今日の続編日記は、今久しぶりにDVD鑑賞している松竹映画『元禄忠臣蔵 前篇・後篇』(1941・42年製作 真山青果原作 原健一郎・依田義賢脚色 溝口健二監督 四代目河原崎長十郎 三代目中村翫右衛門 五代目河原崎國太郎 市川右太衛門 三浦光子 高峰三枝子主演)のことです。
この映画は、劇作家・真山青果による新歌舞伎派の演目「元禄忠臣蔵」を、原健一郎と依田義賢が共同で脚色し、日本映画界の巨匠溝口健二が監督製作した戦時中の大型時代劇です。厳密な時代考証を行い、実物大の松の廊下や大石の山科隠宅を構築した(建築監督は新藤兼人)壮大な歴史映画です。
原作に忠実な為、討ち入りシーンはなく、ちょっと拍子抜けしてしまいますが、私の大好きな『南部坂雪の別れ』が登場しますので、とても感動する映画です。添付した写真は、そのシーンの瑶泉院役の三浦光子(左)と大石内蔵助役の四代目河原崎長十郎(右)です。
この溝口映画『南部坂 雪の別れ』での、大石内蔵助(河原崎長十郎)の格調高く”男の美学”を彷彿させる瑶泉院(三浦光子)との会話を、以下に引用・掲載します。
・瑶泉院『内蔵助!女わらわの差し出ることではないが、世間の噂では、上野介様には来春の雪融けを待って、御本家上杉様御国元、米沢の御城内に移って、御隠居なさるとのことではないか?』
・内蔵助『は、それは私も聞かぬことではありませぬ。吉良家にては、とかく我ら浪人どもを思い、様々と魂胆を巡らせていることと存じられます。・・江戸在住の者にも、堀部弥兵衛七十五歳、間喜平六十八歳など、明日をも知れぬ老人がおります。そこまで案じていたら、ワハハ(笑)・・・御膳様、御願いがございます。明日は御命日、お暇請いにお殿様御霊前に、御焼香をお許し下さいませ!』
・瑶泉院『・・せっかくながら、その儀はなりませぬ!』
男の美学では”男は決して嘘を付かない(武士に二言はない)”のですが、時としてその戒めを破ることがあります。それが、『南部坂 雪の別れ』の大石内蔵助なのです。
この映画は、正統派の歌舞伎演目「元禄忠臣蔵」を原作にしているので、上杉の間者(腰元)や浅野内匠頭の霊前に差し出す討ち入り同士四十六人の血判状は登場しません。でも、私は、溝口健二監督の格調高いこの演出に涙しました。
この映画は、戦時中の国策映画とあまり評判が良くないですが、時代考証を尊び、その時代に生きた武士の本懐を格調高く描いた名作時代劇です。
私みたいな還暦近い人間でも、この映画に出演した俳優でよく知っている人は、市川右太衛門(東映時代劇の大御所重役スター)と高峰三枝子(戦後を代表する女優)だけです。だから、若い人には何も知らない俳優ばかりですが、前進座の俳優さんに興味がある方には、必見の映画です。さらに、『忠臣蔵』に興味のある方にも、私は是非観てほしい映画です。
この映画は、劇作家・真山青果による新歌舞伎派の演目「元禄忠臣蔵」を、原健一郎と依田義賢が共同で脚色し、日本映画界の巨匠溝口健二が監督製作した戦時中の大型時代劇です。厳密な時代考証を行い、実物大の松の廊下や大石の山科隠宅を構築した(建築監督は新藤兼人)壮大な歴史映画です。
原作に忠実な為、討ち入りシーンはなく、ちょっと拍子抜けしてしまいますが、私の大好きな『南部坂雪の別れ』が登場しますので、とても感動する映画です。添付した写真は、そのシーンの瑶泉院役の三浦光子(左)と大石内蔵助役の四代目河原崎長十郎(右)です。
この溝口映画『南部坂 雪の別れ』での、大石内蔵助(河原崎長十郎)の格調高く”男の美学”を彷彿させる瑶泉院(三浦光子)との会話を、以下に引用・掲載します。
・瑶泉院『内蔵助!女わらわの差し出ることではないが、世間の噂では、上野介様には来春の雪融けを待って、御本家上杉様御国元、米沢の御城内に移って、御隠居なさるとのことではないか?』
・内蔵助『は、それは私も聞かぬことではありませぬ。吉良家にては、とかく我ら浪人どもを思い、様々と魂胆を巡らせていることと存じられます。・・江戸在住の者にも、堀部弥兵衛七十五歳、間喜平六十八歳など、明日をも知れぬ老人がおります。そこまで案じていたら、ワハハ(笑)・・・御膳様、御願いがございます。明日は御命日、お暇請いにお殿様御霊前に、御焼香をお許し下さいませ!』
・瑶泉院『・・せっかくながら、その儀はなりませぬ!』
男の美学では”男は決して嘘を付かない(武士に二言はない)”のですが、時としてその戒めを破ることがあります。それが、『南部坂 雪の別れ』の大石内蔵助なのです。
この映画は、正統派の歌舞伎演目「元禄忠臣蔵」を原作にしているので、上杉の間者(腰元)や浅野内匠頭の霊前に差し出す討ち入り同士四十六人の血判状は登場しません。でも、私は、溝口健二監督の格調高いこの演出に涙しました。
この映画は、戦時中の国策映画とあまり評判が良くないですが、時代考証を尊び、その時代に生きた武士の本懐を格調高く描いた名作時代劇です。
私みたいな還暦近い人間でも、この映画に出演した俳優でよく知っている人は、市川右太衛門(東映時代劇の大御所重役スター)と高峰三枝子(戦後を代表する女優)だけです。だから、若い人には何も知らない俳優ばかりですが、前進座の俳優さんに興味がある方には、必見の映画です。さらに、『忠臣蔵』に興味のある方にも、私は是非観てほしい映画です。