報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「東京湾フェリーの旅」 2

2024-05-28 17:38:37 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月9日10時10分 天候:晴 千葉県富津市金谷 東京湾フェリー金谷港→かなや丸船内]

 

 ターミナルの建物に入った私達は、券売機で乗船券を買い求めた。
 2023年現在のフェリー運賃は、大人片道900円である。
 これは徒歩客用の運賃であり、車両の運賃ではない。
 高橋とパールは、そういった車両の航送料金についても注目していた。

 愛原「バイクを買ったら、2人で新婚旅行に行くんだろ?途中、こういう船に乗るのもいいかもな?」
 高橋「そうっスね」

 尚、車両航送用のキップは券売機ではなく、有人窓口で購入する形になっているようだ。
 車検証の確認などもあるからだろう。
 ターミナルの中は、売店やレストランもある。
 ここで、“びわサイダー”なる物を買って飲んでみる。
 千葉県は、枇杷の産地でもあるからだ。

 愛原「うん、枇杷だ」
 リサ「枇杷……初めて飲むなぁ」
 愛原「そうなの?」
 リサ「うん。でも美味しい」
 愛原「東京でも枇杷の木くらいはあるからな。警備員やってた頃、派遣先の会社の敷地内に枇杷の木があって、収穫を手伝ったもんだ」
 リサ「へえ!」
 愛原「豊作だった年は籠に入り切らなくて、帽子の中に入れたよ。で、そこの会社の社長さんが、『帽子に入れた分は全部持ってって』なんて言ってくれたりしてさ」
 リサ「帽子って、藤野の守衛さん達が被ってるヤツ?」
 愛原「そう。官帽って言うんだ」
 リサ「ヘルメットを被ることもあるよね?」
 愛原「まあ、現場によってはな。それがどうした?」
 リサ「いや、ヘルメットの方が大きいから、枇杷もいっぱい入るだろうなぁ……って」
 愛原「意地汚いことを考えるな!」

 乗船できるようになったらしいので、私達は徒歩乗船口に向かった。

 

 ガラス扉の奥、スロープを昇って進むと……。

 

 まるで、自動改札機が設置される前の駅の改札口のようなブースが並んでいる。
 そこに係員が立っていて、乗客のキップを確認していた。

 リサ「おー!これから乗るんだ!」
 愛原「ゲームで言えば、『1度乗船すると、ターミナルには戻れません。船に乗りますか? はい いいえ』だな」
 リサ「『はい』で!」
 愛原「そうか。高橋達もいいか?」
 高橋「うっス!」
 パール「大丈夫です」

 私達は乗船することにした。
 乗船券を係員に渡すと、これまた駅の改札印のようなスタンプを押して返してくれる。
 JRの改札印は赤色だが、こちらのフェリーのは黒いインクである。
 タラップを渡って、船内に入った。

 リサ「先生と船旅をするのは、2回目だね」
 愛原「2回?そうか。八丈島に行った時にも乗ったもんな」
 リサ「そうそう!」

 八丈島旅行。
 往路は船舶を利用し、復路は旅客機を利用した。
 リサが陸路以外の交通を利用しても大丈夫かという実験も兼ねており、両方とも問題無く乗れたので、リサには船舶と航空機の利用も解禁された。
 但し、パスポートは発行できないので、国内線オンリーだが。
 船尾甲板から乗り込む形となる。

 愛原「2階に行くか」
 リサ「行こう行こう!」

 急な階段を昇る。
 甲板側の階段は急傾斜だが、船室内の階段は普通である。

 

 愛原「かなや丸というのか」
 リサ「船底倉庫で、ドアをドンドン叩きながら『メーデー、メーデー』って……」
 愛原「お前が化け物に変化したら、そうしてくれ」

 客室2階の船尾甲板寄りは、売店とラウンジがある。
 お土産物も売ってたりするが、他にも食べ物や飲み物も扱っている。

 愛原「さすがは横須賀市に向かう船だ。横須賀海軍カレーとか売ってる」
 リサ「本当だ。お土産に買って行かない?」
 愛原「そうだな……。多分、久里浜港側にも売店はあるだろう。そっちでも売ってるだろうから、そっちで買ってみるか」
 リサ「おー!……でも、いま食べたい」
 愛原「おいおい」
 リサ「いま食べれるカレー、発見!」
 愛原「マジで今食うのか……」

 私は私で、カップに入ったアジの竜田揚げとサイダーを買ってみた。

 愛原「これ、アレだ。甲板でブシュッと開けよう」
 リサ「そうなの?」
 愛原「作者が友人と取材で乗り込んだ際、サイダーが吹き出して大変なことになったらしい」
 リサ「ほーほー」

 私は船尾甲板に出て、サイダーを開けた。
 案の定、泡が吹き出すが、予備知識のあった私は、少なくとも船室内で零すというような失態はせずに済んだ。

 

 愛原「本当に買うとは……」
 リサ「いただきまーす!」

 私とリサはラウンジ内のテーブルに向かい合わせに座った。

 愛原「あれ?高橋達は?」
 リサ「デッキに出てるよ。タイタニックごっこでもするんじゃない?」
 愛原「船首甲板は立入禁止だったと思うが……」

 後で怒られるようなことをしなければいいのだが……。
 先ほど乗り込んだタラップが、窓の下に見える。
 まもなく出港時間となる為か、係員がタラップを引っ込めていた。
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“私立探偵 愛原学” 「東京湾フェリーの旅」

2024-05-26 20:33:12 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月9日09時45分 天候:晴 千葉県富津市金谷 JR浜金谷駅→東京湾フェリー金谷港]

 

 浜金谷駅は1面2線の島式ホーム。
 単線区間において、上下列車交換可能駅となっている。
 駅舎に向かうには、跨線橋を昇り降りしなくてはならない。
 無人駅ではないのだが、雰囲気がローカル線そのものである。
 鋸山などの観光地もあるせいか、この駅で降りる乗客は多い。
 夏場は海水浴場も点在しているので、海水浴客も乗降するのだろう。

 愛原「ここにカードをタッチするんだ」
 リサ「おー」

 駅舎に入る改札口には、ICカードの読取機が設置されている。
 特急券は駅員に渡すのだが、乗車券は読取機にタッチという、ある意味アクロバットな通過をする。

 高橋「先生、一服していいですか?」
 愛原「いいよ」

 旧国鉄時代の規格化された駅舎は、だいたいどこも全国的に造りが一緒である。
 駅の外に出ると喫煙所があるので、高橋とパールはここで一服。
 その間に……。

 愛原「リサ、記念に撮ってあげようか」
 リサ「いいの!?」

 駅舎をバックに、リサを撮影。
 人間形態で写ったので、その様は普通の女の子のよう。

 リサ「いいねぇ!『魔王軍』のLINEで流しておこう。『わたしの新しい肖像写真』ってことで」
 愛原「いいのかなぁ……」

 とはいえ、リサの楽しそうな写真なので、これはデイライトへの報告書に添付して良いだろう。
 私もタダでリサと同居しているわけではない。
 毎日、リサの状況を報告書にしてデイライトに送っているのだ。

 高橋「お待たせしました」

 2人の喫煙者の一服が終わると、私達は港に向かって歩き出した。
 駅前の道を進み、最初の十字路を右に曲がって県道237号線を進む。
 道は狭いが舗装されていて、住宅街になっていた。
 曲がらずにそのまま真っ直ぐ行くと国道127号線に出て、そこを右に曲がっても行けるのだが、交通量が多い割に歩道が狭いので、車の少ない県道を行った方が良い。
 海が近いのか、時折吹いてくる風は潮の香りが混じっている。
 その為、鼻の利くリサなんかは……。

 リサ「……ックシュ!……ックシュ!……ックシュ!」

 くしゃみを3回もした。
 緑色のマスクを押さえる。

 リサ「うへー……」
 愛原「リサも山育ちだったから、潮風には慣れてないんだろ」
 リサ「そういうもんかな……」

 しばらく歩くと、国道127号線との交差点に到着する。
 ガソリンスタンドの裏手だ。
 この横断歩道を渡ると、もう金谷港である。
 横断歩道で信号待ちをしていると、バイクの集団が下り線を通過していった。
 ハーレーダビッドソンの集団だったことから、年配者が多いのかもしれない。

 愛原「金と時間のある団塊世代はいいねぇ……」
 高橋「あれ1台で、車1台買えますからね」
 愛原「だろうなぁ……」

 尚この2人、車ではなく、バイクを買って、それで新婚旅行に行きたいらしい。
 その為、今はバイクを買う金を貯めているのだとか。

 愛原「デイライトに没収されている栗原家のインゴッド、早く返してもらえるといいねぇ……」
 高橋「全くです!ねーちゃん、いつ返してくれるんスか!?」
 愛原「まだ先らしい」
 高橋「先生の力で、どうか1つお願いします」
 愛原「国家権力には誰も逆らえないって、お前も知ってるだろう?」
 高橋「そりゃそうですけど……」

 信号が変わったので、横断歩道を渡る。
 因みにこの国道、愛称は『内房なぎさライン』というらしい。
 名前だけ聞くと、一瞬JR内房線の愛称かと思ってしまう。

 愛原「あそこだ」

 広大な駐車場の中に、フェリー乗り場はあった。

 

 高橋「ここっスか」

 東京湾フェリーはカーフェリーである。
 よって、駐車場にはフェリーに乗り込む為に列を作って待つ車やバイクの姿があった。

 愛原「次の便は10時25分だ。まだ少し時間あるから、この辺を少し探索しよう。何なら、『恋人の聖地』なるものがあるらしいぞ?」
 リサ「えっ、本当!?」(;゚∀゚)=3

 リサは鼻息を荒くした。

 愛原「このターミナルの建物の裏手にあるらしい」

 そこへ回ってみると……。

 

 愛原「今日は天気がいいから、富士山が見えるな」
 リサ「ホントだー!」
 高橋「写真に撮りましょう」

 まだ4月初めなので、富士山は雪を被っている。

 

 愛原「これだよ」

 それは鐘だった。

 

 富士山をバックに、カップルで鐘を鳴らすと幸せになれるという謂れでもあるのだろうか。

 愛原「高橋とパール、鳴らしてみろ?俺が写真撮ってやるから」
 高橋「先生、あざーっス!」

 私が高橋とパールの新婚夫婦を撮ってやった。
 すると……。

 リサ「先生!わたし達も撮ろうよぉ!?」
 愛原「興奮して鬼形態になっとる!?」
 パール「先生、これは一緒に撮ってあげないと、フェリーに乗れないフラグです」
 高橋「そうですよ!戦闘が発生してしまいます!」
 愛原「お前らなぁ……!」
 リサ「そーだよ、先生」
 愛原「お前も肯定すんな!」

 天気も良いので、周りには人がいる。
 リサの形態がバレる前に、さっさと写真撮影してしまおう。

 愛原「急いで撮ってくれよ?急いで!」
 高橋「分かってます」
 リサ「いえーい!」

 リサは牙を剥いた満面の笑みで、私は引きつった笑みを浮かべて一緒に鐘を鳴らした。
 その瞬間を高橋はスマホに収めた。

 高橋「これでどうです?」
 愛原「よ、よし!いいだろう!」
 リサ「いいねぇ!『魔王軍』に自慢できる!」
 愛原「それは良かった……。リサ、落ち着いて人間形態に戻れ!」
 リサ「うん」

 リサは深呼吸して気持ちを落ち着かせると、角を引っ込め、耳も丸くなり、長く尖った爪も短くなった。

 愛原「ふう……。と、とにかく、中に入ってキップを買うぞ」
 リサ「はーい」

 私達はターミナルの中に入った。
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“私立探偵 愛原学” 「新宿さざなみの旅」

2024-05-26 13:53:03 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月9日07時50分 天候:曇 東京都新宿区新宿 JR新宿駅→中央快速線9043M列車・1号車内]

 255系車両における“新宿さざなみ”1号の指定席車は、1号車から5号車であり、9号車は自由席である為、変更します。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。7番線に停車中の列車は、7時50分発、特急“新宿さざなみ”1号、館山行きです。……〕

 

 列車が入線し、私とリサは先に乗車していた。

 

 テーブルが肘掛けの中に収納されているタイプなので、それを出して、その上に駅弁や飲み物を置く。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。この列車は“新宿さざなみ”1号、館山行きです。途中、秋葉原、錦糸町、船橋、津田沼、千葉、蘇我、五井、木更津、君津、浜金谷、保田、岩井、富浦に停まります。指定席は1号車から5号車、グリーン車は4号車です。自由席は、6号車から9号車です。車内はデッキを含めまして、全車両禁煙です。トイレは2号車、4号車、5号車、7号車、9号車の各車両の後ろ寄りにあります〕

 堺正幸氏による自動放送が流れ終わった後、高橋とパールがバタバタと戻って来た。

 高橋「一服してきたっス!」
 パール「お待たせしました!」
 愛原「おー、結構ギリギリだったなー」
 パール「マサのヤツ、間違えて9号車に行きまして……」
 愛原「ええっ!?」
 高橋「まさか、台本が急に変わったなんて思いもしなくて……」
 愛原「台本とか言うなしw ほれ、お前達の席はそっち」

 私とリサは進行方向右側の席に座っているが、高橋達の席は通路を挟んで隣の左側の席だ。
 本当は前後して取りたかったのだが、席が空いていなかった。
 近くで取れる席が、この横並びだったのである。

 高橋「あっ、了解です」

 高橋とパールは左側の席に座った。

〔「7時50分発、特急“新宿さざなみ”1号、館山行き、まもなく発車致します。ご乗車になりまして、お待ちください」〕

 しばらくすると、ホームから発車メロディが聞こえて来る。
 “海岸通り”という曲名が付けられているようだ。
 正に、この列車が海の方に行くだけに、相応しい曲だと思うが、実際はただの偶然だろう。

〔「7番線から、7時50分発、特急“新宿さざなみ”1号、館山行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください」〕
〔7番線、ドアが閉まります。ご注意ください〕

 ドアが閉まると、列車はゆっくりと走り出した。
 途中で本線に入る為のポイントを通過する為、電車が大きく揺れる。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この列車は特急“新宿さざなみ”1号、館山行きです。【中略】お客様にお願い致します。携帯電話をご使用の際は、周りのお客様の御迷惑となりませんよう、デッキをご利用ください。次は、秋葉原に停まります〕

 リサ「錦糸町までは戻るって感じ?」
 愛原「いやいや。微妙にズレてるぢゃないか。微妙に」
 リサ「び、ビミョーにね」
 愛原「ずっと山奥の研究所にいたんだから、今度は海だ!」
 リサ「泳ぐの?」
 愛原「まだ海開きしてないし、まだ寒いよ」

 日に当たれば暖かいというところまで、春が濃くなってきたが、さすがに海には入れない。

 愛原「そもそもオマエだって、水着持って来てないじゃないか」
 リサ「それもそうだね」
 愛原「むしろ船に乗るから」
 リサ「わたしに船底で、『メーデーメーデー』って言えって?」
 愛原「誰もそんなこと言っとらんw」

 尚、弁当を食べ終わって、その空き箱などを捨てるついでにトイレに寄ってみたが……。

 

 男子用個室はこんな感じだった。
 何でも、『深海』をイメージしているらしい。
 他の洋式トイレなどは普通だった。
 尚、少し古い車両のせいか、さすがにウォシュレットまでは搭載されていないもよう。

[同日09時41分 天候:晴 千葉県富津市金谷 JR内房線9043M列車・1号車内→金谷駅]

 列車は御茶ノ水駅まで、賑やかな複々線区間を走行した。
 御茶ノ水から錦糸町までは、複線に減少するが、それでも賑やかなことに変わりはない。
 そして、錦糸町駅から再び複々線となる。
 つまり、千葉駅までは賑やかだということだ。
 千葉駅を出てからは少し穏やかになるが、複線区間ということもあり、ローカルというよりは郊外の路線といった感じ。
 すれ違う普通列車も、6両編成以上の比較的長い編成の物が多いからだろう。
 五井駅から出てる小湊鉄道は、さすがにローカル線といった感じだったが。
 一気にローカル線の色が出てくるのは、君津から先の単線区間。
 普通列車の本数も1時間に1本、2両編成ワンマン運転とかになる。
 車窓の方だが、ウィキペディアの記事によると、『東京湾と房総丘陵の間のわずかな平地を、東京湾の沿岸に寄り添う形で走行する。沿線にはマザー牧場・鋸山などの観光スポットや、多数の海水浴場が点在する。また館山は南房総における観光拠点の一つであり、観光アクセスとしての役割が目立つ区間である。海岸沿いを走行するため、風の影響を受けやすく、しばしば運休する。複数ある風規制区間のうち、特に運転中止になりやすい佐貫町駅 - 上総湊駅間では、防風柵の設置が行われ、2012年3月21日に完成したが、それ以外の区間でも風規制になることも多く、線区全体での対策が求められている』とある。
 房総丘陵を走る為、トンネルもいくつか通過する。

 リサ「海が見えてきた!」
 愛原「そうだな。実に懐かしい」
 リサ「ん?」
 愛原「学生の頃、ここに来たことがあるんだ。あの時は、まだ113系とかで運転されてたっけなぁ……。千葉駅から、館山方面まで直通の普通列車なんかもあったりしてな……」
 リサ「面白そう!」
 愛原「昔は良かったねぇ……。今はもうあんなことできないね」

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、浜金谷です。お降りのお客様は、お忘れ物の無いよう、お支度ください。浜金谷の次は、保田に停まります〕

 自動放送の担当声優と、その言い回しのおかげで、まるで東北新幹線に乗っているかのような錯覚を受ける。
 因みに作中では省略されている英語放送も、その担当声優はJR東日本の新幹線の英語放送を担当している人と同じ人である。

 愛原「新宿から凡そ1時間50分。やっと着いたな」
 リサ「ここから海に飛び込むんだね!?」
 愛原「いや、飛び込まないし!港には行くけどさ」

 

 こうして、私達は無事に下車駅に着いたのである。
 都内ではやや曇りがちだった空も、今は晴れている。
 こうして日光が出ていれば、栗原蓮華と同類の鬼型BOWが現れることは無いだろう。
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“私立探偵 愛原学” 「新宿駅の風景」

2024-05-25 21:33:34 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月9日07時21分 天候:曇 東京都新宿区西新宿 都営地下鉄新宿線621T電車・最後尾車内→京王新線・新宿駅→JR新宿駅]

〔「まもなく新宿、新宿、終点です。お出口は、右側です。この電車は新宿止まりの電車です。新宿駅到着後、回送となります。引き続いてのご乗車はできませんので、ご注意ください。今度の笹塚行きは、降りたホームから28分。その後、快速、大沢……失礼しました。快速、橋本行きは40分の発車です。ご乗車ありがとうございました。まもなく新宿、新宿、終点です」〕

 乗り換え駅である新宿駅に到着する。
 リサは相変わらず、こんな朝早くから『魔王軍』とLINEでもやっているのか、スマホ弄りをしているが、高橋とパールは互いに寄り添いながら寝ていた。
 因みにこの時、パールもフードを被っている。

〔「ご乗車ありがとうございました。新宿、新宿、終点です。お忘れ物、落とし物の無いよう、ご注意ください。4番線の電車は、回送電車です。ご乗車にはなれませんので、ご注意ください。この後の笹塚行きは、28分発です」〕

 愛原「おい、2人とも、降りるぞ」

 私は2人を揺り動かした。

 高橋「到着っスか」
 愛原「新宿だ。降りるぞ」
 高橋「うぃーっス」

 まあ、酔っ払っているわけではないので、普通に起こせば起きる。

 リサ「この後はJRに乗り換えだね?」
 愛原「そうだ。キップは改札前で渡すよ」

 地下5階のホームからエスカレーターを乗り継いで、地下1階の改札口まで向かう。

 リサ「先生。JRのキップ」

 リサは人間形態なので、長くない爪の手を差し出した。

 愛原「いや、地下鉄の改札じゃなくて、JRの改札口な?」
 リサ「あっ、と!」

 地下鉄の改札口を出て、今度はJRの改札口に向かう。
 日曜日の朝ということもあって、平日の同じ時間と比べれば人は少ない。

 愛原「キップは1人ずつ持とう」
 高橋「ありがとうございます」
 リサ「わたし、先生の隣~!」
 愛原「はいはい。窓側な?」
 リサ「ありがとう!」
 愛原「特急券だけだから、改札口はSuicaやPasmoで通過してくれ」
 高橋「なるほど。このキップじゃ、通れないんスね」
 愛原「それは指定席特急券だけだからな?」
 リサ「駅弁はどこに?」
 愛原「コンコースの中だろう。特急が出る中央線ホームの近くで売ってると思う」
 リサ「なるほど」

 改札口を通過し、コンコースの中に入る。
 それから……。

 愛原「あれだな」

 駅弁屋を発見した。

 リサ「おー!」
 愛原「リサは俺が買ってやるよ。何がいい?」
 リサ「肉!」
 愛原「だろうな」

 リサは“やまゆり牛しぐれ煮弁当”を所望した。
 私達が向かうのは千葉県だが、ここから出発する特急の殆どは、まずは山梨方面に向かうことを思い出す。
 私は牛タン弁当を見つけたので、それにしてしまった。
 別に、仙台に帰るわけじゃないのにw
 高橋達は、幕の内弁当関係にしていた。
 で、因みに私は、他にも缶ビールとおつまみも購入した。

 リサ「先生、これから乗る電車って、車内販売ある?」
 愛原「いや、どうも無いみたいだな。まあ、週末限定の臨時列車だからしょうがない」
 リサ「じゃあ、ここで買って行った方がいいね」
 愛原「そういうことだな。ホームにも、売店はあるみたいだぞ」
 リサ「そっかぁ……」

 ここでは駅弁などを買っておく。

 愛原「7番線か。ラッシュの時間だと、中央快速も発着するホームだな。それ以外だと、こういう臨時列車のホームとか……」

 新宿駅のようなターミナル駅は、当然ながら乗降客が多い。
 ましてや、平日のラッシュともなれば尚更だ。
 発着に時間が掛かるのは、致し方無い。
 とはいえ、そのせいで後続電車が詰まって渋滞が起こるのも考えものだ。
 そこで新宿駅では臨時ホームを開放し、後続電車をそこに到着させる。
 そうこうしているうちに先行電車が発車する。
 しかし、後続電車も混雑していて乗降に手間取る。
 そうしているうちに、また次の電車がやってくるが、これは先ほどの先行列車が停車していたホームに入れる。
 そして、更に後続は……というようなことを繰り返して、なるべく渋滞を減らす。
 これを『相互発車』という。
 さすがに今日は日曜日で、中央快速線の電車もそこまで混雑していないし、本数も多いわけではないので、相互発車は行われていない。
 そこで、7番線は素直に臨時列車のホームとなるわけである。

 愛原「因みに喫煙所は、普段から特急が発車している9番線、10番線ホームにあるから。吸うなら今のうちな?」
 高橋「はい。行ってきます。電車は7番線っスね?」
 愛原「そう。最後尾の1号車な?」
 高橋「分かりました。行ってきまーす」
 パール「行ってきます」

 喫煙者の2人は、特急ホームへと向かった。

 愛原「俺達は先に行こうか?」
 リサ「うん。お菓子も買いたい」
 愛原「おっと」

 7番線ホームは8番線との島式ホームである。
 平日朝ラッシュは両側を使用して相互発車を行うが、休日ダイヤでは行われない。
 上りホームであり、東京行きの中央快速電車が8番線のみを使用する。
 休日の朝とはいえ、そこはターミナル駅。
 上り電車が到着すると、そこから乗客がわんさか降りて来る。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の7番線の列車は、7時50分発、特急“新宿さざなみ”1号、館山行きです。この列車は、9両です。……次は、秋葉原に、停車します〕

 ホーム上にあるNewDaysで、リサはポッキーやビーフジャーキー、そしてジュースを買った。
 本当に旅気分である。

 リサ「ふっ、フフフ……」
 愛原「どうした、リサ?」

 目当ての物を買い、ホームに出たところで、リサが何故か笑い出した。

 リサ「いや、きっと、化け物扱いされているヤツでさ、のんきにこれから電車旅行するってヤツ、世界中でわたしだけだろうなぁって思った。それだけ」
 愛原「なるほどな」

 公式には、元BOWで今は人間に戻っているとされている人物なら、世界には何人かいるが、現役で未だにBOWでというのは2人しかいない。
 1人はここにいるリサ。 
 そしてもう1人は、まだ幼児のローズマリー・ウィンターズ。
 アメリカからウィンターズ夫妻と共に、ルーマニアに亡命している。
 本来はBSAAの機密情報なのだが、善場主任が特別に教えてくれた。
 どうせ接点は無いし、あくまで知識として、そういう存在もあるのだという知識の一環で。

 愛原「今はそうだが、ルーマニアにいるとされるローズマリー・ウィンターズが大きくなって、特に暴走もしないようなら、お前みたいに電車やバスに乗ったりするようになるかもな?」
 リサ「そーかなー……」

 その時、もしかしたらリサと接点を持つようになるのかもしれない。

 愛原「先に並んでおくか。1号車はあっちだ」
 リサ「分かった」

 私は8番線の快速、東京行き電車を横目に、7番線側を歩いた。

 ※下りの指定席車は1号車から5号車であった為、修正しました。
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“私立探偵 愛原学” 「小旅行当日」

2024-05-23 20:46:44 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月9日06時00分 天候:曇 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家4階]

 枕元に置いたスマホがアラームを鳴らす。

 愛原「うーん……」

 私は手を伸ばして、それを止めた。

 愛原「あれ……?」

 そういえば私、いつの間に眠ったんだろう?
 ちゃんとベッドに入って、布団を掛けていたが。
 前夜の記憶を辿ってみると、私はリサに足ツボマッサージを受けていて、血中老廃物を吸い取られて、気持ち良過ぎてそのまま眠ってしまったらしい。
 それなら仕方が無いか。
 さすがのリサも部屋に戻って……。

 愛原「起きるか……」

 私は欠伸をしながら、ベッドから畳に足を踏み出した。
 すると、足に何かムニュっと柔らかい物が当たる。

 リサ「ふわ……ぁ……」
 愛原「!?」

 私が息を呑んで、照明のリモコンを取ると、それで照明を点灯させた。
 パッとシーリングライトの照明が点いて、部屋が明るくなる。
 すると、足元に映ったのは……。

 リサ「でへへへ……先生……もっとォ……踏んでぇ……」

 私のベッドの横に布団を敷いて眠っているリサだった。
 寝相が悪く、布団を跳ねのけて、体操服が捲れ上がり、ヘソが見えている。
 私が足を出した時、ちょうどその下にはリサの胸があった。

 愛原「ど、どこで寝てるんだ、オマエはーっ!」

 ゴッ!(愛原のゲンコツが炸裂する)

 リサ「いっだぁーっ!?……あ、おはよう、先生」
 愛原「あのなぁ!何で俺の部屋で寝てるんだよ!?」
 リサ「だってぇ、先生、マッサージの途中で寝ちゃうんだもん。心配になったから……」
 愛原「俺に変なことはしてないだろうな?」
 リサ「うん。キスしかしてない
 愛原「そうか……って、コラ!まさか、Gウィルス移してたりしてないだろうな!?」
 リサ「そんなことしたらさすがに先生、死んじゃうよ。それに、偽の特異菌が上手く誤魔化してくれてるから大丈夫」
 愛原「そうか……」

 Gウィルスに体を乗っ取られた感染者は、それが齎す本能に従って、Gウィルスを繁殖させようとする。
 但し、それはGウイルス本体が生み出した胚を別の生物に植え付けるというもの。
 植え付けられた胚が適合すれば同じようにG生物になり、ならないと胚だけが成長したG幼体に体を食い破られて絶命する。
 リサの場合は乗っ取られているわけではなく、むしろ使役している側なので、そもそもの前提条件が違う。

 愛原「さっさと布団片付けろ。俺は顔を洗って来る」
 リサ「はーい」

 リサは布団を畳むと、ヒョイと1人で持ち上げて自分の部屋に運んで行った。
 私は4階の洗面所とトイレに向かう。
 全く、リサときたら……。
 ただ、私を襲わず、キスしただけというのは高評価かも。
 少なくともこれが上野利恵だったら、襲われて睾丸の中身を搾り取られていたかも。

[同日07時01分 天候:曇 同地区 都営地下鉄菊川駅→都営新宿線621T電車・最後尾車内]

 曇っているせいか、やや肌寒い。
 私は厚手のオープンシャツを着用し、下はチノパン、上はジャケットを羽織っている。
 リサは黒いミニスカートにピンク色のパーカーを羽織り、私物を入れたリュックを背負っている。
 高橋はジーンズにグレーのジャンパーを羽織っていたが、リサと違って、既にフードを被っていた。
 パールも似たような恰好だが、ジャンパーだけは迷彩色で、フードは付いていない。
 日曜日の朝ということもあり、菊川駅は閑散としていた。

 愛原「悪いけど、改札口は手持ちのSuicaとかPasmoを使ってくれ」
 高橋「分かりました」

 改札口はそれで通過する。
 そして、コンコースから階段を下り、ホームに出る。

〔まもなく、1番線に、各駅停車、新宿行きが、10両編成で、到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 後ろの車両が来る辺りで電車を待っていると、トンネルの向こうから轟音と共に、強風を巻き起こして都営の電車がやってくる。
 大島始発で、日曜日の朝の新宿止まりとあってか、電車は空いていた。
 強風でリサのスカートが捲れそうになったので、リサは裾を押さえた。

 愛原「そんな短いスカート穿いてくるから」
 リサ「だってぇ……」

〔1番線の電車は、各駅停車、新宿行きです。きくかわ~、菊川~〕

 

 1番後ろの車両に乗り込み、空いている座席に腰かける。
 私の隣にはリサが座り、腕を組んで来る。
 というか、前から腕は組んで来ている。
 因みに今日は、スカートの下にブルマは穿いていないらしい。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 すぐに短い発車メロディが鳴って、ドアが閉まる。
 乗務員室から車掌が運転士に対し、発車合図のブザーを鳴らすと、エアーの抜ける音がして、電車が動き出した。

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕

 リサは左手で私の腕を組みながら、右手ではスマホを弄っていた。
 これだけだと、とても本気で戦えば、BSAAにも死傷者を出すほどのラスボス生物兵器には見えない。
 もっとも、エブリンも本当はそうだったのだが。
 尚、地下鉄線内であっても、GPSは繋がるのだろうか?
 今日の旅行のコースについては、事前にデイライトに提出している。
 そして、デイライトからBSAAに伝わっているはずだ。
 今のところ、そちら方面から何の連絡も無いところを見ると、何も問題は無いと見て良いだろう。

 リサ「ねぇ、先生」
 愛原「どうした?」
 リサ「今回のルートだと、錦糸町駅から乗った方がいいみたいなのに、どうしてわざわざ新宿駅から乗ろうとするの?」
 愛原「まあ、俺の趣味として、始発駅か乗りたいというのはあるんだが……。旅の楽しみの駅弁が、新宿駅や千葉駅まで行かないと買えないという問題が発生しているのだ!」
 リサ「それは大問題だね!」
 愛原「だろォ!?それなら、この地下鉄なら新宿駅まで電車1本だし、それで新宿駅から乗ってやろうという魂胆だ」
 リサ「なるほど!さすが先生!」

 食べ物問題を出すと、リサはいとも簡単に同調してくれたのだった。
 チョロ鬼w
コメント
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