報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「東京湾フェリーの旅」

2024-05-26 20:33:12 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月9日09時45分 天候:晴 千葉県富津市金谷 JR浜金谷駅→東京湾フェリー金谷港]

 

 浜金谷駅は1面2線の島式ホーム。
 単線区間において、上下列車交換可能駅となっている。
 駅舎に向かうには、跨線橋を昇り降りしなくてはならない。
 無人駅ではないのだが、雰囲気がローカル線そのものである。
 鋸山などの観光地もあるせいか、この駅で降りる乗客は多い。
 夏場は海水浴場も点在しているので、海水浴客も乗降するのだろう。

 愛原「ここにカードをタッチするんだ」
 リサ「おー」

 駅舎に入る改札口には、ICカードの読取機が設置されている。
 特急券は駅員に渡すのだが、乗車券は読取機にタッチという、ある意味アクロバットな通過をする。

 高橋「先生、一服していいですか?」
 愛原「いいよ」

 旧国鉄時代の規格化された駅舎は、だいたいどこも全国的に造りが一緒である。
 駅の外に出ると喫煙所があるので、高橋とパールはここで一服。
 その間に……。

 愛原「リサ、記念に撮ってあげようか」
 リサ「いいの!?」

 駅舎をバックに、リサを撮影。
 人間形態で写ったので、その様は普通の女の子のよう。

 リサ「いいねぇ!『魔王軍』のLINEで流しておこう。『わたしの新しい肖像写真』ってことで」
 愛原「いいのかなぁ……」

 とはいえ、リサの楽しそうな写真なので、これはデイライトへの報告書に添付して良いだろう。
 私もタダでリサと同居しているわけではない。
 毎日、リサの状況を報告書にしてデイライトに送っているのだ。

 高橋「お待たせしました」

 2人の喫煙者の一服が終わると、私達は港に向かって歩き出した。
 駅前の道を進み、最初の十字路を右に曲がって県道237号線を進む。
 道は狭いが舗装されていて、住宅街になっていた。
 曲がらずにそのまま真っ直ぐ行くと国道127号線に出て、そこを右に曲がっても行けるのだが、交通量が多い割に歩道が狭いので、車の少ない県道を行った方が良い。
 海が近いのか、時折吹いてくる風は潮の香りが混じっている。
 その為、鼻の利くリサなんかは……。

 リサ「……ックシュ!……ックシュ!……ックシュ!」

 くしゃみを3回もした。
 緑色のマスクを押さえる。

 リサ「うへー……」
 愛原「リサも山育ちだったから、潮風には慣れてないんだろ」
 リサ「そういうもんかな……」

 しばらく歩くと、国道127号線との交差点に到着する。
 ガソリンスタンドの裏手だ。
 この横断歩道を渡ると、もう金谷港である。
 横断歩道で信号待ちをしていると、バイクの集団が下り線を通過していった。
 ハーレーダビッドソンの集団だったことから、年配者が多いのかもしれない。

 愛原「金と時間のある団塊世代はいいねぇ……」
 高橋「あれ1台で、車1台買えますからね」
 愛原「だろうなぁ……」

 尚この2人、車ではなく、バイクを買って、それで新婚旅行に行きたいらしい。
 その為、今はバイクを買う金を貯めているのだとか。

 愛原「デイライトに没収されている栗原家のインゴッド、早く返してもらえるといいねぇ……」
 高橋「全くです!ねーちゃん、いつ返してくれるんスか!?」
 愛原「まだ先らしい」
 高橋「先生の力で、どうか1つお願いします」
 愛原「国家権力には誰も逆らえないって、お前も知ってるだろう?」
 高橋「そりゃそうですけど……」

 信号が変わったので、横断歩道を渡る。
 因みにこの国道、愛称は『内房なぎさライン』というらしい。
 名前だけ聞くと、一瞬JR内房線の愛称かと思ってしまう。

 愛原「あそこだ」

 広大な駐車場の中に、フェリー乗り場はあった。

 

 高橋「ここっスか」

 東京湾フェリーはカーフェリーである。
 よって、駐車場にはフェリーに乗り込む為に列を作って待つ車やバイクの姿があった。

 愛原「次の便は10時25分だ。まだ少し時間あるから、この辺を少し探索しよう。何なら、『恋人の聖地』なるものがあるらしいぞ?」
 リサ「えっ、本当!?」(;゚∀゚)=3

 リサは鼻息を荒くした。

 愛原「このターミナルの建物の裏手にあるらしい」

 そこへ回ってみると……。

 

 愛原「今日は天気がいいから、富士山が見えるな」
 リサ「ホントだー!」
 高橋「写真に撮りましょう」

 まだ4月初めなので、富士山は雪を被っている。

 

 愛原「これだよ」

 それは鐘だった。

 

 富士山をバックに、カップルで鐘を鳴らすと幸せになれるという謂れでもあるのだろうか。

 愛原「高橋とパール、鳴らしてみろ?俺が写真撮ってやるから」
 高橋「先生、あざーっス!」

 私が高橋とパールの新婚夫婦を撮ってやった。
 すると……。

 リサ「先生!わたし達も撮ろうよぉ!?」
 愛原「興奮して鬼形態になっとる!?」
 パール「先生、これは一緒に撮ってあげないと、フェリーに乗れないフラグです」
 高橋「そうですよ!戦闘が発生してしまいます!」
 愛原「お前らなぁ……!」
 リサ「そーだよ、先生」
 愛原「お前も肯定すんな!」

 天気も良いので、周りには人がいる。
 リサの形態がバレる前に、さっさと写真撮影してしまおう。

 愛原「急いで撮ってくれよ?急いで!」
 高橋「分かってます」
 リサ「いえーい!」

 リサは牙を剥いた満面の笑みで、私は引きつった笑みを浮かべて一緒に鐘を鳴らした。
 その瞬間を高橋はスマホに収めた。

 高橋「これでどうです?」
 愛原「よ、よし!いいだろう!」
 リサ「いいねぇ!『魔王軍』に自慢できる!」
 愛原「それは良かった……。リサ、落ち着いて人間形態に戻れ!」
 リサ「うん」

 リサは深呼吸して気持ちを落ち着かせると、角を引っ込め、耳も丸くなり、長く尖った爪も短くなった。

 愛原「ふう……。と、とにかく、中に入ってキップを買うぞ」
 リサ「はーい」

 私達はターミナルの中に入った。

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