報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「土曜日夜の探偵達」

2024-05-15 20:31:18 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月1日18時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階ダイニング]

 夕食直前、私は善場主任と連絡を取っていた。

 愛原「……はい。今のところ、リサに異変は起きていません」
 善場「かしこまりました。もし何かありましたら、すぐにでも御連絡をお願いします」
 愛原「分かりました。それでは失礼します」

 私は電話を切った。

 高橋「先生、夕飯ですよー」
 愛原「おーう」

 私がリビングからダイニングに移動すると、今日は中華のようだった。

 愛原「今日は中華か」
 高橋「そうです。よくよく考えてみたら、中華にする日ってあんま無いんスよね?」
 愛原「あー、まあ、確かにな」
 高橋「チャーハンなら米を沢山使うので、リサも腹一杯になるでしょう」
 愛原「それは助かる。腹空かせると、噛み付いて来るからな」
 高橋「犬っスね、犬!」
 リサ「ワンワンっ!ガブッ!

 リサ、高橋に噛み付く。

 高橋「いっでーっ!」
 リサ「誰が犬だよ!
 高橋「オメーだよ、オメー!」
 愛原「腹が空かなくても噛み付いたか……」
 リサ「いや、お腹は空いてるけどね」
 愛原「今日はチャーハンと唐揚げ、ギョーザとチンジャオロースだ」
 リサ「フム。回鍋肉やエビチリは無いんだ?」
 愛原「辛い物食ったら、火を吹くだろ?」
 高橋「ドラゴンかよ……。あ、先生、ビールです」
 愛原「ありがとう。中華料理にはビールが合うんよ」
 高橋「確かに……」
 リサ「そうですねー」
 愛原「いや、オマエはダメだからな?」
 リサ「ちっ……」
 愛原「中華料理なんだから、ウーロン茶にしとけ」
 リサ「しょうがないなぁ……」

 それで食べ始める。

 愛原「うん、ギョーザは羽根つきのパリパリだな」
 高橋「いいタイミングで冷凍ギョーザが買えたんスよ」
 愛原「それは素晴らしい。パールは何時頃帰って来るって?」
 高橋「9時か10時頃だそうです。『先生に迷惑掛けねー時間帯に帰って来い』とは言ってあります」
 愛原「まあ、近所迷惑にならなかったら、いい大人なんだし、午前様になっても別にいいんだけどね。取りあえず、リサには先に風呂に入ってもらおう」
 高橋「うス」
 リサ「えー。わたし、先生の残り湯に浸かりたい」
 高橋「バカヤロウ!それは俺の特権だ!俺は先生の一番弟子だぞ!」
 リサ「わたしは先生の許嫁だもんねー!」
 高橋「誰が許可しやがったー!?」
 愛原公一「愛原家としては、長兄のワシと次兄にしてこいつの父親が認めた」
 リサ「ほらぁ!先生の親兄弟公認だよ!?」
 高橋「うるせぇっ!」
 愛原学「ちょっと待て、お前ら」
 高橋「はっ!?」
 リサ「いや、ちょっと……」
 公一「フム。チンジャオロースの味付けは少々濃い目じゃな。あと、オイスターソースの使い過ぎぢゃ。もう少し控えると良い」
 学「伯父さん!?いつの間に!?」
 公一「なぁに、近くを通ったものでな。ついでに、夕飯を預かるぞい」
 リサ「伯父さん!わたし、先生のお嫁さんでいいんだよね!?」
 公一「うむ。好きにすると良い」
 リサ「わぁい!」
 高橋「自分の甥っ子を化け物にする気ですか!?」
 公一「心配要らん。こいつは既に化け物ぢゃ」
 学「えっ?」
 高橋「えっ?」
 リサ「えっ?」
 公一「ん?何を驚いておる?Tウィルスに完全な抗体を持ち、Gウィルスも特異菌も効かん。化け物同然じゃろがい」
 高橋「た、確かに……」
 学「そりゃそうだけど、人を何だと思ってるの」
 公一「褒めとるんじゃないか」
 学「それより、今日は何の用?」
 公一「栗原蓮華を物の見事に倒した勇敢な孫を褒めに来たのぢゃ」
 学「伯父さん伯父さん、倒したの、コイツ」
 リサ「はーい!わたしでーす!」
 公一「鬼同士の戦いは不毛だと言われるが、よくやった」
 リサ「わたしの炎で、黒焦げですよ」
 公一「なに、そうか。今度は電撃ではなく、火炎か。火事には注意しなくちゃならんなー」
 学「ま、まあね」

 実際、藤野の研究施設のスプリンクラーを作動させたほどらしいからな。

 公一「学校で腹の立つことをされても、火を吹くんじゃないぞ?」
 リサ「新たな七不思議の誕生になったりしてね?『火を吹く女』って」
 学「もはや七不思議でも何でもない……」
 公一「ところで、春休みが終わる前に、温泉にでも入りに行くんじゃろ?」
 学「計画はしてますよ」
 公一「那須塩原の鬼の棲む宿に行くのか?」
 学「いやあ、あそこは……」
 リサ「…… ボッ🔥」

 リサ、口から軽く日を吹いた。
 少し火力の強いライターの火くらい。

 学「うわっ?!本当に火を吹いた!辛い物を食べてないのに何で!?」
 リサ「これ!」

 リサはギョーザのたれに使用しているラー油を指さした。

 公一「うーむ……。辛い物なら何でも燃料になるようじゃの」
 リサ「あんな女の所になんか、行っちゃダメだよ?」
 学「わ、分かってるよ」

 既に行っちゃってまーす。
 私は高橋に目で合図をした。
 高橋も頷いた。

 学「別の所に行こう。もっとも、平日は俺も休めないし、明日はオマエ、『魔王軍』との付き合いがあるんだろ?日帰りで良かったら、近場にはなるが、考えておくよ」
 リサ「おー!」
 高橋「じゃあ俺、車出しますんで……」
 学「点数残り1のキミには、期待していないよ?w」
 高橋「ぐぇぇ」
 学「電車で行ける所を探すさ。それでいいな?」
 リサ「はーい」
 学「へい」
 公一「飯を頂いたら、帰るとしよう。ワシはお尋ね者じゃし、長居はお前達に迷惑が掛かるでな」
 学「あまりにもフツーに夕食食べに来ただけだからって、デイライトへの通報は忘れることにしておくよ」
 公一「うむ。そうしてくれると助かる」
 学「別に“青いアンブレラ”は悪い組織じゃないんでしょ?」
 公一「そう信じてくれると助かる。まあ、頭の固い政府の連中はそう思っておらんようじゃがな」
 学「お役人達なんだからしょうがない」
 公一「もっと悪いバイオテロ組織は、未だにこの令和の世に存在しておる。それらを追うのが、ワシらの仕事じゃ」
 学「ヴェルトロの生き残りとか?」
 公一「そんなもんおらんよ」
 学「え!?」
 公一「あれは他の組織に対する陽動作戦じゃな。ワシらで何度も調査したが、どうもヴェルトロの生き残りなんぞ存在せんようじゃぞ?」
 学「すると、富士宮の民宿を爆破させたのは……?」
 公一「他の組織じゃろう。まだ確定ではないし、ワシも元科学者として、迂闊なことは言えんのじゃ。まあ……エブリンを造った組織辺りが怪しいと見ておるが」
 学「エブリンを造った組織……。HCFとか、コネクションとか、その辺りか……」
 公一「そういうことじゃよ。ワシがこうして鉄砲玉的に出入りしておるのは、“青いアンブレラ”パトロール中という主張の為でもあるのじゃよ」
 高橋「『警察官立寄所』みたいなものですね?」
 公一「まあ、そんなところじゃ。そういうわけなので、くれぐれも用心せいよ?大きな敵を倒した直後が、危険だったりするからな?」

 『勝って兜の緒を締めよ』という諺が私の脳裏をよぎった。
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“私立探偵 愛原学” 「帰宅した探偵達」

2024-05-15 15:53:26 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月1日14時45分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所]

 車は無事に事務所の前に到着した。
 2トントラックが1台通れれば良いくらいの道幅で、一方通行である。

 高橋「ちょっと待っててくれ。今、シャッター開けて来る」
 佐元「うっス」

 高橋は助手席から降りると、シャッター横の玄関を開けて中に入り、そこからガレージに移動した。
 そして、中から電動シャッターを開ける。

 愛原「いいよ、入って」
 佐元「お邪魔しまーす」

 佐元君はバックで、車をガレージの中に入れた。

 佐元「はい、到着っス」
 愛原「ありがとう」
 リサ「わたし、荷物降ろすね」

 先にリサが車を降りた。
 高橋はエレベーターを呼んでくれていて、リサがハッチを開けて自分のキャリーケースを降ろしている。

 愛原「今日、休みだったの?」
 佐元「今日は休みです」
 愛原「休みだったのに申し訳ないね」
 佐元「大丈夫っス。ちょうど車、ガソリン入れるところだったんで」
 愛原「そうだつたのか。これ、少ないけど、チップとして」
 佐元「あざーっス!」
 愛原「結局、往復乗せてもらって悪いねぇ……」

 私は佐元氏に1000円札を1枚渡した。

 佐元「マサの頼みなんで、問題無いっス。それじゃまた、工事の御用命は佐元工務店へヨロシクお願いします」
 愛原「ああ、了解」
 高橋「あっ、先生。俺、サムと話があるんで、先に上がっててもらえますか?」
 愛原「そうか?じゃあ、お先に」
 高橋「はい!」

 私とリサはエレベーターに乗り込んだ。
 ドアが閉まると、ドアの窓から高橋が佐元氏に何か話し掛けて行くのが見えた。

 愛原「まずは洗濯物を出さないとな」
 リサ「一応、洗濯ならしたよ」
 愛原「そうなのか?あのコインランドリーで?」
 リサ「善場さんが洗濯しなさいってうるさくて……」
 愛原「そういうことか」
 リサ「ゴメンねぇ。美少女BOW女子高生の使用済み下着、あげられなくて……」
 愛原「いや、いいんだよ。こういうのは脱ぎたての方がいい……」
 リサ「えっ?!」
 愛原「えっ?」
 リサ「今、何て言ったの!?」
 愛原「な、何でもないよ」
 リサ「ねぇ!今何て言ったの!?」
 愛原「さあ、エレベーターが着くぞ」
 リサ「もう!」

 出す洗濯物は無いということで、3階ではなく、4階まで上った。

 愛原「リサ、先にできたてホヤホヤのシャワーから見るか?」
 リサ「そうだね。ちょっと見てみたい」
 愛原「こっちだよ」

 4階の奥、階段側のすぐ近くだ。
 元々は6畳間があった所を、最初の住人が半分潰して、3畳分をトイレと洗面所に造り換えた。
 本当は残りの3畳分もシャワールームにしたかったそうなのだが、予算の都合で頓挫し、ただの納戸になってしまっていた。
 しかし倉庫や収納は他にもあるので、せいぜい掃除用具入れ程度の用途しかなく、殆どデッドスペースになっていた。
 それをようやく予算が確保できた現在の住人である私が、満を持して増設に漕ぎ付けたという次第だ。

 愛原「こんな感じかな」
 リサ「ほおほお」

 シャワーブースが1畳分、脱衣スペースを1畳分として、残りの1畳分については、脱衣カゴなど置く棚を半畳分、もう半畳分を掃除用具入れとした。
 もちろん、スペース配分を分かりやすく説明するのに畳の広さを例えにしただけで、本当にピッタリ畳1枚分がそのままシャワーブースなどというわけではないので念の為。
 照明は暖色のLED電球が1つ、その隣に小さな換気扇がある。
 出入口の扉は折り戸になっていて、中はシャワーが1つと壁に固定されている扇形の椅子があった。

 リサ「……何か、藤野の施設のシャワーブースみたいだね」
 愛原「あっ、やっぱりそう思うか?」

 業務用のボイラーからお湯が供給されると思われる施設のシャワーブースには、個別の温度設定調節のパネルが無い。
 しかし、ここは家庭用。
 3階のキッチンや風呂と同様、ここもボイラーの電源ボタンや温度設定を調節するパネルが付いていた。
 それはまあ、前からあった洗面所でお湯を出す時に使用していたが。

 愛原「いつでも使っていいからな?」
 リサ「分かった。でも、今日は湯船に浸かりたい」
 愛原「分かったよ。温泉の素もあるから、それで温泉気分を味わってくれ」
 リサ「わーい」
 愛原「それじゃ、俺は下にいるから、ちゃんと荷物整理しろよ?」
 リサ「ちょっと待って」
 愛原「何だ?」

 リサは私の手を掴んだ。

 リサ「わたしの部屋から、先生の匂いがするんだけど、わたしの部屋に入った?」
 愛原「入ったというか、無理やり入れられたというか……。鼻が鋭いな?換気してファブリーズしたのに……」
 リサ「そんなことしなくていいのに……」
 愛原「オマエの部屋から、寄生虫が変化した手のお化けが出て来たんだ」
 リサ「手のオバケ???」

 リサは首を傾げた。

 愛原「やっぱ知らないか。お前の分身とも言うべき感じでさ、手を握ってみたら、オマエと握手しているのと同じ感覚だったよ」
 リサ「こんな感じ?」

 リサは私の手を握って来た。
 柔らかい手の感触がゾワゾワと伝わって来る。
 鬼型BOWらしく、爪は長くて尖っているが、今は殺気は無い。

 愛原「そうそう。オマエは知らないんだ?」
 リサ「うーん……知らないねぇ……。でも、夢には出て来たよ」
 愛原「そうなのか!?」

 リサ、部屋の中に入ると、自分のベッドにダイブする。
 残念ながらスカートではないので、それでスカートが捲れて……ということはない。

 リサ「……うん、先生の匂いが僅かにする。わたしのベッドで寝たんだぁ?
 愛原「オマエの分身達が、ここで寝ろってうるさくて!ほら、証拠!」

 私は手達が書いたメモを渡した。
 よく見たら、リサの字とそっくりである。

 リサ「はー、なるほど……。で、その手達は?」
 愛原「それが、いつの間にかいなくなってたんだ。一組は家で留守番してもらってたんだけど……」
 リサ「仕事をサボるなんて、困ったもんだねぇ……。まあ、いいや。で、布団洗ったんだ?」
 愛原「オッサンの臭い付きなんて嫌だろ?」
 リサ「先生の匂いだったら、別にいいのにぃ…… そうだ!今度はわたしが、先生のベッドで寝て、わたしの匂い、付けてあげるねぇ……」
 愛原「いや、ちゃんと自分の部屋で寝るんだ」
 リサ「えー……」

 と、そこへ私のスマホにLINEの着信があった。

 愛原「おっと!LINEだ!……なになに?高橋からだな。……夕食の買い出しに行ってきますだってよ」
 リサ「もー!」
 愛原「じゃ、俺は下にいるから」

 私はリサの部屋をあとにすると、階段で3階に向かった。
 エレベーターにしなかったのは、途中で私の部屋に寄ることで、扉の施錠を確認する為であった。
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