まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
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『プチ・ショーズ』主人公より脇役

2009-03-27 02:07:56 | フランスの作家
LE PETIT CHOSE 
1865年 アルフォンス・ドーデ

この物語にジャックとピエロットというふたりの人物が登場しなかったら
クソミソにけなしていることでしょう!

零落したエーセット家の三男 “ チビ公 ” ことダニエルの
幼少期から青年期を描いた物語です。
語り手はチビ公自身で、不幸な日々を自虐的にコミカルに綴っています。

でもダニエルのことはどうでもいいわけ!
ダニエルは小さな頃、次兄ジャックより良くできたので学校に行かせてもらい
一家の離散後は公立学校の生徒監督になったけど上手くいかず
パリで自活していたジャックを頼って来て、ジャックに「詩人になれよ」と言われて
戯曲を書くけど本が売れなくて、娼婦にそそのかされて役者になって…
小心者で見栄坊で、どうも一貫性がない、そんな青年です。

ジャックは次男なんですが(長男は出家したけど早世)学校に通うダニエルのために
糊とボール紙で教科書を繕ったり、便利な紙挟みを作ったりと弟のことばかり。
ダニエルがパリに出てくるとダニエルに詩を書かせるため身を粉にして働き
その上片思いをしていたピエロットの娘カミイユまで奪われてしまうの。

場末の役者になっていたダニエルを助け出した後は
自費出版した本代やダニエルの借金を返すために働きづめで
とうとう命を落としちゃうんですよっ

ピエロットはダニエルの母の乳母の子で、パリで陶器商となって成功していました。
昔母に世話になったことを忘れずジャックとダニエルのめんどうを見てくれます。
ダニエルが娼婦イルマにうつつを抜かしてカミイユを泣かせた後も見捨てず
ジャックを失って途方に暮れるダニエルを親身になって世話してくれます。

最後は一応ハッピーエンドなのかしらね? ジャックが可哀想すぎる…

親バカにもほどがある! と怒りたくなるほど家族思いのジャックと
義理がたい男ピエロット、ふたりの美しい優しさが描かれていなければ
この本はダニエルの戯言を垂れ流してるだけになってしまうのよ

デビュー作で自伝的小説というから、ドーデ本人にも怒りの鉾先が向くとこでしたが
それは前半だけだったようで、後半はかなり創作だそうです。
兄も立派な著述家になりドーデ以上に長生きしたそうで、あぁ良かった

ドーデが25歳の時に書かれたこの物語をきっと兄も読んでると思うんですが
名前は違えど自分が死んでしまうって、どんな気分なんでしょうね?
物語どおりの心優しい兄なら、きっと笑って「良くやったね」と言うんでしょうね。

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