まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

『12人目の妻』物足りないなぁ…

2009-04-29 01:21:14 | イギリス・アイルランドの作家

1931年 サマセット・モーム

3つの短篇が収められた小作品集です。
物足りない…3篇じゃモームの世界が堪能できないよ。

『創作活動(The Creative Impulse)』
極めて知的で芸樹的な作品を書く作家として社交界で花形のフォレスター夫人の
控えめで飾り物のような夫が自宅の女性コックと駆落ちします。
ふたりを訪ねた夫人は、夫とコックが下らないミステリーの愛読者だったことを知り
その上ミステリーを書くことを勧められ、呆れながらアパートを後にします。

ある意味鼻持ちならない妻がギャフンという様を嘲笑するムキもありましょうが
フォレスター夫人の “ 転んでもタダでは起きない ” 感じが笑える1篇です。

『変り種(The Alien Corn)』
必死でユダヤ人であることを隠そうとするアドルファス一家には
風変わりなエピソードで上流社会の人気をさらう叔父のファーディーがいます。
ファーディーと卿の息子ジョージが久しぶりに再会してからしばらくたつと
ジョージは出世の道を捨ててピアニストになると言いだします。

情熱と結果は比例しないという哀しい現実をつきつけられるような物語です。
ジョージは裕福に育ったせいで打たれ弱い男になっちゃったようですね。
最近そういうタイプの人は多いと聞きますが…

『12人目の妻(The Round Dozen)』
南イングランドの保養地でくたびれた男と出会い驚くべき経歴を聞かされます。
彼はオールド・ミスばかりを狙う重婚犯罪者で、すでに11人の妻を持っていて
あとひとりで1ダースの妻を持つことになると言うのです。
後日、同じホテルに滞在する老夫婦が連れて来ていた姪が突然いなくなりました。

いわゆる結婚詐欺師なのでしょうか? でもハンサムではなさそうです。
“ どうしてこの男が?” と首を傾げたくなるような男みたいなんですよ、重婚の男。
オールド・ミス専門というところがムカつきますねっ!

面白さは変わらないけど、植民地シリーズにくらべて小細工が多いような気が…
より作り話っぽくなっているという感じでしょうか?
それでもモームらしさはまったく失われてないと思います。

読者が良く知っている土地を舞台にするというのは、未知の世界を舞台にして
物語を書くより骨が折れそうですね? どうなんでしょうか?

モーム短篇選〈上〉岩波書店


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『12人目の妻』はこちらに収められています
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『たいした問題じゃないが』いちいちごもっともで…

2009-04-29 01:19:17 | イギリス・アイルランドの作家

ガードナー/ルーカス/リンド/ミルン

20世紀初頭の4人のコラムニストたちのコラムを抜粋してまとめた1冊です。

当時のイギリスの小説には新聞を読む紳士たちがけっこう登場します。
今の新聞のコラムは偽善的で各社横並びのような気がしてスルーしがちですが
新聞が真剣に、且つ隅から隅まで読まれていた時代のコラムって
どんなでしょう?と思いまして読んでみました。

新聞が情報源としてより重要な任務を担っていた頃ですから
時代の問題点を追求した語気荒いものかと思っていたら…あらら、わりとコミカルです。
コラム欄て万人に向けて持論を展開できるスペースだと思うのですが
当り障りが無い題材を扱っているものが多いようです。
週刊文春とか週刊新潮の連載コラムっぽい…
世の中を二分するようなテーマで議論を巻き起こすというようなコラムはありません。
(題名にも表れていますが、わざと選んでいないのかもしれませんね)

せいぜい議論の的になりそうなものは “ 南部(温暖地)より北部(寒冷地)の方が
怠惰になりがちで文化的に遅れている “ という部分と
“ 時間を厳守する人は臆病者だ ” という部分でしょうか?

コラムニストという職業はすでに確立していたようですが
やはりコラムのみで生計をたてているという人はいないようです。
本業に付随してコラムを書いているというパターンが多いみたいですね。

A・G・ガードーナーは伝記作家でジャーナリストですが、一番 “ コラム(評論)” という
態を成しているかな、という気がします。
記事や他のコラムから引用したり自分の体験を書いて、持論を述べるというパターン。
忘れ物とか「どうぞ」をつけるかつけないか?といった身近なテーマが多いようです。

E・V・ルーカスも伝記作家、旅行作家でジャーナリストです。
こちらはけっこう物語仕立てになっていて、誤植が招いた悲喜劇があったり
動物園のゾウが話したり、短篇小説といっても差し支えないものがありました。
少し皮肉が見え隠れ…という印象が一番強い気がします。

R・W・リンドは文藝評論家でジャーナリストです。
一番賛否両論ありそうなものを取り上げているのは(この本の中では)彼みたいです。
ちなみに上記の議論になりそうなネタはリンドによるものです。
◯◯だ!という断定口調も心地よい…アイルランド気質でしょうか?

A・A・ミルンは劇作家、小説家で童話作家、『クマのプーさん』が有名です。
やはり想像力がたくましいのか、新聞の三行広告や田舎の埋葬人記録から
勝手にストーリーを作り上げているものがいくつかありました。
真偽のほどは分かりませんが「そうかもしれない…」と思わせる筆力があります。

不特定多数の人たちが読むことを前提として、不快感を与えないように注意を怠らず
言っていることはだいたい正しい、あるいは分かる、という文章になっています。
えてしてつまらなくなりそうな内容ですが、そこはやはり人気コラムニストなので
そこそこ面白くはなっています。

だけど当時の世相がよく分かるという訳でもなくハッとさせられるという内容でもなく
特に感動もないので…何のために出された1冊かがよく分からないなぁ
この4人を一緒にして出版する意味があったのかどうだか…比較研究のためですか?
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スペイン王フェリペ2世妃 アナ

2009-04-29 01:11:06 | スペイン王妃・王女
激務の王に安息をもたらした王妃
フェリペ2世妃 アナ・デ・アウストリア


1549~1580/在位 1570~1580

イサベル・デ・ヴァロアを亡くした時、フェリペ2世は41歳でした。
悲しみに暮れていたとはいえ一国の王ともなれば後継ぎのことを考えなければなりません。

王太子ドン・カルロスも亡くなり、イサベルが生んだ王女イサベル・クララと
カタリーナ・ミカエラのふたりしか嫡子がいないというのはあまりにも頼りなく
大国スペインにとっては国家の一大事です。

そこでフェリペ2世はドン・カルロスの婚約者だった21歳のアナと
4度目の結婚をすることにしました。
これより前、フェリペ2世はイサベルの妹マルゴとの再婚を断っていますが
これは「もうフランスとはやってられねーよ」ということなのか
マルゴの不埒な噂が耳に届いていたのか、それともセンチメンタリズム?

アナの母マリアはカルロス1世の娘で、フェリペ2世は伯父にあたります。
教皇ピウス5世はこの結婚に異議を唱えましたが後に承認しました。
伯父はいいんだ…
     
アナは肖像画だとキツそうでクールな感じに見えますが
刺繍や裁縫など家庭的なことが好きな、大人しくて優しい人だったそうですよ。

フェリペ2世は “ 太陽の沈まぬ帝国 ” をつくりあげた王ですから
領土拡大のために戦ってばかりの人生でしたが
アナは、せめて城にいる時ぐらい王に寛いでほしいと
居心地がよくなるよう常に気を配っていたそうです。

また、幼くして遺されたイサベル・クララとカタリーナ・ミカエラを
我が子のように慈しみ、レディとして恥ずかしくないよう教育したそうです。
イサベル・クララはお年頃になると、アナの弟ネーデルラント総督
アルブレヒト7世と結婚しました。
子供は5人生まれています。(王子フェリペ以外は10歳までに夭逝)

フェリペ2世も中年にさしかかり(そりゃあイサベラも可愛かったでしょうけど)
彼女のような良妻に恵まれてホッとしたのではないでしょうかね?

1580年、フェリペ2世は隣のポルトガルも併合して即位し
アナもポルトガル王妃の座につきましたが、そのすぐ後に30歳で急死しました。
伝染性の病気でフェリペ2世も罹っていたのですが、アナだけが命を奪われました。
53歳のフェリペ2世は以後は再婚せず、71歳で亡くなりました。

フェリペ2世にも愛妾はいましたが、王妃をないがしろにすることはなく
王妃に非道な仕打ちをしたわけではないのに、なんだか妻運が悪いよね?
せっかくいい伴侶を得たと思っても、こうすぐに逝ってしまっては
だんだんメゲてきちゃいますよねぇ。

後継ぎの王子がひとり残ったことだけが、せめてもの救いでしょうか。

(参考文献 西川和子氏『世界の王宮とヒロイン(マドリッド王宮)』 wikipedia英語版)

世界の王宮とヒロイン 新人物往来社


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