まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

『絹の瞳』短編もお上手でした

2009-03-15 17:00:36 | フランスの作家
DES YEUX DE SOIE 
1975年 フランソワーズ・サガン

私は、サガンのことを “ アンニュイでアーバンな恋愛小説のオーソリティー ” と
勝手に位置づけているわけですが、この『絹の瞳』は、恋愛ものだけでなく
思ったよりバリエーションに富んだ短篇集でした。

『未知の女(L'inconnue)』
男運が良くない友人リンダをなぐさめようと自宅に連れて帰ったミラセントは
そこであきらかな夫の浮気の痕跡を目にして動揺します。
軽く流してくれるリンダを残してベッドルームに入っていくと…

お互い困ってしまうシチュエーションですね。
でもミラセントの最後のひとことが、こんな時でも失わない女の虚栄心を表していて
笑えてしまいました。 私ならどうするかな…?

『五つのうわの空(Les Cing Distraction)』
絶世の美貌と恐るべき冷酷さで名を馳せたクラーフェンベルク伯爵夫人のエピソード。
彼女はどんな窮地も “ うわの空 ” で切り抜けました。

こんな女になりたい! 絶世の美女は無理でも、うわの空なら…などと
簡単に考えてしまいますが、けっこう難しいことだと思います。
特に自分の死を目の前にした時に冷静になれるか? と問われたら
答えは「 No 」ですね。

『犬の一夜(Une Nuit de Chien)』
賭け事で無一文になって、家族にクリスマスプレゼントが買えなくなったクシムネシトル氏は
野犬収容所から一匹の犬を連れて帰ります。
家族の態度は冷たくなり、クシムネストルを残してミサに出かけてしまいました。
小汚い犬を連れてひとりミサに行ったクシムネストルに奇跡(?)が…

一世紀ほど前の物語っぽいオチだと思いました。
クリスマスにおける人々の慈善の気持ちを、ちょっぴり茶化しているんでしょうか?
でも犬も幸せになり家族も幸せになり、一応ハッピーエンドです。
これを機にギャンブルをやめることができればいいですね。

サガンって、登場人物がゆらゆらと悩みながら物語が進んでいく場面が多いので
短編は苦手なんじゃないかな? と思い込んでましたが、そんなことありませんでした。
どちらかというと彼女のユーモラスな部分がよく出ていると思います。
少しブラックではありますけど。

死に関する物語も多いのですが、「いかに美しく散るか」というのが
大きなテーマになっているようです。
いざとなるとそうはいかないだろうとは思うんですけれどね。

最近、死にたいと思っている人が無差別に他人を殺すという事件が多いですけれど
死の他に選ぶべき道がないというのなら、本当に本当にそれしかないというのなら
できるだけお独りでスマートに逝っていただければ…と願うばかりです。

絹の瞳 新潮社


このアイテムの詳細を見る


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« フランス王アンリ3世妃 ルイ... | トップ | 『イギリス怪奇傑作集』寝る... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

フランスの作家」カテゴリの最新記事