報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「帰宅へ」

2024-05-13 20:31:23 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月1日14時00分 天候:晴 東京都中央区八重洲 八重洲地下街→東京八重洲パーキング西駐車場]

 高橋「先生。帰りは車で。サムが迎えに来てくれてます」
 愛原「サム?」
 リサ「先生達、最近確変出せなくて影が薄くなっているゴリマッチョのイケメンキャラ」
 愛原「海物語のアイツじゃない!」
 高橋「悪かったな!最近赤字でよ!……あれですよ。工事してくれた佐元ですよ」
 愛原「ああ、あのコか!で、どこに車止めてんの?」
 高橋「ここの地下駐車場です」
 愛原「そうか。料金掛かるから、急いで行こう」
 リサ「ちょっとトイレ」
 愛原「駐車場のトイレに行こうな」
 リサ「はーい」

 駐車場に向かうと、車の所に行く前にトイレに立ち寄った。
 それから向かう。

 愛原「広い駐車場だが、場所は分かるのか?」
 高橋「任せてください。一応、LINEでやり取りはしてるんで、それで場所分かります」
 愛原「さすがは高橋」

 元々は八重洲地下街全体が駐車場になる予定だったらしい。
 通路や店舗が格子状に生前と並べられている上、通路が車がすれ違えるほど広いのはこの為。

 高橋「えーと……LINEによると……この辺……あった!」

 白いハイエースだとなかなか目立たないだろうが、ある程度はゴツく改造されているだけに、それだけですぐに見分けが付いた。
 筆で書いたような明朝体で、『(株)佐元工務店』と書かれている。

 高橋「おい、開けてくでー」

 運転席に座り、リクライニングして寝ている佐元氏。
 それを高橋が窓ガラスをコンコン叩いて起こそうとする。
 しかし、佐元氏は起きない。

 高橋「起きろや、ゴルァッ!!」

 高橋、運転席下のタイヤを思いっ切り蹴っ飛ばした。
 車が大きく揺れる。
 しかし、それでも……。

 佐元「うーん……ムニャムニャ……」
 愛原「全然起きないな?」
 高橋「ガラス、ブチ破るか!」
 愛原「やめなさいって。しょうがないから、タクシーにしよう」
 リサ「ねぇ、お兄ちゃん」
 高橋「あぁ?何だ?」
 リサ「この人も元暴走族だったんだよね?」
 高橋「だから何だ?」
 リサ「それなら……」

 リサは自分のスマホを取り出した。
 そして、何かを操作する。
 それからスマホのスピーカーを運転席に向けて……。

 愛原「あっ!」

 そこから大音量のパトカーのサイレンが流れて来た。

〔「そこの車、止まりなさい!」〕

 高橋「うぉっ!?ビックリした!」

〔「止まれっつってんだろーっ!」「ナンバー分かってんだぞ!!」〕

 すると、運転席で寝ていた佐元氏、ガバッと起きた。

 佐元「うるせぇっ!俺は走りたいように走るんだぁぁぁ!!」

 そして、ハンドルを掴んで、ガシガシとアクセルを踏み込む。
 もちろん、エンジンが掛かっていないのだから、走り出すわけがない。

 高橋「……おい」
 佐元「あっ……!」
 リサ「ほーら!効果てきめん!」
 愛原「な、なるほど。リサの一本勝ちだな」
 佐元「さ、サーセン!マサさん!」
 高橋「オメーだけ逃げ切ってんじゃねーよ?おかげで俺だけ免停寸前だぜ?分かってんのか?あぁ!?」
 愛原「まあまあ、高橋」
 佐元「あっ、愛原先生!チャす!お迎えに参りました!」
 愛原「ああ、うん。ありがとう」
 高橋「グースカ寝てんじゃねーよ」
 佐元「サーセン、暇だったもんで」
 愛原「佐元君、後ろに荷物載せていいかな?」
 佐元「あ、はい!今、ハッチ開けますんで!」

 佐元氏にハッチを開けてもらい、リサの荷物はそこに積む。
 それから高橋は助手席、私とリサは助手席に座った。

 高橋「それじゃ、先生の事務所までシクヨロ」
 佐元「了解っス!」

 佐元氏は車を走らせた。
 地下駐車場なので、ヘッドライトを点灯させている。
 そのヘッドライトというのが、純正ではなく、カー用品店でしか手に入らないような青白いものである。
 リアランプも、そういう所でしか売っていないような物に換えられている。

 高橋「一服いいか?」
 佐元「どうぞ。俺も吸いますんで。先生はどうっスか?」
 愛原「いや、俺は吸わないから」
 佐元「そうなんスか。探偵さんなのに、珍しいっスね?」
 愛原「ん?どういうことだ?」
 佐元「いや、探偵さんって張り込みとかするっスよね?」
 愛原「まあ、仕事の内容によってはな。それがどうした?」
 佐元「いや、トレンチコート着て、帽子被って、グラサンして、新聞広げて……」
 愛原「松田優作の“探偵物語”じゃないからね?」
 高橋「おい、コラぁ!先生をバカにしてんのか!?」
 佐元「さ、サーセン!違います違います!」
 愛原「まあ、いいから」
 高橋「はあ……」

 そして、料金所に到着する。

 愛原「駐車料金いくらだ?俺が出すよ」
 高橋「先生……」
 佐元「いや、大丈夫っス。ついでに買い物して来たんで、料金無料なんで」
 愛原「何だ、そうか。それは良かった」

 そしてゲートを通過して、地上に出た。
 外堀通りに出るので、それを北上し、新大橋通りを目指すルートのようである。

 佐元「それより先生、シャワーの調子はどうですか?」
 愛原「今のところ問題無いよ。ありがとう」
 佐元「いいえ。また何かありましたら、うちにお任せください」
 愛原「分かったよ」
 リサ「あっ、そうか!4階のシャワー……」
 愛原「ああ。もう完成したよ。もう使えるからな?」
 リサ「それはいいね!……あ、でも、今日は湯船に入りたいかなー」
 愛原「あ、そうか。向こうの施設じゃ、シャワーしか無かったもんな」
 リサ「そうなの」
 高橋「ゼータク言ってんじゃねーよ」
 愛原「でも、今日はパールも夜までいないんだろ?だったら、パールが帰って来る前にリサに先に風呂入ってもらえばいいんだ」
 高橋「それはそうですが……」
 佐元「ん?パール氏、今日はいないんスか?」
 高橋「あいつの元仲間がもうすぐ出所するってんで、出所祝いの準備だとよ」
 佐元「あー、なるほど!俺の妹っス!今、栃木刑務所に入ってるんスよ!」
 高橋「オメーの妹かよ!」
 愛原「キミの妹さんなの!?」
 佐元「いやあ、あいつの走りもサツを振り切るテクでして」
 高橋「あー、そうかよ。パールの友達なワケだ」
 愛原「リサ、帰ったら荷物の整理をしような?」
 リサ「うん」

 もはや話に付き合うのをやめた私であった。
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“私立探偵 愛原学” 「中央線の旅」

2024-05-13 16:08:23 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月1日11時31分 天候:晴 神奈川県相模原市緑区小渕 JR藤野駅→中央本線1110M列車・最後尾車内]

 

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の2番線の列車は、11時31分発、中央特快、東京行きです。この列車は、4つドア、10両です。次は、相模湖に、停車します〕

 ホームで電車を待つ。

 愛原「東京駅に高橋が迎えに来るから、そこで一緒にラーメンでも食べて帰ろう」
 リサ「ラーメン!そういえば最近食べてない」
 愛原「だろ?」

〔まもなく2番線に、中央特快、東京行きが参ります。危ないですから、黄色い線までお下がりください。この列車は、4つドア、10両です。次は、相模湖に、停車します〕

 やってきたのは、6両編成と4両編成を繋いだ10両編成。

〔ふじの~、藤野~。ご乗車、ありがとうございます。次は、相模湖に、停車します〕

 前の車両はそこそこ乗客が乗っていたが、後ろの方は空いていた。
 そこに乗り込んで、空いている座席に腰かける。

〔2番線の、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 電車はすぐにドアを閉めて走り出した。

〔次は、相模湖です〕

 私はスマホを取り出すと、善場主任にはメールで、高橋にはLINEで予定通りの電車に乗ったことを報告した。
 前者は、監視者側としても、途中で乗り換えられるよりは直通電車に乗ってくれた方が追跡しやすいというのがある。
 後者は……まあ、どうでもいい。

 リサ「先生」
 愛原「何だ?」
 リサ「明日って予定ある?」
 愛原「特に無いが、どうしてだ?」
 リサ「『魔王軍』の皆が快気祝いだか、退院祝いだかやってくれるんだって」
 愛原「そうなのか。それは良かったな」
 リサ「先生は家にいる?」
 愛原「そうだな。特に、出掛ける予定は無いが……」
 リサ「『魔王軍』のメンバーには、ブルマを穿いてもらって、先生の為にブルマパーティーにしよう」
 愛原「いや、お前の復帰祝いだからな?」

 感覚のズレは直っていないもよう。
 本当に、少しでも人間に戻れたのだろうか?

 リサ「そういえば、レイチェルは一緒じゃないんだね?」
 愛原「そうだな。まあ、あくまであれは栗原蓮華を警戒する為の出動だったから。そいつが今死んだとなったら、もう警戒する理由は無いもんな」
 リサ「そう、蓮華は死んだ。死んだ……んだけど……」
 愛原「何だ?何か気になるのか?」
 リサ「蓮華が言ってた、『他に仲間がいる』ってのが気になる」
 愛原「蓮華が自分の特異菌を使って『半鬼』にした連中のことだろう?特異菌の特徴として、『親』が死んだら『子』も死ぬって聞いたことがある。だから大丈夫だと思うんだがな」
 リサ「そう……だよね」

[同日12時41分 天候:晴 JR中央快速線1110H電車・最後尾車内→東京都中央区丸の内 JR東京駅]

 電車はダイヤ通りに運転した。
 高尾駅までのローカル線区間の長いトンネルでも、何かが起こること無かった。
 高尾駅で乗務員交替が行われ、列車番号も末尾のアルファベットが変わって、あとは通常の特別快速として運転する。
 都心に向かう度に乗客は増えて行った。

〔次は東京、東京。お出口は、右側です。新幹線、東海道線、上野東京ライン、山手線、京浜東北線、横須賀線、総武快速線、京葉線と地下鉄丸ノ内線はお乗り換えです。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 愛原「もうすぐ到着だな」
 リサ「お腹空いた……」
 愛原「駅に着いたら、何か食べよう。高橋も改札口の前で待ってるらしい」
 リサ「おー!」

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく東京、東京、終点です。お出口は、右側です。今日もJR中央線をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕

 電車がホームに滑り込む。

〔とうきょう、東京。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 電車を降りる。
 最後尾ということは、駅の北側に位置していることだ。
 それを想定して、高橋には八重洲北口の改札口で待っててもらうことにした。
 週末の昼間ということもあり、コンコース内は多くの行楽客などが行き交っている。
 外国人が多い。
 今や日本も、アニメやゲーム、食事や観光くらいしか産業が無いほど衰退してしまったからな。

 高橋「先生!お帰りなさい!」
 愛原「ああ、ただいま」
 リサ「お兄ちゃん、わたしには?」
 高橋「あぁ?先生に迷惑掛けてねーだろーなぁ?」
 リサ「これだよ」
 愛原「ま、まあ、高橋だし」
 高橋「先生、飯にしましょうか!?」
 愛原「ああ、そうだな。取りあえず、ヤエチカに行こう」
 高橋「分かりました!」

 ヤエチカが空いているわけではないのだが、取りあえずここは移動した方が良いくらいの人出はある。

 愛原「ラーメンでも食べて帰ろうかと思ってるんだ」
 高橋「そうですね。そうしましょう」

[同日13時00分 天候:晴 東京都中央区八重洲 旭川ラーメン番外地]

 八重洲地下街に下りてから、その中にあるラーメン店に向かう。
 お昼時の為、少し待たされた間がある。
 ただ、二郎系や家系などと違い、行列ができる店ではない為、少し待てば回転率の良いラーメン屋である為、入店することができる。
 食券制ではないので、席に着いてから注文する。

 愛原「リサは何がいい?」
 リサ「『醤油ちゃーしゅー』」
 愛原「俺もそれにするか。高橋は?」
 高橋「俺は番辛味噌ラーメンでオナシャス」
 愛原「分かった。リサは辛いのじゃなくていいのか?」
 リサ「サイアク火を吹くかもしれないから」
 愛原「ああ、そうか」
 リサ「それに、今は肉を食べたい気分」
 愛原「なるほどな」
 高橋「火を吹くって何だよ?電撃ネットワークか?」
 リサ「後で見せてあげるねぇ……」

 リサはニヤッと笑った。
 口元から牙が覗く。

 愛原「醤油ちゃーしゅーが2つと番辛味噌ラーメン1つください」
 店員「かしこまりました」

 注文を終えると、私は水を飲んだ。
 それから……。

 愛原「パールはいつ帰って来るんだ?」
 高橋「夜には帰って来るって言ってましたよ」
 愛原「すると、夕食も要らないのか?」
 高橋「そういうことになりますね。まあ、元々夕飯当番は俺なんで、そこは心配しないでください」
 愛原「ああ、分かった」

 リサには頑張った御褒美に、何か美味い物でも食わせてやりたいなと思った。
 高橋にそれを伝えたが、真意が伝わっただろうか。
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“愛原リサの日常” 「リサの退所」

2024-05-13 11:51:13 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月31日15時00分 天候:不明 神奈川県相模原市緑区某所 国家公務員特別研修センター地下研究施設]

 医官「想定された数値は超えていない。かといって、過度に下回っているわけでもない。人並外れた身体能力や火炎放射の能力については、引き続き研究の対象とさせてもらいまらいますが、ここに留まることはないでしょう」
 リサ「やったー!やっと帰れる!」

 因みに研究室には、善場も同席している。

 善場「正確には『一生研究対象生物として飼育したいところだが、政府からの圧力もあるので、従わざるを得ない』というのが本音では?」

 すると医官は苦笑した。

 医官「私の口からは、何とも申し上げられません」
 善場「それではリサ、一旦部屋に戻りましょう」
 リサ「帰る支度ー!」
 善場「帰るのは明日ですからね?」
 リサ「えっ?」
 善場「愛原所長が迎えに来れるのが週末だけですから。その間に部屋の片付けなどを行うこと」
 リサ「ぐぇぇ」

 同じ地下施設の宿泊施設に戻ると……。

 善場「今のうちにゴミは、研究施設のゴミ集積場に捨てておくこと。冷蔵庫に飲食物の飲み残しは置いておかないこと。それと……まだ服などを洗濯していませんね?コインランドリーがあるのだから、そこで洗濯しておくこと」
 リサ「明日には帰るのに?」
 善場「少しでも所長方の負担を無くす為です。分かりますか?特に洗っていない下着は、特によく洗っておくこと」
 リサ「使用済み下着を愛原先生にあげて喜んでもらおうと思ってたのに」
 善場「お待ちなさい。それは私の仕事です」
 リサ「えー……えっ!?」
 善場「……えっ?」
 リサ「今何て言った!?いま何て言ったっちゃ!?」
 善場「お、落ち着きなさい。落ち着くのです」
 リサ「まさか、善場さんも使用済み下着を……!?」
 善場「なワケないでしょ!フザけると頭にE‐ネクロトキシン打ち込みますよ!」
 リサ「いや、わたし、エブリンじゃないし……。じゃあ、何て言ったの?」
 善場「ここでのあなたの生活の監督は、私の仕事ですという意味で言ったのです」
 リサ「ホントかなぁ……」
 善場「喝っ!」

 善場、拳を振り上げる。

 リサ「はいはい!やりますやります!お片付け!」

 リサは慌てて寝室に入った。

[4月1日11時00分 天候:晴 同地区 同施設1階]

 約束通り、退所の日には愛原が迎えに来た。
 善場や施設関係者から愛原に対する説明などがあった為、すぐにはまだ帰れない。
 リサもまた今朝は最終的な検査が行われた。

 善場「申し訳ありませんが、まだ私は残務処理がありますので、御同行はできません。ただ、車で藤野駅までは送らせて頂きます」
 愛原「ありがとうございます」
 リサ「先生は車で来なかったんだ?」
 愛原「いやあ、高橋のヤツ、また減点食らってさぁ……」
 リサ「またぁ!?」
 愛原「事故物件の調査の仕事で、まさかガチの幽霊が出るとは……」
 リサ「ど、どういうこと!?」
 愛原「話せば長くなるんだが……」
 善場「免停は免れたと伺いましたが?」
 愛原「あー、まあ、そうなんです。ただ、残り1点になってしまったので、自粛してもらうことにしました。どうしても車が必要な時にのみ、頼むということにして」
 善場「そういうことでしたか」
 リサ「メイドさんは?」
 愛原「パールは今日、友達と出かける用事があるからダメだ。何でも、かつての不良仲間が出所するから、出所祝いの準備とかあるんじゃない?」
 リサ「斉藤社長がいたら、メイドさんとして雇われてたかもね」
 愛原「そうだな」
 善場「因みに、斉藤容疑者のことについての情報は?」
 愛原「全くありません」
 リサ「同じく」
 善場「愛原公一容疑者についての情報は?」

 愛原、目を逸らす。

 善場「ほお……」
 リサ「善場さん。公一伯父さんは、先生の伯父さんだから!」
 善場「確かに、親族は犯人隠避の罪は免除されることが多いです。とはいえ、あくまでも裁判所の裁量です。しかも、あくまで免除であって、最初から無罪というわけではありません。愛原所長なら、その意味、分かりますね?」
 愛原「まあ、何となく」
 守衛長「お取込み中、失礼します。退所手続きが終わりましたので、退構を許可します」
 善場「……分かりました。それでは、車に乗ってください」

 車はデイライトで持っている、黒塗りのセレナ。
 ハッチを開けてもらい、その中にリサは自分の荷物を入れた。

 善場「真っ直ぐお帰りになるのですか?」
 愛原「そうですね。お昼を挟むことになるので、帰京したら昼食を食べてから帰ることになるかと思います」
 善場「かしこまりました。気をつけてお帰り下さい」
 愛原「失礼します」
 善場「2人を藤野駅まで」
 部下「はっ!」

 リサと愛原はリアシートに乗り込んだ。
 すぐに助手席後ろのスライドドアが自動で閉まる。
 そして、エアー式の車止めが地面に収納され、普段は堅く閉じられている引き戸式の鉄扉が開いた。

 守衛長「それじゃ、お気をつけて」
 愛原「お世話になりました」
 リサ「お世話になりました」

 車がセンターから出ると、公道を藤野駅まで進む。

 愛原「それにしても、火を吹くようになるとはな……。まるで、あの鬼の男みたいだな」
 リサ「それがムカつくんだよねぇ……」
 愛原「ま、一時期放てた電撃よりも危険な技だし、滅多に使わないようにしないとな」
 リサ「うん。先生が浮気しなければ大丈夫」
 愛原「何だそりゃ……」

 リサの見た目は変わらない。
 背中の肩甲骨辺りにあった痣は、完全に無くなった。
 当初の目的である触手は、完全に取り除けたらしい。
 痣というのは、触手の出入口だからだ。
 リサを鬼形態以降の化け物に変化しないよう対策するのが目的である為に。
 見た目は確かにそうなのだが、中身は相変わらず化け物のままというのは皮肉か現実か。

[同日11時15分 天候:晴 同区小渕 JR藤野駅]

 藤野駅前で車を降りる。
 荷物を下ろして、駅の中に向かった。
 駅前広場から駅舎までは階段があるのだが、リサは自分の荷物を片手でヒョイと持ち上げて登った。

 愛原「ICカード、まだ残額あるか?」
 リサ「ちょっとだけ……」
 愛原「しょうがないから、ついでにチャージしてやるよ」
 リサ「わぁい」

 券売機で愛原にチャージしてもらう。

 愛原「トイレ無しの電車に乗るからな。トイレを済ませておくなら、今のうちにな」
 リサ「分かったー」

 改札口を通ってコンコースへ。
 トイレを済ませた後は、跨線橋を渡ってホームに向かった。
 鬼型BOWとしての身体能力は失われていないのか、やはり階段を大きな荷物を片手で持ってヒョイヒョイと登っている。
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