[4月25日11:30.天候:晴 東京都台東区上野 JR上野駅・新幹線乗り場]
稲生の両親が仮住まいの為に借りたマンションは、北区王子にある。
新幹線で行こうとすると、途中通ることになる。
但し、ホームは無いので車窓から眺めるだけだ。
右手には飛鳥山公園、左手には国立印刷局王子工場がある。
後者には近隣に東京工場という別の工場があり、そちらは一般人向けの見学会が定期的に行われるのに対し、王子工場では一切行われていない(代わりに『お札と切手の博物館』が併設されている。入館無料)。
もっとも、それらとてコロナウィルス騒ぎでどうなっているのか不明である。
稲生:「駅に程近いマンションだっていうので、歩いてすぐだよ」
マリア:「そう」
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、上野です。山手線、京浜東北線、常磐線、地下鉄銀座線と地下鉄日比谷線はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。上野の次は、終点東京です〕
上中里駅の横を通過する頃、自動放送が流れて来た。
稲生:「そろそろ先生を起こしに行きますか」
マリア:「私が行く」
稲生:「いいんですか?」
マリア:「いざとなったら、これで一発叩いて……」
マリアはローブの中から魔法の杖を出した。
魔女っ娘が持つ短い棒ではなく、頭部に装飾が施された長い物である。
これがスルスルとローブのポケットに入るのだから、どちらも魔法の物なのだと分かる。
稲生:「いや、ハハハ……」
マリアは隣の11号車に向かった。
稲生:「さて、僕も降りる準備をしよう」
因みにマリアの人形達は自分で荷棚から下りて来た。
しかも自分達が入っていたバッグも下ろして。
マリアに持ってもらう必要、無いのではないかと一瞬首を傾げる。
で、自分達でバッグの中に入ってしまった。
ミク人形:「バイバイ」(@^^)/~~~
最後に稲生に手を振ってスッポリと中に入った。
稲生:「完全に旅慣れてしまっている……」
そうしているうちに列車は日暮里駅の横を通過し、完全に地下に潜った。
地下トンネルの中にホームがある新幹線の駅なんて、上野駅くらいしか無いのではないかと思ってしまった。
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく上野、上野です。22番線に到着致します。お出口は、右側です。上野駅から常磐線ご利用のお客様、今度の快速、勝田行きは10番線から11時52分。特急“ひたち”11号、いわき行きは8番線から12時ちょうどに発車致します」〕
マリア:「ほら、こっちですよ」
イリーナ:「マリアぁ、もう目は覚めてるから引っ張んないでよ~」
マリア:「私が起こしに行かないと寝てた癖に何言ってるんですか!」
無事にマリアはイリーナを起こしてくれたようだ。
そうしているうちに列車がホームに入線した。
イリーナ:「何か地下鉄のホームみたいね」
稲生:「まあ、地下に通った鉄道路線のホームという意味では同じですかね」
〔ドアが開きます〕
停車してドアが開く。
上野駅にもホームドアは無い。
〔「ご乗車ありがとうございました。上野、上野です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください。……」〕
ホームに降りた乗客も数少なかった。
反対側の下りホームはもっと乗客が多いはずだが、そちらも疎らである。
稲生:「何か、出歩いているのが申し訳無いくらいです」
イリーナ:「用事を済ませて、さっさとホテルに引き篭もる?」
稲生:「その方がいいかも……」
マリア:「ショッピングができないとなると、無駄に出歩く理由が無いですからね」
マリアはそう言って、エスカレーターに乗った。
稲生:「まあ、確かに」
稲生達もエスカレーターで地上に向かう。
[同日11:54.天候:晴 JR上野駅 在来線改札内コンコース→JR京浜東北線1112A電車10号車内]
途中、トイレに立ち寄った。
出てくるのは、いつも稲生が1番最初。
マリア:「お待たせ」
稲生:「あ、はい」
イリーナ:「飲んだワインの半分くらいは出して来たよ」
稲生:「あはは……」
元々イリーナは酔ってすらいない。
まあ、アルコールチェックでもすれば、少しは反応が出るのかもしれないが。
稲生:「それじゃ、行きましょう」
階段を下りて、田端方面ホームに向かう。
新幹線で通った所を少しだけ戻るという奇妙なコースだが、乗車券の旅客営業規則上は何の問題も無い。
前回でも述べたが、稲生達が持っている乗車券は『東京都区内』が下車駅。
つまり、東京23区内にあるJRの駅なら、どこででも降りて良いというものだ。
王子駅は北区にあるので、対象内である。
因みに関西にも同じような名前の駅があるが、当然そちらは対象外である。
〔まもなく1番線に、快速、南浦和行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックの内側で、お待ちください。次は、田端に止まります。鶯谷、日暮里、西日暮里には停車致しません。山手線の電車をご利用ください〕
上京すれば必ず世話になる京浜東北線がやってくる。
快速運転時間中は山手線より混む路線だが、やはりガラガラであった。
〔うえの~、上野~。ご乗車、ありがとうございます。次は、田端に止まります〕
マリア:「乗客、少ないな」
マリアはブルーの座席に座りながら言った。
イリーナ:「東京に来れば必ず、私達のような入国者がいたわ。だけど今は、それすら見かけない」
稲生:「もちろん全員が出て行ったわけではありませんから、少しは残っているでしょうけどね。だけど、確かに明らかに少なくなりました。だからこそ、余計に目立ちやすい」
更にローブなんか着ていると尚更だ。
〔「お待たせ致しました。快速、南浦和行き、まもなく発車致します。次は、田端に止まります。停車駅にご注意ください」〕
ホームから発車ベルの音が聞こえてくる。
山手線の方は発車メロディになったが、京浜東北線は相変わらず電子電鈴である。
〔1番線の京浜東北線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕
電車のドアとホームドアが閉まる。
利用者が少ないからか、駆け込み乗車は無かったようで、再開閉は無かった。
それから走り出す。
〔この電車は京浜東北線、快速、南浦和行きです。停車駅は田端と、田端からの各駅です。次は、田端です〕
〔This is the Keihin-Tohoku line rapid service train for Minami-Urawa.The next station is Tabata(JK34).〕
左に向かって大きなカーブがあるので、車輪の̰軋み音が響いてくる。
新型コロナウィルス対策の為、滅多に開けない窓が開いているので、尚更響いて来るのだ。
今日は暖かいが、更に天井からは空気清浄機の作動する音も聞こえて来ている。
イリーナ:「御両親に、もうすぐ到着するってメール、送っておいたら?」
稲生:「そうですね。恐らく、昼食を用意して待ってくれていると思います」
イリーナ:「それはいいわね。本当はディナーの方が盛り上がるんでしょうけど……」
稲生:「普通はその後泊まるコースでしたからね。ところが今は、それが使えないので……」
マリア:「うちの毒親が本っ当すいません!」
電車は軽やかに途中の駅を通過していった。
稲生の両親が仮住まいの為に借りたマンションは、北区王子にある。
新幹線で行こうとすると、途中通ることになる。
但し、ホームは無いので車窓から眺めるだけだ。
右手には飛鳥山公園、左手には国立印刷局王子工場がある。
後者には近隣に東京工場という別の工場があり、そちらは一般人向けの見学会が定期的に行われるのに対し、王子工場では一切行われていない(代わりに『お札と切手の博物館』が併設されている。入館無料)。
もっとも、それらとてコロナウィルス騒ぎでどうなっているのか不明である。
稲生:「駅に程近いマンションだっていうので、歩いてすぐだよ」
マリア:「そう」
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、上野です。山手線、京浜東北線、常磐線、地下鉄銀座線と地下鉄日比谷線はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。上野の次は、終点東京です〕
上中里駅の横を通過する頃、自動放送が流れて来た。
稲生:「そろそろ先生を起こしに行きますか」
マリア:「私が行く」
稲生:「いいんですか?」
マリア:「いざとなったら、これで一発叩いて……」
マリアはローブの中から魔法の杖を出した。
魔女っ娘が持つ短い棒ではなく、頭部に装飾が施された長い物である。
これがスルスルとローブのポケットに入るのだから、どちらも魔法の物なのだと分かる。
稲生:「いや、ハハハ……」
マリアは隣の11号車に向かった。
稲生:「さて、僕も降りる準備をしよう」
因みにマリアの人形達は自分で荷棚から下りて来た。
しかも自分達が入っていたバッグも下ろして。
マリアに持ってもらう必要、無いのではないかと一瞬首を傾げる。
で、自分達でバッグの中に入ってしまった。
ミク人形:「バイバイ」(@^^)/~~~
最後に稲生に手を振ってスッポリと中に入った。
稲生:「完全に旅慣れてしまっている……」
そうしているうちに列車は日暮里駅の横を通過し、完全に地下に潜った。
地下トンネルの中にホームがある新幹線の駅なんて、上野駅くらいしか無いのではないかと思ってしまった。
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく上野、上野です。22番線に到着致します。お出口は、右側です。上野駅から常磐線ご利用のお客様、今度の快速、勝田行きは10番線から11時52分。特急“ひたち”11号、いわき行きは8番線から12時ちょうどに発車致します」〕
マリア:「ほら、こっちですよ」
イリーナ:「マリアぁ、もう目は覚めてるから引っ張んないでよ~」
マリア:「私が起こしに行かないと寝てた癖に何言ってるんですか!」
無事にマリアはイリーナを起こしてくれたようだ。
そうしているうちに列車がホームに入線した。
イリーナ:「何か地下鉄のホームみたいね」
稲生:「まあ、地下に通った鉄道路線のホームという意味では同じですかね」
〔ドアが開きます〕
停車してドアが開く。
上野駅にもホームドアは無い。
〔「ご乗車ありがとうございました。上野、上野です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください。……」〕
ホームに降りた乗客も数少なかった。
反対側の下りホームはもっと乗客が多いはずだが、そちらも疎らである。
稲生:「何か、出歩いているのが申し訳無いくらいです」
イリーナ:「用事を済ませて、さっさとホテルに引き篭もる?」
稲生:「その方がいいかも……」
マリア:「ショッピングができないとなると、無駄に出歩く理由が無いですからね」
マリアはそう言って、エスカレーターに乗った。
稲生:「まあ、確かに」
稲生達もエスカレーターで地上に向かう。
[同日11:54.天候:晴 JR上野駅 在来線改札内コンコース→JR京浜東北線1112A電車10号車内]
途中、トイレに立ち寄った。
出てくるのは、いつも稲生が1番最初。
マリア:「お待たせ」
稲生:「あ、はい」
イリーナ:「飲んだワインの半分くらいは出して来たよ」
稲生:「あはは……」
元々イリーナは酔ってすらいない。
まあ、アルコールチェックでもすれば、少しは反応が出るのかもしれないが。
稲生:「それじゃ、行きましょう」
階段を下りて、田端方面ホームに向かう。
新幹線で通った所を少しだけ戻るという奇妙なコースだが、乗車券の旅客営業規則上は何の問題も無い。
前回でも述べたが、稲生達が持っている乗車券は『東京都区内』が下車駅。
つまり、東京23区内にあるJRの駅なら、どこででも降りて良いというものだ。
王子駅は北区にあるので、対象内である。
因みに関西にも同じような名前の駅があるが、当然そちらは対象外である。
〔まもなく1番線に、快速、南浦和行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックの内側で、お待ちください。次は、田端に止まります。鶯谷、日暮里、西日暮里には停車致しません。山手線の電車をご利用ください〕
上京すれば必ず世話になる京浜東北線がやってくる。
快速運転時間中は山手線より混む路線だが、やはりガラガラであった。
〔うえの~、上野~。ご乗車、ありがとうございます。次は、田端に止まります〕
マリア:「乗客、少ないな」
マリアはブルーの座席に座りながら言った。
イリーナ:「東京に来れば必ず、私達のような入国者がいたわ。だけど今は、それすら見かけない」
稲生:「もちろん全員が出て行ったわけではありませんから、少しは残っているでしょうけどね。だけど、確かに明らかに少なくなりました。だからこそ、余計に目立ちやすい」
更にローブなんか着ていると尚更だ。
〔「お待たせ致しました。快速、南浦和行き、まもなく発車致します。次は、田端に止まります。停車駅にご注意ください」〕
ホームから発車ベルの音が聞こえてくる。
山手線の方は発車メロディになったが、京浜東北線は相変わらず電子電鈴である。
〔1番線の京浜東北線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕
電車のドアとホームドアが閉まる。
利用者が少ないからか、駆け込み乗車は無かったようで、再開閉は無かった。
それから走り出す。
〔この電車は京浜東北線、快速、南浦和行きです。停車駅は田端と、田端からの各駅です。次は、田端です〕
〔This is the Keihin-Tohoku line rapid service train for Minami-Urawa.The next station is Tabata(JK34).〕
左に向かって大きなカーブがあるので、車輪の̰軋み音が響いてくる。
新型コロナウィルス対策の為、滅多に開けない窓が開いているので、尚更響いて来るのだ。
今日は暖かいが、更に天井からは空気清浄機の作動する音も聞こえて来ている。
イリーナ:「御両親に、もうすぐ到着するってメール、送っておいたら?」
稲生:「そうですね。恐らく、昼食を用意して待ってくれていると思います」
イリーナ:「それはいいわね。本当はディナーの方が盛り上がるんでしょうけど……」
稲生:「普通はその後泊まるコースでしたからね。ところが今は、それが使えないので……」
マリア:「うちの毒親が本っ当すいません!」
電車は軽やかに途中の駅を通過していった。