まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

株主共同の利益の嘘―株主は多種多様

2008-10-20 22:07:58 | 企業一般

     「株主共同の利益」という言葉は、経産省が2005年5月に企業価値研究会が「企業価値報告書」及び「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」を公表してから、企業が買収防衛策を導入するときの枕詞として使用されるようになりました。報告書の中には、この言葉の定義はありません。私は、株主共同の利益というのは、「資本多数決の原理のもと、多数派株主の少数派株主の利益無視のこと」であり、共同などといういい加減というか、ごまかしの言葉を使用し、買収防衛策導入の方向性を打ち出したものだと考えています。まあ、少数派株主の利益無視と言いましたが、企業再編のときなどは株式買取請求権などもありますので金銭的には補償されますけれども。

株主の類型株主には株式保有の目的があります。いろんな目的をもって株式を保有します。株主の株式取得・保有目的を実現させることが、株主の利益ですね。共同の利益ではありません。では、どんな目的で株式を保有するのでしょうか。その類型をあげて見ましょう。

1) 事業目的:対象企業の株式を保有することにより、その企業と事業提携をしたり、あるいは取引を増やすことを目的として長期保有を前提に保有しますね。関連会社で持分法適用会社となる場合もありますし、子会社である場合もあります。中には、上場子会社もあります。経営支配権を有する場合ですね。投資利益・採算=ROI(Return on Investment)としては、配当のみならず取引利益・随伴取引利益もあてにします。

2) 利益追求目的:機関投資家や個人投資家などが儲けるために株式を保有します。これにはいろんな類型があります。

・長期的視点の保有で配当重視+キャピタルゲインも狙う場合。短期売買でキャピタルゲイン狙い。機関投資家でも年金基金から、デイトレーダーに近い人までいますね。今のように金融危機のときは、Cash is kingということで、現預金の保有が重要かもしれませんが、お金を持っていると、配当に回せとプレッシャーをかける投資家もいます。中には、信用取引で株価下落のときに儲けようとする投資家もいますね。こういった株主の中には、株式は金儲けの単なる手段と考える人もいます。議決権行使に興味の無い人ですね。会社は株主のものという理屈もありますが、そんなの関係なしという場合もあります。

・持株比率にもよりますが、議決権行使をきちんと検討する株主。例えば、配当増配を提案する株主もいますね。

・機関投資家でも、短期収益狙いの場合は一定期間内に手仕舞いをしないといけません。売買期間に期限のある株主、無い株主いろいろです。

3) 安定株主対策目的:最近また復活し始めている株式の相互持合いですね。経営者の保身、議決権の空洞化等と言われています。事業提携を看板に掲げていても、実質は持ち合いというのもあります。株主無視の経営者支配ですね。

4)     その他の目的:例えば、配当よりも株主優待(例えば、レストラン利用代金の割引券、鉄道会社の全線無料定期券等)を楽しみにしている個人株主もいます。経営に関与しなくても、創業者一族の子供だからとか、親戚が創業者だったなどという理由で株式を保有する場合があります。また、持株会もありますし、持株会から引き出して自分の名義にして、漠然と将来の備え等の目的で保有している人もいます。企業OBで、保有株を持っていて将来は子供にでもあげようという人もいます。

○ 上記のように株主は、いろんな目的をもって株式を保有します。共通の利益はありません。思惑も違います。例えば、同じ1000円の株価でも、もっと上昇すると考えて購入する人もいますし、儲かったので売り時だと思う人もいます。敵対的買収者でも高値で買ってくれるなら喜んで売る人もいますし、この買収者では企業価値を毀損するとして売らない人もいるでしょう。株主の考え・売買・保有目的等は多種多様です。多種多様であるから株価形成が出来るのです。ただ、株主が好き勝手なことを経営陣に求めては会社の経営重要事項の決定ができません。従い、総会決議は法令・定款で規定された事項だけ(会社法295条2項:取締役会設置会社が前提)にしましょう。それを資本多数決で決めましょうということになっているんです。多様な株主に株主共同の利益などありません。どこに共同性があるんですか。勝てば官軍というだけです。

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