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SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「パラレルライフ」

2010年07月28日 | 映画(ハ行)

 韓国のクライム・サスペンス。SFに出てくるパラレルワールドとは違う。

 別の時代の別の人物がまったく同じ運命をたどることを意味し、作中ではリンカーンとケネディの例が引かれ、登場人物の教授が書いた「平行理論」なる著作が出てくる。

 前半は、スリラーのタイトルバックに出てくるようなフラッシュバックと揺れを多用したショッカー狙いの映像がやたらと目立ち、物語の鍵となる殺人事件の描写があいまいで筋がつかみにくい。脚本と演出がスッキリしていないのだ。

 が、後半になるにつれてパズルのピースが一つずつそろうように、だんだん良くなってくる。

 30年前のある人物の運命を主人公がそのままなぞるのか、あるいはどこかでそれとは異なる展開になるのか、というサスペンス+殺人事件の犯人は誰か?の謎解きで見せてくれる。
 実は・・・という30年前の事件の真相も絡み、なかなか複雑な構成ではある。

 日本では「宮廷女官 チャングムの誓い」でおなじみのチ・ジニが主人公を演じるほか、「チェイサー」で驚愕の犯人を演じたハ・ジョンウが出ている。

映画 「パーマネント野ばら」

2010年06月11日 | 映画(ハ行)
 バツイチ女性が子供を連れて故郷の母親の元で暮らし始める。その日常をほのぼのと綴った映画、と思うと見事に裏切られる。

 まず、ほのぼのとは言い難い。美容室に集まるオバさんたちは生命力にあふれ、ある意味では男以上に精力的で、下ネタ話に花を咲かせている。それにしか興味がないという風情だ。

 そんな中でヒロイン菅野美穂のロマンスが人知れずに進んでいく、・・・かのようだ。ところがストーリーがどこかで変調をきたし、何かが少しずつずれていくような違和感に満たされる。

 そこから物語はまったく別の輝きを持ち出し、この港町の人々の暖かさと、ヒロインの運命の切なさが胸に染み出す。

 この、物語の変調、すでにどこかにあった。と思ったら今年になって見た「今度は愛妻家」がまさにこのトーンの映画だった。どちらもいい。どちらも切ない。

 江口洋介もなかなか良いです。

映画 「ヒーローショー」

2010年06月01日 | 映画(ハ行)

 暴走してしまった暴力の、あまりの結果に立ち尽くしてしまう青春群像が描かれる。

 凄惨な行為の顛末がリアルで、彼らの日常と対峙させた時、そうなってしまったことへの後悔がヒリヒリと観客にも伝わってくる。

 どうしようもない極道だから暴力の対象になっても良いのか?という疑問を突きつけられる。それほどの容赦ない暴力行為なのだ。

 しかし、その極道の「ゴキブリのような生命力」はあきれるばかりで、それがこの映画を単なる凄惨な暴力映画ではないものにしているのも面白い。

 若手芸人・ジャルジャルを初めて知ったが、お笑いの世界の住人はこの映画に限らずシリアスな作品でよい味を見せてくれる。

 暴力行為の描き方で誰にでも勧められる作品ではないが、日本映画の力作であることは間違いない。

映画 「僕たちのプレイボール」

2010年05月26日 | 映画(ハ行)

 チケット窓口で「僕たちのキャッチボール」と言ってしまい、「僕たちのプレイボール」ですねと確認されてしまった。失笑。

 野球のリトルリーグを描いた70周年記念作品になっている。そういうリーグがあることを初めて知った。

 ラストのクレジットがメイキング映像になっており、役者も随分頑張ったことがよく分かる。が、本編にそれが感じられない。脚本イマイチ、演技イマイチ、でもそれを十分に挽回できるはずの編集がまたイマイチという印象なのだ。

 しかし実に素直なつくりで、青春の「あの頃」を誰もが思い返すに違いない。若い選手役の群像をベテランが脇で固めている。

 昔、小学校の講堂で時々やった映画鑑賞会の雰囲気が頭に甦った。なるほど文部科学省の選定映画なのだ。

映画 「フェーズ6」

2010年05月14日 | 映画(ハ行)

 致死ウィルスの蔓延からかろうじて生き残った4人の男女の終末への旅が描かれる。

 感染系の作品だがゾンビ型ホラーには向かっていない。感染者は死ぬのみで他者を襲うことは無い。したがって、空気感染、接触感染などの可能性を徹底的に排除していれば、とりあえずは大丈夫そうだ。

 人間はいつかは死ぬ運命だが、どのような状況下でもいつ、どう死ぬかは大きな問題だ。

 4人は兄弟とガールフレンドという設定である。向かう先は兄弟が幼い頃訪れた海辺の廃墟だ。隔絶された地で病の収束を待つ、という儚い望みに賭けている。

 「約束の地」を目指す文学的詩情も漂う中で、終末の光景が静かに描かれる。

映画 「パラノーマル・アクティビティ」

2010年04月13日 | 映画(ハ行)

 悪魔つきの映画。低予算ながらとても真面目に撮られている。

 ヒロインは幼い頃から悪魔に魅入られていたらしい。変な音が聞こえたりとか、些細だが不思議な出来事が昔からずっと起こっていたことが語られる。

 悪魔はそれを探ったり、排除しようとすると気分を損ねるらしくだんだん凶暴化してくる。

 何とかしてあげたいと思ったボーイフレンドの行為が、それを煽ることとなった。怪異現象を調べようと彼が撮影した約3週間のビデオ映像を編集したのがこの映画、という作りになっている。

 主役二人以外には超常現象に詳しい研究者が相談に乗る形で登場するが、彼は幽霊の専門家で悪魔については分からない。そういう違いも知識として学ぶことができる。

 悪魔祓いの映画ではないので、エクソシストは登場しない。ヒロインがいかにして悪魔にとり憑かれていったかを記録した映画なのだ。恐ろしい。

映画 「ハート・ロッカー」

2010年03月26日 | 映画(ハ行)

 アカデミー作品賞受賞作。

 キャスリン・ビグロー監督作品はジャミー・リー・カーティス主演の「ブルー・スティール」からのお付合いで、これも骨太のアクション映画だったが、女性警官を主人公にしたところにまだフェミニンが感じられた。

 今回は実に男臭い映画で、よくまあこの作品を監督できたと恐れ入った。硬質の、戦争に関わる精神のありかを掘り下げた作品に仕上がっている。

 イラクの爆発物処理班の話だ。防御服を着用しても安全が確保されるわけではないことが冒頭のエピソードで示される。その後任として主人公がやってくる。いつも死と隣り合うことがもたらす感覚麻痺の世界だ。

 しかし、興行性からいえば地味だ。「アバター」の比ではない。おそらく今回の受賞がなければ足を向けない層も多いだろう。

 そういう意味で、これを作品賞に選べる米アカデミーはたいしたものだと思う。

 「ハート」は心(heart)ではなく傷・苦痛(hurt)の方であり、タイトルは軍の隠語で「苦痛の極限地帯」「棺桶」の意味だそうだ。

映画 「パレード」

2010年02月26日 | 映画(ハ行)

 登場人物それぞれに視点を据えた章立てでオムニバスのように構成されている。

 どうと言うことの無い若者の日常スケッチのようだが、彼ら4人は一戸のマンションのをシェアしており、そこに新たな一人が加わる波紋が描かれる。

 互いに干渉せず波風を立てない、均質な仲良しグループのような社会が形成されている。そこには多分ストレスが内包されており、壊れるきっかけを待っているのだ。

 「均質」が壊れ、格差と差別が生まれる瞬間、ラストの視線の交錯が怖い。

 テイストはまったく異なるが、一人の来訪者によって家族が崩壊していくパゾリーニ監督の「テオレマ」を思い出した。

映画 「バレンタインデー」

2010年02月19日 | 映画(ハ行)

 バレンタインデーをめぐる、よくある群像劇。

 オールスターキャストだが軽い小話風で微笑ましく、安心して見ていられる。誰かと誰かが思わぬところでつながっていたことが分かるサプライズも用意されている。

 数あるエピソードに「ちょっとイイ話」がないので、登場人物の誰かに共感を覚えることはない。そこが「軽さ」と言うべきか。

 個人的には同じ趣向の「ラブ・アクチュアリー」の方が「見て良かった度」は高い。

 それにしても、アメリカのバレンタインデーがクリスマス並みのこんなに大きなイベントになっているとは思わなかった。

映画 「母なる証明」

2009年11月25日 | 映画(ハ行)

 ウォンビンのスクリーン復帰第1作となる韓国映画。複雑で難しい役に挑戦している。普通のアイドルなら尻込みしてしまう。

 貧困の中に生きる母一人、子一人の濃厚な家族愛が描かれる。息子は精神に障害があり、それゆえに完全に母の庇護の元にある。二人は一心同体である、と母の台詞でも語られる。

 が、息子の頭には時折記憶が戻り、母親に対する感情は愛憎相半ばしているらしいことも分かってくる。

 庇護下から羽ばたき出ようともがく息子が出会う殺人事件の顛末。息子に振りかかった冤罪を晴らすべく行動する母親独自の捜査が行き着く、なんともやるせない結末に観客も呆然としてしまう。
 冒頭に、ススキの原で舞う母親の不思議な表情の謎が解ける。

 しかし、すべてを飲み込んで新たな生の第2章に向かう、母親とは強い存在だ。