[3月22日10:00.天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]
春雨がサーッと降る中、善場主任が事務所にやってきた。
私と主任は、応接室に入った。
リサ:「えーっ?わたしがお茶持って行くの?」
高橋:「事務所にいるだけじゃなくて、たまに手伝いやがれ」
リサ:「掃除とかしてるよ?」
高橋:「それ以外だ」
という会話が部屋の外から聞こえたが。
リサ:「失礼しまーす。お茶でーす」
愛原:「ああ、ありがとう」
カップにワンポイント付いている場合、それを相手に見せるようにして置くのがマナーである。
……おお、リサ、ちゃんとできてるじゃないか。
善場:「……リサ、ちょっと」
リサ:「はいっ?」
善場:「何か、お茶の中にあなたの寄生虫が入ってない?」
寄生虫:「ドモ」m(__)m
愛原:「うわ、気持ち悪い!」
見た目は芋虫。
これが変化して毛虫のようになったり、ミミズのようになったり、クマバエみたいになったりするのだそうだ。
リサ:「あっ、ごめんなさい。これ、先生の分でした」
愛原:「俺のかよ!?」
善場:「直ちに入れ直してきなさい。今度は、何も入れないように。分かった?」
リサ:「は、はい」
リサ、慌てて寄生虫入りのお茶を下げた。
愛原:「油断も隙も無い」
善場:「全く。リサくらいの存在になると、寄生虫で殺人とかもできるのだから、気を付けてもらいたいですね」
愛原:「やっぱりできますか」
善場:「ええ。関西地方では、リサ・トレヴァー『3番』がそれをやりましたから」
愛原:「『3番』。確か、栗原蓮華さんに首を刎ねられて死んだんでしたっけ」
善場:「栗原家は行動が早いのです。……早過ぎて私達の手配が追い付かず、蓮華さんは一時期殺人容疑で警察に拘束されましたね」
愛原:「そういうことがあったんですか!」
善場:「日本版リサ・トレヴァーは、皆して一応、見た目は人間ですから」
愛原:「あー、まあ確かに」
善場:「恐らく『2番』のリサの寄生虫も、『3番』と似たようなものになるのではないでしょうか」
愛原:「どういうものなんですか?」
善場:「ある時はイジメ被害者の男子生徒に、『イジメに対抗できる力を与える』と称して寄生虫に寄生させ、クリーチャーに変化させて校内連続殺人事件を起こさせました」
愛原:「うわ……」
善場:「寄生虫のサンプルが『2番』のそれと似ているので、こちらのリサも同じようなことができるのではないでしょうか」
愛原:「今からリサに言って、禁止させますね」
そしてリサ、再びお茶を持ってくる。
リサ:「今度は何も入ってませーん」
善場:「本当ね?『0番』の私は誤魔化せないからね?」
リサ:「分かってまーす」
善場主任は元日本版リサ・トレヴァー『12番』。
但し、表向きは人間に戻れている。
それにしては新たに『0番』という番号を与えられ、観察対象のままである。
善場:「今度は大丈夫のようね」
リサ:「もちろんです」
善場:「それでリサ」
リサ:「何ですか?」
善場:「さっきの寄生虫、どうやって出したのかやってみせて」
リサ:「いいんですか?」
善場:「ええ」
リサは口を膨らませた後、モゴモゴと動かした。
そして……。
リサ:「あん……」
口を開けて、舌を指さした。
すると、先ほどの寄生虫が舌の上に乗っかっていた。
そして、それを掌の上に出す。
リサ:「こんな感じです」
善場:「なるほどね。『3番』と同じだわ。もういいから、その寄生虫は処分しなさい」
リサ:「はーい。……『3番』は死んだんですよね?」
善場:「あなたの怖い鬼斬り先輩が首を刎ねて殺したそうよ?あなたも気をつけてね」
愛原:「その寄生虫を悪用して、それがバレたらという意味だぞ?」
リサ:「分かってまーす」
リサは冷や汗をかきながら退室した。
どうやら、あの寄生虫を何がしかに使っているのは事実のようだ。
こっちのリサは頭がいいから、私達にバレるような悪用はしていないだろうが。
善場:「愛原所長は、今のようなリサに慕われている関係でいてください。恐らくその間は、リサも悪さをしないでしょう。そうしたら、所長に嫌われて会えなくなることを自覚しているようですから」
愛原:「分かりました」
善場:「それで、今後の予定です。まずは斉藤絵恋さん達のことですが……」
愛原:「やはり引っ越すようですね。斉藤元社長が『容疑者』となった今、近所の目が厳しいらしいですから」
善場:「そういうものです」
愛原:「母方の実家に行くそうで」
善場:「それはどこですか?」
愛原:「沖縄だそうで」
善場:「沖縄!これはまた遠いですね」
愛原:「斉藤……容疑者が社長になってからは、時間が取れずに何年も帰省できなかったそうですから、却っていい機会なのかもしれません」
善場:「それに、沖縄にも東京中央学園の姉妹校がありますから、そこに編入も可能でしょう」
愛原:「沖縄にもあるんですか!」
善場:「沖縄中央学園といって、那覇市内にあるんですよ。確か、モノレールのどこかの駅から近いはずです」
愛原:「東京中央学園もそうですけど、交通至便な所に学校を造りたがりますね」
善場:「大抵の私私立校はそうじゃないでしょうか。逆に、環境重視の為に交通不便な場所に造る場合もありますが、東京中央学園系は前者のようですね」
沖縄都市モノレールは比較的新しい鉄道のはずで、学園の方が先にあったはずだが、たまたま近くを通ったのだろうか。
それとも、誘致したのだろうか。
愛原:「一応、絵恋さんが寂しがるので、空港まではリサを見送りに行かせたいと、絵恋さんのお母さんには伝えております」
善場:「それがいいでしょうね。しかし、斉藤容疑者が行方不明ですから、埼玉の家には記者が張り込んでいるようですね」
これもまた絵恋さんが駅からタクシーで帰る理由の1つなのだ。
愛原:「あ、そうだ、善場主任。これ、熱海のお土産です」
善場:「ああ、これはどうもわざわざ、ありがとうございます」
贈賄容疑の現行犯にならないかと思ったが、主任は受け取ってくれた。
もちろん中身が現金だったり、有価証券だったりした場合は別だろうが。
あくまでも社会通念上、許される範囲内でならOKらしい。
旅行に行って、そのお土産というのは確かに社会通念上、許される範囲だろう。
愛原:「多分、実際に飛行機に乗る前日辺りにはもう移動しておいた方が、マスコミを撒くことはできるかもしれませんね」
善場:「その辺はお任せします」
愛原:「警察とかには言わなくていいんでしょうか?」
善場:「あくまでも容疑は斉藤秀樹元社長1人だけですし、日本に入国した形跡も無い以上、残った家族が疑われることはないでしょう。彼の国外逃亡を手伝ったわけでもないですしね」
愛原:「なるほど。分かりました」
善場:「あとは、上野姉妹が上京してくる件についてですか」
愛原:「卒業旅行ですね。2泊3日でディズニーリゾートにでも連れて行きますか」
善場:「あの、予算は全て愛原所長持ちですよ?」
愛原:「あ、そうか」
善場:「これはデイライトとしては単なる監視・観察対象というだけで、何も卒業旅行はデイライトが依頼するわけではないですから」
愛原:「それもそうですね」
私は苦笑した。
春雨がサーッと降る中、善場主任が事務所にやってきた。
私と主任は、応接室に入った。
リサ:「えーっ?わたしがお茶持って行くの?」
高橋:「事務所にいるだけじゃなくて、たまに手伝いやがれ」
リサ:「掃除とかしてるよ?」
高橋:「それ以外だ」
という会話が部屋の外から聞こえたが。
リサ:「失礼しまーす。お茶でーす」
愛原:「ああ、ありがとう」
カップにワンポイント付いている場合、それを相手に見せるようにして置くのがマナーである。
……おお、リサ、ちゃんとできてるじゃないか。
善場:「……リサ、ちょっと」
リサ:「はいっ?」
善場:「何か、お茶の中にあなたの寄生虫が入ってない?」
寄生虫:「ドモ」m(__)m
愛原:「うわ、気持ち悪い!」
見た目は芋虫。
これが変化して毛虫のようになったり、ミミズのようになったり、クマバエみたいになったりするのだそうだ。
リサ:「あっ、ごめんなさい。これ、先生の分でした」
愛原:「俺のかよ!?」
善場:「直ちに入れ直してきなさい。今度は、何も入れないように。分かった?」
リサ:「は、はい」
リサ、慌てて寄生虫入りのお茶を下げた。
愛原:「油断も隙も無い」
善場:「全く。リサくらいの存在になると、寄生虫で殺人とかもできるのだから、気を付けてもらいたいですね」
愛原:「やっぱりできますか」
善場:「ええ。関西地方では、リサ・トレヴァー『3番』がそれをやりましたから」
愛原:「『3番』。確か、栗原蓮華さんに首を刎ねられて死んだんでしたっけ」
善場:「栗原家は行動が早いのです。……早過ぎて私達の手配が追い付かず、蓮華さんは一時期殺人容疑で警察に拘束されましたね」
愛原:「そういうことがあったんですか!」
善場:「日本版リサ・トレヴァーは、皆して一応、見た目は人間ですから」
愛原:「あー、まあ確かに」
善場:「恐らく『2番』のリサの寄生虫も、『3番』と似たようなものになるのではないでしょうか」
愛原:「どういうものなんですか?」
善場:「ある時はイジメ被害者の男子生徒に、『イジメに対抗できる力を与える』と称して寄生虫に寄生させ、クリーチャーに変化させて校内連続殺人事件を起こさせました」
愛原:「うわ……」
善場:「寄生虫のサンプルが『2番』のそれと似ているので、こちらのリサも同じようなことができるのではないでしょうか」
愛原:「今からリサに言って、禁止させますね」
そしてリサ、再びお茶を持ってくる。
リサ:「今度は何も入ってませーん」
善場:「本当ね?『0番』の私は誤魔化せないからね?」
リサ:「分かってまーす」
善場主任は元日本版リサ・トレヴァー『12番』。
但し、表向きは人間に戻れている。
それにしては新たに『0番』という番号を与えられ、観察対象のままである。
善場:「今度は大丈夫のようね」
リサ:「もちろんです」
善場:「それでリサ」
リサ:「何ですか?」
善場:「さっきの寄生虫、どうやって出したのかやってみせて」
リサ:「いいんですか?」
善場:「ええ」
リサは口を膨らませた後、モゴモゴと動かした。
そして……。
リサ:「あん……」
口を開けて、舌を指さした。
すると、先ほどの寄生虫が舌の上に乗っかっていた。
そして、それを掌の上に出す。
リサ:「こんな感じです」
善場:「なるほどね。『3番』と同じだわ。もういいから、その寄生虫は処分しなさい」
リサ:「はーい。……『3番』は死んだんですよね?」
善場:「あなたの怖い鬼斬り先輩が首を刎ねて殺したそうよ?あなたも気をつけてね」
愛原:「その寄生虫を悪用して、それがバレたらという意味だぞ?」
リサ:「分かってまーす」
リサは冷や汗をかきながら退室した。
どうやら、あの寄生虫を何がしかに使っているのは事実のようだ。
こっちのリサは頭がいいから、私達にバレるような悪用はしていないだろうが。
善場:「愛原所長は、今のようなリサに慕われている関係でいてください。恐らくその間は、リサも悪さをしないでしょう。そうしたら、所長に嫌われて会えなくなることを自覚しているようですから」
愛原:「分かりました」
善場:「それで、今後の予定です。まずは斉藤絵恋さん達のことですが……」
愛原:「やはり引っ越すようですね。斉藤元社長が『容疑者』となった今、近所の目が厳しいらしいですから」
善場:「そういうものです」
愛原:「母方の実家に行くそうで」
善場:「それはどこですか?」
愛原:「沖縄だそうで」
善場:「沖縄!これはまた遠いですね」
愛原:「斉藤……容疑者が社長になってからは、時間が取れずに何年も帰省できなかったそうですから、却っていい機会なのかもしれません」
善場:「それに、沖縄にも東京中央学園の姉妹校がありますから、そこに編入も可能でしょう」
愛原:「沖縄にもあるんですか!」
善場:「沖縄中央学園といって、那覇市内にあるんですよ。確か、モノレールのどこかの駅から近いはずです」
愛原:「東京中央学園もそうですけど、交通至便な所に学校を造りたがりますね」
善場:「大抵の私私立校はそうじゃないでしょうか。逆に、環境重視の為に交通不便な場所に造る場合もありますが、東京中央学園系は前者のようですね」
沖縄都市モノレールは比較的新しい鉄道のはずで、学園の方が先にあったはずだが、たまたま近くを通ったのだろうか。
それとも、誘致したのだろうか。
愛原:「一応、絵恋さんが寂しがるので、空港まではリサを見送りに行かせたいと、絵恋さんのお母さんには伝えております」
善場:「それがいいでしょうね。しかし、斉藤容疑者が行方不明ですから、埼玉の家には記者が張り込んでいるようですね」
これもまた絵恋さんが駅からタクシーで帰る理由の1つなのだ。
愛原:「あ、そうだ、善場主任。これ、熱海のお土産です」
善場:「ああ、これはどうもわざわざ、ありがとうございます」
贈賄容疑の現行犯にならないかと思ったが、主任は受け取ってくれた。
もちろん中身が現金だったり、有価証券だったりした場合は別だろうが。
あくまでも社会通念上、許される範囲内でならOKらしい。
旅行に行って、そのお土産というのは確かに社会通念上、許される範囲だろう。
愛原:「多分、実際に飛行機に乗る前日辺りにはもう移動しておいた方が、マスコミを撒くことはできるかもしれませんね」
善場:「その辺はお任せします」
愛原:「警察とかには言わなくていいんでしょうか?」
善場:「あくまでも容疑は斉藤秀樹元社長1人だけですし、日本に入国した形跡も無い以上、残った家族が疑われることはないでしょう。彼の国外逃亡を手伝ったわけでもないですしね」
愛原:「なるほど。分かりました」
善場:「あとは、上野姉妹が上京してくる件についてですか」
愛原:「卒業旅行ですね。2泊3日でディズニーリゾートにでも連れて行きますか」
善場:「あの、予算は全て愛原所長持ちですよ?」
愛原:「あ、そうか」
善場:「これはデイライトとしては単なる監視・観察対象というだけで、何も卒業旅行はデイライトが依頼するわけではないですから」
愛原:「それもそうですね」
私は苦笑した。
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