報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「魔道士達の紀行……いや、奇行?」

2020-04-24 20:21:53 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月24日19:00.天候:晴 長野県北部山中 マリアの屋敷1F西側 大食堂]

 イリーナ:「さーて、今宵も晩餐を楽しみましょうか」
 マリア:「お気楽ですねぇ……」
 稲生:「しょうがないですよ」

 稲生は食堂内の40インチテレビを点けた。

〔「新型コロナウィルスの感染者が増加し続け、このままのペースで行きますと、国内の感染者は……」〕
〔「新型コロナウィルス感染拡大の影響で、政府は更なる自粛要請を……」〕
〔「埼玉県内の自宅で療養をしていた新型コロナウィルスの感染者がその後、容体急変で死亡した件に対し、埼玉県は……」〕

 稲生:「どのニュースチャンネルにしても、こればっかりですもん。外に出られないですよ」
 マリア:「これも“魔の者”の揺さぶりですか?」
 イリーナ:「うんにゃ。いくら“魔の者”でも、ウィルスまでは作れないわよ。その証拠に、あれが世界中に蔓延してから、むしろ奴らは大人しくなってる。もし違うなら、これに乗じて、この前のアレクサ戦よりも激しい戦いを仕掛けて来るはず」
 稲生:「“魔の者”も、ウィルスには弱いってことですか」
 イリーナ:「どうだかね。そもそも人ならざる存在なわけだし……」

 イリーナはマリアのメイド人形に注いでもらったワインを口に運んだ。

 イリーナ:「それより、お家の再建の方はどうなの?」
 稲生:「それが、住所が変わりそうです。というか、違う町に再建することになりました」

 稲生の言葉に、マリアが目を丸くした。

 マリア:「前の場所じゃないのか?」
 稲生:「ええ。何しろ、家のあった場所が爆発でボコボコに穴が空いた上、うちの爆発のせいで近所が大変な目に遭ったことになっているので、あのまま住み続けられませんよ」
 マリア:「私の毒親が本っ当申し訳ない!」
 稲生:「それはもういいですよ。保険金降りたのと、大師匠様からの御見舞金だけで注文状宅が建てられそうですから」
 イリーナ:「このウィルス騒ぎで何だけど、今一度お見舞いに行きたいわね」
 稲生:「でも、どこにウィルスが潜んでるか分かりませんからねぇ。この山奥の屋敷は、明らかに安全地帯ですから……」
 イリーナ:「心配しなさんな」

 イリーナは食堂の角に置いてある水晶玉を指さした。

 イリーナ:「どのルートで行けば感染しないか、あれで占ってみるから」
 稲生:「な、なるほど」
 マリア:「こういう時、大魔道師は便利ですね」
 イリーナ:「マリアも早く、占いの技術を向上させなさい。この前のテスト、順位は下から数えた方が早かったわよ?」
 マリア:「さ、サーセン」
 稲生:「あ、先生。1つ、申し上げておきたいことが」
 イリーナ:「なーに?」
 稲生:「白馬から新宿へ行く高速バス、全便運休(※)です」

 ※https://www.alpico.co.jp/traffic/news/155/

 イリーナ:「ええ。別のルートを探しましょうね」
 マリア:「師匠。そもそも私達って、ウィルスに感染しますか?」
 イリーナ:「“魔女の宅急便”のキキも風邪を引いたでしょ?(※)」

 ※(風邪ではなく、生理との説もある。風邪の割には咳や鼻水、くしゃみなどの症状が無かった為)

 マリア:「ジブリアニメを参考にしていいんですか?」
 稲生:「まあ、ハリーポッターよりは分かりやすいですけどね」

 とはいえ、高速バスのルートが塞がれたとあらば、あとは鉄道くらいしか手段を思いつかなかった稲生だった。
 そしてイリーナは、正しく新幹線ルートを占ったのである。

[同日21:00.天候:晴 マリアの屋敷2F東側 稲生の部屋]

 稲生勇太:「……そういうわけだから、母さん。近いうち、そっちに行くよ」

 稲生は部屋に戻ると、実家に電話していた。

 稲生佳子:「大丈夫なの?先生の御屋敷の中は安全なんでしょう?ウィルスが収束するまで、そこにいた方がいいんじゃない?」
 勇太:「先生の占いで安全なルートを通るんだ。それなら大丈夫だよ」
 佳子:「せっかく慣れた町を離れるのは残念だけど、しょうがないからね。ホテル暮らしなんかすぐに飽きるから、マンションに移って良かったわよ」
 勇太:「2LDKSのマンションだったっけ」
 佳子:「お父さんのお友達がマンションを買ったはいいけれど、直後に外国に長期出張になっちゃって、その間空き部屋になるからって、安く貸してくれたのよ。2人で住むにはちょうどいいけど、勇太達が泊まるには狭いと思う」
 勇太:「いいよ。僕達、ホテルに泊まるから。ちょうど建ててる最中の家を先生が見たいって言うから。……うん。それじゃ」

 稲生は電話を切った。

 稲生:「……っと、こんなところか。あとはホテルを予約するか。今は自粛でどのホテルも閑古鳥だからなぁ。ワンスターホテルなんか、すぐに宿泊できるだろう」

 稲生は引き続き、手持ちのスマホでワンスターホテルに掛けてみた。

 オーナー:「お電話ありがとうございます。ワンスターホテルでございます」
 稲生:「あ、もしもし。僕、稲生です」
 オーナー:「稲生さん?お久しぶりですねぇ!」
 稲生:「お久しぶりです。実は近いうち、上京することになりましたので、予約をしたいんですけど……」
 オーナー:「ありがとうございます。お日にちとお部屋は如何なさいますか?」
 稲生:「部屋はツインが1つとシングルが1つで。日にちは……」

 簡単に予約できた。
 どうやら、本当に閑散としているらしい。
 心配になって、稲生は聞いてみた。

 稲生:「どうですか?今、コロナウィルス関係で、どのホテルも苦境に陥っていると聞きますが……」
 オーナー:「御多分に漏れず、うちもそうです。ただ、うちの場合、エレーナが営業活動してくれているおかげで、経営が傾くほどの落ち込みではございません。いつでも御予約をお取りできる程度の空きが常にある程度で……」
 稲生:「そうなんですか」

 航空便も最低限の本数しか運航しなくなったわけだが、それに乗って未だに来日するダンテ一門の魔道士がいるだろうか。
 それとも、魔界の出入口利用希望者か。

 オーナー:「ですので、うちは軽症者受け入れの要請はお断りする方向で考えていますよ」
 稲生:「なるほど。ということは今、エレーナは元気にしているということですね?」
 オーナー:「ええ。魔界の病院を退院して、今は元気です。今日は非番なので、また魔界に行ってますが」
 稲生:「活動の拠点を魔界に移しましたか」
 オーナー:「魔道士とて、コロナウィルスは怖い存在ですから。人間界に住んでいた魔界の住人も、こぞって魔界に『コロナ疎開』して行ったくらいです」
 稲生:「それ、逆に魔界が危なくなってないですか?」
 オーナー:「ですので、エレーナは『コロナウィルスに効く薬』を王宮に卸す交渉をしているみたいです」
 稲生:「ちょっと待ってください。まだ、『コロナウィルスに効く薬』は臨床検査中で、日本ではまだ承認出てないはずですけど?」
 オーナー:「この前なんか、マスクやら消毒液やら、どこで仕入れたんだか、大量にホテルに持ち込んで大変だったんですから」
 稲生:「マイケルさーん、転売厨の魔女発見!どうしますかぁ?」

 転売ヤーだと確定したわけではないが、稲生は間違いなくエレーナが転売目的で闇仕入れしたと確信したようである。

 稲生:(あの守銭奴魔女!)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「探偵のお仕事」 final

2020-04-22 20:45:38 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月5日15:00.天候:晴 東京都千代田区 秋葉原電気街近辺にあるカフェ]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 高橋と霧崎さんがラブホに入ってから2時間。
 そして、私とリサが張り込み用に入ったカフェに滞在して2時間が経過した。

 リサ:「あ、出て来た」

 リサがラブホを指さした。

 愛原:「よし!」

 私は2人に向かってデジカメのシャッターを切った。
 確かに、ラブホに入った時と比べて距離感は縮まったかのように見える。
 しかし、まだ手を繋いだりということはなかった。
 とはいうものの、どうやら高橋は霧崎さんを『女』にしてあげられたようだ。
 それは何よりだ。

 愛原:「よし、俺達も行くぞ」
 リサ:「うん!」

 私は会計を済ませると、店の外に出た。
 先に店の外に出ていたリサが、2人の行った方を指さした。

 リサ:「あっちあっち!」
 愛原:「分かった」

 さすがに家に帰るだろうかと思う。
 それとも、どこか一服してから帰るか?

 愛原:「ん?」

 しかし2人は昭和通りに出ると、そこを南下し、和泉橋を渡った。
 どうやら本当に真っ直ぐ帰るみたいで、私達は2人が都営新宿線の岩本町駅に入るのを見届けた。

 リサ:「私達も電車に乗らないの?」
 愛原:「いや、調査はここまでだ。あとは高橋よりも先に帰らないとな」

 私はリサの質問にそう答えると、昭和通りを走っていた空車のタクシーを捕まえた。

 愛原:「はい、乗って」
 リサ:「はーい」

 リサを先に乗せて、私も後から乗る。

 愛原:「菊川1丁目まで」
 運転手:「はい、菊川1丁目ですね」

 車が走り出してから、私はデジカメを取り出した。

 愛原:「しかし、よくよく考えてみたら、表向きのクライアントは絵恋さんだぞ?一番の収穫はこの2人がラブホに出入りしたところだけど、それを報告していいものかね?」
 リサ:「いいと思う」
 愛原:「そうかね?御嬢様だから、『不潔!』とか言わないかね?」
 リサ:「兄ちゃんに対しては言うかもしれないけど、メイドさんに対しては言わないと思う。むしろ、『大人の女』って感じ」
 愛原:「そうかね」

 ラブホに入る時の霧崎さんは無表情だが、出てくる時は何となく微笑を浮かべているように見える。
 高橋、『クエスト達成』……かな?
 しかし、いくら大金持ちの御嬢様とはいえ、女子中学生から多大な報酬をもらうことになるとはな。

 リサ:「先生、私も後で連れて行ってね?あのラブ……」
 愛原:「あー、分かった分かった!……それが何を意味しているのか、分かってオマエは言ってるのか?」
 リサ:「もちろん!」

 本当かなぁ?
 ゲーセンに行くような感覚だと、絶対後悔するぞ。

 リサ:「研究所でもされた『性的実験』。あれは絶対嫌だったけど、先生となら良さそう……」

 年端も行かない少女達を拉致して、絶対いかがわしい行為をしているだろうと思ったが、噂通りであったようだ。

 愛原:「もう少し大人になってからな?でないと俺が捕まるし、オマエも補導だ」
 リサ:「今は車に乗ってるから、車道にいてもいいでしょ?」
 愛原:「歩道じゃねぇ!」

[同日18:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 高橋:「先生、サーセン!遅くなりました!」
 愛原:「遅かったな?ミリタリーショップ以外に、まあ、昼飯も食っただろうが、他にどこか行ってたのか?」
 高橋:「まあ、色々と……。一応あいつを送って行ってやったんですが、その時に話し込んじゃって……」

 ん?まさかこいつら、ラブホだけでは飽き足らず……?
 まさか、な……。

 愛原:「まあいいさ。ということは、随分と仲良くなれたってことでいいのかな?」
 高橋:「まあ、そうっスね。あいつが、どう思ってるのかまでは分かりませんけど……」
 愛原:「信用できない男を家まで送らせたりはしないと思うし、話し込ませないと思う。それができたんだから、相当なもんだと思うがな?」
 高橋:「ハハハ……そうっスかね」

 そもそも、ラブホに一緒に入ったこと自体が驚きだ。
 一体、どうやって連れ込んだのか聞いてみたいところだが、それだと今回の調査がバレてしまうからなぁ……。
 見てた限り、無理やり連れ込んだわけでは無さそうだから、何かそうなるきっかけを作ったのだろう。

 愛原:「で、何を買ったんだ?」
 高橋:「その前に、夕飯作りますよ」
 愛原:「いや、その心配は無い。今日は出前を頼んだから。ピザでいいな?」
 高橋:「何か、サーセン。いいんスか?ピザって結構高い……」
 愛原:「いいよいいよ。心配すんな」

 絵恋さんから報酬もらえるからな。

 高橋:「何か俺も一緒にナイフ買うことになっちゃって……。あいつとお揃いっス」
 愛原:「これはまた、ゾンビなんかすぐ殺せそうなナイフだねぇ……」
 高橋:「何せ、真珠がハンターをピヨらせたナイフですから」
 愛原:「なるほど。弾の節約にはなるわけだ」
 高橋:「そういうことです。あとは弾薬ケースですね。ゲームとかじゃ、探索先に都合良く弾薬ケースや弾が落ちていますが、現実は違いますから」
 愛原:「霧生市の時は警察から頂戴したり、UBCSから頂戴したりしたもんな。ハンドガンは買ったのか?」
 高橋:「サーセン。やっぱいいのが無かったんで、カスタムの部品だけです」

 レーザーポインターとか、装填数を増やすヤツとか……。
 私もショットガンは持っているが、そんなにカスタムはしていないからなぁ……。

 愛原:「でも、こんなんじゃ、リサは倒せないな」
 リサ:「対戦車ロケット砲だったら、さすがに私もヤバいかも……」
 愛原:「その対戦車ロケット砲でもネメシスは死ななかったらしいが、本当にそいつの言う事を聞かせることは可能なのか?」
 リサ:「うん、大丈夫」

 リサを制御できる人間は私だけ……だよな、きっと。
 どうしてリサが私を『主人』と認識し、あわよくば『セックスしてもいい』と言うまでになったのか。
 今振り返って見ても、運くらいしか思い当たらない。

 ピンポーン♪

 愛原:「あ、ピザ来たかな。はーい」
 高橋:「あー、俺出ます。支払いは?」
 愛原:「もう既にクレカ先払いにしたから大丈夫」
 高橋:「さすが先生っス」

 高橋は玄関に向かった。
 クレカ払いでポイント貯めて、タダで旅行行けるくらいにまではなったものの……。

〔「……安倍総理は『緊急事態宣言』を出すかどうかの判断について……」〕

 私はテレビニュースを見た。
 うーん……リサからワクチンを作るという計画、上手く行くのかなぁ……?

 高橋:「先生!Lサイズ2枚とチキンとフライドポテトって、大丈夫っスか!?」
 愛原:「大丈夫大丈夫。俺は1枚のうち半分だけでいい。リサはLサイズ1枚分軽く食べるから」
 リサ:「腹八分目~」
 高橋:「食い過ぎだ、この野郎!ちったぁ先生の御財布を考えろ!」

 それでもリサが太ることはない。
 BOWの中には明らかにデブってるタイプもいるのだが、そこは体の作りの違いによるものなのだろうか。

 愛原:「まあ、いいからいいから。ビールも注文してたと思うけど?」
 高橋:「これっスね。……これは俺の分っスか?あざーす」
 リサ:「私はコーラ」
 高橋:「何でこいつ太らないんスか?」
 愛原:「BOWだからだろう」
 高橋:「しかもまだロリ体型だし。先生は巨乳女がお好みだぞ、あぁ?」
 愛原:「勝手に好みにすんなよ。ほら、それより乾杯すんぞ」
 高橋:「うっス!」

 私達は缶ビールのプルタブを開けた。
 リサはコーラのペットボトルだ。
 それで乾杯した。
 リサがロリ体型か……。
 言われてみれば、リサと最初に会ってからそんなに身長とか変わっていないような気がする。
 育ち盛りなんだから、いつの間にか身長が伸びたり、大人な体型になったりしそうなものだが……。
 まあ、そういうのも含めて上級BOW『リサ・トレヴァー』なんだろうけど……。

 愛原:「高橋。今のうちにショッピングとか楽しんで良かったかもしれないな」
 高橋:「何スか?」

 私はテレビを指さした。
 新型コロナウィルスの脅威を報道している。

 愛原:「斉藤社長の見立てでは、本当に『緊急事態宣言』が出される。そうなったら、もうミリタリーショップ辺りは営業自粛になるだろう」

 そして、ラブホも……かな?

 高橋:「なるほど。そうかもしれないっスね」

 リサから抽出したTウィルスだのGウィルスだののサンプル。
 新たなバイオハザードは引き起こさず、且つ新型コロナウィルスだけやっつけるように作るのは至難の業なのかもしれない。
 そしてそんな朗報が私達の耳に届く前、政府は本当に『緊急事態宣言』を発令することとなる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「探偵のお仕事?」 3

2020-04-22 15:06:43 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月5日13:00.天候:晴 東京都千代田区 秋葉原区域内]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は助手の高橋と、斉藤絵恋さん専属メイドの霧崎真珠さんが初デートをしている。
 絵恋さんに依頼され、私は2人の仲を調査すべく、正に今、『探偵の仕事』をしている。
 最近バイオハザード絡みの事件ばっかりだったから、こういう通常業務はむしろホッとする。

 リサ:「あっ、出て来た」

 助手そのものが不在の為、今はリサがそれを代行してくれている。
 本当は高野君に手伝ってもらえると良かったのだが、事務員ということもあり、土休日は基本的に休みである為。

 愛原:「よし、追うぞ」

 高橋と霧崎さんがラーメン屋から出て来た。
 因みにこの場合、今日は東京都心だからしょうがないにせよ、本来なら車を使って尾行するのが普通だ。
 それも、目立たない大衆車とか商用車ね。
 どこにいてもおかしくない車だ。
 車の中に隠れられるし、そこから撮影することもできる。
 ただ、これが車の走りにくい場所だとすれば話は別だ。
 東京都心とか、道の狭い住宅街とかね。
 事務所によっては、タクシーを貸切にしてしまうという。
 確かにタクシーならオフィス街だろうが、住宅街だろうが、繁華街だろうが、どこにいてもおかしくはないからだ。
 また、自分で運転せずに済むので、決定的瞬間のシャッターチャンスを逃がすこともない。
 どちらかというと、探偵よりかはスクープ狙いのマスコミがよく使う手だ。

 リサ:「どこに行くのかな?」
 愛原:「目的も果たしたし、もう帰るのかもしれないな?」

 私はそう思っていた。
 もしくは、また別の店に寄るか……。
 なかなかいい買い物をして、報奨金を使い果たしたかもしれない2人が、あと寄る場所というと……?

 愛原:「ん、こっちか?」

 高橋達は裏通りに入って行った。
 何だろう?
 ジャンクショップにでも行くつもりか?

 リサ:「あそこ!あそこ入って行った!」

 リサが指さした所には……。

 愛原:「マジか!?」

 そこにはラブホがあった。

 愛原:「た、確かにここに入って行ったよな?」
 リサ:「うん。ここは何のお店?」
 愛原:「ここはラブホ……あ、いや、ホテルだよ」
 リサ:「兄ちゃんとメイドさん、泊まって行くん?」

 もしくは、『御休憩』か?
 明日、お互いに仕事があるからな。
 おいおいおい、もうラブホで体を重ねる選択肢を出したのか、オマエら!?
 若いから勢いがあるのかな?
 2人とも非童貞・非少女だからかな?
 まあ、それはいい。

 愛原:「多分、『御休憩』だろう。1回、2回ヤって……あ、いや!」
 リサ:「ん?私も入ってみたい」
 愛原:「子供はダメ!」
 リサ:「えー?もうバスや電車は大人運賃……」
 愛原:「そういうことじゃない。ほら、入口の所にも書いてあるだろ?『18歳未満利用禁止』って」

 もっとも、実際に年齢確認をしているラブホは皆無に等しいから、18歳未満でも大人っぽい恰好をして行けば普通に入れるのが現状だ。
 JKの援交だって、制服姿で入るわけがない。
 個人撮影の援交動画だって、あれは入店時は普通の私服で入り、部屋で制服に着替えさせているだけのことである。

 リサ:「じゃあ、どうするの?」
 愛原:「俺1人で入るわけにもなぁ……」

 もっとも、中には最初は男が1人で入り、後でデリヘルを呼ぶというパターンもある。
 こういう時、相方が高野君だと、カップルを装って入店し、中で監視するということもできるのだが……。

 愛原:「あっ、ちょうどいいのがあった」

 私はホテルの近所にカフェがあるのを見つけた。

 マスター:「いらっしゃいませ」
 愛原:「2人で」
 マスター:「どうぞ、お好きな席にお掛けください」

 私達は通りに面したテーブル席に座った。
 ここならホテルの出入口も見えるから、いい張り込み場所だ。

 愛原:「……そうだ。ここで昼食も食えるな」
 リサ:「ホットケーキ、ジャンボホットケーキ。それとホットミルク」
 愛原:「了解。俺は……ホットドッグとブレンドコーヒーでいいや」

 私が注文すると、再び通りに目を向ける。
 もちろん、すぐに出てくるわけがない。

 リサ:「ねぇ、先生」
 愛原:「何だい?」
 リサ:「先生はああいう所、入ったことあるの?」
 愛原:「いや、無いなぁ。俺は高橋みたいに、右から左へと女が寄って来るような男じゃないんでね」
 リサ:「私と一緒に入る?」
 愛原:「だから、年齢制限が……」
 リサ:「うん。私が18歳になったら」
 愛原:「……あー、なるほどな」
 リサ:「高校の制服着て、エンコーしてあげる」
 愛原:「いくら取る気だよw」

 私は苦笑した。
 リサの場合、お金より、もっと搾り取られそうなものがありそうだ。

 マスター:「お待たせしました」

 しばらくして、注文したものがやってくる。

 マスター:「こちら、ジャンボホットケーキでございます」
 リサ:「おー!」

 3段重ねの、朝マックのホットケーキより直径の大きいホットケーキだ。
 これなら大食のリサも満足だろう、多分。

 マスター:「こちら、ホットドッグでございます」
 愛原:「どうも」

 昭和時代のカフェみたいだ。
 そういう伝統的なカフェの出すホットドックは、キャベツの千切り(またはみじん切り)をウインナーと一緒に炒め、背割りコッペパンに挟んでしばらくオーブントースターで温め、それから出すというのがセオリーだ。
 さっきからフライパンで炒める音が厨房から聞こえてたと思ってたら、これを作っていたわけだ。

 愛原:「よし、じゃ早速食べよう。もちろん、食べている間も監視を怠るな」
 リサ:「はーい」

 リサは美味そうにホットケーキを頬張った。
 その仕草にはホッコリ来るものがある。
 時々、さっきみたいに性欲を匂わせる部分もあるが、まだまだ食欲が優先といった面が強いコだ。
 で、食欲を見たし、今は性欲を満たしている最中の高橋達を私達は監視中というわけだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「探偵のお仕事?」 2

2020-04-20 20:08:46 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月5日10:13.天候:晴 東京都千代田区神田岩本町 都営地下鉄岩本町駅]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は助手の高橋がメイドの霧崎真珠さんとデートをするというので、尾行している。
 これも探偵の仕事だ。
 もちろん、変な意味ではない。
 これも、ちゃんと依頼人からの依頼を受けて行っているものである。
 で、助手が不在なので、リサが代行している。
 もちろん、高橋には内緒である。
 当たり前だ。

〔1番線の電車は、各駅停車、新宿行きです。いわもとちょう~、岩本町~〕

 高橋と霧崎さんが電車を降りる。
 もちろん、私達も後からついて行った。
 幸いこの駅は比較的乗降客が多いので、それに紛れて降りることができる。

 愛原:「秋葉原なら、確かに何でもありそうだな」

 改札口を出て、更に地上に向かう。
 昭和通り(国道4号線)の出口から地上に出た。

 リサ:「特に、手を繋いでるとかいうわけじゃないね?」
 愛原:「高橋としては是非ともそうしたいだろうに、霧崎さんの方が少し離れて歩いてる」
 リサ:「遠慮してる?」
 愛原:「遠慮してるように見えるのか?」
 リサ:「サイトーならグイグイ来るのに」
 愛原:「絵恋さんは特別さ」

 性格だけなら、BOWもかくやといったところだもんな。

[同日10:30.天候:晴 東京都千代田区外神田 某ミリタリーショップ]

 秋葉原で有名な電気街。
 そこへ都営新宿線の岩本町駅から行こうとすると、少し歩くことになる上、道を知らないと迷いやすい。
 どこへ行くのかと思いきや、高橋達はそこに入った。
 なるほど。
 やはりミリタリーショップみたいなマニアックな店は、こういうマニアックな場所にあるってか。
 で、この電気街。
 北に行けば行くほど、マニア度が増す。
 東京メトロ銀座線に末広町という駅があるが、この駅は『電気街北口駅』と呼ばれるほど、電気街に行くのに便利な場所にある。

 メイドカフェ店員A:「メイドカフェ『かりぶ』でーす」
 メイドカフェ店員B:「お越しくださーい。よろしくお願い致しまーっす」

 新型コロナウィルスの影響がこういう店にも出ているのか、店員達の呼び込み必死だ。

 リサ:「おー!サイトーの家のメイドさん達みたいなのがいるー!」
 愛原:「うん、そうだな」

 だが、寄っているヒマは無い。
 今は高橋達を追わねば。
 てか絶対、斉藤家のメイド服、こういう店のを参考にしてるだろ。
 一体、誰の趣味なのやら……?
 まあ、1人しか思いつかないけど。

 リサ:「兄ちゃん達、あそこに入って行った」
 愛原:「なるほど」

 私はすぐに店の名前をスマホで検索した。
 すると、ちゃんと公式サイトがあった。
 まずは霧崎さんのナイフを買いに行ったか。

 リサ:「兄ちゃん達が出てくるまで待つの?」
 愛原:「ああ。これが、『張り込み』だ。これは根気がいるぞー」
 リサ:「なるほど」

 結構ゆっくり探しているようだ。
 店を出て来たのは30分もしてからだった。
 しかも、高橋も店の袋を持っている。
 まさか、お揃いで買ったのか?
 一応、その模様を写真に収めておく。
 探偵の必需品の1つはデジカメだ。
 それからすぐ近くのミリタリーショップに入る。
 どうやら、系列店のようだ。
 外から見る限り、今度は銃火器が充実している店舗らしい。
 もっとも、本物ではなく、電動ガンとかエアガンだろうがな。
 しかし、高橋はそれを違法改造して殺傷能力を持たせるのが得意なのだ。
 因みにマグナム44だけ本物で、それだけ許可されている。
 私の言い付け通り、もっと軽いハンドガンを持つ気になったのだろうか。
 それとも、新しいマグナムを手に入れるつもりか。
 それにしても、霧崎さんはそういうのに興味があるのだろうか。
 もしそうでないのなら、さぞかし霧崎さんも退屈ではないかと思うが……。
 私がその疑問を口にすると、リサが言った。

 リサ:「多分、興味あると思う」
 愛原:「どうしてそう思うんだい?」
 リサ:「前にサイトーから聞いた。あのメイドさんの私服、迷彩服が多いんだって」
 愛原:「ガチか!」

 今、霧崎さんはベージュのトレンチコートを着ているから、その下に何を着ているのかは分からない。
 少なくとも、下半身はごく普通のジーンズであることは分かる。

 リサ:「何か、パンツとかキャミソールとか、そういう柄のヤツ持ってるらしいよ」
 愛原:「下着の柄としての迷彩か。でも、ガチかもな。女性用の下着で、なかなかそういうの売ってないだろ?それをわざわざチョイスするってことは、だ。……フムフム」

 私は手帳に記入した。
 クライアントへの報告書に記載するネタになるかもしれない。

 リサ:「お腹空いた」
 愛原:「もうそろそろお昼か。だけどな、これが探偵の仕事ってもんだ。場合によっては一食くらい抜くこともある」
 リサ:「大変だねー」
 愛原:「リサはいいよ。どうせ高橋達、しばらく動かんだろ」
 リサ:「じゃあ私、何かコンビニで買ってくる」
 愛原:「ああ、よろしく」

 リサ、ここで一時離脱。
 その間に高橋達が出てこないかと緊張したが、そんなことはなかった。

 リサ:「お待たせ」
 愛原:「おっ、早かったな」

 因みにリサもさすがに今は学校の制服ではなく、私服を着ている。
 グレーのフード付きパーカーに、下はデニムのショートパンツである。
 パーカーの上はピンク色のジャンパーを着ていた。

 愛原:「……って、あんパンと牛乳……」
 リサ:「テレビで、探偵さんが張り込みをしながらこれを食べてるの見たの」
 愛原:「いつの時代の探偵だよ。まあ、いいや」

 私はあんパンを頬張り、そして牛乳を流し込んだ。
 軽い昼食が終わった直後、2人が店から出て来た。
 どうやら、銃の選定が終わったらしい。
 何を買ったのか、後で見せてもらうとしよう。

 リサ:「もう帰るのかな?」
 愛原:「いや、せっかくだから昼飯食ってから帰るんじゃないかな」

 私の推理は当たり、2人は飲食店に入った。
 しかし、ラーメン屋であった。
 2人とも、金が無いのか。
 悪いな高橋、安月給で。

 リサ:「先生、私もラーメン食べたい」
 愛原:「あー……いや、ちょっとあの店、狭いな。一緒に入ったらバレる。悪いが、あいつらが出てくるまで我慢だ」
 リサ:「えーっ!」
 愛原:「探偵たる者、忍耐力が必要。今度、上手いラーメン屋連れて行ってやるから」
 リサ:「……コンビニでまた買ってくる」
 愛原:「ああ、そうしてこい」

 それにしても、あれではカップルというよりは、ただの友達だな。
 ま、無難な付き合いから始まれたようで何より。
 そう思っていた私だったが、その後、あの2人は予想外の行動に出る!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「探偵のお仕事?」

2020-04-20 11:11:58 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月5日10:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅]

 高橋:「よお」
 霧崎:「時間通り……だね」
 高橋:「『探偵たる者、常に時間に正確であれ』ってな」
 霧崎:「ふーん……。真面目にやってるんだ」
 高橋:「一応な。真珠は早ェな?」
 霧崎:「『メイドたる者、常に時間より5分、10分早く』だよ」
 高橋:「なるほど。しかし、真珠のその恰好……」
 霧崎:「どこか変?」
 高橋:「いや……よく似合う。早く行こう」

 高橋と霧崎さんは地下鉄の入口に入って行った。
 その様子を少し離れた所で見るは、私、愛原学と何故か付いてきたリサ。
 リサ曰く、『助手の高橋兄ちゃんの代わり』とのこと。
 どうせ学校も自粛が続いていてヒマなので付いてきただけだろう。
 緊急事態宣言も現実味を帯びて来たし(日付に注目!)。

 愛原:「霧崎さん、見た目がボーイッシュなんだけど、私服は普通に女性っぽいのを着てたな?」

 下はジーンズであったが、ゲイ心のある高橋から見れば、相当なギャップ萌えであったことだろう。
 一瞬であったが、私は高橋が鼻の下を伸ばしたのを見逃さなかったよ。
 私達もワンテンポ遅れて地下鉄に向かう。
 で、この展開が起きる前、何があったのか?
 話は今月1日に遡る。

[4月1日14:00.天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 愛原:「良かったな、高橋?オマエの口座に報奨金が振り込まれてて」
 高橋:「あざっす……いえ、ありがとうございます!先生のおかげです!」
 愛原:「思ったよりもいい金額だ。善場主任に口添えしておいて良かったな」
 高橋:「さすが先生です!」
 愛原:「その金はオマエの物だ。オマエが自由に使っていい。ということは、だ。今頃は霧崎さんにも報奨金が渡されているということになるな」
 高橋:「そ、そうっスね」
 愛原:「早速誘ってみたらどうだ?店は探したんだろう?」
 高橋:「は、はい!」
 愛原:「奥に行ってゆっくり話して来い。どうせまた今日もヒマだから」
 高橋:「サーセン!失礼します!」

 高橋は自分のスマホを片手に応接室へ向かった。
 そして私はすかさず自分のスマホを取ってリサに電話した。

 愛原:「ああ、もしもし、リサ?俺だけど……」
 リサ:「なーに?先生」
 愛原:「この前話した作戦、決行するぞ?まずはオマエから絵恋さんを誘うんだ。そして霧崎さんの、絵恋さんの世話という業務を休ませてやれ」
 リサ:「うん、分かった。私がサイトーの家に遊びに行くことにする」
 愛原:「頼んだぞ。あとは真実を話して、協力させてやれ。絵恋さんはオマエの言う事なら何でも聞くからな」
 リサ:「りょーかい」

 そしてリサは、私の言う事を何でも聞く(制御されたBOWは自分が主人と認めた者に対して忠実。中には忠実過ぎて、逆に暴走してしまう個体も。タイラントとか、ネメシスとか)。
 私は電話を切ると、応接室に足を運んだ。

 高橋:「別にいいじゃねーかよ。なあ?」

 どうやら霧崎さんを誘い出すのに、悪戦苦闘しているようだ。
 ここまでは想定内。

 高橋:「絵恋の世話なんて、あいつも中学生だぜ?そんな手取り足取り……、いや、でもよぉ……」

 どうやらここで電話を切られたようだ。
 ん、もう少し早く手を打っておくべきだったかな。
 だが、今現在、外堀埋めは鋭意進行中。
 外堀が埋まったら、今度は高橋のターンだ。
 それまでの辛抱だ。

 高橋:「くそっ!」

 高橋が悔しそうに応接室から出てくる。

 愛原:「どうだった?」
 高橋:「先生!どうしたもこうしたも無いですよ!けんもほろろに断りやがったんスよ、あいつ!」
 愛原:「何て?」
 高橋:「『御嬢様のお世話で忙しい』とか、『ナイフくらい自分で買う』とか!」
 愛原:「なるほど。『あんたのことが嫌いだから』とか、『もう2度と電話するな』とかは言ってた?」
 高橋:「いや、それは言ってなかったっス」
 愛原:「それならまだ大丈夫だ。後でもう一度電話してみろ?今度はきっと上手く行く」
 高橋:「ええっ?」
 愛原:「そうだな……。あと1時間くらいしたら、もう一回掛けてみろ?騙されたと思って」
 高橋:「はあ……。まあ、先生がそう仰るのなら……」

 それから1時間後、高橋はもう一度電話をしに応接室へ向かった。
 それを確認してから、私もリサに電話してみた。

 愛原:「リサ、どうだった?」
 リサ:「バッチリ!サイトーに事情を話したら、『パールの為だったら、私も一肌脱ぐわ』だって」
 愛原:「ほお、それはそれは……」
 リサ:「それでね、サイトーから依頼」
 愛原:「依頼?」
 リサ:「高橋兄ちゃん達のデートがどんなものなのか、見て来て欲しいって。契約書は後でファックスするって」
 愛原:「おいおい。中学生に依頼を受けるプロの探偵なんて聞いたことないぞ」

 よしんば本気だとしても、中学生の依頼じゃ、ほぼボランティアだな。

 リサ:「私も先生の御手伝いするから」
 愛原:「リサは絵恋さんと一緒に遊べばいいだろう?」
 リサ:「無理。サイトー、週末はお父さんに連れられてPCR検査受けに行くって」
 愛原:「金持ちほど先にPCR検査受けられるものなのか、やっぱり」

 Tウィルスの抗体を持っていれば新型コロナウィルスにも罹らないというのはデマかなぁ……?
 神奈川の山奥に行った時、色々と検査やら実験やらに参加したけれども、あれから何の音沙汰も無いしなぁ……。
 あの時点では、まだ私達は感染すらしていなかったが。

 リサ:「もしかしたら、学校が始まるまで別荘に避難するかもしれないって」
 愛原:「『コロナ疎開』はやめなさい!」

 金持ちほど自衛手段は多々あるからな。
 もっとも……。

 リサ:「あ、誰か来た。お客さん?」
 愛原:「いいよ、俺が出る」
 配達員:「こんにちは!ヤマト運輸です!」
 愛原:「はい、ご苦労さん」

 私は伝票にサインをすると、荷物を受け取った。


 配達員:「ありがとうございましたー!」

 私は段ボール箱を中に運び入れる。

 リサ:「なーに?」
 愛原:「斉藤社長から差し入れだよ」

 私は段ボール箱を開けた。

 愛原:「マスク100枚」
 リサ:「おー!」

 そのお金持ちにぶら下がる私も私か。

[4月5日10:07.天候:不明 東京墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅→都営新宿線987K電車5両目(高橋と霧崎は6両目)]

〔まもなく1番線に、各駅停車、新宿行きが10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください。急行電車の通過待ちはありません〕

 高橋と霧崎さんは並んで電車を待っていた。
 私とリサは階段の影に隠れて、電車を待つ。
 そして、電車がやってきた。
 京王電鉄の車両だ。

〔1番線の電車は、各駅停車、新宿行きです。きくかわ~、菊川~〕

 高橋達とは隣の車両に乗り込む。
 そして、いつでも隣の車両が確認できるよう、その乗車位置も連結器の近くだ。
 先客がいることもあるが、とにかく3人掛け席の所にいれば良い。

〔ドアが閉まります。駆け込み乗車は、おやめください〕

 車外スピーカーから短い発車メロディが鳴ると、その後で電車のドアとホームドアが閉まる。
 それから少しブランクがあって、電車が走り出した。

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Morishita(S11).Please change here for the Oedo line.〕

 リサ:「先生、兄ちゃん達はどこまで行くの?」
 愛原:「アキバでいい店を見つけたって言ってたからな。恐らく、岩本町駅で降りるだろう。ちょうどここなら、あの2人に見つからず、監視することができる」
 リサ:「うん」

 助手のデートを監視するのはあれだが、依頼人からの依頼とあらば致し方無い。
 うん、そうなんだ。
 絵恋さんからはガチで契約書が届いたよ。
 しかも、報酬がとても中学生には出せないような額。
 依頼人の名前は絵恋さんだけになっているが、きっとこれは裏に斉藤社長もいるのではないか。
 そう思った。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする