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SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「D-WARS ディー・ウォーズ」

2008年12月12日 | 映画(タ行)

 東洋的な神話ストーリーが現代アメリカの近代都市で展開する。

 「300」+「ジュラシック・パーク」あるいはLAの「ロード・オブ・ザ・リング」とでもいった味わいだ。

 ストーリーの甘さについて、まあ神話なんですから・・・で厳しいことを言わなければ怪獣の都市破壊の凄まじさは中々の見ものだ。

 500年に一度出現するドラゴン・ストーリーで、現代ロサンゼルスの500年前の話が韓国を舞台に解説的に語られる。主人公達はその輪廻転生で、同じ運命を背負って再び500年後のアメリカに生を受けたことになる。

 あまり硬いことを言わずに怪獣軍団を楽しめる人にはもうけものの作品だ。何と韓国映画なのだ。ラストにはアリランの曲が流れる。

映画 「たみおのしあわせ」

2008年11月10日 | 映画(タ行)

 予測不能の展開、というのはこういうホノボノ系映画には無いと思っていた。

 配役は豪華。オダギリジョーと原田芳雄の父子に小林薫の叔父。麻生久美子、大竹しのぶの主役系女優陣+石田えり、冨士眞奈美、携帯電話魔の変な男に忌野清志郎と賑やかでユニークでおかしな面々。

 奥手の息子の恋愛話かと思っていたら突然の江戸川乱歩系の怪奇風味が押し入ってくる。不倫話風の味付けを乗り越えてようやく挙式、と思ったら突然の「卒業」。男同士の式場脱走がラストの幻想シーンに突入して幕。

 劇場に明かりが灯ってようやく、これは細部のリアリティの可笑しさを追求した現実的映画の範疇にある作品ではなかったのだと気付く。その奇妙なファンタジーを楽しめれば面白い日本映画が誕生したと言えるだろう。

映画 「大統領暗殺」

2008年09月25日 | 映画(タ行)

 原題は「DEATH OF A PRESIDENT」であり、A PRESIDENTだから誰と特定はしないようなニュアンスだが、内容はずばり「ジョージ・ブッシュ大統領の暗殺」である。

 ドキュメンタリー映画を見ているようなリアルな作りで、現実のニュースフィルム、フィクションとしてのインタヴューなどがたくみに構成されて暗殺の謎に迫っていく。

 真相は結局「藪の中」で最後まで分からないのだが、政治的な意図で利用しようと暗殺者を名乗る声明が次々とマスメディアに登場するなど、見ていてフィクションとリアルの境界が分からなくなり、ケネディ暗殺の記憶もダブってくる。

 それにしても現職大統領をネタに良くこんな映画が作れるものだ。ブッシュに関してはマイケル・ムーア監督のドキュメンタリーで徹底的にサカナにされているが、それよりは遥かに好意的に描かれている。「死者」に対する敬意なのだろうか?

 アメリカ映画ではなくイギリス映画だ。

映画 「ダークナイト」 ~ ナイトはknight

2008年08月25日 | 映画(タ行)

 ひたすら悪魔(devil)に近い純粋な悪(evil)が登場する。「ハンニバル」級の悪役がアメリカン・コミックの映画化で登場するとは思いもしなかった。

 光と闇の対決がファンタジー映画ではないリアルさで描かれるが、「光」はダークサイドに飲み込まれてしまうという異例の展開だ。
 最終的に悪を滅ぼすのも正義のヒーローではない、という逆説的な構造で、バットマンがいるから新たな悪が生まれてくるという、クリストファー・ノーラン監督らしい屈折がある。

 仮面を脱いでも分厚いメイクで、悪役ヒース・レジャーの素顔は最後まで出てこないまま、これが遺作になってしまった。

 ヒーローとは何かを作品自体が問い掛ける形となったが、たまたま同時期の公開となるウィル・スミスの「ハンコック」もコメディタッチながらで同じテーマを扱っているのが興味深い。

 単純明快なヒーローものは屈折した現代においてはもはや受け入れられないのか?

 ラストでようやく、タイトルがゴッサムシティの暗い闇夜を意味するのではないことが分かった。

映画 「ダイブ!!」

2008年07月04日 | 映画(タ行)
 飛び込みに打ち込むスポ根ものの青春映画。「ウォーターボーイズ」や「スウィングガールズ」同様に主人公たちは実際に技を訓練、マスターした上で撮影に臨んでいる。

 練習したからといって果たしてモノになるかどうかは分からないのに、危険を伴う種目をちゃんとモノにしているところが役者魂の鏡のようだ。

 芝居の演技部分はともかくとして、飛び込み技術に関しては主役3人が本当によく頑張ったと思う。それだけにもったいない。映画としての完成度がWBやSGほど高くないのだ。

 主役を演じる林遣都の家庭のエピソードや家族の配役にまったく魅力が無い。高校生役の溝端淳平にいたってはまるで所帯を持っているような描き方で家族や学校はどうなっているのか分からない。

 それでもラストの選考会は見所としてじっくり見せるのだが、結果があんなに理想的に、まるで世界に飛び込みをやっているのはあの3人しかいないように決着してしまって良いのだろうか?

 原作ものを原作どおりに撮るのか、原作は原作・映画は映画にするのか、製作者には悩みどころなのだろう。

映画 「つぐない」

2008年05月12日 | 映画(タ行)
 10年に1本の、かどうか分からないが、最近まれな秀作。

 演技もカメラも音楽もすべてがコントロールされ、あるべき位置に収まった完璧なフィルムだ。

 主人公の少女を3人の女優が演じるが、晩年のヴァネッサ・レッドグレーブが圧巻、さすがの存在感を示している。想像力豊かで多感な少女がいかにして他人を傷つけ、その生涯のテーマとした「贖罪」をいかに果たしていくかが綴られる。

 長回しのカメラで捉えられた戦場の圧倒的に豊かな映像、映画としての語り口など、至福の映像体験を味わえる。

 全体が女性の最後の著作に語られた「書き物」の映像化であったことを、タイプ音をモチーフにした音楽が表現していたのだと、観客は最後に知ることになる。

 悲劇の恋人たち、キーラ・ナイトレイとジェームズ・マカヴォイも美しいし、キーラの妹役のシアーシャ・ローナンも多感で微妙な年頃の息遣いをスクリーンから発散させている。

 バネッサ・レッドグレーブは「いつか眠りにつく前に」に次ぐ作品だが、あいかわらず見事な「老人力」を見せてくれる。

映画 「タロットカード殺人事件」

2008年04月17日 | 映画(タ行)
 ニューヨークとの決別後、ヨーロッパに舞台を移したアレンの新作。系譜としては前作「マッチポイント」に続くミステリーだが、ロマンチックコメディの色彩が強い。アレン自身が出てくると、もうそれだけで絶対にシリアスにはならない。

 アレンの作品には時々超常現象が出現するが、これもその一つ。ゴースト・ストーリーでもある。

 箱の中の人が消失するマジックは、スコセッシ+コッポラ+アレン3大監督の超豪華オムニバス映画「ニューヨーク・ストーリー」のアレン編にも登場している。本作とはかなり近い位置関係にある作品だ。

 この時アレンは母親と一緒にマジックショーを見にきた観客であり、客席から舞台に上げられ箱の中で消失するのは彼の母親である。で、消えてどこに行ったかはステージ上のマジシャンも困惑してしまう超常現象として処理されており、映画を見ている観客も「そんなのあり?」状態であった。
 
 新しいアレンのミューズ=スカーレット・ヨハンソンが前作に続いて主演している。マッチポイントの毒婦が今回は可憐な女子学生だ。アレンも楽しんで作っているようでタッチは軽く、いわゆるミステリーとしてはコクが無い。

 結末としては、実は違った・・・というハッピーエンディングに持っていったら良かったと思う。アクション映画では想像できなかったヒュー・ジャックマンの新たな魅力を生かすためにも。

映画 「ダージリン急行」

2008年04月16日 | 映画(タ行)
 三兄弟の極彩色インドの旅を綴るロードムービー。

 冒頭、すでに発車した列車を追う旅の男を追い越して次男が飛び乗り、映画はスタートする。脱落する旅の男にウェス・アンダーソン監督作品常連のビル・マーレーが扮しているのは愛嬌か?前作から今回は出番の無い本作へのバトンタッチのようにも見える。

 三兄弟は長男オーウェン・ウィルソン、次男エイドリアン・ブロディ、三男ジェイソン・シュワルツマン。まったく似ていないが大きく特徴的な鼻だけは共通している。

 ウェス・アンダーソン監督作品は日本公開作に関する限り「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」「ライフ・アクアティック」に次ぐ3作目だがいずれも気心の知れた仲間と楽しんで作っている雰囲気がよく伝わる。いわゆる「緩さ」が持ち味だ。それを退屈と取るか癒しと取るかで評価は違ってくるだろう。

 今回は脚本にロマン・コッポラが参加、同じく脚本にも参加した三男役のジェイソンはその従兄弟に当たり、「マリー・アントワネット」ではルイ16世をやっていた。いわば本作はアンダーソン一家とコッポラ・ファミリーの合作といえる。

 本編に先立って短編「ホテル・シュヴァリエ」が上映されるが、タイトルではこちらがPart1、本編がPart2とクレジットされている。Part1はパリのホテルの1室でのエピソードで、三男ジェイソン・シュワルツマンとその恋人(だった?)ナタリー・ポートマンの2人芝居だ。ナタリー・ポートマンはPart2冒頭のビル・マーレーとともに映画の後半でもワンシーンだけ幻想的に登場する。

 ウェス・アンダーソン監督3作の中では一番面白く見ることが出来た。

映画 「デッド・サイレンス」

2008年04月08日 | 映画(タ行)
 腹話術をモチーフにしたホラー映画。当然腹話術人形が出てくるが、これが不気味だ。

 冒頭のタイトルバックで人形の制作課程がいかにもホラー映画らしく描かれ、腹話術氏が書きとめたノートの中に「完全な人形」というメモが見える。 

「完全な人形」とは何か?「人形」は人の形なのだから、「完全な人形」は限りなく人間に近い・・・ということになるだろう。それが何を意味するのかが衝撃のラストとなる。

 話自体は復讐劇だ。日本の幽霊ものならジワジワと心理的に追い込んで復讐を遂げるところだが、こちらは「目には目を」のスタイルで直接的だ。ただ復讐する側が生きた人間では無いために話としてはホラーになってくる。

 それはあり得ないだろうという状況も、霊が絡むと「あり」だ。その分、脚本としては書きやすいのかもしれない。

 被害者は一瞬にして舌を食われ、そのためアゴが外れて惨い顔になってしまう。美人の女優さんにとってはやや酷だ。

映画 「テラビシアにかける橋」

2008年01月31日 | 映画(タ行)
 児童文学の映画化だそうだ。だが、子供だけに見せておくのはもったいない。

 ファンタジー映画だがその空想世界が舞台ではない。子供が生きているのはむしろ辛い現実の世界で、描写もそこがベースとなっている。子供なら誰でも経験のある「ごっこ」遊びの世界だ。心の扉を開くことで、そこが極めてリアルに立ち現れてくる。

 親と子、兄と妹、友達、いじめという現実世界が、ファンタジーに心開いたことで微妙に変化していくところがテーマになっている。

 主役の2人が可愛いだけでなく芸達者だ。家族揃って安心して見にいける久々の作品。もちろん大人だけで行くのも悪くない。

 オープニングとラストのタイトルバック・アニメーションも物語世界をよく表現していて素晴らしい。