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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

それがバターというものか

2021-05-11 17:17:24 | 好きなもの・音楽や本

インスタでいくつかの書店をフォローしているのですが、
この本を推している方が何人も居て、そんなに薦めるのなら、
と図書館で予約待ちして読みました。



裏表紙の説明に、男たちの財産を奪い、殺害した容疑で
逮捕された梶井真奈子(カジマナ)。若くも美しくもない
彼女がなぜー。週刊誌記者の町田里佳は親友の伶子の
助言をもとに梶井の面会を取り付ける。
とあったので、
なんとなく事件の真相に迫る系のサスペンスなの??と
何の予備知識も持たないまま読み始めてしまったところ、
あれ?これって何かに似てる‥と、木嶋佳苗をモデルに
していることがわかりました。


殺人容疑で拘置されているカジマナは、実に堂々としていて、
髪や肌の手入れも怠っていないように見え、多忙な記者で
ある里佳よりも余裕を持って、人生を楽しんでいるかの
ように振る舞います。
いかに自分がバターを愛しているか、バターのない(あるいは
けちった)料理がどれほど不味いか、バターをきちんと
味わったことのない里佳が、どれほど貧相な女であるかを
語り、それに頷くしかない里佳は、「カジマナマジック」に
かかったような状態になると同時に、バターの美味しさを
知っていきます‥。

カジマナは本当に犯人なのか、里佳は真実を引き出し、
記事にすることができるのかー。

そこが主軸の物語として読み進めていくと、作者の意図は
それだけに留まらず、私たちが直面しているありとあらゆる
こと‥(思いつくだけでも)過度なダイエット、ネットの炎上、
妊活、父と娘、推しのアイドルなどなど‥に及んでいること
がわかり、しかもそのどれもが「さらっと」ではなく、
「わりとたっぷり」なのです。

すごいな、うまいな、と思いながらも、読み手の私はそれを
次第にヘビィに感じてきて‥あれあれあれ。
これはそう、まさにバターと同じだと思いました。

たまに食べるとすごく美味しいけれど、私にとっては重すぎる
食べ物。本文中に、自分の適量をいつか知ることができたら、と
いう箇所がありましたが、柚木麻子本は、私にとってはどうやら
バターのようなので、またいつか、を楽しみにすることにします。








 


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