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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

子育てと貧困問題

2016-07-14 14:49:59 | 大学公開講座
 学校給食費とか、高校授業料の滞納という問題は収入が低いほど滞納傾向があると講師は指摘する。一見、当たり前のようにも思えるのだが、そこに問題が存在するという。講師はそこに社会的制度が問題として存在するというのだが…。 

 7月11日(月)夜、北大公開講座「『国のかたち』を案ずる時代の知恵」の第三講は、教育研究院の鳥山まどか准教授「現代日本における子育てとお金」 と題して講義された。

          
          ※ 講義中の鳥山氏です。写真が不鮮明なのは鳥山氏には申し訳ない。

 鳥山氏は次のように問題提起する。
 「滞納」問題は、「だらしがないから」、「やりくりが下手だから」滞納する。あるいは優先すべき・支払うべきものを支払う意思に欠ける人の問題、つまり滞納は家計管理能力の欠如や個人のモラルの問題だとする新聞報道などが多いようだが、はたしてそうだろうか?というのが鳥山氏の問題提起である。

 鳥山氏たち関係者が子育て世代を対象としたいくつかの調査結果からは、収入が低い世帯ほど滞納体験が多い傾向が見られる結果が出たという。つまり、滞納問題は単に家計管理能力の欠如とか、モラルの問題だけではなく、その背景には低収入の問題があるという。

 ここで鳥山氏は「社会的固定費」という言葉を提示した。この言葉は必ずしも広く認知された言葉ではないようで、鳥山氏の造語だという。
 鳥山氏は「社会的固定費」を次のように定義する。社会的固定費とは、家計管理者の自由裁量がほとんどないもの、その代表的にものとして水道光熱費、電話代、社会保険料などがあるという。さらには、住居費や教育費もここに含まれるとした。

 つまり、収入の多寡に関わらず家庭における「社会的固定費」には家庭のよる差は大きくなく、そのため低収入家庭ほど自由裁量の金額が低くなるとした。しかし、このこと自体については私も漠然としてはいたが認識していたつもりである。
 鳥山氏は、家庭における「社会的固定費」が過去と比べると、その割合が大きくなったと言いたかったのか?(その点は不明確)

 さらに鳥山氏は、家計の支出における「時間の硬直性」に言及した。
 社会的固定費の支払いの多くは、口座引き落としが主流となっているという。このこと自体は利便性が増したのだが、このことが支払日・支払期限の明確化・固定化・厳格化を招いているとした。
 こうした現状の中、固定的な収入のある家庭においては、毎月口座に補てんすることによって格別困難は生じない。しかし、雇用が不安定な家庭においては収入に変動があると金額と期限が固定的な支払いに対応することが難しい現状があるとした。

 非正規雇用が拡大している社会の現状に対して、滞納問題の背景にはこうした社会的制度にも問題が潜んでいると鳥山氏は指摘した。

 鳥山氏の分析と考察を伺いながら、私は半分納得しながら、半分は首を捻る思いで聞いていた。というのも、私の体験で給食費の未納問題でとても苦労した経験があった。その時感じたのは、明らかに支払える能力を有しながら、罰則のない仕組みの中で逃れようとする存在の方々が少なからずいたという事実である。
 だから、このような考察や主張が、そうした人たちを利することに繋がらねばよいのだが、という思いを一方では持ちながら拝聴していた。
            
          

 今回の全学企画講座「『国かたち』を案ずる時代の知恵」では、面白い企画を実施している。それは、今年度の北大新入生が事前に講師にインタビューをして、講師の人となり、講義の内容などについて、講義前に私たちにレクチャーしてくれるという取り組みを行っている。これがなかなか良いのだ。
 新入生にとって、インタビュー能力やそれをまとめる力を養う良い機会となっている。聞く方の私たちは、彼らがどのように講師を紹介し、講義内容をレクチャーしてくれるのか、非常興味深い時間となっている。
 企画者のグッジョブてある。