”Mabaetsh Ayzak”by Hayat
以前に購入したものの、なんとなく聴かずに放り出していたこのアルバム、ふと気が向いて聴いてみたら、ありゃりゃ、これはなかなかいいんじゃないですか。エジプトの新進女性歌手、ハヤット嬢の2007年度作品。
アタマに収録されている曲で終始鳴り渡る笛の音がまき散らす哀愁味なんか、アラブ歌謡にはちょっと珍しいところじゃないでしょうか。次の曲の間奏の弦楽器のソロも、なんだかアラブ世界と言うよりはギリシャっぽく聴こえる。
これ、アルバムの主人公たるHayat嬢の個性を生かすべく、わざわざなされたアレンジかとか想像してしまったんだけど。
やや線が細く、どこか寂しげな表情を漂わせるハヤット嬢の歌声でありまして、そこが、なにかと濃厚な個性が横行するアラブの歌姫世界では新鮮に聴こえ、萌え~と感じてしまった私であります。
煽り立てるようなインド風のリズムやら、ハードに打ち込まれる北アフリカらしいパーカッション群にはやし立てられつつ可憐な声を振り絞って歌い継ぐ美少女。なにやらヤバい雰囲気なども漂います。なんて感じるのは私だけかも知れないが。
終始、ハヤット嬢の繊細な感性が生かされた多彩な作りになっていて、通常のアラブポップスのアラブっぽいアブラっこさとか暑苦しさとは距離を置いた出来上がりで、腹にもたれず何杯でもいただけます(?)
濃厚な仕上がりとなってもおかしくはないバラードなども、夏の終わりの高原の避暑地的な涼風が吹き抜けて行きます。
この”温度の低さ”が新しいなあと感じさせられ、以前ここで取り上げた、これも2007年度盤だったな、レベノンのダナなんて子のアメリカンに舌足らずなライト感覚の歌声などと並行して考えたくなっています。
アラブ歌謡の世界にも新感覚世代が台頭しているのかなあ、などと、まあ、考えるのは早計なんでしょうけど。