goo blog サービス終了のお知らせ 

SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「ホノカアボーイ」

2009年09月28日 | 映画(ハ行)

 雨の後に見える虹はレインボーだが、本作は月の光の中に現れる虹、ムーンボーが見えるというハワイ島の村ホノカアが舞台。

 この地名からして、すでに癒し系の響きがある。

 こののどかなホノカアの村の、のどかな映画館に映写技士として雇われる主人公のレオを岡田将生が演じる。

 なぜホノカア村なのかと言えば、たまたま主人公がガールフレンドと旅をしたのがこの地だったから。分かれて当然という嫌な感じの女の子を、蒼井優がホントに嫌な感じに演じて見事。

 ホノカアに暮らす、倍賞千恵子演じるビーさんという日本人老女とレオの出会いの物語で、親子と言うよりは祖母と孫のような関係だ。レオとビー、ライオンとミツバチの話である。

 ほほえましく緩いハワイの田舎生活ながら、老いと孤独、病と死、若い男性に対する老女のときめきと嫉妬などがキチンと描かれ、深みを感じさせる。

 端正な佇まいの好編だ。

映画 「ファーストフード・ネイション」

2009年08月06日 | 映画(ハ行)

 ハンバーガー・チェーンの食肉汚染に関する群像劇だ。

 コストをいかに安くするかで、相当な無理をしているという話だ。結局人件費の削減に尽きるので労働力の安いメキシコからの不法労働者をそれと知りながら雇い入れるという構図になっている。

 国境地帯はかなり危うい場所のようで、映画にはしばしば取り上げられている。

 その労働者、バーガーチェーン本社、学生の環境保護グループらが絡み合う群像を構成する。

 ゲストスターが豪華でブルース・ウィリス、イーサン・ホーク、クリス・クリストファーソンらがチラッと顔を見せる。

 日本のバーガー店は大丈夫なのかと見ていて心配になってくる。

映画 「ホルテンさんのはじめての冒険」

2009年07月28日 | 映画(ハ行)
 
 めったに見ることのないノルウェー映画。フィンランドのアキ・カウリスマキ監督の作品もそうだが、北欧の空気感が不思議に懐かしさを覚えさせる。

 勤勉実直な鉄道員ホルテンさんの日常が、定年退職最後の出勤日の遅刻から奇妙にねじれてくる。怪奇趣味の不条理劇として描くことも出来そうだが、そうはならない。

 ゆったりとしたリズムの中でユーモラスに人情が描かれながらも、人生の終着点に横たわる老いと死がかいま見える。

映画 「ブッシュ」

2009年06月05日 | 映画(ハ行)

 オリヴァー・ストーン最新作でジョシュ・ブローリン主演、というので強烈なパワーで前大統領の狂気をあばきたてるのかと思ったら、むしろおとなしく、誠実に描かれている。

 マイケル・ムーアのドキュメンタリーが馬鹿さかげんを強調したのとは対照的だ。

 「ブッシュ家」という家の重み、優秀な父、父の期待を集める弟、と周囲の重圧に翻弄される中で、やはり大統領になるだけの人物なのだから、人を惹き付ける魅力も巧みさも持っている。

 「大統領の仕事」は執務室の集団作業だということが分かる。しかし、その結果に対して全責任を負うのは大統領個人なのだ。

 石油採掘のアルバイトでは嫌ならハシゴを降りることが出来た。でも大統領にはそれが出来ない。上ったところでハシゴを外されたら・・・。イラク失政はまさにそれだ。

 所々で挿入される野球場の場面が象徴的だ。大きなフライを取ろうと構えているのにいくら待ってもボールが落ちてこない。途方もない困惑・・・、がラストシーンだ。

 それにしても原題の「W.」一文字で、アメリカ人はすぐにブッシュの事だと分かるのだろうか?

映画 「PARIS パリ」

2009年06月04日 | 映画(ハ行)

 セドリック・クラピッシュ監督作品で、パリに暮らす人々の人生模様を描く群像劇。

 ジュリエット・ビノシュとロマン・デュリスの姉弟が主軸となる。姉の家族が心臓病で余命いくらもない弟と同居を始める。外出も出来ない弟がアパートのベランダから眺めるパリの人々の生活が描かれる。

 つまらない日常の一コマも、生きたいと願う、死に行く者の目にはたまらなく愛おしく美しいものに映る、その視点を観客も共有する。

 エッフェル塔の下にたたずむパリの景観が憂愁の気配を見せる。

映画 「ブレス」

2009年04月14日 | 映画(ハ行)

 キム・ギドク監督作品。

 台湾の俳優チャン・チェンが主役の死刑囚を演じている。

 死刑を待つ身でありながら自殺願望があり、未遂事件を何度も起こしている。それも咽喉を突くものだから発声できなくなっており、台詞は一切ないという難しい役どころだ。

 夫婦生活に悩む主婦がたまたまニュースで知り、昔の恋人と偽って面会に訪れるという異様な設定が基調となる。

 面会の中身がまずあり得ない。それをすべてモニターしている監督官がすべてをコントロールしている設定もあり得ない。という無い無い尽くしだがそこに何らかの寓意が込められているのだろう。

 しかし、それを一般の観客に理解させるというには、やや突き放した描写で面食らってしまった。

 が、キム・ギドクという監督がただものではなく、今後も目を離せないという事実には変わりが無い。

映画 「ファウンテン 永遠につづく愛」

2009年04月02日 | 映画(ハ行)

 ヒュー・ジャックマンとレイチェル・ワイズ主演の詩的な作品。

 時空を越えたラブストーリーにからめて生命の神秘を描こうとしている。

 アダムとイヴの話に禁断の果実=リンゴの樹が出てくるが、エデンの園にあったもう一本の樹=生命の樹が全編のモチーフになっている。

 3つの時空の間を話が行き来する複雑な構成で、美しい神秘的な映像に溢れている。

 本作のような映画に接すると、厳密な意味で話の筋を追うことは無意味に思えてくる。読書に例えると小説を読むというより詩を読む印象に近いかも知れない。

映画 「ボーダータウン 報道されない殺人者」

2009年03月04日 | 映画(ハ行)

 知られざる社会悪を告発するという姿勢で製作されたシリアスな作品。

 キャリア・アップのために事件を取材をすることになったヒロインの記者・ジェニファー・ロペスを、アントニオ・バンデラスとマーティン・シーンがいつにない地味な役で支えている。

 舞台はアメリカと国境を接するメキシコの町。大国の繁栄を支えるために隣国の貧しい人々が犠牲になっている。

 権力の腐敗を告発するジャーナリズムという構図も、記事を葬ることで約束される未来にヒロインが背を向けることも、この種の物語としてはありきたりかも知れないが、ここに描かれた事件の深さは恐ろしい。

 これまで闇の中にあったある事実を映画が告発することの意味は大きいはずだ。

 特別出演のカリスマ的人気歌手、フアネスが劇中のパーティで歌う姿を見ることが出来る。

映画 「ベンジャミン・バトン」

2009年03月03日 | 映画(ハ行)

 ブラッド・ピット主演、デヴィッド・フィンチャー監督の最新作。

 アカデミー賞13部門でノミネートされていたが、美術賞と視覚効果賞のみに終わった。しかし、見応えのある「十分満足」の一作であった。

 フィンチャー監督の作品はいつも視覚的な豊穣さを感じさせるが、本作ではこれまでの尖がり感が消えうせ、優しさといとおしさを感じさせる。素晴らしいストーリーテラーだ。

 会話で語られるちょっとしたエピソードやたとえ話までがすべて映像になっている。ヒロインのケイト・ブランシェットが事故に遭う顛末が、「風が吹いたので桶屋が儲かった」風に語られるのだが、もし風が吹かなかったら桶屋は儲けなかったのだが、風が吹いたので儲けましたとさ、というふうに贅沢な映像になっている。(何のコッチャ?の人はぜひ見てみてね!)

 人の一生は振り子のようなものだ。死は生まれる前にいた場所に再び帰ることを意味している。
 赤子から振り出して青壮年をピークにまた老年期、振出しへと戻って一生が終わる。これをたまたま逆に振り出してしまった男の話なのだ。

 一般の老人は年をとって徐々に記憶が薄れていく。大人の体で記憶は幼児だから正常な人からは違和感がある。ベンジャミンの老後は「幼児の記憶力を持つ幼児」としてある。だから違和感はないものの、人生の記憶をなくしていく姿は切ない。

 彼の人生を彩った多くの人々も忘れがたい印象を残す。

「ハイスクール・ミュージカル/ザ・ムービー」

2009年02月13日 | 映画(ハ行)

 原題は「HIGH SCHOOL MUSICAL 3: SENIOR YEAR」。
 1と2はTVムービーとして製作・放映されており、本作は初の劇場公開版ということで邦題は「ザ・ムービー」とうたっている。

 歌って踊っての青春ミュージカルであり、学園生活が華やかにショーアップされている。冒頭、大差で負けているバスケ試合の後半が突然ミュージカル攻撃になるので、そんなスタイルに慣れていない相手は逆転されてしまう。

 学園イベントにクラスのミュージカルが参加することになり、地の部分のミュージカルとステージ・ミュージカルの練習、本番が重層的に構成される。イベントは他の参加もあるのだろうがすべて割愛、このクラスしかないかのように話は進む。

 学園最後の年で、進学に揺れる心情が地のストーリーとして薄い味をつけている。

 親の言いなりになりたくないからと、バスケも舞台芸術も視野に入れ恋人の進学先からも遠くない大学に、という現代っ子らしい選択で幕。やや安直ながらも、そんなことに目くじらを立てる種類の映画ではないから、素直に歌と踊りを楽しもう。

 もうハイスクールは卒業なので、ザック・エフロン=トロイの大学生活を描くか、下の世代でハイスクール路線を継続するか製作陣の悩みどころだ。