1931年 サマセット・モーム
3つの短篇が収められた小作品集です。
物足りない…3篇じゃモームの世界が堪能できないよ。
『創作活動(The Creative Impulse)』
極めて知的で芸樹的な作品を書く作家として社交界で花形のフォレスター夫人の
控えめで飾り物のような夫が自宅の女性コックと駆落ちします。
ふたりを訪ねた夫人は、夫とコックが下らないミステリーの愛読者だったことを知り
その上ミステリーを書くことを勧められ、呆れながらアパートを後にします。
ある意味鼻持ちならない妻がギャフンという様を嘲笑するムキもありましょうが
フォレスター夫人の “ 転んでもタダでは起きない ” 感じが笑える1篇です。
『変り種(The Alien Corn)』
必死でユダヤ人であることを隠そうとするアドルファス一家には
風変わりなエピソードで上流社会の人気をさらう叔父のファーディーがいます。
ファーディーと卿の息子ジョージが久しぶりに再会してからしばらくたつと
ジョージは出世の道を捨ててピアニストになると言いだします。
情熱と結果は比例しないという哀しい現実をつきつけられるような物語です。
ジョージは裕福に育ったせいで打たれ弱い男になっちゃったようですね。
最近そういうタイプの人は多いと聞きますが…
『12人目の妻(The Round Dozen)』
南イングランドの保養地でくたびれた男と出会い驚くべき経歴を聞かされます。
彼はオールド・ミスばかりを狙う重婚犯罪者で、すでに11人の妻を持っていて
あとひとりで1ダースの妻を持つことになると言うのです。
後日、同じホテルに滞在する老夫婦が連れて来ていた姪が突然いなくなりました。
いわゆる結婚詐欺師なのでしょうか? でもハンサムではなさそうです。
“ どうしてこの男が?” と首を傾げたくなるような男みたいなんですよ、重婚の男。
オールド・ミス専門というところがムカつきますねっ!
面白さは変わらないけど、植民地シリーズにくらべて小細工が多いような気が…
より作り話っぽくなっているという感じでしょうか?
それでもモームらしさはまったく失われてないと思います。
読者が良く知っている土地を舞台にするというのは、未知の世界を舞台にして
物語を書くより骨が折れそうですね? どうなんでしょうか?
モーム短篇選〈上〉岩波書店 このアイテムの詳細を見る |
『12人目の妻』はこちらに収められています