まりっぺのお気楽読書

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『ニューヨークは闇につつまれて』不幸じゃない、幸福じゃない

2010-06-09 02:37:44 | アメリカの作家

アーウィン・ショー

私はアーウィン・ショーの本は4冊しか持っていないのですが
この本を読んでいて、『夏服を着た女たち』『緑色の裸婦』を読んだ時には
気がつかなかったことにハタと思いあたりました。

選者(常盤新平氏)があえて『夏服を〜』と差別化したのかもしれませんけど
ショーってユダヤ人だったのね、と初めて知った一冊でした。
他の2冊ではまったく触れていなかったのよね。

この本の中の『信念の証』という物語では、戦後のアメリカにおける
ユダヤ人であることの戸惑いと疎外感を描いています。
まさかアメリカで? と思ちゃいますけど…

『マラマッド短編集』を読んだ時に感じた頑さも思い出しました。

そういえば、ふたりは同時代の作家ですよね?
(ふたりの解説を読んでみた)え 1歳ちがい…しかもブルックリン育ち。
もしかしてお友達?
ブルックリン育ちであるということは、ふたりが物語を書く上において
共通するファクターになっているのでしょうか?

ショーが描いた愛すべき頑固な人たちの物語をいくつか…

『モニュメント(The Monument)』
レストランのバーの責任者マクマホンは、オーナーであるグリメットの
安い酒を仕入れたいという意見に断固「No!」と言いいます。
グリメットはとうとうクビを言い渡しました。
マクマホンはエプロンを外し、ジャケットを羽織り、棚から名札を下ろします。

いいですね! 自分の腕に確固たる自信がある男性。
たいしてできないくせに理屈ばかりを並べる人とはわけが違います。
そして、その腕の良さがちゃんとわかっているオーナーも良き経営者と言えますな。

『金曜日の夜の神(God in Friday Night)』
ソルは母親を訪ねて、やっと身ごもった妻ヴァイオレットのために
毎週金曜の夜、祈りを捧げてほしいと頼みます。
ヴァイオレットはお祈りに向かない女だし、自分はナイトクラブの芸人だから…と。

お母さんはね、お嫁さんが嫌いみたいでものすごくブツブツ言うんですよ。
でもやはり母親なのですね…律儀に祈りをあげてくれます。
この物語のラストはとても美しいです。

『レチェフスキー夫人の哀歌(The Lament of Madam Rechevsky)』
娘に有無を言わせず夫アブラハムの墓地へ連れて来てもらったレチェフスキー夫人。
娘を待たせて毅然とした態度で墓の前まで進むと、切々と生活の苦労を訴えます。
アブラハムは生前、王様のように贅沢に暮らしていました。

レチェフスキー夫人をただの愚痴っぽい未亡人と思わないで下さいね。
夫に対する彼女の “ 文句タラタラ ” には美学があります。
でも普段お付き合いするにはちょっとやっかいな方かもしれないんだけどね…

頑固な方がメインの3篇を選んでみましたが、他に8篇の物語が収められています。
この一冊にはたしかに暗闇が似合う気がします。
現に夜の物語が多いというのもありますが、煌煌と輝く摩天楼の裏側の薄暗さが
イメージしやすいお話になっています。

暗いからと言って不幸というわけではないんですよね。
ただ、ものすごくハッピーなわけじゃない…という感じでしょうか?
恋人がいる、そこそこ成功している、仕事はある、ありふれた人々が主人公。
テーマは、ちょっと軽口をたたきながら普通に生きている人たちにふと宿る不安、かな?

不幸な人をとことん不幸に書く方が、たぶん簡単だと思うんだけど…
ジャンル:
小説
キーワード
ヴァイオレット アブラハム マクマホン ブルックリン アーウィン・ショー ニューヨーク
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