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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

遠くても近くても

2021-04-07 14:43:26 | 好きなもの・音楽や本

図書館の文庫の棚「よ」の所で、そうだ久しぶりに
吉本ばなな本を読んでみようと思い、迷ったあげく
この本を選びました。

「不倫」「南米」をで接続するなんて、すごい
タイトルだーと思いつつ‥。


どうせ読むなら今の自分から最も遠いものが
いいなあと思って(笑)。
そして山口昌弘さんによる写真や原マスミさんの
挿画(表紙ももちろん)が、魅力的だったので。

世界の旅③とあったので、シリーズものみたいです。


ブエノスアイレスやその周辺が舞台で、7つの短編が
収められています。

電話
最後の日
小さな闇
プラタナス
ハチハニー
日時計
窓の外

最初の話「電話」の冒頭で、読み手は自分の知らない
南米の街をこんな風に知ることになります。

はじめて見たブエノスアイレスは、ヨーロッパの街並に
確かに似ていた。しかし、そこに息づく濃厚な南米のムードは
至るところから漂い出て、すべてを覆いつくしていた。
壁の落書き、広告の激しい色彩、ごみの舞う舗道、見たことも
ない街路樹は激しく枝を伸ばし紫や赤の花をつけ、子供たちは
どんな狭いところでも空間さえあればめったやたらにサッカー
をしていた。空の青も、強烈だった。押さえても押さえても
にじみ出る南米の大地の力が街を行く人々の顔に刻み込まれていた。

そんなところでの不倫の話はすごい展開になっているのでは?
と、ちょっと思いましたが笑、主人公が不倫真っ最中の話もあれば、
すでに過去のものになっていたり、自分の肉親がかつてそういう立場に
居たという話もあったりで、全体的には、むせ返る空気の中でも
その人たちが居る場所は(逆に)ひんやりしている、という印象を
(私は)受けました。

物理的な距離と、ココロの距離は比例するわけではなく、かと言って
離れているほどに、想いは強くなる、なんてロマンチックでもなく。
すべては人のココロという、ブラックホールの中で、どこをどう
とらえていくかって、ことなのかあと思いました。

「最後の日」の中で、主人公がこんなふうに思うところがあって。

私にとって一日とはいつも、のびちぢみする大きなゴムボール
みたいなもので、その中にいるとたまになにかをふと眺めている時、
なんの脈絡もなく突然、蜜のように甘く、豊潤な瞬間がやってくる
ことがあった。(中略)私にとって生きるというのはそういう瞬間を
くりかえすことであり、続いている物語のようではなかった。
だから、どこでとぎれても、私は納得するのではないか、と思えた。

ここでは、一日という「時間」のことを語っていますが、
遠くに居る、すぐそばに居る、という「距離」も、こういう気持ち
のありようと同じことなのかもしれないと思ったのでした。



***     ***     ***



数日前の明け方にみた夢の中で、私は20代前半で、サークルの
先輩にボーイフレンドを紹介されたり、友だちがやっていた
テレビの仕事が3月で終わってしまうことを悲しがったりしていて、
その気持ちがとてもリアルだったので、目覚めた時に、24歳の娘が
居る自分の方が、長い長い夢だったのではないかと思え、なんとも
不思議な気持ちを味わいました。前の晩読んでいた、小説が影響
していたのかもしれません。


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