天命を知る齢に成りながらその命を果たせなかった男の人生懺悔録

人生のターミナルに近づきながら、己の信念を貫けなかった弱い男が、その生き様を回想し懺悔告白します

溝口健二監督1942年映画『元禄忠臣蔵』明日はお殿様命日暇請にご焼香をの大石に瑶泉院その儀成りませぬ

2012-07-16 19:14:14 | 日記
今日の続編日記は、今久しぶりにDVD鑑賞している松竹映画『元禄忠臣蔵 前篇・後篇』(1941・42年製作 真山青果原作 原健一郎・依田義賢脚色 溝口健二監督  四代目河原崎長十郎 三代目中村翫右衛門 五代目河原崎國太郎 市川右太衛門 三浦光子 高峰三枝子主演)のことです。
この映画は、劇作家・真山青果による新歌舞伎派の演目「元禄忠臣蔵」を、原健一郎と依田義賢が共同で脚色し、日本映画界の巨匠溝口健二が監督製作した戦時中の大型時代劇です。厳密な時代考証を行い、実物大の松の廊下や大石の山科隠宅を構築した(建築監督は新藤兼人)壮大な歴史映画です。
原作に忠実な為、討ち入りシーンはなく、ちょっと拍子抜けしてしまいますが、私の大好きな『南部坂雪の別れ』が登場しますので、とても感動する映画です。添付した写真は、そのシーンの瑶泉院役の三浦光子(左)と大石内蔵助役の四代目河原崎長十郎(右)です。
この溝口映画『南部坂 雪の別れ』での、大石内蔵助(河原崎長十郎)の格調高く”男の美学”を彷彿させる瑶泉院(三浦光子)との会話を、以下に引用・掲載します。
・瑶泉院『内蔵助!女わらわの差し出ることではないが、世間の噂では、上野介様には来春の雪融けを待って、御本家上杉様御国元、米沢の御城内に移って、御隠居なさるとのことではないか?』
・内蔵助『は、それは私も聞かぬことではありませぬ。吉良家にては、とかく我ら浪人どもを思い、様々と魂胆を巡らせていることと存じられます。・・江戸在住の者にも、堀部弥兵衛七十五歳、間喜平六十八歳など、明日をも知れぬ老人がおります。そこまで案じていたら、ワハハ(笑)・・・御膳様、御願いがございます。明日は御命日、お暇請いにお殿様御霊前に、御焼香をお許し下さいませ!』
・瑶泉院『・・せっかくながら、その儀はなりませぬ!』
男の美学では”男は決して嘘を付かない(武士に二言はない)”のですが、時としてその戒めを破ることがあります。それが、『南部坂 雪の別れ』の大石内蔵助なのです。
この映画は、正統派の歌舞伎演目「元禄忠臣蔵」を原作にしているので、上杉の間者(腰元)や浅野内匠頭の霊前に差し出す討ち入り同士四十六人の血判状は登場しません。でも、私は、溝口健二監督の格調高いこの演出に涙しました。
この映画は、戦時中の国策映画とあまり評判が良くないですが、時代考証を尊び、その時代に生きた武士の本懐を格調高く描いた名作時代劇です。
私みたいな還暦近い人間でも、この映画に出演した俳優でよく知っている人は、市川右太衛門(東映時代劇の大御所重役スター)と高峰三枝子(戦後を代表する女優)だけです。だから、若い人には何も知らない俳優ばかりですが、前進座の俳優さんに興味がある方には、必見の映画です。さらに、『忠臣蔵』に興味のある方にも、私は是非観てほしい映画です。
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藤田宜永著『夢で逢いましょう』機内乗務中の女の警戒心を解きほぐし個人情報を入手できる同僚大胆さに感服

2012-07-16 08:08:30 | 日記
今日の日記は、今読んでいる藤田宜永著『夢で逢いましょう』(2011年小学館刊)の主人公の大手ゴム製品メーカーを定年退職した会社員・日浦昌二のある同僚のことです。添付した写真は、その著書の表紙です。
この小説の著者・藤田宜永氏は、1950年生まれの団塊の世代の人間です。この著者が描く主人公の少年期から成人するまでの当時社会世相に、同世代の私もとても懐かしく大いに共感しています。
そして、NHKテレビ番組『お笑い三人組』『夢であいましょう』、資生堂の男性用整髪料『MG5』、小川ローザの丸善石油CM『Oh!モウレツ』、日本テレビ番組『巨泉・前武ゲバゲバ90分!』、FM東京音楽番組『ジュットストリーム』等、私がよく知っているテレビ番組や愛用した整髪料がこの著書に多く登場します。
読んでいて主人公らの当時の生き様に大いに共感した私ですが、この主人公の日浦昌二の同僚のある行動エピソードに、とても驚きました。何故なら、私が最近札幌旅行で遭遇した品性劣悪最低男と同じような人間が、この小説で描かれていたからです。以下に、その記述を引用・掲載します。
『ある同僚のことを思い出した。その男は、飛行機に乗る度に、客室乗務員に話しかけ、携帯番号を訊き出そうとした。百発百中ではなかろうが、デートにまでこぎ着けたことは一度や二度ではなかった。自社製品の包みを破ることができるまでに至ったかどうかは定かではないけれど、乗務中の女の警戒心を解きほぐし、個人情報を入手できるだけでも昌二にとっては、イチローのバッティングを間近に見るがごとし。ただただ感服するばかりだった。その強者は十年以上前に会社を去った。使い込みがバレてクビになったのである。会社の金に手をつけるなんて馬鹿げたことだが、その大胆さは、難しい状況でも女に声をかけられることとどこかで繋がっている気がした。』
この客室乗務員に関するとても興味あるエピソードを読んでいて、私が関係するネット掲示板で、空港搭乗手続きフロント係員にある”言葉”を言えと命令した投稿者を思い出しました。その投稿者が、私に命令したその”言葉”とは、
”わたしは、CAが好きです。わたしは、CAの黒ストが好きです。わたしは、CAの黒ストを凝視したいです。だから、お見合い席にしてください。”
そして、この投稿者も、このようにお見合い席(非常口近くの座席)を確保して、難しい状況でも、乗務員女性に声をかけられる大胆さを、日浦昌二の会社同僚と同じく、共有していると、私は今強く得心しました。
だから、この藤田宜永著『夢で逢いましょう』を、私に行動命令を投稿した”大胆な”男にも、私は是非読んでほしいです。

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