まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

純資産は誰のものか

2012-05-20 10:36:17 | 企業一般

 

 BSの純資産の部の中心は株主資本ですね。昔は資本の部と言っていました。即ち、自己資本即ち会社自身の資本という考え方でした。しかし、米国のCorporate Financeの考え方等を無批判に猿まねし、「会社は株主のモノだ」等という考えの学者・専門家・経営者等により「株主資本」とされました。全く誤った考え方というほかありません。<o:p></o:p>

 

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○ なぜ誤った考え方なのか、その理由は以下の通りです。

1)  会社法に、株主は会社の所有者とか所有権を有するという規定はありますか?ありませんね。株式とは、株主の会社に対する社員としての地位を細分化したものです。社員ですね。ゴルフ場で言えば会員権です。ゴルフ場の会員権は、特殊な例外を除いて、ゴルフ場の所有権は持っていません。株主権(自益権・共益権)の保有者であって所有権ではありません。<o:p></o:p>

 

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2) 利益剰余金は、誰が作ったのですか?その会社の役職員が知恵を出し汗水流して築いたお金です。確かに、元手の資本金・資本剰余金は株主が拠出したお金ですが、それを増やしたのは株主ではありません。汗水をたらして働いていない株主なのに、株主のお金だと考えること自体、全く誤った考え方なのです。株主には剰余金が分配されます。これが資本払込の対価です。また、元本の回収は市場で売却することによってなすという仕組みです。役職員働いた成果は株主のものという考えは、奴隷を働かせて儲けは自分であるという奴隷制度と同じ発想です。会社は株主のものではありません。<o:p></o:p>

 

 

3) 仮に利益剰余金を株主のお金と考えても、株主総会の決議により承認されて、その会社に留保して良い、例えば留保して新規投資の元手として使用してもよいと株主が承認したものです。ですから、利益剰余金は、その会社の事業拡大の為に託された資本なのです。即ち、これを使って更に企業価値を上げてくれれば、株価も上昇してキャピタルゲインで儲かるかもということで、株主がその会社の経営陣に託した資金ということです。最近は会社法の規定を利用して、剰余金の分配を株主総会ではなく、取締役会で行なっている上場企業が多いです(委員会設置会社は、最初から取締役会決議事項)。即ち、会計監査人設置会社かつ監査役会設置会社であって、取締役の任期を1年としている場合は、定款で剰余金の配当の決定を「取締役会」の権限とすることができます(法459-1‐④)。従い、取締役会が自己(=会社)の資産として株主から信託的に確保した資産・資本なのです。<o:p></o:p>

 

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○ 米国では、株主資本(Shareowner’s EquityとかShareholder’s Equity)とされています。この言葉を未批判に日本に導入したわけですね。この考え方が間違いなのです。尚、米国では剰余金の分配は、総会ではなく取締役会決議事項にも拘わらずですね。

200812日のブログでは「資本コストWACCの誤った考え方」で株主資本コストについて述べています。<o:p></o:p>

 WACC=D/(D+E)x(1-Tc)x負債コスト+E/(D+E)x株主資本コスト<o:p></o:p>

 

負債コストは、実際のCash In Cash Outで算出されます、しかし株主資本コストは、株主が拠出した資本と株主が実際に受け取る配当をもとに算出しているわけではありません。Cash OutされないBSの株主資本を基に計算されます。従い、計算式の前提が負債コストと株主資本コストとは違うのです。こんないい加減な計算式がありますか! 米国では、こういった誤った考え方が一般化・常識化しています。同じCash In ? Cash Outベース・前提で考えるのが正しい計算のあり方です。<o:p></o:p>

 

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 株主資本である。会社が解散・清算したときに株主に帰属するからなどと屁理屈を言う人もいます。会社が清算しようとしたときに、純資産が株主に残余財産として実際に分配される例がどれだけあるのですか(Fundのみの会社は別)? 清算しようとしてときに、資産は二束三文で投売り・処分価格が常識です。また、会社は解散・清算することは希であり通常は継続拡大を目指します。従い、株主の手元に利益剰余金は通常は戻ってこないのです。それにも拘わらず株主資本コスト等という概念を作っているのが誤りなのです。<o:p></o:p>

 

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○ 上記の通り、利益剰余金は、会社の成長などの追加の「元手」資金として、株主が、分配しなくても良い、会社の自己資本として活用して欲しいとして託したお金ということです。即ち、第2の資本金とも言うべきものなのです。従い株主資本という呼び方は誤りで、「自己資本」あるいは昔のように「資本の部」とすべきです。即ち、純資産は、株主のものではなくてその会社のものなのです。

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