”SEX”by Винтаж
ロシア~東欧あたりの女性ポップスのCDジャケなど見てゆきますと、女性歌手の主な仕事はセミ・ヌード姿をジャケで披露することなんじゃないか、なんて疑いたくなるような、まあなんと言いますか、嘆かわしいといいますか嬉しくなっちゃうような状況があちらでは続いている訳ですが。ほんと、そんなジャケばかりだよなあ。
例えばロシアの男女三人組グループ、ヴィンターシュが2009年にリリースしたこのアルバム、ジャケ写真など見ますとその中央、革下着&網タイツ姿のボーカルの女性が目隠しなんかされて気怠く足を投げ出し、床にはロウソクが”SEX”という文字の形に並べられている。
実にわかりやすい。これでアルバムタイトルが”SEX”ですからね。収められている曲名も”ストリップ”とか”セクシー・ダンス”とか。これなんぞはロシア男性の性の欲望、根こそぎ頂戴いたします的グループの個性が一目で分かる公式になっておりますなあ。
などと思っていると、実はこのグループ、ロシアの若い女性たちから圧倒的な支持を得ているなんて情報が入ってきて、あれあれ、と。わからんものですねえ、よその世界の流行りものの実情。
そういえばこのグループ、女性同士のレズ愛憎劇などテーマにした曲でロシアのポップチャートの一位を取ったりしていて、なるほどあの楽曲は、その種の需要(?)に答えたものだったのかと、今頃になって頷けるものがあったりで。ただ女性向けエンターティメントの現場における性の混沌、我が国の例えば少女マンガなんかでは定番はホモですが、ロシアではレズなのか?まあこの辺、よくわからないんで今後の研究課題といたしますが。
そうすると、あのジャケ写真の件もどうだかわからん。あながち男性のスケベな欲望を満たすためじゃなく、むしろほら、昨今の若い女性相手のファッション誌なんかの表紙は、男性向けグラビア誌と区別がつかないくらいセクシーなこしらえの若い女性タレントの写真を使っていますでしょう?あれと同じ理屈なのかなあ、などと想像してみたりするのですが。
ともかく、あちらにはエロティック・エレクトリック・ポップなんてジャンルがあるみたいなんだけど、その中枢に位置するグループと思われます、このヴィンターシュ。
サウンドはロシアにありがちなエレクトリック・ポップなんだけど、さすがトップグループとなると一本調子なんてこともなくて、緩急織り交ぜ、いろいろサウンド・コラージュを取り入れたりなどもして、飽きさせません。
ロシア語の無骨な響きをよく生かした陰鬱なマイナーキーのメロディを、打ち込みのリズムの上で焼け付くような焦燥感を振りまきつつのたうちまわらせて歌う女性ボーカルも聴き応えあり。
そんな具合で、極寒の内で焼き付かんとするロシアの夜の最前線は、今夜もねちっこく燃え上がるのでありました。