[4月1日18時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階ダイニング]
夕食直前、私は善場主任と連絡を取っていた。
愛原「……はい。今のところ、リサに異変は起きていません」
善場「かしこまりました。もし何かありましたら、すぐにでも御連絡をお願いします」
愛原「分かりました。それでは失礼します」
私は電話を切った。
高橋「先生、夕飯ですよー」
愛原「おーう」
私がリビングからダイニングに移動すると、今日は中華のようだった。
愛原「今日は中華か」
高橋「そうです。よくよく考えてみたら、中華にする日ってあんま無いんスよね?」
愛原「あー、まあ、確かにな」
高橋「チャーハンなら米を沢山使うので、リサも腹一杯になるでしょう」
愛原「それは助かる。腹空かせると、噛み付いて来るからな」
高橋「犬っスね、犬!」
リサ「ワンワンっ!ガブッ!」
リサ、高橋に噛み付く。
高橋「いっでーっ!」
リサ「誰が犬だよ!」
高橋「オメーだよ、オメー!」
愛原「腹が空かなくても噛み付いたか……」
リサ「いや、お腹は空いてるけどね」
愛原「今日はチャーハンと唐揚げ、ギョーザとチンジャオロースだ」
リサ「フム。回鍋肉やエビチリは無いんだ?」
愛原「辛い物食ったら、火を吹くだろ?」
高橋「ドラゴンかよ……。あ、先生、ビールです」
愛原「ありがとう。中華料理にはビールが合うんよ」
高橋「確かに……」
リサ「そうですねー」
愛原「いや、オマエはダメだからな?」
リサ「ちっ……」
愛原「中華料理なんだから、ウーロン茶にしとけ」
リサ「しょうがないなぁ……」
それで食べ始める。
愛原「うん、ギョーザは羽根つきのパリパリだな」
高橋「いいタイミングで冷凍ギョーザが買えたんスよ」
愛原「それは素晴らしい。パールは何時頃帰って来るって?」
高橋「9時か10時頃だそうです。『先生に迷惑掛けねー時間帯に帰って来い』とは言ってあります」
愛原「まあ、近所迷惑にならなかったら、いい大人なんだし、午前様になっても別にいいんだけどね。取りあえず、リサには先に風呂に入ってもらおう」
高橋「うス」
リサ「えー。わたし、先生の残り湯に浸かりたい」
高橋「バカヤロウ!それは俺の特権だ!俺は先生の一番弟子だぞ!」
リサ「わたしは先生の許嫁だもんねー!」
高橋「誰が許可しやがったー!?」
愛原公一「愛原家としては、長兄のワシと次兄にしてこいつの父親が認めた」
リサ「ほらぁ!先生の親兄弟公認だよ!?」
高橋「うるせぇっ!」
愛原学「ちょっと待て、お前ら」
高橋「はっ!?」
リサ「いや、ちょっと……」
公一「フム。チンジャオロースの味付けは少々濃い目じゃな。あと、オイスターソースの使い過ぎぢゃ。もう少し控えると良い」
学「伯父さん!?いつの間に!?」
公一「なぁに、近くを通ったものでな。ついでに、夕飯を預かるぞい」
リサ「伯父さん!わたし、先生のお嫁さんでいいんだよね!?」
公一「うむ。好きにすると良い」
リサ「わぁい!」
高橋「自分の甥っ子を化け物にする気ですか!?」
公一「心配要らん。こいつは既に化け物ぢゃ」
学「えっ?」
高橋「えっ?」
リサ「えっ?」
公一「ん?何を驚いておる?Tウィルスに完全な抗体を持ち、Gウィルスも特異菌も効かん。化け物同然じゃろがい」
高橋「た、確かに……」
学「そりゃそうだけど、人を何だと思ってるの」
公一「褒めとるんじゃないか」
学「それより、今日は何の用?」
公一「栗原蓮華を物の見事に倒した勇敢な孫を褒めに来たのぢゃ」
学「伯父さん伯父さん、倒したの、コイツ」
リサ「はーい!わたしでーす!」
公一「鬼同士の戦いは不毛だと言われるが、よくやった」
リサ「わたしの炎で、黒焦げですよ」
公一「なに、そうか。今度は電撃ではなく、火炎か。火事には注意しなくちゃならんなー」
学「ま、まあね」
実際、藤野の研究施設のスプリンクラーを作動させたほどらしいからな。
公一「学校で腹の立つことをされても、火を吹くんじゃないぞ?」
リサ「新たな七不思議の誕生になったりしてね?『火を吹く女』って」
学「もはや七不思議でも何でもない……」
公一「ところで、春休みが終わる前に、温泉にでも入りに行くんじゃろ?」
学「計画はしてますよ」
公一「那須塩原の鬼の棲む宿に行くのか?」
学「いやあ、あそこは……」
リサ「…… ボッ🔥」
リサ、口から軽く日を吹いた。
少し火力の強いライターの火くらい。
学「うわっ?!本当に火を吹いた!辛い物を食べてないのに何で!?」
リサ「これ!」
リサはギョーザのたれに使用しているラー油を指さした。
公一「うーむ……。辛い物なら何でも燃料になるようじゃの」
リサ「あんな女の所になんか、行っちゃダメだよ?」
学「わ、分かってるよ」
既に行っちゃってまーす。
私は高橋に目で合図をした。
高橋も頷いた。
学「別の所に行こう。もっとも、平日は俺も休めないし、明日はオマエ、『魔王軍』との付き合いがあるんだろ?日帰りで良かったら、近場にはなるが、考えておくよ」
リサ「おー!」
高橋「じゃあ俺、車出しますんで……」
学「点数残り1のキミには、期待していないよ?w」
高橋「ぐぇぇ」
学「電車で行ける所を探すさ。それでいいな?」
リサ「はーい」
学「へい」
公一「飯を頂いたら、帰るとしよう。ワシはお尋ね者じゃし、長居はお前達に迷惑が掛かるでな」
学「あまりにもフツーに夕食食べに来ただけだからって、デイライトへの通報は忘れることにしておくよ」
公一「うむ。そうしてくれると助かる」
学「別に“青いアンブレラ”は悪い組織じゃないんでしょ?」
公一「そう信じてくれると助かる。まあ、頭の固い政府の連中はそう思っておらんようじゃがな」
学「お役人達なんだからしょうがない」
公一「もっと悪いバイオテロ組織は、未だにこの令和の世に存在しておる。それらを追うのが、ワシらの仕事じゃ」
学「ヴェルトロの生き残りとか?」
公一「そんなもんおらんよ」
学「え!?」
公一「あれは他の組織に対する陽動作戦じゃな。ワシらで何度も調査したが、どうもヴェルトロの生き残りなんぞ存在せんようじゃぞ?」
学「すると、富士宮の民宿を爆破させたのは……?」
公一「他の組織じゃろう。まだ確定ではないし、ワシも元科学者として、迂闊なことは言えんのじゃ。まあ……エブリンを造った組織辺りが怪しいと見ておるが」
学「エブリンを造った組織……。HCFとか、コネクションとか、その辺りか……」
公一「そういうことじゃよ。ワシがこうして鉄砲玉的に出入りしておるのは、“青いアンブレラ”パトロール中という主張の為でもあるのじゃよ」
高橋「『警察官立寄所』みたいなものですね?」
公一「まあ、そんなところじゃ。そういうわけなので、くれぐれも用心せいよ?大きな敵を倒した直後が、危険だったりするからな?」
『勝って兜の緒を締めよ』という諺が私の脳裏をよぎった。
夕食直前、私は善場主任と連絡を取っていた。
愛原「……はい。今のところ、リサに異変は起きていません」
善場「かしこまりました。もし何かありましたら、すぐにでも御連絡をお願いします」
愛原「分かりました。それでは失礼します」
私は電話を切った。
高橋「先生、夕飯ですよー」
愛原「おーう」
私がリビングからダイニングに移動すると、今日は中華のようだった。
愛原「今日は中華か」
高橋「そうです。よくよく考えてみたら、中華にする日ってあんま無いんスよね?」
愛原「あー、まあ、確かにな」
高橋「チャーハンなら米を沢山使うので、リサも腹一杯になるでしょう」
愛原「それは助かる。腹空かせると、噛み付いて来るからな」
高橋「犬っスね、犬!」
リサ「ワンワンっ!ガブッ!」
リサ、高橋に噛み付く。
高橋「いっでーっ!」
リサ「誰が犬だよ!」
高橋「オメーだよ、オメー!」
愛原「腹が空かなくても噛み付いたか……」
リサ「いや、お腹は空いてるけどね」
愛原「今日はチャーハンと唐揚げ、ギョーザとチンジャオロースだ」
リサ「フム。回鍋肉やエビチリは無いんだ?」
愛原「辛い物食ったら、火を吹くだろ?」
高橋「ドラゴンかよ……。あ、先生、ビールです」
愛原「ありがとう。中華料理にはビールが合うんよ」
高橋「確かに……」
リサ「そうですねー」
愛原「いや、オマエはダメだからな?」
リサ「ちっ……」
愛原「中華料理なんだから、ウーロン茶にしとけ」
リサ「しょうがないなぁ……」
それで食べ始める。
愛原「うん、ギョーザは羽根つきのパリパリだな」
高橋「いいタイミングで冷凍ギョーザが買えたんスよ」
愛原「それは素晴らしい。パールは何時頃帰って来るって?」
高橋「9時か10時頃だそうです。『先生に迷惑掛けねー時間帯に帰って来い』とは言ってあります」
愛原「まあ、近所迷惑にならなかったら、いい大人なんだし、午前様になっても別にいいんだけどね。取りあえず、リサには先に風呂に入ってもらおう」
高橋「うス」
リサ「えー。わたし、先生の残り湯に浸かりたい」
高橋「バカヤロウ!それは俺の特権だ!俺は先生の一番弟子だぞ!」
リサ「わたしは先生の許嫁だもんねー!」
高橋「誰が許可しやがったー!?」
愛原公一「愛原家としては、長兄のワシと次兄にしてこいつの父親が認めた」
リサ「ほらぁ!先生の親兄弟公認だよ!?」
高橋「うるせぇっ!」
愛原学「ちょっと待て、お前ら」
高橋「はっ!?」
リサ「いや、ちょっと……」
公一「フム。チンジャオロースの味付けは少々濃い目じゃな。あと、オイスターソースの使い過ぎぢゃ。もう少し控えると良い」
学「伯父さん!?いつの間に!?」
公一「なぁに、近くを通ったものでな。ついでに、夕飯を預かるぞい」
リサ「伯父さん!わたし、先生のお嫁さんでいいんだよね!?」
公一「うむ。好きにすると良い」
リサ「わぁい!」
高橋「自分の甥っ子を化け物にする気ですか!?」
公一「心配要らん。こいつは既に化け物ぢゃ」
学「えっ?」
高橋「えっ?」
リサ「えっ?」
公一「ん?何を驚いておる?Tウィルスに完全な抗体を持ち、Gウィルスも特異菌も効かん。化け物同然じゃろがい」
高橋「た、確かに……」
学「そりゃそうだけど、人を何だと思ってるの」
公一「褒めとるんじゃないか」
学「それより、今日は何の用?」
公一「栗原蓮華を物の見事に倒した勇敢な孫を褒めに来たのぢゃ」
学「伯父さん伯父さん、倒したの、コイツ」
リサ「はーい!わたしでーす!」
公一「鬼同士の戦いは不毛だと言われるが、よくやった」
リサ「わたしの炎で、黒焦げですよ」
公一「なに、そうか。今度は電撃ではなく、火炎か。火事には注意しなくちゃならんなー」
学「ま、まあね」
実際、藤野の研究施設のスプリンクラーを作動させたほどらしいからな。
公一「学校で腹の立つことをされても、火を吹くんじゃないぞ?」
リサ「新たな七不思議の誕生になったりしてね?『火を吹く女』って」
学「もはや七不思議でも何でもない……」
公一「ところで、春休みが終わる前に、温泉にでも入りに行くんじゃろ?」
学「計画はしてますよ」
公一「那須塩原の鬼の棲む宿に行くのか?」
学「いやあ、あそこは……」
リサ「…… ボッ🔥」
リサ、口から軽く日を吹いた。
少し火力の強いライターの火くらい。
学「うわっ?!本当に火を吹いた!辛い物を食べてないのに何で!?」
リサ「これ!」
リサはギョーザのたれに使用しているラー油を指さした。
公一「うーむ……。辛い物なら何でも燃料になるようじゃの」
リサ「あんな女の所になんか、行っちゃダメだよ?」
学「わ、分かってるよ」
既に行っちゃってまーす。
私は高橋に目で合図をした。
高橋も頷いた。
学「別の所に行こう。もっとも、平日は俺も休めないし、明日はオマエ、『魔王軍』との付き合いがあるんだろ?日帰りで良かったら、近場にはなるが、考えておくよ」
リサ「おー!」
高橋「じゃあ俺、車出しますんで……」
学「点数残り1のキミには、期待していないよ?w」
高橋「ぐぇぇ」
学「電車で行ける所を探すさ。それでいいな?」
リサ「はーい」
学「へい」
公一「飯を頂いたら、帰るとしよう。ワシはお尋ね者じゃし、長居はお前達に迷惑が掛かるでな」
学「あまりにもフツーに夕食食べに来ただけだからって、デイライトへの通報は忘れることにしておくよ」
公一「うむ。そうしてくれると助かる」
学「別に“青いアンブレラ”は悪い組織じゃないんでしょ?」
公一「そう信じてくれると助かる。まあ、頭の固い政府の連中はそう思っておらんようじゃがな」
学「お役人達なんだからしょうがない」
公一「もっと悪いバイオテロ組織は、未だにこの令和の世に存在しておる。それらを追うのが、ワシらの仕事じゃ」
学「ヴェルトロの生き残りとか?」
公一「そんなもんおらんよ」
学「え!?」
公一「あれは他の組織に対する陽動作戦じゃな。ワシらで何度も調査したが、どうもヴェルトロの生き残りなんぞ存在せんようじゃぞ?」
学「すると、富士宮の民宿を爆破させたのは……?」
公一「他の組織じゃろう。まだ確定ではないし、ワシも元科学者として、迂闊なことは言えんのじゃ。まあ……エブリンを造った組織辺りが怪しいと見ておるが」
学「エブリンを造った組織……。HCFとか、コネクションとか、その辺りか……」
公一「そういうことじゃよ。ワシがこうして鉄砲玉的に出入りしておるのは、“青いアンブレラ”パトロール中という主張の為でもあるのじゃよ」
高橋「『警察官立寄所』みたいなものですね?」
公一「まあ、そんなところじゃ。そういうわけなので、くれぐれも用心せいよ?大きな敵を倒した直後が、危険だったりするからな?」
『勝って兜の緒を締めよ』という諺が私の脳裏をよぎった。