報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「成田空港のホテル」

2022-04-22 20:37:02 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月26日15:00.天候:晴 千葉県成田市成田国際空港内 成田エアポートレストハウス]
(※2022年3月31日時点において、このホテルは企業借り上げの為、一般客は宿泊できないもよう)

 送迎バスに乗って、宿泊先のホテルに向かった。
 往々にして高級ホテルが林立する成田空港周辺のホテルであるが、このホテルはビジネスホテルの部類だろう。

 愛原:「それじゃ、夕食はこのホテルのレストランで取るから、それまで部屋でゆっくりしてていいよ。但し、ホテルの外からは出ないように」
 リサ:「分かった」
 絵恋:「分かりました」

 フロントに行ってチェックインすると、鍵を2つもらった。

 愛原:「こっちがリサ達の部屋ね」
 リサ:「分かった」
 愛原:「俺と高橋は一緒の部屋だ」
 高橋:「当然ですね」

 鍵を持ってエレベーターに乗る。
 それで客室フロアまで上がると、廊下の窓からもう空港が見える。

 愛原:「俺達はこっちだ。それじゃ、夕食は18時からにしよう。行く時になったら電話するから」
 リサ:「分かった」

 私と高橋は、自分達の部屋に入った。
 室内はオーソドックスなツインルームである。
 窓の外には、滑走路が広がっていた。
 鉄道沿線にあるホテルの場合、客室の窓から列車がよく見えるのを売りにする『トレインビュー』なるものがあるが、ここは『エアプレーンビュー』とでも言うか。
 いや、そもそも沿線どころか、まんま空港内なのだが(ターミナル内にホテルがあるわけではない)。
 尚、ホテルによっては高速道路(特にジャンクションやインター)の沿道にあって、夜は街灯などの夜景がきれいに見える客室を売りにする『ハイウェイビュー』などもあるのだとか。

 愛原:「航空ヲタ垂涎の景色だな」
 高橋:「騒音とか大丈夫なんスかね?」
 愛原:「うーん……飛行機の音がしないでもない……といったところだな」

 私はそう言って、手持ちのノートPCをライティングデスクの上に設置した。

 愛原:「まだ、時間あるから、少し仕事しよう」
 高橋:「あ、じゃ俺、お茶入れますね」

 高橋は室内にある電磁サーバーに水を入れて、お湯を沸かした。

 愛原:「俺がちょっと事務作業するだけだから、テレビとか観ていいぞ」

 私がテレビを点けると、週末だからか、バラエティ関係の番組が多かった。
 正直、あんまりバラエティは観ないんだよなぁ……。
 すると、何か速報のアラームが聞こえて来た。

 愛原:「何だ?」

 テレビを観ると、こういうテロップが流れた。

 愛原:「『斉藤秀樹容疑者、ロシアのサハリン州に逃亡か。間宮海峡近辺にて、元日本船籍の病院船発見』か」
 高橋:「こりゃ、家にいられるわけないっスね。今頃、塀の壁は嫌がらせの落書きだらけ、家には投石されてますよ」
 愛原:「そんなことが……」
 高橋:「ありますって。特に、金持ちが没落する様を見るのは、庶民の娯楽ですから」
 愛原:「ということは、絵恋さんだけでも先に空港に行かせたことは正解だったわけか」

 電車で行くのはベタ過ぎるルートではあるが、あえての鈍行に近いJR快速で行くのは、ある意味で盲点だっただろう。
 しかも……。

 愛原:「明日、絵恋さん達が乗るのはLCCだ」
 高橋:「LCC。格安航空会社っスね」
 愛原:「そうだ。これがJALやANAのビジネスクラスで行こうものなら、更に叩かれるだろうな」
 高橋:「『親父がサツから逃げ回っとんのに、なにゼータクしとんねん!』って感じですね」
 愛原:「残念だが、そういうことだよ」

 絵恋さんの母親は明日、直接空港へ来る。
 聞いた話では、空港定額タクシーを使うようだ。
 これとて贅沢なルートではあるだろうが、マスコミの目から避ける為には致し方無いところもあるか。
 K室Kなんかタクシー代ケチって国に車出させたのと比べれば、かなり潔い方だと思うが。
 ハイヤーではなく、タクシーという辺りが……。

 愛原:「おや?」

 そこへ、私のスマホに電話が掛かって来た。
 画面を見ると、善場主任。

 愛原:「はい、もしもし?」
 善場:「善場です」
 愛原:「お疲れ様です。何か新しい情報ですか?」
 善場:「今、ホテルの中ですか?」
 愛原:「はい。予定通り、宿泊先のホテルにチェックインしています。宿泊先のホテルも、予定通りです」
 善場:「分かりました。明日のチェックアウトまでは、ホテルからは出ませんね?」
 愛原:「そのつもりです。リサ達にも、そう言ってあります」
 善場:「分かりました。実は、BSAAが動いたんです」
 愛原:「えっ!?」
 善場:「ロシア政府をどう説得したのかは不明ですが、BSAAが“青いアンブレラ”が保有していると見られる病院船の捜索を開始しました」
 愛原:「どこの部隊ですかね?今、欧州本部は造反部隊とのイザコザが起きているわけでしょう?」
 善場:「恐らく、極東支部ですね。本部よりはそこからの方が近いですから」
 愛原:「なるほど」

 極東支部は2013年にバイオテロに見舞われた中国・香港にある。
 武漢ウィルス発生時も、緊急出動したくらいだ。
 日本に地区本部があり、もしかしたら中国国内の他の場所や、ロシア国内でも東部には地区本部隊があるのかもしれない。

 愛原:「それで、どうだったんですか?」
 善場:「病院船には確かに医療スタッフがいたのですが、あくまでもサハリン州近辺の僻地医療を行っていただけだと。斉藤容疑者の事は知らないとの1点張りだったそうです」
 愛原:「逃げた後でしたか……」
 善場:「しかし、その病院船には船首甲板にヘリポートがありまして、そこからヘリが離着陸した形跡があったそうです。これもスタッフ達は、『ドクターヘリが離着陸しだけだ』との1点張りです」
 愛原:「BSAAが狸なら、“青いアンブレラ”は狐ですかな?」
 善場:「狐と狸の化かし合いに見えなくもないですが、容疑者逃亡に手を貸している時点で、“青いアンブレラ”もテロ組織認定しなくてはならなくなりますね」
 愛原:「でも、その証拠は無いわけでしょう?」
 善場:「だから歯がゆいのです」
 愛原:「狐の化け術に、狸が翻弄されたというわけですね」
 善場:「それと、気をつけて頂きたいことがあるのですが……」
 愛原:「何ですか?」
 善場:「マスコミが愛原所長の話を聞こうと、事務所やマンションを訪れたみたいですよ?ホテルが嗅ぎつけられないといいですね」
 愛原:「はあ?何でマスコミが?」
 善場:「日本政府機関がバイオテロ支援組織に認定しようとしている“青いアンブレラ”の構成員に、元愛原学探偵事務所の従業員がいるとの情報を手にしたので、話を聞きたいのでしょうね」

 何気に善場主任、私に何がしかの圧掛けてきてないか。

 善場:「高野の情報を手にした場合は、すぐにこちらに流してくださいね?」
 愛原:「分かった。分かりました」

 私は電話を切った。

 高橋:「何ですって?」
 愛原:「“青いアンブレラ”が何考えているのか分からんせいで、こっちにまで火の粉が飛んで来やがったという話さ」
 高橋:「は?」
 愛原:「とにかく、明日まで絶対にこのホテルを出てはならんぞ?分かったな?」
 高橋:「先生の御命令とあらば……」

 私は窓に近づき、レースのカーテンを閉めた。
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“私立探偵 愛原学” 「成田空港への旅」 2

2022-04-22 15:43:34 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月26日13:23.天候:晴 千葉県千葉市中央区 JR総武快速線1259F列車5号車内→千葉駅・成田線ホーム]

〔「まもなく千葉、千葉です。到着ホームは9番線。お出口は、左側です。この電車は成田線直通、快速、成田空港行きです。千葉駅で、後から参ります特急列車の待ち合わせを行います。8分停車致します。空港第2ビル、成田空港へお急ぎのお客様は、この後参ります特急にお乗り換えください。今度の特急“成田エクスプレス”27号、成田空港行きはお隣10番線から、13時27分の発車です」〕

 私達を乗せた快速電車は、順調に千葉県内を走行していた。
 そしてまもなく、千葉県の中心駅へと到着する。

 愛原:「8分も停車するのか。それじゃ、ちょっとゴミ捨てて来るか」
 高橋:「あ、俺が行きますよ」
 愛原:「そうかい。悪いねー」
 高橋:「弟子として、当然です」

 11両編成の電車は、千葉駅のホームに停車した。

〔ちば~、千葉~。ご乗車、ありがとうございます。次は、都賀に止まります〕
〔「成田線直通、快速の成田空港行きです。発車は13時31分です。当駅で、後から参ります特急“成田エクスプレス”27号の待ち合わせを行います。……」〕

 

 高橋は私達が食べた駅弁の空き箱などを手にホームに降りた。
 千葉県でも屈指のターミナル駅ということもあり、この駅での乗降客も多い。

 リサ:「わたしもジュース買って来る」
 絵恋:「私も行く!」
 愛原:「ああ、行ってらっしゃい。席は取っておくから」

 グリーン車とはいえ、首都圏普通列車のそれは自由席である。
 一応頭上のランプは使用中のランプが点灯しているが、確保しておくに越したことはない。
 そうだ。
 私も後で善場主任に連絡しておこう。
 高橋達が戻ってきたらな。

 リサ:「ただいま」

 リサ達はすぐに戻って来た。
 ホームの自販機で事足りたらしい。

 愛原:「お帰り。今度は俺が外に出るよ」
 リサ:「何するの?」
 愛原:「善場主任へ電話」
 リサ:「行ってらっしゃい」

 電車を降りようとすると、高橋とすれ違った。

 高橋:「どうしたんスか、先生?」
 愛原:「ちょっと電話だ。席に戻ってて」
 高橋:「分かりました」

 私はホームに降り立つと、善場主任に電話を掛けた。

 善場:「愛原所長、お疲れさまです」
 愛原:「善場主任、お疲れさまです。今、千葉駅です。お陰様で、順調です」
 善場:「そうですか」
 愛原:「何か、新しい情報は入りましたか?」
 善場:「“青いアンブレラ”から電報が来ましたよ」
 愛原:「デンポー……電報?!」
 善場:「はい。送信元を見ると、どうやらサハリン州近辺のようですね」
 愛原:「やっぱり高野君達はロシア領内に……」
 善場:「そのようです」

 北方領土も取り戻せない日本政府。
 ましてや更に非友好国認定されたロシア領内にいるとなると、善場主任達は手を出せまい。
 凶悪犯が逃げるなら韓国、ロシア、北朝鮮とはよく言ったものだ。

 善場:「BSAAもそうですが、“青いアンブレラ”もロシアにはコネクションがあるので、ある程度自由に活動できるようです。ましてや今、彼らは……あっ、ちょっとすいません。また、電報が来たようです」
 愛原:「今度は何ですかね?」
 善場:「近日中に斉藤秀樹容疑者を日本に帰すとのことです」
 愛原:「どうやって!?」

 ただでさえ、他の日本人乗客達の帰国の目途は立っていないというのに?!

 善場:「それは書いていませんが……とにかく、私達もナメられたままではいられませんので……!」

 最後、善場主任が怒気を孕んで言った。
 後で知ったことだが、2通目の電報には最後に、『愚鈍で根暗な元リサ・トレヴァーさん、私を捕まえてみなさいw 高野』という文が入っていたそうである。
 高野くーん、そんな善場主任にケンカを売るようなことは……。

 高橋:「姉ちゃん、どうでした?」
 愛原:「高野君からケンカ売られて、激おこぷんぷん丸だよ」
 高橋:「マジっスか!?アネゴもやりますねぇ……」

 高橋も笑いを堪えきれないでいた。

 愛原:「近日中に大きな動きがあるかもしれないから、よく注意しておこう」
 高橋:「了解です」

 その後、発車時間になり、電車は定刻通りに発車した。
 JR千葉駅では発車メロディは導入されていないので、放送と車掌の笛だけでの発車であった。

[同日14:20.天候:晴 千葉県成田市三里塚御陵牧場 JR成田空港駅]

〔まもなく終点、成田空港、成田空港。お出口は、左側です。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 電車は地下トンネルを走行した。
 地下トンネルから始まって、地下トンネルで終わる空港快速の旅も、まもなく終わりである。

 

〔「ご乗車ありがとうございました。成田空港、成田空港、終点です。お忘れ物、落とし物の無いよう、ご注意ください。……」〕

 電車がホームに到着すると、向かい側には“成田エクスプレス”が発車待ちをしていた。
 千葉駅でこの電車を追い抜いた電車だろう。
 もうすぐ発車するようだ。
 JR成田空港駅では原則として特急が1番線、普通や快速が2番線を使用する。

 リサ:「すぐホテルに行くの?」
 愛原:「ああ、そうだよ」

 

 愛原:「駅からも近いんだけど、送迎バスもあるらしいから、それで行こう。荷物もあるし」

 私達は鉄道の旅を終えると、宿泊先のホテルに向かった。
 “青いアンブレラ”は少なくとも高野君がいる以上、私達に敵対はしてこないだろうが、変な動きをされて振り回されるのもアレなので、さっさと移動を終えた方がいいだろう。
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“私立探偵 愛原学” 「成田空港への旅」

2022-04-20 19:52:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月26日11:42.天候:晴 東京都墨田区菊川 菊川駅前バス停→都営バス東20系統車内]

 この日、私と高橋、リサは東京駅に向かおうとしていた。
 東京駅で斉藤絵恋さんと合流し、向かうは成田空港。

 愛原:「このバスが廃止されるのも、あと5日かぁ……」
 リサ:「廃止になったら、どうするの?」
 愛原:「面倒臭いけど、都営新宿線で乗り換えるしかないかなぁ……」

 私は首を傾げた。
 廃止になった後、どこかの民間のバス会社が代わりに運行なんてしてくれるわけがない。
 日立交通辺りがコミュニティバスとして運行してくれたらありがたいのだが。

 リサ:「バス来たよ」
 愛原:「ああ。あと何回乗れることやら……」

 車両は至って普通のノンステップバス。
 全国的に見られるタイプなので、外観上は特筆すべき点は無い。
 前扉から乗って、ICカードで先に運賃を払う。
 まあ、確かに乗客は少ないが、かといって空気輸送というわけでもないのだが……。
 私達は乗り込むと、後ろの席に座った。
 リサと高橋には2人席に座らせ、私は1人席に座る。

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスは南の方に向かって走り出した。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。このバスは東京都現代美術館、日本橋経由、東京駅丸の内北口行きでございます。次は森下五丁目、森下五丁目でございます〕

 成田空港に行くのは、絵恋さん母娘が乗る飛行機がそこから出るからである。
 那覇行きのLCC。
 普通、国内線といったら羽田空港というイメージなので、意表を突いた形だ。
 また、しかも今日搭乗するのではない。
 今日はあえて成田空港のホテルに一泊し、それから明日飛行機に乗るといった形だ。
 そうすることで、マスコミの目も誤魔化せると考えたのだろう。
 因みに今日来るのは、絵恋さん1人だけ。
 それも、大宮から新幹線でやってくる。
 なので、待ち合わせ場所は在来線コンコースということになる。

 愛原:「今日はホテルに一泊するから、一杯お別れするんだぞ?」
 リサ:「分かった」

 リサは大きく頷いた。

[同日12:14.天候:晴 東京都千代田区丸の内 都営バス東京駅丸の内北口バスプール→駅構内在来線コンコース]

 平日は商業車で混みやすい永代通りも、週末はそこまで混んでいなかった。
 都営バスが橋を渡る時、そこから見える景色は意外と良いので、東京観光で都内の景観を求めるのなら都営バスでの移動はオススメである。
 特に、中央大橋を渡る東16系統とかはオススメ。
 東京スカイツリーも見える。
 作者が豊洲の現場に、あえて都営バスで通勤していたのも、それが理由である。

〔「ご乗車ありがとうございました。終点、東京駅丸の内北口です。お忘れ物、落とし物の無いよう、ご注意ください」〕

 開いた中扉からバスを降りると、赤レンガ造りの駅舎の中へ向かった。
 観光スポットにもなっているせいか、ここで写真を撮る観光客の姿も見える。

 愛原:「ここでグリーン券を買って行こう」
 高橋:「特急で行くんスか?」
 愛原:「快速だよ~……予算の都合上」
 高橋:「さ、サーセン」

 成田空港駅まで、グリーン券を4枚買っておく。
 土曜日なので、安いホリデー料金が適用される。

 愛原:「Suicaが使えるけど、残額は大丈夫か?」
 高橋:「俺は大丈夫っス」
 リサ:「わたしはビミョー……」
 愛原:「カードを貸せ。チャージしといてやる」
 リサ:「ありがとう!」
 高橋:「交通費以外に無駄遣いしてるんじゃねぇだろうな?」
 リサ:「そ、そんなことないよ……」

 リサのICカードにチャージしてやり、それから在来線コンコースに入る。
 絵恋さんには、新幹線からの乗り換え改札口で待っているように伝えてある。
 そこへ向かってみると、果たしてそこに絵恋さんはいた。

 愛原:「こんにちは。大丈夫かい?」
 絵恋:「こんにちは。今日は……よろしくお願いします」

 絵恋さんはスカート姿の私服を着ていた。
 もっとも、リサも私服だが。
 絵恋さんは大きなキャリーバッグを持っている。

 愛原:「これから総武快速線で成田空港まで行くから」
 絵恋:「分かりました。キップなら、そこまで買ってます」

 絵恋さんは乗車券を見せた。
 新幹線特急券は乗り換え改札口で回収されたそうだが、成田空港までの乗車券は返却される。

 愛原:「分かった。それじゃこれ、グリーン券な」
 絵恋:「ありがとうございます」
 リサ:「先生、お腹空いた」
 愛原:「ああ、分かった。駅弁買って行こう」
 リサ:「おー!」

[同日12:38.天候:不明 JR東京駅・総武線地下ホーム→1259F列車5号車内]

〔まもなく3番線に、当駅始発、快速、成田空港行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください。この列車は、11両です。グリーン車が付いております。……〕

 駅弁と飲み物を買って、グリーン車が来る位置に立ち、電車を待つ。
 蔓延防止が解除されたからなのか、旅行客の姿が多い……ようだが、本当に成田空港まで乗るのかどうかは微妙だ。
 国内旅行は少しずつ利用客を取り戻しつつあるようだが、海外客は【お察しください】。
 それでも成田空港への需要があるのは、偏に3月16日の地震のせいだろう。
 その地震のせいで東北新幹線が止まり、在来線には臨時列車が運行されたり、高速バスが増便されたり、そして羽田空港や成田空港からも東北方面への臨時便が飛んでいるくらいだ。
 新幹線への迂回路として成田空港を利用する客が、こんな鈍行みたいな快速でゆっくり空港まで行くとは思えないのだが……。

 愛原:「旧型か」

 今、横須賀線・総武快速線は新旧車両入れ替えの時期の為、2つのタイプの電車が一緒に走っている。
 新型車に興味があったが、やってきたのは旧型のE217系電車だった。
 既にグリーン車の座席は、成田空港方向へとセットされている。

〔「お待たせ致しました。どうぞ、ご乗車ください」〕

 ドアが開いて、私達は電車に乗り込んだ。
 大きなキャリーバッグを持っているということもあり、2階席には行かず、連結器横の平屋席に向かう。
 そこなら天井も高いので、荷棚もある。

 

 愛原:「ここに置くといいんだ」

 座面の後ろと壁の間に、スッポリとキャリーバッグを入れる。
 このスペースを売りにしているのが、JR東海の東海道新幹線だ。
 あとの荷物は荷棚に置く。

〔この電車は総武快速線、成田線直通、成田空港行きです。停車駅は錦糸町までの各駅と新小岩、市川、船橋、津田沼、稲毛、千葉、都賀、都賀から先の各駅です。4号車と5号車は、グリーン車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください〕

 座席に座ると、テーブルを出してそこに弁当と飲み物を置いた。
 リサは早速、肉系の駅弁に箸をつけていた。
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“私立探偵 愛原学” 「リサ・トレヴァーのマッサージ屋さん」

2022-04-20 16:47:52 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月25日21:00.天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 ここ最近は忙しい。
 年度末ということもあるのだが、それよりも私の周囲で色々な事が動き出しているからだ。
 斉藤秀樹元社長が実は黒幕で、ロシアに行ったまま行方不明とか、それに高野芽衣子君が所属する“青いアンブレラ”が関わっているとか、もう色々な対応に追われて……。
 今日は警視庁から戻ってきたところだ。
 私にとって斉藤元社長とは、ベッタリの大口クライアントだったのだが、その事で警察に疑われてしまった。
 管轄が違うせいか、この時はさしもの善場主任も助けてはくれない。
 もちろん事情聴取の時に、デイライトの名前は出しても良いということだったが、果たして警察がそれを聞いてどう思うかは不明だった。
 幸い私を事情聴取した担当刑事は真面目な男で、私が証拠資料を提出しながらスラスラと質問に答えたことで、私はけして斉藤容疑者逃亡に手を貸したわけではないと分かってくれたようだった。
 で、ようやく今、帰って来たところ。
 さすがに警視庁へは1人で行った。
 うん、さすがにあそこに高橋は連れて行けねぇ……。

 愛原:「ただいまー」
 高橋:「先生、お帰りなさい!」
 愛原:「な、何だ!?」

 そこへ何故か、特攻服に鉄パイプを持った高橋が待ち構えていた。

 高橋:「御無事だったんですね!良かったです!」
 愛原:「いや、無事に決まってんだろ!何だその恰好は?」
 高橋:「先生がサツに不当逮捕されようものなら、奪還しに行く覚悟でした!しかし、その必要は無かったようで良かったです!」

 高橋はそう言って、スマホを取り出した。
 どうやら、かつての族仲間にも声を掛けていて、『計画は中止』というグループLINEでも送っているのだろう。
 ……だから高橋は、連れて行けなかったんだよ。
 ね?私の判断、正しかったでしょ?

 愛原:「あー、疲れた……」
 高橋:「先生、夕食は食べて来たんですよね?」
 愛原:「永田町周辺、食うとこ無ぇのな!?」

 そういえば東京のああいう官庁街で、昼食用にキッチンカーが沢山出動していて話題になったことがあった。

 高橋:「晩酌にしますか?」
 愛原:「そうだなぁ……」
 リサ:「そんな先生のお疲れに!」

 リサが自分の部屋から出て来た。
 しかも体操服にブルマーという出で立ちであった。
 体操服の上は学校指定のものだが、ブルマーはかつて学校指定だった緑色のハイカットタイプである。
 当たり前だが、令和の今は東京中央学園においても(校則で明文化されているわけではないが)事実上の廃止状態である。
 但し、正式廃止ではない為か、今でも学校指定の衣料を扱う店舗では細々と売られていることがあるらしい。

 リサ:「リサ・トレヴァーのマッサージ店、緊急オープンします!」
 愛原:「また、老廃物と血液を吸う気か……」
 リサ:「今度はちゃんとしたマッサージだよ!こっちに来て、ソファに座って!」

 リサは私をリビングに連れて行く。
 良かった。
 いきなり、部屋に連れ込まれないで。
 しかし、リサのブルマー姿を後ろから見ていて思ったのだが……。
 マッサージ店というより、『JKリフレ店』だな。
 あれも確か、オプションで店員のJKに体操服で施術してもらうコースとかあったと思う。
 まさかリサのヤツ、それを見てマネしたか?

 リサ:「どこがお疲れですか?」
 愛原:「色々書類とか作らされたから、肩とか手とか……」
 リサ:「先生は足がお疲れですね。分かりました」
 愛原:「オマエが決めるんかい!」
 リサ:「それじゃ先生、ソファに横になって。わたしの枕、使って」
 愛原:「何でオマエの枕?」
 高橋:「先生!だったら俺の枕使ってください!」
 愛原:「あー……だったらリサの枕使うわ」
 高橋:「そんなぁ、先生!」
 リサ:「じゃあ、まずはうつ伏せに」
 愛原:「あいよ」

 私はリサの枕に顔を埋めるようにうつ伏せになった。
 うん、枕からはリサの体臭がする。
 若い女の子の物のせいか、匂いは【お察しください】。

 リサ:「では、右足から始めます」

 リサ、私の右足裏のツボをグッグッと押した。

 愛原:「おっ、おっ……!」
 リサ:「痛いですか?」
 愛原:「いや、大丈夫だ。なかなかいい……」

 足のマッサージはリサに何度かやってもらったこともあり、リサも手慣れているようだった。
 うん、こりゃいい。
 このまま寝ちゃいそう……。
 だが!

 リサ:「先生、まだ寝ちゃダメ!これからがいいトコロ!」
 愛原:「えっ、ダメなの!?……マジか。せっかく、寝そうになるくらい気持ちいいのに……」
 高橋:「この辺、リサはシビアっスね」
 リサ:「次は太ももでーす」
 愛原:「わっ!?何だ?!」
 高橋:「こら、リサ!しれっと変なとこ触るんじゃねぇ!」
 リサ:「? あのね、両方の太ももから足の付け根にかけて、リンパっていうのが通っていて、ここを強くさすると体にいいんだって」
 愛原:「あ、それ、聞いたことある」
 高橋:「裏メニュー付きメンズエステのトークじゃねーのか?」
 愛原:「まあ、いいや。そういうことになら、やってもらおう」
 高橋:「だったら俺!俺がやりたいです!」(;゚∀゚)=3ハァハァ
 リサ:「お兄ちゃん、一緒にやる?」
 愛原:「俺はリサにやってもらいたいなー」

 高橋だと本当に下心アリアリで触って来るかもしれん。
 いや、まあ、リサなら絶対大丈夫というわけでもないのだが……。

 高橋:「そんなぁ、先生~」( ;∀;)
 リサ:「先生、お兄ちゃん、泣いちゃったけど?」
 愛原:「大丈夫大丈夫。さ、続きをよろしく」
 リサ:「分かったー」
 愛原:「あ、そうだ。せっかくだから、ついでに頼みがある」
 リサ:「はいはい、何でしょう?」
 愛原:「さっきも言ったように、今は肩が凄く凝ってるんだ。こっちを重点的にやってくれないかな?」
 リサ:「お任せください。タイラント君並みに壁をブチ破る、日本版リサ・トレヴァーの破壊力、とくとご覧あれ」
 愛原:「俺の肩をブッ壊す気か!」
 リサ:「それでは……」

 ゴッ……!(リサの拳が愛原の肩に当たる音)

 リサ:「!? な、何これ!?カタっ!?」
 愛原:「な、何だよ?全然効いてないぞ?」
 高橋:「OK!ここはやっぱり俺の出番ですな!」

 今度は高橋が私の肩を揉む。

 高橋:「な、何スか、これ!?肩にコンクリでも入れてるんスか!?」
 愛原:「入れてるわけねーだろ!」
 リサ:「ね?先生の肩、凄い硬いでしょ?コンクリートの壁でもブチ破るタイラント君やわたしでもムリだよ?」
 高橋:「そうかもしれねーな!先生の肩だけ、Gウィルスに感染してるとかは!?」
 愛原:「あるわけねーだろ!」

 くっ、BOWと人外性癖に人外扱いされるとは……納得いかん!

 リサ:「先生の凝り固まった肩、内側からほぐすから、わたしの寄生虫を食べて!」

 リサ、口の中から芋虫のような寄生虫を出した。

 愛原:「食えるか!」
 高橋:「リサ、電マだ!オマエのオ○○ー用の電マ持って来い!」
 リサ:「分かった!」

 リサにはオ○ニ○用に買い与えた電マだが、本来は肩こり対策に使うので、『間違った正しい使い方』というか、『正しい間違った使い方』というべきか。

 高橋:「コンクリには電動ドリルです!ガチの電動ドリルを使うわけにはいかないので、別の電動工具を使います!」
 愛原:「なるほど。それが電マか。いいアイディアだ」

 因みにリサの食欲が旺盛ということは、性欲もそれ並みということだ。
 特に生理前でムラムラする時、リサは私の部屋のドアをブチ破って性的に襲い掛かって来ることもある為、それを抑えさせる為に買い与えたのが電マである。
 鍵を3つくらい付けていたのだが、全部壊して入って来たことがあったからな……。
 私のコンクリート並みに固まった肩は、リサの電マで何とかほぐされた。
 そんなリサは……。

 リサ:(フフ……。今夜使っちゃおう……

 と、思ったとか。
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“私立探偵 愛原学” 「年度末」

2022-04-18 20:02:44 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月22日10:00.天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 春雨がサーッと降る中、善場主任が事務所にやってきた。
 私と主任は、応接室に入った。

 リサ:「えーっ?わたしがお茶持って行くの?」
 高橋:「事務所にいるだけじゃなくて、たまに手伝いやがれ」
 リサ:「掃除とかしてるよ?」
 高橋:「それ以外だ」

 という会話が部屋の外から聞こえたが。

 リサ:「失礼しまーす。お茶でーす」
 愛原:「ああ、ありがとう」

 カップにワンポイント付いている場合、それを相手に見せるようにして置くのがマナーである。
 ……おお、リサ、ちゃんとできてるじゃないか。

 善場:「……リサ、ちょっと」
 リサ:「はいっ?」
 善場:「何か、お茶の中にあなたの寄生虫が入ってない?」
 寄生虫:「ドモ」m(__)m
 愛原:「うわ、気持ち悪い!」

 見た目は芋虫。
 これが変化して毛虫のようになったり、ミミズのようになったり、クマバエみたいになったりするのだそうだ。

 リサ:「あっ、ごめんなさい。これ、先生の分でした」
 愛原:「俺のかよ!?」
 善場:「直ちに入れ直してきなさい。今度は、何も入れないように。分かった?」
 リサ:「は、はい」

 リサ、慌てて寄生虫入りのお茶を下げた。

 愛原:「油断も隙も無い」
 善場:「全く。リサくらいの存在になると、寄生虫で殺人とかもできるのだから、気を付けてもらいたいですね」
 愛原:「やっぱりできますか」
 善場:「ええ。関西地方では、リサ・トレヴァー『3番』がそれをやりましたから」
 愛原:「『3番』。確か、栗原蓮華さんに首を刎ねられて死んだんでしたっけ」
 善場:「栗原家は行動が早いのです。……早過ぎて私達の手配が追い付かず、蓮華さんは一時期殺人容疑で警察に拘束されましたね」
 愛原:「そういうことがあったんですか!」
 善場:「日本版リサ・トレヴァーは、皆して一応、見た目は人間ですから」
 愛原:「あー、まあ確かに」
 善場:「恐らく『2番』のリサの寄生虫も、『3番』と似たようなものになるのではないでしょうか」
 愛原:「どういうものなんですか?」
 善場:「ある時はイジメ被害者の男子生徒に、『イジメに対抗できる力を与える』と称して寄生虫に寄生させ、クリーチャーに変化させて校内連続殺人事件を起こさせました」
 愛原:「うわ……」
 善場:「寄生虫のサンプルが『2番』のそれと似ているので、こちらのリサも同じようなことができるのではないでしょうか」
 愛原:「今からリサに言って、禁止させますね」

 そしてリサ、再びお茶を持ってくる。

 リサ:「今度は何も入ってませーん」
 善場:「本当ね?『0番』の私は誤魔化せないからね?」
 リサ:「分かってまーす」

 善場主任は元日本版リサ・トレヴァー『12番』。
 但し、表向きは人間に戻れている。
 それにしては新たに『0番』という番号を与えられ、観察対象のままである。

 善場:「今度は大丈夫のようね」
 リサ:「もちろんです」
 善場:「それでリサ」
 リサ:「何ですか?」
 善場:「さっきの寄生虫、どうやって出したのかやってみせて」
 リサ:「いいんですか?」
 善場:「ええ」

 リサは口を膨らませた後、モゴモゴと動かした。
 そして……。

 リサ:「あん……」

 口を開けて、舌を指さした。
 すると、先ほどの寄生虫が舌の上に乗っかっていた。
 そして、それを掌の上に出す。

 リサ:「こんな感じです」
 善場:「なるほどね。『3番』と同じだわ。もういいから、その寄生虫は処分しなさい」
 リサ:「はーい。……『3番』は死んだんですよね?」
 善場:「あなたの怖い鬼斬り先輩が首を刎ねて殺したそうよ?あなたも気をつけてね」
 愛原:「その寄生虫を悪用して、それがバレたらという意味だぞ?」
 リサ:「分かってまーす」

 リサは冷や汗をかきながら退室した。
 どうやら、あの寄生虫を何がしかに使っているのは事実のようだ。
 こっちのリサは頭がいいから、私達にバレるような悪用はしていないだろうが。

 善場:「愛原所長は、今のようなリサに慕われている関係でいてください。恐らくその間は、リサも悪さをしないでしょう。そうしたら、所長に嫌われて会えなくなることを自覚しているようですから」
 愛原:「分かりました」
 善場:「それで、今後の予定です。まずは斉藤絵恋さん達のことですが……」
 愛原:「やはり引っ越すようですね。斉藤元社長が『容疑者』となった今、近所の目が厳しいらしいですから」
 善場:「そういうものです」
 愛原:「母方の実家に行くそうで」
 善場:「それはどこですか?」
 愛原:「沖縄だそうで」
 善場:「沖縄!これはまた遠いですね」
 愛原:「斉藤……容疑者が社長になってからは、時間が取れずに何年も帰省できなかったそうですから、却っていい機会なのかもしれません」
 善場:「それに、沖縄にも東京中央学園の姉妹校がありますから、そこに編入も可能でしょう」
 愛原:「沖縄にもあるんですか!」
 善場:「沖縄中央学園といって、那覇市内にあるんですよ。確か、モノレールのどこかの駅から近いはずです」
 愛原:「東京中央学園もそうですけど、交通至便な所に学校を造りたがりますね」
 善場:「大抵の私私立校はそうじゃないでしょうか。逆に、環境重視の為に交通不便な場所に造る場合もありますが、東京中央学園系は前者のようですね」

 沖縄都市モノレールは比較的新しい鉄道のはずで、学園の方が先にあったはずだが、たまたま近くを通ったのだろうか。
 それとも、誘致したのだろうか。

 愛原:「一応、絵恋さんが寂しがるので、空港まではリサを見送りに行かせたいと、絵恋さんのお母さんには伝えております」
 善場:「それがいいでしょうね。しかし、斉藤容疑者が行方不明ですから、埼玉の家には記者が張り込んでいるようですね」

 これもまた絵恋さんが駅からタクシーで帰る理由の1つなのだ。

 愛原:「あ、そうだ、善場主任。これ、熱海のお土産です」
 善場:「ああ、これはどうもわざわざ、ありがとうございます」

 贈賄容疑の現行犯にならないかと思ったが、主任は受け取ってくれた。
 もちろん中身が現金だったり、有価証券だったりした場合は別だろうが。
 あくまでも社会通念上、許される範囲内でならOKらしい。
 旅行に行って、そのお土産というのは確かに社会通念上、許される範囲だろう。

 愛原:「多分、実際に飛行機に乗る前日辺りにはもう移動しておいた方が、マスコミを撒くことはできるかもしれませんね」
 善場:「その辺はお任せします」
 愛原:「警察とかには言わなくていいんでしょうか?」
 善場:「あくまでも容疑は斉藤秀樹元社長1人だけですし、日本に入国した形跡も無い以上、残った家族が疑われることはないでしょう。彼の国外逃亡を手伝ったわけでもないですしね」
 愛原:「なるほど。分かりました」
 善場:「あとは、上野姉妹が上京してくる件についてですか」
 愛原:「卒業旅行ですね。2泊3日でディズニーリゾートにでも連れて行きますか」
 善場:「あの、予算は全て愛原所長持ちですよ?」
 愛原:「あ、そうか」
 善場:「これはデイライトとしては単なる監視・観察対象というだけで、何も卒業旅行はデイライトが依頼するわけではないですから」
 愛原:「それもそうですね」

 私は苦笑した。
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