朝の通勤途上で、黒のワンピースを着たスラリとした若い女性がさっそうと前を歩いていた。
左の肩から斜めがけでショルダーバッグを掛けている。大きくはないが厚みのあるバッグ本体が体の右側にある。バッグは体と右腕の間に挟まれた形で、そのため右腕が体から45度の角度で右側に突き出されている。その右手の先には火のついたタバコが挟まれ、火先は外側へ向けられていた。
そう広くない歩道を左寄りに歩いている。美女かどうか確かめるには右側を追い抜くしかない、だけどタバコの火が怖い。すれ違う人も複雑な表情をしている。
念入りに服を選び、化粧をして家を出てきたのだろうが、気遣い、心遣いはゼロ、まったく魅力を感じることはない。まことにかっこ悪い。
美女だったかどうかは結局分からないままだった。