goo blog サービス終了のお知らせ 

報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「戦い終わりの報告」

2025-04-23 20:48:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月24日21時00分 天候:晴 秋田県北秋田郡鬼里村 太平山家・分家(民宿『太平屋』)201号室]

 突然の太平山流太との戦いの後で、私は部屋に戻り、善場係長に緊急報告を行った。
 案の定、BSAAではリサの突然の意識喪失の信号が送られており、緊急出動するか否かの騒然とした事態だったという。
 電話しておいて良かった。

 善場「……そうですか。取りあえず現在は、異常は回避できているのですね?」
 愛原「はい。村議会の議長さんや、本家の許嫁に連行されて行きました。『朝まで説教』の刑だそうなので、今夜はもう危険は無いかと」

 ましてや、何だかんだ言って、『夜叉姫』の許嫁まで倒したとあらば、もう村の若い者は恐れて手を出して来ないと思うのだが。

 善場「かしこまりました。とはいえ、『2度ある事は3度ある』と言います。なるべく早く、その村から出た方が良いですね」
 愛原「予定通り、明日には出発します。で、まずは仙台の実家に立ち寄ります。もらった資料をpdfに起こして、係長に送信致します」
 善場「それが御実家ではできるのですね?」
 愛原「父は定年退職後、嘱託雇用の時期は在宅勤務が多かった関係で、そういった設備は揃っているんです」
 善場「所長のお父様は、何のお仕事をされておられたのですか?」
 愛原「NTTですよ。55歳で総合エンジニアリングの関連会社に出向になった後、60歳から65歳まで定年再雇用からの在宅勤務です。まあ、たまに出社はしていたようですが」
 善場「そういうことでしたか。システムエンジニアの方でしたら、PC環境は素晴らしい物でしょうね」
 愛原「私も手持ちのPCはありますが、それだけなので」
 善場「かしこまりました。資料は後ほど送って頂くとして、概要だけ何と書いてあるのか教えて頂けますか?」
 愛原「はい。天長会の事ですね。天長会の……」

 私は概要だけ伝えるつもりが、内容を読み上げる形となってしまった。

 善場「……こちらの調べでは、あくまでも宗教的儀式として、『魂移し』があるのは分かっています。それを科学的にやろうとしたのが、白井伝三郎。……いえ、もう1人いました。アレックス・ウェスカーですね。2011年、北海の孤島で起きたバイオハザード事件の首謀者ですが。日本では東日本大震災があった為に、全くと言って良いほど報道されませんでしたが」
 愛原「アレックス・ウェスカーとの関連は無いんですよね?」
 善場「今現在においても、それは確認されておりません。恐らく2人とも、スタート地点は別々だったのでしょう。そして、たまたまゴール地点が近い場所だったと。これだけの事かと。ですので、恐らくアレックス・ウェスカーが編み出した『魂移し』の方法と白井のそれとは全く別物と思われます」

 その割には、共通点はある。
 それは、『魂移し』を行う条件として、移す先の肉体を用意した後、今使用している肉体を殺さなくてはならないという点だ。
 天長会の儀式でも、呪文の内容に、『古き肉体を捨つるに当たり、神にそれを捧ぐ。即ち是れ、自らを贄として捧ぐもの也……』とあるようだ。

 愛原「天長会には、『魂移し』を防ぐ方法もあるそうです。勝手に贄として用意されたトラブルがあったようで、いわば『呪い返し』のような感じで、『魂返し』を行うのだとか」
 善場「それは良い方法ですね。あくまでも宗教的なものであり、科学的なものではありませんが」
 愛原「全くですね」

 仮に白井が今の斉藤玲子の体を殺したとしよう。
 白井の魂は今度は私の肉体に向かい、それを乗っ取ろうとする。
 しかし、天長会の『魂返し』の儀式を受ければ、それを跳ね返すことができるという。
 跳ね返された魂は、前の体に戻ろうとする。
 しかし、前の体は既に死んでいる為、戻ることができない。
 結果、この世を彷徨う浮遊霊となるか、死神に捕まって地獄へと落ちるのだとか。

 愛原「それにしても、ついに宗教の話にまでになりましたか。いや、それまでも天長会の話はちょこちょこ出てはいましたが……」
 善場「2000年代、BSAAは宗教テロ組織ヴェルトロとも戦いましたし、他にもスペインではロス・イルミナドス教団がバイオテロを起こしたこともあります。アレックス・ウェスカーは宗教団体の運営はしていませんでしたが、活動拠点となった島では、島民達から女神様扱いをされていたとのことです。直近では、ルーマニアの山奥の村で起きたバイオハザード事件ですね。黒幕のマザー・ミランダは、文字通り、村人達からは聖母として信仰の対象になっていたそうです。従いまして、バイオテロ事件と宗教はけして無縁ではないのです」
 愛原「その話しぶりからして、係長は天長会をお疑いで?」
 善場「詳しい事は話せませんが、怪しいとは思っています。何しろ、あの白井が信者だったということもありますし、リサの血縁上の父親に当たるとされる上野医師も関係者だったようですからね。ですので愛原所長には、是非とも『魂返し』の儀式を受けて頂き、教団の内部調査に入って頂きたいのです」
 愛原「分かりました。幸い、上野利恵を通して話ができそうなので、後日、そうしてみます」
 善場「宜しくお願いします」

 すると、部屋のドアがノックされた。
 誰か来たようだ。

 愛原「それでは、失礼致します」
 善場「お疲れ様でした。また何かありましたら、すぐに御連絡ください」

 私は電話を切った。
 その間にも、ドアがノックされる。
 どんどん強くなる。
 最後は足で蹴ってるのかと思うくらい。
 このままだと、ドアが壊されてしまう。

 愛原「はいはい!今出ますよ!」

 私はドアを開けた。
 そこには、鬼のような形相をしたリサが立っていた。

 愛原「な、何だよ?」
 リサ「今、ウエノリエって聞こえたけど?」
 愛原「善場係長との電話で出て来たんだよ。ほら!」

 私は自分のスマホの通話履歴を見せた。
 当然そこには、善場係長のスマホの番号しか出てこない。

 愛原「嘘だと思うなら、お前から善場係長に電話して聞いてみろ。怒られても知らんがな」
 リサ「……そこまでする必要は無いよ。で、何でリエが出て来たの?」
 愛原「白井の脅威から守る術が、天長会にあるかもしれないからさ。いきなり天長会に行くよりは、紹介者がいた方がいい。そんな時、天長園の副支配人である利恵なら打ってつけだという話になったの」
 リサ「どうせ天長園には行くでしょ?」
 愛原「お前達の合宿の監視でな。いきなり儀式をしてくれと言われても困るだろうから、今のうちに連絡しておいた方がいいかもな。……で、何の用で来たの?」
 リサ「『ウエノリエ』って聞こえたから飛んできた」
 愛原「地獄耳かよ……」

 リサは少し尖った耳を指さした。

 リサ「鬼の耳だもん」

 ここは民宿だ。
 ホテルや個室ビデオ店などと違って、あまり防音性は無いのかもしれない。
 今度電話する時は気をつけよう。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “私立探偵 愛原学” 「夜叉... | トップ | “愛原リサの日常” 「鬼里村... »

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。

私立探偵 愛原学シリーズ」カテゴリの最新記事