まりっぺのお気楽読書

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『灰色の輝ける贈り物』極寒の冬を纏った一冊

2014-02-07 02:34:11 | カナダの作家
ISLAND
アリステア・マクラウド

どこでどうして買ったのか、まったく覚えてないのですけれど
あったから読んでみました。
さ、寒いよぉ… まさに灰色の世界観です。

私は、たまに浮かれ気分を鎮めてしっとりしたい時などに
日々の生活のちょっとした煩いに苦悩する主人公像を想像しながら、本を読むのが好きです。
ウィリアム・トレヴァーとかハーディなんかが、ほどよく暗くていいのですが
この作家の暗さは、ちょっとベクトルが違う気がする…

作家の経歴によるものか、漁や炭坑などを題材にしたものが多いようです。
もちろん、どちらも危険な仕事だとは思うのですが
ハンパじゃない “ 死との隣合せ ” 感が充ち満ちています。

カナダの作家で、アリス・マンローと同じぐらい寡作らしいのですが
多作じゃなくて逆に良かった気がする…書く方もつらいでしょうが、読む方もしんどいわ。

8作おさめられています。
気になったお話しをいくつかご紹介します。

『帰郷(The Return)/1971年』
10歳の撲は、初めてお父さんの故郷ケープ・ブレトンを訪ねる。
お父さんは列車の中でも待ちきれない様子で、お母さんはあきれている。
大きな家に着くと、おじいちゃんとおばあちゃんは、お父さんが遠くの町で結婚して
嫁の実家の言いなりになっていることを責める。

この少年のお父さんは、都会に出て金融界で成功し、裕福な生活を送っています。
本当なら両親や兄弟姉妹に大歓迎されてもいいと思うのですが
この島の人間としては間違った生き方をしているみたいです。
親のそばで慎ましく生きるべきか、離れていても親が誇れる成功者になるべきか…
難しいわね… 親次第ってとこもあるし。

『秋に(In The Fall)/1973年』
もうすぐ父が出稼ぎのために家を発つという、11月の第2土曜日
母が、炭坑時代から父のそばにいる老馬スコットを売ると宣言した。
父も子供たちも反対だったが、母の言い分は理解できた。
そこへ家畜商人マクレイがやってきて、スコットはミンクの餌になると言う。

ドナドナ状態… でももっと残酷。
馬を売る決心をしたお母さんを責められないってことはわかるの。
わかるんだけど、どうしても悪役をつくらずにおかない人の世の悲しさ…
子牛でなかっただけが救いかしら? いや、老馬の方が哀れか?

『失われた血の塩の贈り物(The Lost Salt Gift of Blood)/1974年』
4000キロの旅を終えて最後の道に立つと、魚釣りをしている4人の少年と出会った。
そのうちの一人、ジョンを迎えに来た老人に連れられ、彼の家に向かった。
レンジの前にいた老婦人は、一瞬敵意を見せたが、思い直したようだ。

この旅人は、たまたまそのカナダの果ての家を訪れたわけではなくて、訳があるの。
私には、どうしてそうなるのぉ? というラストに見えたんですけどね。
どちらが子供にとってよいのかしら? 大人のエゴに思えましたが… 哀愁はあったけど。

特に冬に限定された物語ばかりではなくて、たぶん、夏の物語もあるのですが
読んでいて頭に浮かぶのは、冬の波が白い泡をたてて押し寄せる黒い断崖絶壁の風景。
寂しく寒い冬の情景なんですよね。

それ以外で印象に残ったのは、じれったさでしょうか?
そのじれったさは、登場人物の行動にイライラさせられるというのではなくて
どちらが、誰が、正解なのかがわからない、というもどかしさです。

もちろん、人生に完全な正解と不正解はないと思うのですが
小説に関しては、読者なりに正解をだせばいいものだと思っていました。
だけどこの一冊に関しては、どちらを選んでも、幸福かもしれないし不幸かもしれない、
どっちを選べばいい? ということが、想像の世界の中であれ決められなかったんですよね。
もっと人生を噛み締めた後で読んだら、もう少し理解できるのかもしれませんが…

アリステア・マクラウドは、新潮クレストから『冬の犬』という短篇集も出ているのですが
今のところ手に取る気になれないでいます。
暗いのはけっして嫌いじゃないんだけど、もう少しユーモアがほしいのね… わがままですか?

ひとことK-POPコーナー
録画してたTVKのPOP-PARADEを見たらCNBLUE特集だったんですけど
彼らはもはやアイドルではない気がする…ヴィジュアル抜きで十分カッコいいバンドに見えますね
 

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