報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「戦いの後」

2024-05-03 23:07:38 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月26日03時00分 天候:晴 栃木県那須塩原市某所 ホテル天長園上空→屋上]

 ホテルとは県道1つ挟んで反対側にある山は、ロケットランチャーの着弾を受けた影響で火災を起こしていた。

 高野芽衣子「あーあ……。本当は栗原蓮華を倒した手柄、先生にあげようかと思ってたんだけど、これはマズいよね?」
 愛原「そりゃロケランぶっ放したら、火事にもなるわ!」
 高野「しょうがない。罪はこっちで被るから、安心して、先生。その代わり、手柄もこっちの物になるけど……」
 愛原「ああ、いいよいいよ!高野君が倒したのは事実なんだし!それより、どこで降ろしてくれるんだ?」
 高野「そうねぇ……」

 すると私の眼下に、ホテル天長園の屋上が見えた。
 そこには多くの人影が見える。

 愛原「何だ、あれは!?」
 高野「屋上、照らしてくれる?」
 パイロット「はっ!」

 パイロットがヘリのライトで、屋上を照らした。
 すると、そこにいたのは……。

 愛原「高橋!パール!?」

 高橋とパールだった。
 2人は地獄界の獄卒のような鬼達と戦っていた。
 恐らく、彼らは蓮華の手下達だ。
 上野利恵の部下なら、全員が天長会の法被を着ているからだ。
 虎柄模様のパンツは穿いていない。
 しかし、高橋達が交戦しているのは……。

 高野「屋上に追い詰められたのね。で、かなり旗色が悪い」
 愛原「俺も加勢する!あそこに降ろしてくれ!」
 高野「まあまあ、慌てないで。何の為の戦闘ヘリだと思います?」
 愛原「えっ?」
 高野「まあ、見ててください」

 そういうと高野君は、パイロットの隣の席に座った。
 そして、マイクを取る。

 高野「あー、あー!マサとパールちゃん、聞こえる?これから機銃掃射で、その鬼達退治するから、直ちに屋内退避して!以上!」
 愛原「マジか?!」
 高野「マジです」

 そして高野君、機銃のコントローラーを握ると……。

 高野「鬼はァー外ォー!」

 ダダダダダダダと発砲し、鉛の豆を鬼達に撃ち付けた。
 鬼といっても、元は人間なところが上野利恵の部下と同じである。
 見た目は人間の姿が残る利恵の部下と違い、蓮華の手下達は見た目も鬼同然である。
 それが、鉛の豆鉄砲を食らって右往左往していた。

 愛原「季節外れの節分だ!福は呼び込まないのか?」
 高野「愛原先生の存在自体が、『福』です。私達にはもちろん、あの鬼達にとってもです」
 愛原「は?」
 高野「先生は、それだけ今や特別な存在なのですよ」
 愛原「どういう意味だ?」
 パイロット「高野隊長!BSAAのヘリが接近しています!」
 高野「あらま、もう来たのね。じゃあ、先生。屋上のお掃除が終わりましたので、ご希望通り、そこで降ろします。どうかくれぐれも、お気をつけて」
 愛原「ああ、分かった。ありがとう」
 高野「酒呑童子は首だけになっても、源頼光に襲い掛かったと言いますから」
 愛原「は?どういうことだ?蓮華はキミがロケランで倒したじゃないか」

 ヘリは一瞬、屋上に着陸した。
 私は急いでヘリから降りる。

 高野「それじゃ先生、またどこかでお会いしましょう」
 愛原「あ、ああ!ありがとう!」

 私が鬼達の死体で死屍累々の屋上に降り立つと……。

 高橋「先生!」
 パール「愛原先生!御無事でしたか!」

 屋上の階段室内に退避していた高橋とパールが駆け付ける。
 続いて、上野母娘も……。

 愛原「ああ。どうやら、首だけになっても生き延びるのは俺の方らしい」

 私は何気なく、先ほど高野君が言っていたセリフをパクってみた。

 高橋「先生?」

 当然、高橋とパールは何のことか分からず、きょとんとしていた。
 しかし、上野利恵の反応は違った。
 意外そうに目を丸くした。

 上野利恵「先生、御存知だったのですか?」
 愛原「えっ?何が?」
 利恵「い、いえっ!何でもございません!それより、どこかお怪我は無いですか?」
 愛原「どうやら無さそうだ。そもそも、俺は首だけになることも無いようだな」
 高橋「そりゃそうですよ!」
 パール「御無事でないと困ります」
 利恵の部下(半鬼男)A「利恵様、大丈夫ですか?!」
 利恵の部下(半鬼男)B「うわっ!敵共、ここにいたのか!?」
 利恵「愛原先生のお仲間が退治してくれました。手の空いている者達は、ここにある敵の死体を聖堂に運び出して。『地獄送り』をした後、埋葬するのです」
 部下A「はっ!」
 部下B「かしこまりました!」

 利恵の部下の半鬼達は、蓮華の手下の半鬼よりかは、より人間に近い姿をしている。
 パッと見、角が生えているようには見えない。
 それでも暗闇に浮かぶ眼光は、赤く鈍いものである。
 その色は、人間では有り得ない。
 更に、天長会の法被を着ている。
 それから、県道の方からは消防車のサイレンの音が聞こえた。
 山火事の通報を受けて、消防車が出動してきたのだろう。

 利恵「愛原先生方、お疲れでございましょう。新しい部屋をご用意させて頂きますので、どうぞそちらでお休みになってください」
 愛原「気遣いは嬉しいが、どうもそんな暇は無さそうだぞ」
 利恵「は?」
 愛原「なあ、高橋?」
 高橋「は、はい。さっきから、善場のねーちゃんからガンガン電話掛かってきやがりまして。先生、スマホを部屋に落としたんで、通話ができなくて文句言ってるみたいっス」
 愛原「これから事情聴取がある。取りあえず汗だけ流して、あとは私服に着替えるぞ」
 高橋「はい」

 私達は屋内に入った。
 そして、荒らされた部屋の中に入って荷物を回収すると、着ていた浴衣を脱いで、室内備え付けのバスルームに入って汗を流すことにした。
 それから、水をがぶ飲みする。
 こういう戦いは、本当に慣れない。
 レイチェルは、こういうのに慣れる訓練とか積んでるんだろうと思うと、それだけで尊敬する。

 愛原「善場主任、愛原です」

 私は改めて、善場主任に音声通話を掛けた。

 善場「愛原所長!御無事で何よりです!お疲れの事とは存じますが、緊急ですので、事情を聴かせて頂きます!宜しいですね?」
 愛原「はい」

 こりゃ、朝まで寝れないだろうなぁ……。
コメント
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