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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

運命なのか、奇跡なのか

2020-10-22 16:34:02 | 好きなもの・音楽や本

図書館で長い間予約待ちして、上巻と下巻のあいだも3か月
くらい待って、やっと読み終えることができました。

 

風神雷神図屏風

歴史の教科書で、必ずだれでも目にしたことがあるこの絵が、
そのままタイトルと表紙に使われている物語って?
という好奇心で、図書館に予約を入れました。

原田マハさんの美術や絵画を巡る物語は、舞台が外国であっても、
まるでその時代を今自分が生きているかのように思わせてくれる
ところが魅力の一つだと思うのですが、このたびの「物語」は、
そこに壮大な謎解きが加わり、さらに面白く読み進むことができました。


京都国立博物館研究員の望月彩が主人公。彼女は幼い時から俵屋宗達の絵
に魅了され続けています。そんな彼女の前に、マカオ博物館の学芸員が現れ、
箱に収められた古文書と1枚の絵を彼女に見せるのですが。
古文書の署名は天正遣欧使節団の一員であった原マルティノ。
文中には、俵屋宗達の文字。そして「風神雷神」が描かれた西洋絵画‥。

使節団の中心であった4人は当時まだ13歳~14歳だったそう。
史実の中の「出来事」ではなく、3年もの年月をかけて、遥かかなたの
ローマを目指した少年たちの生き生きとした姿と、揺るぎない信仰心が
まぶしく、そこに当時の「大殿」であった織田信長や、京の絵師たちが
関わってくる上巻は、とても読み応えがありました。

船旅が終盤を迎える下巻では、これを運命と呼ぶのか、それとも
神が起こした奇跡なのか、という「出会い」が描かれますが、そこへの
道しるべを、すでに読者である私たちは手渡されていたので、上巻ほどの
勢いは(私には)感じられず、ああこれでこの物語は終わっていくの
だなと、すこし寂しくなりました。


それにしても、16世紀。京のみやこにさえ行ったことがない少年たちが
マカオやインドのゴアを経て(よい季節風が来るまで何か月もその場所で
風待ちをして)、アフリカ大陸の喜望峰を通り、ポルトガルまで辿り
着いたのち、スペイン国王に見え、ローマ教皇に謁見を果たしたなんて、
本当にものすごい旅であり冒険です。
(しかも、4年の歳月をかけて、ちゃんと帰国を果たしているのですから!)

一度も考えてみたこともなかった、彼らの旅に思いを馳せることができた
のも、この本のおかげだと思っています。






 

コメント
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