今年最初の読書は、この本からになりました。
フィリップ・マーロウ、レイモンド・チャンドラー、そしてハードボイルド。
どれも、聞いたことはあるけれど、語ることはとてもできません。
春樹氏が、敬愛するチャンドラーの作品の新訳を数年前から出し始めたことも
知っていましたが、いつかは読むかもしれないけど、今ではないなという気が
いつもしていて‥でも、昨年12月に出たこの本が、マーロウシリーズの1作目
なのだと知り、読み始めるならやっぱり最初から、と思ったのでした。
この作品が発表されたのは1939年で、日本では1956年に双葉十三郎訳で
出版され、その後1959年に文庫版が出たことで広く流通してきたそうです。
読んでいて、さすがにこんなことは今はしないよね、という場面もありますが‥
車の中で、激怒した女性が、持っていたハンカチを噛みちぎり、窓の外に
投げ捨てる‥ヒステリックになった女性がハンカチを噛んでいる絵は
みたことありますが、噛みちぎってばらばらにしてしまうなんて!です。
(本当にそんなことしている人を私は見たことありませが、小説の中で
書かれているくらいだから、怒りのはけ口の手段の一つとして存在していた
行いなのでしょうか‥。)
でもそれとは逆に、いくら時間がたっても、全然古びた感じがしないどころか
春樹氏はこういう描写に影響を受けたのではないかな、と思ったところも
ありました。
私はそれを気にはしなかった。彼女がどうのように罵ろうが、誰が私を
どうように罵ろうが、知ったことではない。しかしそこは私がこれからも
住んでいかなければならない部屋だ。私にとって我が家(ホーム)と呼べる
ものは、ここの他にはない。その中にあるものはすべて私のものだ。私と
何かしらの関わりを持ち、何かしらの過去を持ち、家族の代わりをつとめる
ものたちだ。たいしたものはない。何冊かの本、写真、ラジオ、チェスの駒、
古い手紙、その程度のものだ、とくに価値はない。でもそこには私の思い出
のすべてがしみ込んでいる。
そして、フィリップ・マーロウの魅力は、半世紀以上の時間がたっても、色褪せる
ことはないのかなーと思います。
あとがきで、春樹氏はこんなふうに書いています。
しかしマーロウには、今彼が送っている以外の生き方を選ぶことはできない。
それがどのような過酷さをもたらすことになるにせよ、自由であること、組織や
規則に縛り付けられないこと、自分の決めた原則を守り抜くこと、相手よりも
少しでも速く銃を抜くこと、それらがマーロウという人間の骨にまで染み込んだ
ネイチャーになっているのだ。
ふう、かっこいいですね~。
マーロウシリーズの続きを、ぼちぼち読んでいくことにしようと思います。