まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

『キプリング短篇集』天才たる由縁を探して…

2009-04-01 00:03:29 | イギリス・アイルランドの作家

ラドヤード・キプリング

読みづら~い
訳者橋本槙矩氏によると、かなり読みやすく訳したということですから
原文はどんなだか想像するだに恐ろしいですな。

キプリングで一番最初に読んだのが『旅路の果て』というインドを舞台にした短編で
植民地を目ざした英国人の苦悩が描かれていて面白かったものですから
期待して読み始めたのですが、ちょっとベクトルが違った気がします。

『めぇー、めぇー、黒い羊さん(Baa,Baa,Black Sheep)/1888年』
5歳のパンチと3歳のジュディはボンベイから帰国すると叔父の家に預けられます。
パンチはローザ叔母と息子ハリーに虐めぬかれ、学校でも、可愛い妹にも
バカにされるうちに、偽ることを覚えて無表情になっていきます。

人は虐げられるとどう変わってしまうのか? 興味深い1篇でした。
もちろん持って生まれた性格もあるのでしょうが、人格形成に周りの環境が
及ぼす力は大きいのかもしれないですね。

『橋を造る者たち(The Bridge Builders)/1893年』
ガンジス河に橋をかける公共事業に携わる英国人フィンドレイソンとヒッチコック。
もう少しで完成というある晩、河に洪水の兆しが見え始めます。
残された時間は6時間ほど。水夫ペルーが母なるガンジスの怒りについて語ります。

これは『旅路の果て』に通じるところがありました。
他人の国で行うインフラ整備や公共工事、こちらは善かれと思ってやっていても
土地の人がどれだけ感謝しているかは謎ですね。
そういえば、父が昔ゼネコンにいて、ダムとか高速道路とか造っていたのですが
台風だ、地震だというと家より現場を心配して飛び出して行ってましたねぇ…

『メアリ・ポストゲイト(Mary Pstgate)/1917年』
メアリがコンパニオンとしてミス・ファウラーに誠実に仕えてから11年。
軍隊に入っていたミス・ファウラーの甥が飛行中に死亡しました。
数日後町で少女が物置きの下敷きになって死にました。
メアリは敵の爆弾だと思いましたが、医者は物置きが崩れただけだと言います。
その後メアリは庭で墜落した敵機と負傷した兵士を見つけます。

敵というのははっきり書かれていないけどドイツかと思われます。
村上春樹氏の『遠い太鼓』に書いてあったような気がしますが
ドイツってすごく低空から爆撃してたんですってね?
そんなに愛情あふれる間柄だったとは思えないのですが、メアリは主人の甥の
復讐を企てます。 長年勤めたからこその行いだったのかしら?

キプリングは作家連には天才と言われたそうで、ヘンリー・ジェイムズあたりは
褒め上げてますが、未熟な私にはよく分かりません。
9篇収められていますが、ありがちな物語というのはひとつもないので
引き出しは多かったんだろうなぁ…と思います。

ただ短編にしちゃ話しの本題に入るまでが長いのよね…
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『カフカ短篇集』どうしよう?長篇・・・

2009-04-01 00:02:51 | その他の国の作家
ERZAHLUNGEN UND KURZE PROSA 
フランツ・カフカ

アヴァンギャルドなものや抽象的な絵画は苦手です。
むかーし、テートギャラリーに美大卒の友人と行った時、真っ白なキャンバスに
釘が刺してある絵があって「これのどこがいいわけ?」とたずねたら
「これが芸術だと言いきれるところまでもってきたのがすごい」と言われました。

なるほどって思いますか? 私は思わないのですがうっすらと理解はできます。
正統な基礎が認知されているからこそ、なんのこっちゃ? なものも
豊かな想像力による芸術だと認められる、ってことかしらね?

カフカは私にとってそんな感じです。
物語の始まりは面白く、一語一句も魅力的なのですが、話しが一般常識の粋を超えて
展開していくと理解できなくなってしまうのです。
まったく読み手である私の落ち度であって、カフカに責められる点はありませんが
万人受けするとは思えないなぁ…『変身』はかなり分かりやすい話しですけどね。

そんな中でも、私が比較的理解できたものをご紹介します。

『火夫(Der Heizer)/1912年』
女中を妊娠させてアメリカにやられることになった16歳のポールは
船の中で、虐げられていると嘆くドイツ人の火夫に出会います。
彼を助けようと船長室で熱弁をふるうポールに、ひとりの紳士が叔父だと名乗ります。

『アメリカ』という長篇の第1章にあたる物語です。
これは普通ですが読み進むと意外な展開になっていくのでしょうか?
『アメリカ』は持っているので今度チャレンジしようと思います。

『中年のひとり者ブルームフェルト(Blumfeld,ein alterer Junggeslle)/1915年』
寂しいので犬でも飼おうかと思案しながら帰宅したブルームフェルトは
部屋の中で楽し気に跳ね回るふたつのボールに辟易させれます。
翌朝ボールを振り切って会社に行くと、使えないふたりの部下がさぼりたい放題です。

ボールの部分と会社の部分がまるで別物のようなのですが…
ボールはボールで解決してほしかった、けっこうコミカルだったんですよ。
それなのに会社の部分でどんより暗い話しになってしまって…

『万里の長城(Von den Gleichnissen)/1920年』
万里の長城はなぜ区間分割工法がとられたのか?
君主制や中国の国民性、都会と田舎における皇帝への忠誠の温度差などをとりあげて
論究を試みています。

普通に読むと真面目な論文にみえますし、納得の部分も多いのですが
この1冊に収められていると、もしかして全部つくりごと? と思われてなりません。
歴史家が読んだら抱腹絶倒ものなのでしょうか?

気がついたらカフカも何冊か持っていた私… 『城』とか『流刑地にて』とかね。
短編でこんなことじゃ先が思いやられます
いつか読むつもりですけど、いつだか分かりません。
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