まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

代表取締役の選定を投票で

2008-01-22 11:22:08 | 商事法務

     従来型の会社、即ち取締役会設置会社では、代表取締役は、取締役会が取締役の中から選定・解職をしますね。(会社法3622/3)。代表取締役は、取締役会の下部機関であり、取締役会の指揮・監督に服するというのが法律の建前です。建前では、取締役会が、会社の業務執行その他株主総会の権限以外の重要事項について、会社の意思を決定する事になっています。

      しかし実態は違いますね。会長・社長の支配下に取締役会がある感じです。会長・社長あるいは、副社長以上の投資委員会等が決めたことを、取締役会で形式的に事後承認している例が多いですね。即ち、取締役会が儀式の場になっています。これについては、「経営者(会長・社長)による会社支配」ということで、先にブログに書きましたので、そちらをご参照ください。↓

http://blog.goo.ne.jp/masaru320/d/20070817

     この主要な原因としては、やはり会長・社長等が人事権を握っているのが理由だと思います。後継社長を指名、あるいは新任役員を、会長・社長が指名します。取締役会が、本当の意味で、代表取締役会長・社長を選定していません。

     商法の現代化・会社法改定作業の着手時に、この代表取締役という日本独特の制度について、いっそ廃止してはという強硬な意見もあったようですね。代表取締役の暴走や怠慢をチェックできない取締役会の抜本改革の為経営の執行と監督を分離し、取締役会の監督機能を高めようとの考えが出てきた訳ですね。結局、法制審議会では、そこまで議論も進まず、代表取締役制度の廃止は実現しませんでしたね。

・そりゃそうですよね、継続性が重要ですし、独特の歴史・蓄積・慣行が確立しているところに、突然アメリカの猿まねをしても、大混乱するだけですからね。ということで、中途半端な制度として米国のまねをした委員会等設置会社を少し変更して委員会設置会社の制度を継続して選択肢を増やすというか、ごちゃまぜの制度を継続しています。委員会設置会社では、取締役の資格では業務執行をすることが出来ないですね(415)。しかし、現実的には取締役は執行役を兼任、取締役&代表執行役ということで、従来の代表取締役と同様に業務を執行し、あわせて会社を支配しています。

・日本の会社の大多数は、未だ取締役会設置会社であり、その代表取締役は、相変わらず経営の監督機能を持つべき取締役会メンバーとしての取締役と経営の執行機能を担う執行役員を兼ねています。一人二役ですね。これでは、経営のチェック機能等が働かないとの批判が、学者から出ている訳ですね。

     米国やドイツでは経営の執行と監督は分離されていますね。ドイツでは監査役会が機能しています。米国では、取締役会が監督機能を担っています。取締役会は、重要な経営事項は自ら決定しなければなりませんが、かなりの経営事項は委員会に権限を委譲しています。委員会は、通常複数(1人でも委員会を組成できますけれども)の取締役から構成される、監査委員会、指名委員会、報酬委員会、財務委員会、執行委員会等がありますね。これら委員会は、日本(404)と異なり会社法で組成を義務づけられている訳ではないですが、慣行的に出来たわけですね(模範事業会社法§ 8.25参照*)。業務の執行は、DirectorではなくOfficerが行います。取締役を兼任する場合も多いですが、OfficerのトップがCEO(Chief Executive Officer)であり、他にはSecretaryTreasurer などがいますね。

*模範事業会社法§ 8.25. COMMITTEES

(a) Unless this Act, the articles of incorporation or the bylaws provide otherwise, a board of directors may create one or more committees and appoint one or more members of the board of directors to serve on any such committee.

     では、現行の取締役会設置会社の制度の中で、どのように改善すれば良いのでしょうか。出来るところから改善するなら、会長・社長等から代表取締役の実質指名権を取り上げる事ですね。例えば、「代表取締役は、取締役会にて、取締役の中から、無記名投票で選定する。」。こうすれば、取締役会が実質的に選定します。会長・社長等の代表取締役候補者の名前を明記した投票用紙に○をつければ、誰が誰を投票したか分かりませんし、こうすることによって、法律の趣旨通り取締役会が代表取締役を選定します。

・ 代表取締役制度の廃止等という、3段飛びの議論をいきなりするのではなく、改善で徐々に変えていく、合わせて(オーナー型企業を除いて)経営者の会社支配という構造を転換するには、どういった制度が良いのか、米国の制度の猿まねはやめて、今後の企業のあり方を、長期的・本質的・多面的・国際的視点で検討する有識者の作業を、きちんと開始すべき時期なのではないでしょうか。

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