まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
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『ディア・ライフ』引退するなんて言わないでね ・・・

2014-01-30 01:30:18 | カナダの作家
DEAR LIFE 
2012年 アリス・マンロー

日本人ですから、ノーベル賞の時期はつい村上春樹さんに注目してて
アリス・マンローがノミネートされていることも知らなかったのですが
受賞したと知って嬉しかった反面、不思議な気もしました。

あまり世界を揺さぶりそうな内容でもないし、前衛的でも政治的でもなく
テーマも文章も、極めてシンプルな作家だと思うのですが…
それが面白いから不思議なのよねぇ! 文才とはそういうものなのね。

発売を待ちに待っていた一冊でしたので、すぐ買って読んでみました。
14篇おさめれていて、最後の4篇は連作です。
全てが印象深いお話しでしたが、特に面白く読めたものをいくつかあげてみますね。

『安息の場所(Home)』
13歳の時、両親がアフリカに赴任中の1年間、叔父の家で暮らしました。
叔父は限られた人としか付き合わず、ぜったいに家に客を招きませんでした。
ピアニストである自分の姉の話もタブーでした。
叔父にぜったい服従の叔母が、ある日隣人と叔父の姉を招く決心をしました。

叔父さんが若干横暴な気がしないでもないですが
家庭内の小さなもめごとがテーマ、というお話しなんですよ、本当は。
なのに、この、ハラハラどきどきはどうしたことでしょう?
後半ものすごく怖くて鳥肌たっちゃったよ。

『プライド(Pride)』
オナイダ、通称アイダは、あまりにも金持ち過ぎて町の人々と交流がありませんでした。
銀行家の父親が金銭上の問題で失脚して亡くなった後
アイダが家を売りたいと相談してきました。
その後アイダはたびたび訪ねてくるようになり、夕食を共にする晩が増えました。

語り手は男性ですが、二人の間に恋愛沙汰のようなことはおこりません。
そのまま長い長ーい月日が流れていく物語なのですが、究極の恋愛小説に思える!
尽くして尽くされてというわけでも、いつも気づかっているわけでもない二人なのに
もう、ぜったい、結ばれなくちゃいけない! と思わせるお話しでした。

『列車(Train)』
戦争から帰還中のジャクソンは、列車から飛び降り、家とは反対の方向へ歩いていて
荒れ果てた農場の持ち主ベルと出会い、そのまま農場で暮らすようになりました。
長い時がたち、ベルに腫瘍が見つかりました。

恋愛小説だと思った方、違うんですよぉ。
ジャクソンは自由人で、考え方によっては、ものすごい薄情者です。
なんだけど、寡黙な働き者ジャクソンが、だんだん素敵に思えてくるんです。
そして最後はいい話に思えてしまうという… 不思議だ。

小説も売れたり話題になれば、映画化っていう流れになりそうですが
アリス・マンローの物語を映像にするのは、かなり難しい気がします。
ドラマになっているものもあるようですけど、見たことないからね。

なぜかというと、感情を表す場面があまりないんだよね。
違うな… はっきり「これ!」とわかる感情表現が、あまり多くない、という感じかしら?
嬉しかった、哀しかった、悔しかった、ムカついた、という大前提がなくて
俳優さんがどのように感情を表現すればいいというのでしょうか?

物語を読んで、自分なりに感じながら読み進めていくという読書独特のテンポが
とっても適している作家のような気がします。

それから、物語のスパンが、何年から何十年まで長いものが多いですね。
人間には、いくつになっても何かが起こり得るという希望を与えてくれます。
作者自身の年齢がそうさせている作風だとしたら、引退するなんて言わないで
まだまだ書いてほしい… と思うのは、読者のわがままでしょうか?

とりあえず、新潮クレストから出ている
『イラクサ』『林檎の木の下で』『小説のように』は全部読んだから、他のを探そう。
ノーベル賞効果で、まだ翻訳されていないものも日本で発売されると嬉しいですね。

独特のマンロー・ワールドが楽しめます
読んでみたいな!という方は下の画像をクリックしてね



ひとことK-POPコーナー
えー! KARAにつづきNine Musesも? 二人いなくなっちゃうの?
好きだったんだけどなぁ… 9人じゃなくなるけどどうするんでしょう?

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