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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

農業用ロボットの今

2016-07-19 18:46:15 | 大学公開講座
 農業従事者の減少、そして高齢化という背景の中、農作業機械の自動化の動きが加速化しているという。農業用ロボットの開発に携わる研究者から、農業用ロボットの今を聞いた。 

          
          ※ 北大校内の農場で行われた農業用ロボットの実証実験のときの様子です。
           左から、水田用のボート、小回りの効くトラクター、ヘリコプター、大型トラクターなど。

 北大全学企画公開講座「『国のかたち』を案ずる時代の知恵」もこの日(7月18日)は祝日とあって、一挙に第5講、第6講と二講座が開講された。
 まずは第5講座の「IT・ロボット技術が支える新しい農業の姿」と題して北大大学院農学研究院の野口伸教授の講義についてレポすることにする。

 野口教授はまず、日本農業の現状について触れた。日本農業は農業従事者の減少が続き一戸あたりの耕作面積が拡大傾向にあり、耕作放棄地も増大しているという。その上、従事者自体の高齢化も深刻な問題となっているとした。
 北海道では1990年から20年間で一戸当たりの経営耕作地は1.9倍まで増大し、今後さらに増える傾向にあり家族での経営では限界を迎え、労働者不足が深刻な状況にあるという。

 そうした背景の中、農業の世界においても農作業機械の自動化・ロボット化が加速しているという。
 その一例として、野口氏が関わる農業用トラクターの自動化の動きについて説明があった。

               
               ※ 講師の野口伸(のぐち のぼる)教授です。

 農業用トラクターについて現在、「オートステアリングシステム」は実用化の段階に入っているそうだ。
次の段階は「有人-無人協調作業システム」がここ1~2年を目途に開発が進んでいるらしい。このシステムは一人で2台のトラクターを操ることができるシステムだという。
 続いて、人間がトラクターには乗らない「無人作業システム」の段階を経て、4年後には「マルチロボット(遠隔監視による無人作業システム)」の開発を目ざしているとのことだった。
 つまり究極は、圃場から離れたロボット管制室から指令を出し、無人トラクターが作業の全てを行うことを目ざしているということである。

          
          ※ 良く見てください。手前のトラクターは無人です。「有人-無人協調作業システム」の実験です。

 その他、農業におけるさまざまな分野でロボット化の試みが増大しているようだが、一方でIT技術の活用により、プロ農家の「匠の技」を集積し、営農のノウハウをより多くの農業に携わる人たちが共有し、効率の良い農業を目指す取り組みも進められているという。

 私にとっても非常に興味深い内容ではあったが、農業の自動化・IT化を進めていくということは、一方で資本投資ということにもなってくる。となると、一農家が自動化・IT化を進めていくほど資金が潤沢だろうか、という問題が横たわっているように思える。
 そこで私としては珍しくも講師に質問させていただいた。
 「自動化・IT化となると、それなりに資金も必要となってくるが、一農家が負担できるような金額とは思えない。将来の農業の姿として株式会社の参入などということが現実化してくるのではないだろうか?しかし、そこには株式会社などの農業参入には法的な規制もあるとも聞くが、そのあたりはどうなのだろうか?」と…。

 それに対して講師は「専門外の問題ではあるが、当然将来は株式会社などの参入はあり得ることだ」という答えであった。
 TPP問題など、農業分野においてもグローバル化は避けられない状況であるが、はたして日本農業、そして北海道の農業はどこへ向かっていくのだろうか?
 道産子として心配でもあり、注視していかねばならない問題でもある。