リバースムービーと呼ばれる時制形の作品。
同じ形式の「アレックス」は「時間がすべてを破壊する」というテーマで凄まじい破壊の風景から至福の過去へ遡ったが、本作はもう少し穏やかでしみじみ、切ない系である。
アルバムを後ろからめくっていくようにその時々の思いがうまく切り取られている。ただし、そこはフランソワ・オゾン流、さりげない毒が混ざっている。
逆もまたしかり、毒(POISON)の中にはオゾン(OZON)がいる。
エリック・ロメール監督の「緑の光線」(1985)では、見た人を幸福にすると言われる「日没の最後の一瞬に見える光」を愛する人と共に見ることを夢見る女性が描かれていた。そのとおりならラストシーンはまさに至福のハッピーエンドといえる。
ただ、未来を知る神の目を与えられた観客には、夕日が美しければ美しいほど切なく見えてくる。