まりっぺのお気楽読書

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『ナナ』それでも饗宴は続く

2009-03-20 02:26:42 | フランスの作家
NANA 
1880年 エミール・ゾラ

ルーゴン・マッカール叢書の9番目にあたる物語で、 『居酒屋』を読まれた方は
ご存知でしょうが、ジェルベーズとクーポーの娘がナナです。
両親は酒に溺れ、救いようのない堕落と貧困のうちに死にますが
小さな頃からおませで生意気なナナは、10代になると怪しい酒場に出入りし始め
早々に親に見切りをつけてパリの街に消えました。

財産もなく手に職もなく、そこそこに美しければ…
当時のパリはそんな女性たちにとって、自分の人生を切り開くことができる街でした。
貴婦人も羨むような贅沢三昧の生活をする高級娼婦 “ クルティザンヌ ” になるか
一生を街の女で終わるかは、美しさだけでなく、男性を面白がらせる才覚や
娼婦としてのこころざしが重要だったようです。

もともと怠け者のナナは、そんなに大それた身分を望んでいたとは思えません。
ケチな旦那衆よりは金払いのいい旦那がいて、好きなものがたらふく食べられて…
それぐらいの気持ちだったと思うんですが、人間て少しずつ贅沢になるものなのよね。

ヴァリエテ座の新人女優として脚光を浴び、自分が高く売れることに気付いたナナは
銀行家や貴族などを獲得してクルティザンヌの仲間入りをします。

ここからははしょるけど、ナナは役者フォンタンにのぼせあがり
いきなり豪奢な生活を捨てて、小さなアパルトマンで所帯を持ちます。
これがうまくいけばよかったのですが、結局生活のために街でからだを売るようになり
フォンタンには捨てられて舞台に復帰します。

ナナは再びクルティザンヌになるのですが、以前とは意気込みが違います。
贅沢と放蕩の限りを尽くして、男たちから搾り取り破滅させ
用がなくなったら有無をいわさず捨て去ります。
でも、そんな日々は終わりを告げることになりました。

ナナに群がる男性は、いくつかにパターン分けすることができます。

女遊びのなんたるかをわきまえず、独占したくて貢ぎ続ける男。
手に入りそうな女を求めて歩き、次から次へと金を出す、という男。
金銭抜きで可愛がられて真剣に愛してしまう男。
女で身を滅ぼすことが粋だと考えて、最後の1フランまで使い果たす男。

端から見ればバカバカしいことなんだけどねぇ…
女の方はね、20代そこそこ、早ければ十代半ばでその道に飛び込んでしまって
哀しい身の上の憂さを晴らすために乱痴気騒ぎをおこしたくなると思うのよ。
でも男の方はねぇ… たしなむ程度ならいいと思うんだけどさぁ…

山田勝氏の『ドゥミ・モンデーヌ』によると、ブランシュ・ダンティニーという
クルティザンヌがモデルになっているということですが
たぶん当時の名だたる女たちを総動員して作り上げられたのがナナだと思います。

ゾラはブランシュ本人には会っていないそうですし
執筆にあたって多数のドゥミモンドへの取材を綿密に行っていますのでね。
当時のクルティザンヌのまわりには有名な作家も集まっていましたから
ゾラだって何人か馴染みの女性がいたんじゃないかしらね?

『居酒屋』のインパクトには及びませんが、女の生き様を見ろ!って感じで
充分に読み応えがあったと思います。
(最後が唐突なんですよね…急に終わらせたくなっちゃったのかしら?)

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