[3月20日16:06.天候:晴 静岡県熱海市 JR熱海駅→東海道本線1640E列車5号車内]
〔「5番線に停車中の電車は、16時6分発、東海道本線、上野東京ライン回り、宇都宮線直通の普通列車、小金井行きです。まもなく発車致します。ご利用のお客様は、車内でお待ちください」〕
私達はグリーン券を手に、5号車のグリーン車に乗り込んだ。
荷物もあったので、帰りは2階席では無く、連結器に近い平屋席に乗り込んだ(2階席と1階席には荷棚が無いが、平屋席には荷棚がある)。
〔この電車は東海道本線、上野東京ライン、宇都宮線直通、普通電車、小金井行きです。4号車と5号車は、グリーン車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください〕
ホームから発車メロディが微かに聞こえてくる。
メロディは他の駅でも聴ける汎用的なものであった。
〔ドアが閉まります。ご注意ください〕
合成の、発音が少しおかしい自動放送が流れる。
それでも電車は、定刻通りに発車した。
グリーン車に乗っていると気付かないが、実はこの電車、たったの10両である。
平日ダイヤは15両で運転するのかもしれないが、三連休でも乗客の多い線区でこれは混みやすいと思う。
多分、普通車は混んでいるはずだ。
〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は東海道本線、上野東京ライン、宇都宮線直通、普通電車、小金井行きです。4号車と5号車は、グリーン車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください。次は、湯河原です〕
車内の自動放送は合成ではなく、ちゃんとした声優さんを使っているので、発音もイントネーションも不自然な所は無い(が、山手線では外国語の音声が何回も交換されていることは【禁則事項です】。明らかに一時期は外国人声優がテンション低い喋りだったり、駅名の部分の発音がおかしかったりと【禁則事項です】)。
英語放送の後は、車掌の肉声放送が流れる。
〔「……電車は短い10両編成です。【中略】座席は譲り合ってお掛けくださいますよう、御協力をお願い致します。次は湯河原、湯河原です」〕
湯河原も温泉地だし、途中に小田原という箱根への入口があることから、もっと混むんじゃないか、この電車。
グリーン車は、まだそこまでではないが、多分途中でグリーン車すらも満席になると思われる。
まあ、これが本来のコロナ前の姿ではあったのだが(但し、やっぱり外国人観光客の姿が少ないという点は高評【バキューン】)。
アテンダント:「失礼致します。グリーン券はお持ちでいらっしゃいますか?」
高橋:「あ、はい。あります」
グリーンアテンダントというと、女性を思い浮かべるが、中には男性アテンダントもいる。
それは新幹線や特急の車販も同じ。
で、今回は男性だった。
高橋:「先生、キップですって」
愛原:「あ、そう」
私はがっかりしたように、高橋に自分のグリーン券を渡した。
高橋:「2人分っス」
アテンダント:「ありがとうございます」
高橋と大して歳の変わらぬ男性アテンダントは、青い検札印を押して高橋に返した。
リサ:「にひひ」
リサは私が女性アテンダントに目や気を取られる心配が無くなったと、ニヤリと笑った。
因みに、いつもはリサが窓側に座っているが、今回は通路側に座っている。
リサ:「サイトー、グリーン券」
絵恋:「あ、はい」
リサは絵恋さんからグリーン券を受け取ると、男性アテンダントに渡した。
アテンダント:「ありがとうございます」
まあ、男嫌いの絵恋さんとしては、この方が良かったか。
リサ:「これは記念になる。サイトーと最後の旅行をした記念」
絵恋:「うん……。そうだね」
その時、私のスマホにメールが着信した。
それは善場主任からだった。
善場:「今、東海道本線の電車内ですね。列車番号と乗車車両を送信してください」
とのことだった。
しまった!
リサを中間車に乗せる場合、善場主任にその旨、送信しないといけないんだった。
愛原:「すいません。この電車の列車番号は何番ですか?」
アテンダント:「は?1640Eです」
愛原:「あ、すいませんね。ありがとう」
まさか列車番号を乗客に聞かれると思っていなかったのか、アテンダントも少し驚いたようだった。
いつもなら事前に調べるか、電車のフロント部分に列車番号が表示されているので、それを入力するのだが。
愛原:「列車番号は1640E。乗車車両は5号車です」
と、送信すると、
善場:「了解です。ありがとうございます」
という返信が来た。
それにしても、中距離電車の列車番号はMだったと思うが、いつの間に他のアルファベットを使うようになったのだろう?
上野東京ラインが開通してからか?
他のアルファベットはD以外、いわゆる『国電』や『ゲタ電』に付けるイメージだったのだが、もしかして中距離電車もそれ扱いになったのだろうか。
一応、Mは『電車を使用した列車(汽車)』という意味だったはずだが……。
鉄ヲタでもない人から見れば、何のこっちゃ?と思うかもしれないな。
[同日17:46.天候:曇 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]
〔次は東京、東京。お出口は、右側です。新幹線、中央線、山手線、京浜東北線、総武快速線、京葉線と地下鉄丸ノ内線はお乗り換えです〕
この時間辺りから、外は薄暗くなり始める。
晴れていれば西日が眩しいのかもしれないが、都内に入ったら曇って来たので、そんなことはない。
西日が眩しくない代わりに、薄暗い。
夜は一雨でも来るのだろうか。
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく東京、東京です。到着ホームは7番線。お出口は、右側です。この電車は上野東京ライン、宇都宮線直通の普通列車、小金井行きです。東京で5分ほど停車致します。発車は、17時51分です。発車まで、しばらくお待ちください」〕
電車は軽やかに有楽町駅を通過すると、カーブを曲がって東京駅のホームに入線した。
かつては東海道本線の普通列車が発車するホームであったが、今は東海道本線からの上野東京ライン下りホームとなっている。
愛原:「大宮からはどうするの?」
絵恋:「タクシーで帰ります。母からタクシーチケット、もらってますので」
愛原:「そうか」
恐らく斉藤元社長の末路からして、斉藤家は今後、没落する運命にあるだろう。
金のある今のうちということか。
そして、そんな絵恋さんも……。
〔とうきょう、東京。ご乗車、ありがとうございます。次は、上野に止まります〕
電車がホームに停車する。
私達は先に電車を降りた。
東京駅での下車は多かったが、その分乗車も多く、大して空いたわけではない。
が、それでも高崎線より空いている宇都宮線ということもあり、東海道線内よりは乗客が減っただろうか。
リサと絵恋さんが残り少ない時間で、別れを告げている。
本当の最後というわけではないだろうが、残りの時間を大切にしてもらいたい。
因みに私はというと、善場主任からのメールのやり取りをしなくてはならなかった。
話があるので、連休明けの火曜日に事務所に来たいということだった。
私から伺おうと思っていたのだが、主任の方から来てくださるとは助かる。
そんなやり取りをしているうちに、停車時間の5分はあっという間に過ぎた。
ホームにけたたましい発車ベルが流れる。
東海道本線下りホームは発車メロディだが、上野東京ライン下りのホームはベルである。
高橋:「おい、さっさと戻れ」
高橋が絵恋さんを車内に促す。
そして、電車は定刻通りにドアを閉めた。
まるで機関車牽引の客車列車よろしく、ゆっくりとした発進だったが、その後はスーッと加速していった。
愛原:「本当の最後というわけではないだろうから、また会えるさ」
リサ:「そうだね」
リサは寂しそうな顔はしていたが、特に泣いているという感じはなかった。
高橋に言わせると、泣きそうな顔をしていたのは絵恋さんの方だった。
まあ、そうだろう。
愛原:「よし。ちょうど夕食時だ。何か食べて帰ろうか」
高橋:「お供します!」
リサ:「お供します!」
私達はコンコースへの階段を下りて、一先ずは改札口へと向かった。
〔「5番線に停車中の電車は、16時6分発、東海道本線、上野東京ライン回り、宇都宮線直通の普通列車、小金井行きです。まもなく発車致します。ご利用のお客様は、車内でお待ちください」〕
私達はグリーン券を手に、5号車のグリーン車に乗り込んだ。
荷物もあったので、帰りは2階席では無く、連結器に近い平屋席に乗り込んだ(2階席と1階席には荷棚が無いが、平屋席には荷棚がある)。
〔この電車は東海道本線、上野東京ライン、宇都宮線直通、普通電車、小金井行きです。4号車と5号車は、グリーン車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください〕
ホームから発車メロディが微かに聞こえてくる。
メロディは他の駅でも聴ける汎用的なものであった。
〔ドアが閉まります。ご注意ください〕
合成の、発音が少しおかしい自動放送が流れる。
それでも電車は、定刻通りに発車した。
グリーン車に乗っていると気付かないが、実はこの電車、たったの10両である。
平日ダイヤは15両で運転するのかもしれないが、三連休でも乗客の多い線区でこれは混みやすいと思う。
多分、普通車は混んでいるはずだ。
〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は東海道本線、上野東京ライン、宇都宮線直通、普通電車、小金井行きです。4号車と5号車は、グリーン車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください。次は、湯河原です〕
車内の自動放送は合成ではなく、ちゃんとした声優さんを使っているので、発音もイントネーションも不自然な所は無い(が、山手線では外国語の音声が何回も交換されていることは【禁則事項です】。明らかに一時期は外国人声優がテンション低い喋りだったり、駅名の部分の発音がおかしかったりと【禁則事項です】)。
英語放送の後は、車掌の肉声放送が流れる。
〔「……電車は短い10両編成です。【中略】座席は譲り合ってお掛けくださいますよう、御協力をお願い致します。次は湯河原、湯河原です」〕
湯河原も温泉地だし、途中に小田原という箱根への入口があることから、もっと混むんじゃないか、この電車。
グリーン車は、まだそこまでではないが、多分途中でグリーン車すらも満席になると思われる。
まあ、これが本来のコロナ前の姿ではあったのだが(但し、やっぱり外国人観光客の姿が少ないという点は高評【バキューン】)。
アテンダント:「失礼致します。グリーン券はお持ちでいらっしゃいますか?」
高橋:「あ、はい。あります」
グリーンアテンダントというと、女性を思い浮かべるが、中には男性アテンダントもいる。
それは新幹線や特急の車販も同じ。
で、今回は男性だった。
高橋:「先生、キップですって」
愛原:「あ、そう」
私はがっかりしたように、高橋に自分のグリーン券を渡した。
高橋:「2人分っス」
アテンダント:「ありがとうございます」
高橋と大して歳の変わらぬ男性アテンダントは、青い検札印を押して高橋に返した。
リサ:「にひひ」
リサは私が女性アテンダントに目や気を取られる心配が無くなったと、ニヤリと笑った。
因みに、いつもはリサが窓側に座っているが、今回は通路側に座っている。
リサ:「サイトー、グリーン券」
絵恋:「あ、はい」
リサは絵恋さんからグリーン券を受け取ると、男性アテンダントに渡した。
アテンダント:「ありがとうございます」
まあ、男嫌いの絵恋さんとしては、この方が良かったか。
リサ:「これは記念になる。サイトーと最後の旅行をした記念」
絵恋:「うん……。そうだね」
その時、私のスマホにメールが着信した。
それは善場主任からだった。
善場:「今、東海道本線の電車内ですね。列車番号と乗車車両を送信してください」
とのことだった。
しまった!
リサを中間車に乗せる場合、善場主任にその旨、送信しないといけないんだった。
愛原:「すいません。この電車の列車番号は何番ですか?」
アテンダント:「は?1640Eです」
愛原:「あ、すいませんね。ありがとう」
まさか列車番号を乗客に聞かれると思っていなかったのか、アテンダントも少し驚いたようだった。
いつもなら事前に調べるか、電車のフロント部分に列車番号が表示されているので、それを入力するのだが。
愛原:「列車番号は1640E。乗車車両は5号車です」
と、送信すると、
善場:「了解です。ありがとうございます」
という返信が来た。
それにしても、中距離電車の列車番号はMだったと思うが、いつの間に他のアルファベットを使うようになったのだろう?
上野東京ラインが開通してからか?
他のアルファベットはD以外、いわゆる『国電』や『ゲタ電』に付けるイメージだったのだが、もしかして中距離電車もそれ扱いになったのだろうか。
一応、Mは『電車を使用した列車(汽車)』という意味だったはずだが……。
鉄ヲタでもない人から見れば、何のこっちゃ?と思うかもしれないな。
[同日17:46.天候:曇 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]
〔次は東京、東京。お出口は、右側です。新幹線、中央線、山手線、京浜東北線、総武快速線、京葉線と地下鉄丸ノ内線はお乗り換えです〕
この時間辺りから、外は薄暗くなり始める。
晴れていれば西日が眩しいのかもしれないが、都内に入ったら曇って来たので、そんなことはない。
西日が眩しくない代わりに、薄暗い。
夜は一雨でも来るのだろうか。
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく東京、東京です。到着ホームは7番線。お出口は、右側です。この電車は上野東京ライン、宇都宮線直通の普通列車、小金井行きです。東京で5分ほど停車致します。発車は、17時51分です。発車まで、しばらくお待ちください」〕
電車は軽やかに有楽町駅を通過すると、カーブを曲がって東京駅のホームに入線した。
かつては東海道本線の普通列車が発車するホームであったが、今は東海道本線からの上野東京ライン下りホームとなっている。
愛原:「大宮からはどうするの?」
絵恋:「タクシーで帰ります。母からタクシーチケット、もらってますので」
愛原:「そうか」
恐らく斉藤元社長の末路からして、斉藤家は今後、没落する運命にあるだろう。
金のある今のうちということか。
そして、そんな絵恋さんも……。
〔とうきょう、東京。ご乗車、ありがとうございます。次は、上野に止まります〕
電車がホームに停車する。
私達は先に電車を降りた。
東京駅での下車は多かったが、その分乗車も多く、大して空いたわけではない。
が、それでも高崎線より空いている宇都宮線ということもあり、東海道線内よりは乗客が減っただろうか。
リサと絵恋さんが残り少ない時間で、別れを告げている。
本当の最後というわけではないだろうが、残りの時間を大切にしてもらいたい。
因みに私はというと、善場主任からのメールのやり取りをしなくてはならなかった。
話があるので、連休明けの火曜日に事務所に来たいということだった。
私から伺おうと思っていたのだが、主任の方から来てくださるとは助かる。
そんなやり取りをしているうちに、停車時間の5分はあっという間に過ぎた。
ホームにけたたましい発車ベルが流れる。
東海道本線下りホームは発車メロディだが、上野東京ライン下りのホームはベルである。
高橋:「おい、さっさと戻れ」
高橋が絵恋さんを車内に促す。
そして、電車は定刻通りにドアを閉めた。
まるで機関車牽引の客車列車よろしく、ゆっくりとした発進だったが、その後はスーッと加速していった。
愛原:「本当の最後というわけではないだろうから、また会えるさ」
リサ:「そうだね」
リサは寂しそうな顔はしていたが、特に泣いているという感じはなかった。
高橋に言わせると、泣きそうな顔をしていたのは絵恋さんの方だった。
まあ、そうだろう。
愛原:「よし。ちょうど夕食時だ。何か食べて帰ろうか」
高橋:「お供します!」
リサ:「お供します!」
私達はコンコースへの階段を下りて、一先ずは改札口へと向かった。