ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

シャープとソニーが液晶パネル合弁事業を解消するニュースを読んで考えました

2012年05月25日 | イノベーション
 シャープとソニーの両者は2012年5月24日に、大型液晶パネルの合弁事業を解消すると発表したと、各メディアが報じました。ここ数年間に起こった液晶パネルの大幅な価格下落を反映した動きです。最近の日本の大手電機メーカーのテレビ事業が凋落していることを示す“反応”です。

 具体的には、大型液晶パネルの生産・販売を手掛けているシャープの生産会社のシャープディスプレイプロダクト(SDP、大阪府堺市)に出資してたソニーが、保有する株式(出資比率7.04%)すべてをSDPに譲渡するというものです。株式譲渡の対価は、SDPがソニーに出資時と同額の100億円を支払うということです。この株式譲渡と対価支払いは、2012年6月末に実行する予定だそうです。

 SDPは2009年7月1日に、シャープが大阪府堺市に建設した液晶パネル工場を子会社として独立させて発足しました。



 同年12月29日に実施した第三者割当増資によってソニーから100億円(7.04%)の出資を受け、シャープとソニーの合弁会社になりました。

 このシャープの液晶生産会社のSDPは、シャープが2012年3月27日に、台湾のHon Hai(鴻海)グループとの業務提携をすると発表したことで注目を集めている企業です。具体的には、Hon Hai Precision Industry(鴻海精密工業)のCEOであるTerry Gou(郭台銘)さんが、SDPの全株式の中の、シャープ保有分(92.96%)の半分に当たる46.48%を取得することを明らかにしています。Hon Haiグループは、世界最大のEMS(Electronics Manufacturing Service)企業です。

 ハイテクの塊である液晶パネルは、ここ10年間に技術革新が進むと同時に、価格が大きく変化しました。2000年初めは、日本の大手電機メーカーにとって液晶パネルの確保が液晶テレビ事業やノートパソコン事業にとって重要でした。入手した液晶パネルの数量が液晶テレビの生産台数を決める時代でした。

 このため、当時、液晶パネル事業への進出に出遅れたソニーはサムソン電子と合弁で、2004年4月に液晶テレビ向け液晶パネルの生産会社S-LCDを韓国に設立しました。サムスンが株式を50%と1株、残りをソニーが出資し、両社は生産した液晶パネルをほぼ半数ずつ買い取ってきました。ソニーは液晶パネルを安定して入手する手を打った訳です。

 この当時は、世界的に液晶パネル需要の急増し、液晶パネル不足でしたが、その後、韓国や台湾の電機メーカーが液晶パネルの生産量を増やしたために、液晶パネルの価格が下落し始めました。

 このため2007年12月に、日本の大手電機メーカーの日立製作所と東芝はそれぞれ、テレビ用の大型液晶パネルの生産から撤退しました。この結果、日立はパナソニック(当時は松下電器産業)から、東芝はシャープから液晶パネルを購入する体制に集約されました。その後、さらに液晶パネルの価格が下がり、生産過剰になって供給を受ける側が有利になったとうわさされています。

 2011年12月26日に、ソニーとサムスン電子は、両社が合弁で運営してきた液晶パネル生産会社S-LCDに対して、ソニーが出資を引き上げ、全株をサムスン電子に売却すると発表しました。ソニー合弁を解消し、高価格な液晶パネルの購入を止めるというものでした。

 今日5月25日の日本経済新聞紙朝刊には、シャープがHon Hai(鴻海)グループと共同で、中国での液晶パネル生産工場をつくるもようと報じています。今後も、日本の大手電機メーカーの液晶パネル事業はいくつもの紆余曲折(うゆきょくせつ)をみせそうです。