | 商事法務
・またまた、ピントのぼけた変な制度を作ったなあと言う感じです。会社法373条では、取締役会設置会社が6人以上の取締役(内1人以上が社外取締役)である場合には、取締役会は、「重要財産の処分・譲受け、多額の借財」(362条4項第1号及び2号)についての取締役会決議については、あらかじめ選定した3人以上の取締役(=特別取締役)のうち過半数が出席し、その過半数をもって行うことができる旨を定めることができるという規定を設けました。普通の取締役(平取)は出席不要としていますね。

・ 従来取締役会の決議については、社長も平取も平等でしたが、この規定では、取締役を特別と普通の2段階に分け、全取締役による取締役会と、特別取締役による取締役会の2種類に分け、取締役会決議の要件・決議の特則を設けています。

・ H14にできた旧商法の重要財産委員会という制度が殆ど利用されていないので、これを廃止して、また新しい制度を作りましたね。どれだけ普及しますかね? 重要財産委員会は、取締役10人以上・社外取締役1名以上の大会社であれば、取締役会決議で、取締役会とは別機関として設置・構成・内容を定め、登記すれば、重要財産の処分・譲受け、多額の借財の取締役会決議事項を、3人以上の取締役で構成する重要財産委員会で決議すれば、取締役会で決議する必要がないとしました。勿論、結果は取締役会への報告義務がありますが。

・ 特別取締役の制度は、経営の基本的意思決定の機動性を計るため、多くの大企業で行われている、上位の取締役による「経営会議」による実質上の決定を、あらためて平取も含めた儀式の取締役会を開催して、形式的に意思決定をしなくてもよいとする制度です。特別取締役は、社外取締役である必要はありませんので、これに選定せずに儀式の取締役会メンバーとしておくことも可能です。

「重要財産の処分・譲受け、多額の借財」というのが全くピントがぼけています。企業にとり重要な意思決定とは、経営・事業(新規事業を含む)・投資計画の策定等です。これらは普通は重要財産の処分・譲受け、多額の借財ではありませんので、経営会議で決定して、また形式的に取締役会で決議することになります。今までと変わりません。例えば3000とか2000億円を投じて液晶最新鋭工場を建てようとか、フラッシュメモリー工場を大増強しようということが重要です。同時にリソース・人をどうするのか等も関係します。この新規大型事業投資に関連して、現在の製造設備を廃棄(=重要財産の処分)するとか、新規土地取得(=重要財産の譲受け)、工場建設・最新鋭機械設備の開発・導入が行われます。自己資金で賄う事の出来ない会社は、社債・借り入れということで「多額の借財」の決議が必要となります。
また、会社を再建しようと、人員再配置等を含む再建計画を策定します。これが重要決定事項です。その為一つの実行行為として、銀座にある本社ビルを売却しようとなります。

・ 即ち、特別取締役による取締役会で決議できる「重要財産の処分・譲受け、多額の借財」は、経営戦略・事業・投資・リストラ計画の策定の結果出てくる業務執行行為・実行行為あるいは実行事務です。「重要財産の処分・譲受け、多額の借財」がどうして経営の基本的意思決定なのでしょうか?勿論株式取得による会社買収等、これに該当する行為があるとは思いますけれども。

・ 上記のように、重要な経営・投資計画等は、実質経営会議+全取締役の儀式の取締役会決議という2重構造から抜け出せていません。「重要財産の処分・譲り受け、多額の借財」は、単にその決議だけを特別取締役会で決議すれば良い問題では無いです。

・ 「重要財産の処分・譲り受け、多額の借財」は、戦略の決定ではなく実行・推進であり、これらを経営会議=特別取締役会で決めなくてもよいでしょということです。実行・推進なら、平取を構成員とする取締役会で十分です。

会社法は、上位の取締役で構成される経営会議を特別取締役会として想定していますが、「重要財産の処分・譲り受け、多額の借財」は、平取で構成する特別取締役会という、一段下位の実行部隊の2軍取締役会の決議になるのではないのかと言うことです。

・ 取締役会が2重になるということは、取締役会決議の統一性に矛盾が生じる可能性があります。取締役会で投資基本計画を過半数ぎりぎりで決議して、いざ実行時にお金が手元にないから借金しようとしたら、お金を借りるのはいやだと反対した特別取締役とその仲間の取締役で取締役会が否決されたら、どうなるのでしょうか?(形式的ですが)決議間で統一性を欠き矛盾します。(まともな会社なら投資計画の時に、同時に資金調達プランも出しますから、あまり考えられないですけど。派閥間の対立のある会社なら、2重の取締役会を設けたときには考えられないこともないですね)

・ 大企業の場合は、従来通り、実質は経営会議で議論・決定し、形式的承認・記録・対外的機関として取締役会で決議をしておけば良いのではないでしょうか。

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