まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

『マラマッド短編集』頑な人々の悲哀

2009-04-17 23:15:13 | アメリカの作家
THE MAGIC BARREL 
1958年 バーナード・マラマッド

単純にこの本から受けた印象だけを述べているので、怒らないで下さいね。
ユダヤ人の方々は頑固ですかね? そしてちょっと図々しいのかしら?

“ 頑固 ”という言葉を “ 我慢強い ” と言い換えてもいいのですが
じっと耐え忍んでます、登場人物たち。
“ 図々しい ” は文字どおりで、てこでも動かんぞ!何言われても気にせんぞ! と
いう姿勢に脱帽です(でも、なるべく関わり合いたくないかも…)
そんな図々しい人と我慢強い人のやりとりは、おかしくもあり哀しくもあり…
どちらかというと哀愁が漂っています。

収められている13篇中、10篇がユダヤ人の物語ですが
そういうことは関係なく特に好きだった物語をあげてみます。

『弔う人々(The Mourners)』
年金で慎ましく暮らす頑固な老人ケスラーは
アパートの管理人と仲違いしたばっかりに家主のグルーバーから立ち退きを迫られます。
断固として居座るケスラーは、とうとう家具ごと路上に放り出されてしまいました。

両隣のイタリア人母子とドイツ人夫婦が泣けるのよね。
ニューヨークの片隅で暮らす異国人たちの連帯感というのでしょうか。
友人が暮らしていたロンドンのフラットのイタリア人は…やめときます。

『夏の読書(A Summer's Reading)』
仕事をせずにぶらぶらしているジョージは、ある夏の夜の散歩中
カンタラザ氏に虚栄心から「夏の間に100冊の本を読む」という嘘をつきます。
翌日から街の人々の感じが良くなりいい気分になったジョージですが
どうしても本を読む気にならず、次第にいたたまれなくなります。

この物語は、ただ単に羨ましかっただけなのね。
何もしないで本だけ読んでりゃいい夏なんて…素敵すぎる。
でも実はもっと奥が深い物語です。

『魔法の樽(The Magic Barrel)』
ラビになるリオは結婚した方がいいと教えられ仲介業者サルマンズに依頼しました。
しかし彼が紹介する女性はどれも気に入りません。
ある日サルマンズが無理矢理置いていった写真の1枚に運命の女性を見つけます。
ところがサルマンズは、その女性だけは相応しくないと言い張ります。

もしかしたら策略かもしれないのですが、それでもいいじゃないの、と思えます。
サルマンズが可哀想すぎて… 私も営業やってましたのでね。
しかし仲介業者に頼むのがポピュラーというのはびっくりしました。

『借金(The Loan)』という、友人に借金を頼みにいく人の話しが好きなのですが
以前『アメリカ短篇24』で紹介していたので割愛します。

どの物語も、究めて現実的に、いやになるほど現実的に進んでいくのですが
最後の最後に「およ?」と終わるものが多々あり、それがちょっとむずがゆい。
それでも総じて面白く読める1冊でした。

「ヒットラー」「ナチスの焼却室」などの言葉もあって、時代的に無理もないですが
ユダヤ人のこの強い疎外感は他人の私が読んでいても辛くなります。
作中にも「どこへ行っても嫌われてばかりだ」と嘆く人が登場します。
50年ほど前の物語ですから今は違うと(そうあってほしいと)思いますが…

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