まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

監査役の機能強化と内部統制等

2010-11-01 00:23:15 | 商事法務

○ 内部統制の責任者は経営者にあり、取締役会はその整備及び運用に係る基本方針を決定するというのが、内部統制の考え方ですね。それを受けて金融商品取引法(24条の42)では、有価証券報告書と併せて、会社(代表取締役)に確認書の提出を求めています。金商法では、「有価証券報告書の記載内容が金融商品取引法令に基づき適正であることを確認した旨を記載した確認書」と規定しています。また、①財務報告の信頼性、②業務執行の効率性、③法令遵守、④資産の保全を目的とした一連の手続きである内部統制についてはその報告書(監査法人の監査付き)も提出しなければならないですね(金商法24条の44)。

○ 一方監査役について、原則は、会計監査を含む会社の業務全般の監査が権限でもあり、また同時に義務ですね。そしてその権限と義務に基づいて、違法性監査・妥当性監査を行います。法令に基づき、適正であるかどうかまではともかく、少なくとも違法性は無い事、即ち遵法であることの確認は監査役の責任ですね。日本には監査役制度があります。上記のように、金商法の確認書、財務報告の信頼性、法令遵守のチェックは監査役の仕事・責任ですね。しかし、実態として監査役が外部から見える仕事はしていないですね。残念ながら。

○ 外部から見える監査役の仕事は何でしょう。それは監査報告書ですね。この監査報告書は、相変わらず昔から同じような決まり文句の記載です。勿論法令違反のある場合は違いますが。監査結果に関する通常の記載は以下です。昔と違うのは、内部統制システムが導入されたので、その記載が加わった程度です。

(1) 事業報告等の監査結果

1) 事業報告およびその附属明細書は、法令および定款に従い、会社の状況を正しく示しているものと認めます。

2)取締役の職務の執行に関する不正の行為または法令もしくは定款に違反する重大な事実は認められません。

3) 内部統制システムに関する取締役会決議の内容は相当であると認めます。また、当該内部統制システムに関する取締役の職務の執行についても、指摘すべき事項は認められません。

(2) 計算書類およびその附属明細書の監査結果

会計監査人xxの監査の方法および結果は相当であると認めます。

(3) 連結計算書類の監査結果

会計監査人xxの監査の方法および結果は相当であると認めます。

  どうして監査役制度を有しているのに、監査役にその責任と義務を発揮すべき機会を与えないのでしょう。金商法の確認書は監査役に出させても良いかもしれません。また内部統制のうち財務報告の信頼性、法令遵守についての内部統制報告書は、監査役が作成すべきものではないでしょうか。

  内部統制制度は米国のSOX法を、一部緩和して、少し味付け(ITへの対応等)を加えてそのまま導入したものです。米国の会社では、監査役の制度がありませんが、日本は監査役制度があります。きちんと日本の制度・制度の違いを検討して、日本の状況を十分踏まえて、日本に移植し導入を図るべきものだったにもかかわらず、米国基準が世界標準だという誤った考えと米国の猿まね根性の、日本の政府(法務省・金融庁)・審議会(企業会計審議会)・学者・企業経営陣の悪い癖がでたものです。内部統制の4つの目的は、日本では、財務報告の信頼性と法令遵守のチェックは監査役の責任、業務執行の効率性と資産の保全は取締役の責任とすべきだと思いますね。


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