報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「探偵のお仕事?」 2

2020-04-20 20:08:46 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月5日10:13.天候:晴 東京都千代田区神田岩本町 都営地下鉄岩本町駅]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は助手の高橋がメイドの霧崎真珠さんとデートをするというので、尾行している。
 これも探偵の仕事だ。
 もちろん、変な意味ではない。
 これも、ちゃんと依頼人からの依頼を受けて行っているものである。
 で、助手が不在なので、リサが代行している。
 もちろん、高橋には内緒である。
 当たり前だ。

〔1番線の電車は、各駅停車、新宿行きです。いわもとちょう~、岩本町~〕

 高橋と霧崎さんが電車を降りる。
 もちろん、私達も後からついて行った。
 幸いこの駅は比較的乗降客が多いので、それに紛れて降りることができる。

 愛原:「秋葉原なら、確かに何でもありそうだな」

 改札口を出て、更に地上に向かう。
 昭和通り(国道4号線)の出口から地上に出た。

 リサ:「特に、手を繋いでるとかいうわけじゃないね?」
 愛原:「高橋としては是非ともそうしたいだろうに、霧崎さんの方が少し離れて歩いてる」
 リサ:「遠慮してる?」
 愛原:「遠慮してるように見えるのか?」
 リサ:「サイトーならグイグイ来るのに」
 愛原:「絵恋さんは特別さ」

 性格だけなら、BOWもかくやといったところだもんな。

[同日10:30.天候:晴 東京都千代田区外神田 某ミリタリーショップ]

 秋葉原で有名な電気街。
 そこへ都営新宿線の岩本町駅から行こうとすると、少し歩くことになる上、道を知らないと迷いやすい。
 どこへ行くのかと思いきや、高橋達はそこに入った。
 なるほど。
 やはりミリタリーショップみたいなマニアックな店は、こういうマニアックな場所にあるってか。
 で、この電気街。
 北に行けば行くほど、マニア度が増す。
 東京メトロ銀座線に末広町という駅があるが、この駅は『電気街北口駅』と呼ばれるほど、電気街に行くのに便利な場所にある。

 メイドカフェ店員A:「メイドカフェ『かりぶ』でーす」
 メイドカフェ店員B:「お越しくださーい。よろしくお願い致しまーっす」

 新型コロナウィルスの影響がこういう店にも出ているのか、店員達の呼び込み必死だ。

 リサ:「おー!サイトーの家のメイドさん達みたいなのがいるー!」
 愛原:「うん、そうだな」

 だが、寄っているヒマは無い。
 今は高橋達を追わねば。
 てか絶対、斉藤家のメイド服、こういう店のを参考にしてるだろ。
 一体、誰の趣味なのやら……?
 まあ、1人しか思いつかないけど。

 リサ:「兄ちゃん達、あそこに入って行った」
 愛原:「なるほど」

 私はすぐに店の名前をスマホで検索した。
 すると、ちゃんと公式サイトがあった。
 まずは霧崎さんのナイフを買いに行ったか。

 リサ:「兄ちゃん達が出てくるまで待つの?」
 愛原:「ああ。これが、『張り込み』だ。これは根気がいるぞー」
 リサ:「なるほど」

 結構ゆっくり探しているようだ。
 店を出て来たのは30分もしてからだった。
 しかも、高橋も店の袋を持っている。
 まさか、お揃いで買ったのか?
 一応、その模様を写真に収めておく。
 探偵の必需品の1つはデジカメだ。
 それからすぐ近くのミリタリーショップに入る。
 どうやら、系列店のようだ。
 外から見る限り、今度は銃火器が充実している店舗らしい。
 もっとも、本物ではなく、電動ガンとかエアガンだろうがな。
 しかし、高橋はそれを違法改造して殺傷能力を持たせるのが得意なのだ。
 因みにマグナム44だけ本物で、それだけ許可されている。
 私の言い付け通り、もっと軽いハンドガンを持つ気になったのだろうか。
 それとも、新しいマグナムを手に入れるつもりか。
 それにしても、霧崎さんはそういうのに興味があるのだろうか。
 もしそうでないのなら、さぞかし霧崎さんも退屈ではないかと思うが……。
 私がその疑問を口にすると、リサが言った。

 リサ:「多分、興味あると思う」
 愛原:「どうしてそう思うんだい?」
 リサ:「前にサイトーから聞いた。あのメイドさんの私服、迷彩服が多いんだって」
 愛原:「ガチか!」

 今、霧崎さんはベージュのトレンチコートを着ているから、その下に何を着ているのかは分からない。
 少なくとも、下半身はごく普通のジーンズであることは分かる。

 リサ:「何か、パンツとかキャミソールとか、そういう柄のヤツ持ってるらしいよ」
 愛原:「下着の柄としての迷彩か。でも、ガチかもな。女性用の下着で、なかなかそういうの売ってないだろ?それをわざわざチョイスするってことは、だ。……フムフム」

 私は手帳に記入した。
 クライアントへの報告書に記載するネタになるかもしれない。

 リサ:「お腹空いた」
 愛原:「もうそろそろお昼か。だけどな、これが探偵の仕事ってもんだ。場合によっては一食くらい抜くこともある」
 リサ:「大変だねー」
 愛原:「リサはいいよ。どうせ高橋達、しばらく動かんだろ」
 リサ:「じゃあ私、何かコンビニで買ってくる」
 愛原:「ああ、よろしく」

 リサ、ここで一時離脱。
 その間に高橋達が出てこないかと緊張したが、そんなことはなかった。

 リサ:「お待たせ」
 愛原:「おっ、早かったな」

 因みにリサもさすがに今は学校の制服ではなく、私服を着ている。
 グレーのフード付きパーカーに、下はデニムのショートパンツである。
 パーカーの上はピンク色のジャンパーを着ていた。

 愛原:「……って、あんパンと牛乳……」
 リサ:「テレビで、探偵さんが張り込みをしながらこれを食べてるの見たの」
 愛原:「いつの時代の探偵だよ。まあ、いいや」

 私はあんパンを頬張り、そして牛乳を流し込んだ。
 軽い昼食が終わった直後、2人が店から出て来た。
 どうやら、銃の選定が終わったらしい。
 何を買ったのか、後で見せてもらうとしよう。

 リサ:「もう帰るのかな?」
 愛原:「いや、せっかくだから昼飯食ってから帰るんじゃないかな」

 私の推理は当たり、2人は飲食店に入った。
 しかし、ラーメン屋であった。
 2人とも、金が無いのか。
 悪いな高橋、安月給で。

 リサ:「先生、私もラーメン食べたい」
 愛原:「あー……いや、ちょっとあの店、狭いな。一緒に入ったらバレる。悪いが、あいつらが出てくるまで我慢だ」
 リサ:「えーっ!」
 愛原:「探偵たる者、忍耐力が必要。今度、上手いラーメン屋連れて行ってやるから」
 リサ:「……コンビニでまた買ってくる」
 愛原:「ああ、そうしてこい」

 それにしても、あれではカップルというよりは、ただの友達だな。
 ま、無難な付き合いから始まれたようで何より。
 そう思っていた私だったが、その後、あの2人は予想外の行動に出る!
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“私立探偵 愛原学” 「探偵のお仕事?」

2020-04-20 11:11:58 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月5日10:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅]

 高橋:「よお」
 霧崎:「時間通り……だね」
 高橋:「『探偵たる者、常に時間に正確であれ』ってな」
 霧崎:「ふーん……。真面目にやってるんだ」
 高橋:「一応な。真珠は早ェな?」
 霧崎:「『メイドたる者、常に時間より5分、10分早く』だよ」
 高橋:「なるほど。しかし、真珠のその恰好……」
 霧崎:「どこか変?」
 高橋:「いや……よく似合う。早く行こう」

 高橋と霧崎さんは地下鉄の入口に入って行った。
 その様子を少し離れた所で見るは、私、愛原学と何故か付いてきたリサ。
 リサ曰く、『助手の高橋兄ちゃんの代わり』とのこと。
 どうせ学校も自粛が続いていてヒマなので付いてきただけだろう。
 緊急事態宣言も現実味を帯びて来たし(日付に注目!)。

 愛原:「霧崎さん、見た目がボーイッシュなんだけど、私服は普通に女性っぽいのを着てたな?」

 下はジーンズであったが、ゲイ心のある高橋から見れば、相当なギャップ萌えであったことだろう。
 一瞬であったが、私は高橋が鼻の下を伸ばしたのを見逃さなかったよ。
 私達もワンテンポ遅れて地下鉄に向かう。
 で、この展開が起きる前、何があったのか?
 話は今月1日に遡る。

[4月1日14:00.天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 愛原:「良かったな、高橋?オマエの口座に報奨金が振り込まれてて」
 高橋:「あざっす……いえ、ありがとうございます!先生のおかげです!」
 愛原:「思ったよりもいい金額だ。善場主任に口添えしておいて良かったな」
 高橋:「さすが先生です!」
 愛原:「その金はオマエの物だ。オマエが自由に使っていい。ということは、だ。今頃は霧崎さんにも報奨金が渡されているということになるな」
 高橋:「そ、そうっスね」
 愛原:「早速誘ってみたらどうだ?店は探したんだろう?」
 高橋:「は、はい!」
 愛原:「奥に行ってゆっくり話して来い。どうせまた今日もヒマだから」
 高橋:「サーセン!失礼します!」

 高橋は自分のスマホを片手に応接室へ向かった。
 そして私はすかさず自分のスマホを取ってリサに電話した。

 愛原:「ああ、もしもし、リサ?俺だけど……」
 リサ:「なーに?先生」
 愛原:「この前話した作戦、決行するぞ?まずはオマエから絵恋さんを誘うんだ。そして霧崎さんの、絵恋さんの世話という業務を休ませてやれ」
 リサ:「うん、分かった。私がサイトーの家に遊びに行くことにする」
 愛原:「頼んだぞ。あとは真実を話して、協力させてやれ。絵恋さんはオマエの言う事なら何でも聞くからな」
 リサ:「りょーかい」

 そしてリサは、私の言う事を何でも聞く(制御されたBOWは自分が主人と認めた者に対して忠実。中には忠実過ぎて、逆に暴走してしまう個体も。タイラントとか、ネメシスとか)。
 私は電話を切ると、応接室に足を運んだ。

 高橋:「別にいいじゃねーかよ。なあ?」

 どうやら霧崎さんを誘い出すのに、悪戦苦闘しているようだ。
 ここまでは想定内。

 高橋:「絵恋の世話なんて、あいつも中学生だぜ?そんな手取り足取り……、いや、でもよぉ……」

 どうやらここで電話を切られたようだ。
 ん、もう少し早く手を打っておくべきだったかな。
 だが、今現在、外堀埋めは鋭意進行中。
 外堀が埋まったら、今度は高橋のターンだ。
 それまでの辛抱だ。

 高橋:「くそっ!」

 高橋が悔しそうに応接室から出てくる。

 愛原:「どうだった?」
 高橋:「先生!どうしたもこうしたも無いですよ!けんもほろろに断りやがったんスよ、あいつ!」
 愛原:「何て?」
 高橋:「『御嬢様のお世話で忙しい』とか、『ナイフくらい自分で買う』とか!」
 愛原:「なるほど。『あんたのことが嫌いだから』とか、『もう2度と電話するな』とかは言ってた?」
 高橋:「いや、それは言ってなかったっス」
 愛原:「それならまだ大丈夫だ。後でもう一度電話してみろ?今度はきっと上手く行く」
 高橋:「ええっ?」
 愛原:「そうだな……。あと1時間くらいしたら、もう一回掛けてみろ?騙されたと思って」
 高橋:「はあ……。まあ、先生がそう仰るのなら……」

 それから1時間後、高橋はもう一度電話をしに応接室へ向かった。
 それを確認してから、私もリサに電話してみた。

 愛原:「リサ、どうだった?」
 リサ:「バッチリ!サイトーに事情を話したら、『パールの為だったら、私も一肌脱ぐわ』だって」
 愛原:「ほお、それはそれは……」
 リサ:「それでね、サイトーから依頼」
 愛原:「依頼?」
 リサ:「高橋兄ちゃん達のデートがどんなものなのか、見て来て欲しいって。契約書は後でファックスするって」
 愛原:「おいおい。中学生に依頼を受けるプロの探偵なんて聞いたことないぞ」

 よしんば本気だとしても、中学生の依頼じゃ、ほぼボランティアだな。

 リサ:「私も先生の御手伝いするから」
 愛原:「リサは絵恋さんと一緒に遊べばいいだろう?」
 リサ:「無理。サイトー、週末はお父さんに連れられてPCR検査受けに行くって」
 愛原:「金持ちほど先にPCR検査受けられるものなのか、やっぱり」

 Tウィルスの抗体を持っていれば新型コロナウィルスにも罹らないというのはデマかなぁ……?
 神奈川の山奥に行った時、色々と検査やら実験やらに参加したけれども、あれから何の音沙汰も無いしなぁ……。
 あの時点では、まだ私達は感染すらしていなかったが。

 リサ:「もしかしたら、学校が始まるまで別荘に避難するかもしれないって」
 愛原:「『コロナ疎開』はやめなさい!」

 金持ちほど自衛手段は多々あるからな。
 もっとも……。

 リサ:「あ、誰か来た。お客さん?」
 愛原:「いいよ、俺が出る」
 配達員:「こんにちは!ヤマト運輸です!」
 愛原:「はい、ご苦労さん」

 私は伝票にサインをすると、荷物を受け取った。


 配達員:「ありがとうございましたー!」

 私は段ボール箱を中に運び入れる。

 リサ:「なーに?」
 愛原:「斉藤社長から差し入れだよ」

 私は段ボール箱を開けた。

 愛原:「マスク100枚」
 リサ:「おー!」

 そのお金持ちにぶら下がる私も私か。

[4月5日10:07.天候:不明 東京墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅→都営新宿線987K電車5両目(高橋と霧崎は6両目)]

〔まもなく1番線に、各駅停車、新宿行きが10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください。急行電車の通過待ちはありません〕

 高橋と霧崎さんは並んで電車を待っていた。
 私とリサは階段の影に隠れて、電車を待つ。
 そして、電車がやってきた。
 京王電鉄の車両だ。

〔1番線の電車は、各駅停車、新宿行きです。きくかわ~、菊川~〕

 高橋達とは隣の車両に乗り込む。
 そして、いつでも隣の車両が確認できるよう、その乗車位置も連結器の近くだ。
 先客がいることもあるが、とにかく3人掛け席の所にいれば良い。

〔ドアが閉まります。駆け込み乗車は、おやめください〕

 車外スピーカーから短い発車メロディが鳴ると、その後で電車のドアとホームドアが閉まる。
 それから少しブランクがあって、電車が走り出した。

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Morishita(S11).Please change here for the Oedo line.〕

 リサ:「先生、兄ちゃん達はどこまで行くの?」
 愛原:「アキバでいい店を見つけたって言ってたからな。恐らく、岩本町駅で降りるだろう。ちょうどここなら、あの2人に見つからず、監視することができる」
 リサ:「うん」

 助手のデートを監視するのはあれだが、依頼人からの依頼とあらば致し方無い。
 うん、そうなんだ。
 絵恋さんからはガチで契約書が届いたよ。
 しかも、報酬がとても中学生には出せないような額。
 依頼人の名前は絵恋さんだけになっているが、きっとこれは裏に斉藤社長もいるのではないか。
 そう思った。
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