え~昨日は悲観的な事を書きましたが、本日も何とか無事にここまでやってこれました。このままパソコンが直ってくれちゃったり・・・は無理なんだろうけどなあ、やっぱり。
”Yin Htel Ka Soe Pi”by May Sweet
ミャンマーの中堅の、と言っていいんだろうか歌手、メースイのこのアルバムについて書こうとしてなんとなく検索をかけてみたら、彼女が昨年の春、イギリスで交通事故で亡くなっている事を知り、驚いてしまった。まあ私にしてみれば何枚かアルバムを持っている、と言う程度の、まだ良く知らない歌手であるのだけれども、それなりに粛然たる気持ちになる。
それにしても、ロンドン在住だったのか?どういう事情か分からないけれども。ややこしい国内事情を抱えた国における芸人稼業について、あれこれ想像してみたりする。
始めの数曲はミャンマーお得意の、あの奔放な構成の天然プログレポップスではなく、マイナー・キイの、汎アジア的とも言いたい哀愁を帯びた熱帯ナイトクラブっぽいリズム歌謡が続く。東南アジアの熱く湿った夜の中に染み出して行くようなメースイの歌声に、彼女への哀悼の想いなど、つい誘われてしまう。
と、5曲目に飛び出してきた、聞き覚えのあるメロディ。あ、これは昔、”アフリカの準国歌”とも言われていた”マライカ”のメロディじゃないか。こうして聴くとミャンマー風のメロディとしか思えないけれども。付け加えられたサビのメロディにもミャンマーらしさが滲み、なかなか楽しい作品になっている。
この辺りからアルバムは、東南アジア・ナイトクラブ調のミラーボールきらめく世界を切り上げ、湿気と闇のイメージを一気に拭い去り、ロック・サイド(?)の展開となって行く。
カントリー・ロック調の8曲目(ジャケはすべてミャンマー文字だから、曲名なんか読めないよ勿論)をはじめとして、その後はテンポの良いロック調の曲が続く。
”緩めのロッカ・バラード”みたいな処理となっている11曲目、あれれ、タイトル忘れちゃったなあ、昔、好きだった曲なんだよ。メースイの声もよく伸びて、青空の下のもどかしき青春の日々の懊悩など切なく歌い上げ、忘れがたい出来上がりとなっている。
それ以外も、欧米のポップスに詳しい人が聞いたらカバー・ネタを発見できるのかも知れない。そう思わせるくらい、親しみやすい曲調のナンバーの連発である。それでもどこかにミャンマーらしさは匂うんだけどね、気配として。
伴奏陣も、ベダルスチールを模した、もの凄い早弾きのソロを聴かせたりするギターには舌を巻かされたし、キーボードの奴が”こいつは絶対にディープ・パープルのファンだろう”と思われる大熱演のソロを披露して笑わせてくれたり。私がはじめてミャンマーのポップスを聴いた頃のぎこちなさとは隔世の感がある。皆、上手くなったよなあ。上から目線で偉そうに言って申し訳ないけどさあ。
などなど・・・なんだよこれ、普通に良い出来のポップ・アルバムじゃないか。ミャンマー調の迷宮構造は最後まで現われないが、それでも十分楽しめる。どの曲も明るくパワフルなメースイの歌声によく似合っていて、ちょっとノスタルジックで切なくて、なかなか気持ちよいポップスになってるんだ。
なんだかますます彼女、メースイの急逝が惜しく思えてきてしまったなあ。ともかく冥福を祈ります。
”17 Mar 2008 ... Myanmar's famous actress and singer May Sweet died in head on collision car accident near M4 Motorway in London, United Kingdom. ”
(”KyiMayKaung ”より。http://kyimaykaung.blogspot.com/2008/03/famous-burmese-singer-may-sweet-dies-in.html)