ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

マンダレィ行きの駅馬車は

2009-08-07 03:44:58 | アジア


 ”Mandalay Yauk Shan Ta Yauk”by poe Ei San

 資料がみつからないんで良く分からないんだが、我らがミャンマー・ポップスのアイドル、ポーイーセンが昨年に出したらしい、まあ新作と言っていいでしょ、アルバムであります。どうやら今回はカントリー・ミュージックの特集のようです。

 冒頭、こちらのマシンがぶっ壊れたのかと思いました。なにやら面妖なサウンドが飛び出してきたんで。いやまあ、ミャンマーの音楽は多くの場合、異郷に暮らす我々には面妖ですが、今回はそういう意味ではなく、なんだかひどくモコモコとした音像だったんでね。
 その、こもったような音の壁の中にスチールギターもホーンスもピアノもドラムも一緒くたに、団子状になってしまっている。その中で一人自由に跳ね回る、アメリカ西海岸風(!)の、明るい音色のギター。
 なんだ、こりゃ?ミャンマー風のフィル・スペクター・サウンドへのオマージュですかね?・・・まさかね。

 でも、その狭間から飛び出してきた歌声は、いつもと変わらぬ愛嬌のあるポーイーセンの明るい歌声。訳の分からんままに聴いてきたミャンマーの天然プログレポップスだけど、彼女に関してはもうオッケー、ポーイーセンに外れなし、でいいんじゃないでしょうかね。
 このアルバムにおいては、いつものミャンマー・ポップスの迷宮構造はありません。分り易いポップス調で、ミャンマー風のカントリー・ソング集を楽しげに歌うポーイーセンがそこにいるだけ。好きなんですかね、ミャンマーの人たちはカントリーっぽいポップスが。

 でも、気まぐれな長雨に翻弄されたかと思えば不意に居座る酷暑と、なにやらうっとうしい今年の日本の夏に飽いた我々には、この、何にもややこしい事をやっていないアルバムは、なんだか爽やかな風を一陣、送ってくれるんですね。ともかく私は、なんの予備知識もないまま聴いて、ひととき癒されましたもん。肩凝りが軽くなりましたもん。

 中盤に収められたディズニー映画のナンバー、”ハイホー”をうまく味付けに使ったアップテンポのナンバーなんか、オシャレなものです。
 ポーイーセンはカントリーっぽいコブシも上手く使って快調に歌いこなして行くけど、これ、お馴染みのミャンマー歌謡独特の節回しにも通じるように聞こえてくるのが面白いところ。この辺で、カントリーがミャンマーの人たち好まれているのかな?

 それから、このような西洋音楽の音階のシンプルなメロディが続くと、ポーイーセンとアグネス・チャンとの歌声がかなり似ているのに気がつき、これには苦笑い。そうか、ポーイーセンの歌声からアクを除くとアグネス・チャンになるのか。
 これはちょっと・・・昨今の”社会運動家”としてのアグネスの動きには腹に据えかねているところがあるんで、あんまり楽しい発見じゃないけどね。まあ、アイドルやっていた頃のアグネスだけ思い出しておくことにしましょ。

 さて今回も試聴は見つけられませんでした。You-tubeにポーイーセンの歌はたくさんあるのですが、何しろミャンマー語の読めない悲しさ、どれがこのアルバム収録曲か分らず。という事で、ご勘弁を。