まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

『三幕の殺人』グラスの毒を飲ませるには?

2009-04-23 01:26:58 | アガサ・クリスティ
THREE ACT TRAGEDY 
1935年 アガサ・クリスティ

人はその死に方でいらぬ勘ぐりを受けたり
知られたくなかった真実が暴かれてしまうことがあるのかもしれません。
例えば長く患っていた病気でなくなったり、不幸な事故で亡くなれば
悲しみの中葬らるだけで済むのでしょうが
殺害されたとなると何か理由を見いだしたくなってしまうのが世間というものです。

事件は元俳優カートライトの住まい “ 鳥の巣 ” で起きました。
晩餐会前のドリンクタイムにバビントン牧師が急死したのです。毒殺でした。
パーティーにはカートライトの友人や近在の人々などが集まっていましたが
寛容で慈悲深い好人物の牧師に恨みを持っているような人物は見当たりません。
けれども殺害されたことで、牧師の過去が調べられていきます。

事件が解明しないまま数ヶ月が過ぎた頃
パーティーにも来ていた医師のストレンジが自宅の晩餐会で死亡しました。
使われた毒は “ 鳥の巣 ” の時と同じニコチン
顔ぶれもポアロとサタースウェイト、カートライトを除いて同じ顔ぶれでした。
この人たちがまた…揃いも揃って怪しいんですよ

牧師は間違って殺されたのでしょうか?
それともストレンジが何かに気付いていたのでしょうか?
ポアロもカートライトも頭を捻ります。

ところがまたまた別の展開が…
数日後ストレンジの治療施設に入院していたド・ラッシュブリッジャー夫人が
届けられたチョコレートを食べて死亡します。またニコチンです。
ド・ラッシュブリッジャー夫人とは何者?
犯人は誰を殺したかったのでしょう? ひとり? ふたり? 全員?

事件の後、ストレンジ邸の執事ジョン・エリスが姿を消して容疑者にされます。
後は行方不明の彼を見つけるだけです。
けれどもポアロはあることに気がつきました。
すると事件は単純明快なものになってきました。

ポイントはねぇ…「一度手をつけたことは最後までやり通せ」ということでしょうか。
途中で投げ出すと何もかもぶち壊しです。

物語の最後でポアロは激怒しますが、犯罪の手口を考えれば当然のことでしょうね。

謎が謎をよぶ展開にハラハラドキドキ
読んでみたいな!という方は下の画像をクリックしてね

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『ユダヤ人のブナの木』週刊◯◯という感じ

2009-04-23 01:01:51 | ドイツの作家
DIE JUDENBUCHE 
1842年 アネッテ・フォン・ドロステ=ヒュルスホフ

実際にあった殺人事件がベースになっているらしいのですが
女性が書いたとは思えないほど堅苦しく、情緒もへったくれもありませんでした。

情景の描写に使われている修飾語がかろうじて小説っぽさを醸し出していますが
まるで記者の思い入れが強いルポルタージュみたいになっちゃってます。

もう少し容疑者となった少年フリードリヒの年老いた母親の嘆きが
クローズアップされていたり、フリードリヒを密かに慕う少女などがいたりしたら
小説らしくなったのでは? と思うのですけど、出来事を時系列に並べているだけ…

ある村で盗伐が相次いでいたのですが、見回りをしていた山林官が殺害されます。
その時一瞬疑われたのが、すこぶる評判の悪い男の息子フリードリヒ少年でした。
結局罪は晴れますが、実は彼は盗伐団のために見張りをしていたのでした。

数年後、今度は古売商をしていたユダヤ人アーロンがブナの木の下で殺されました。
その前日、フリードリヒは皆の前でアーロンに借金の取り立てをされて
大恥をかいていたので、真っ先に彼が疑われました。
領主のS男爵はフリードリヒの家に向かいますが、彼は逃げた後でした。

事件が迷宮入りになってしまった頃、ユダヤ人たちがブナの木の一帯を買い取り
アーロンが殺されていた木に碑文を彫りつけます。
それからその木は “ ユダヤ人のブナの木 ” と呼ばれるようになったのです。

さてさてフリードリヒですが、その後どうなったのでしょう?
実はアーロン殺しの真犯人は見つかったのですが、フリードリヒは帰って来ません。
そもそも何故フリードリヒは逃げ出したのでしょう? 村人は不思議がります。

28年後、フリードリヒと一緒に逃げた私生児ヨハネスがひょっこり戻って来ます。
トルコの奴隷となって苦労し、老人のようになっていました。
彼の帰還で謎が明らかになるかと思いきや…

この28年間の出来事も、ヨハネスの口から数行語られるだけでして
フリードリヒやヨハネスが何を考えているかも分からない…
しかも! 真犯人が逮捕されたことが分かる場面もあっけないんですよ。
ミステリーでもなく冒険小説でもなく、ましてや恋愛もない。
小説と呼ぶにはあまりにもイマジネーションが欠如していると思います。

作者はグリム兄弟と親交があったということですが、童話とまではいかなくても
もうちょっと想像力を駆使して脚色をしてもよかったのではないかしら?
コメント (2)
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