報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「ワンスターホテルに向かう途中で」

2020-04-27 20:34:52 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月25日15:00.天候:晴 東京都北区王子 JR王子駅→京浜東北線1443B電車10号車内]

 再びタクシーに乗って王子駅まで戻った。
 王子駅前も狭いので、一般車の送迎は南口の方が良い。
 しかし稲生達はタクシーなので、堂々と北口で降りられる……か、どうかは分からない。
 煽り運転の代名詞、都営バスにクラクション鳴らされたw

 稲生宗一郎:「それじゃ勇太、気をつけて。先生方もありがとうございました」
 稲生勇太:「うん。それじゃ」
 イリーナ:「いえいえ。この前は巻き込んでしまいまして、申し訳ありませんでした」
 マリア:「うちの毒親は絶対シャバに出させませんから」
 宗一郎:「まあまあ、そう言わずに。もし出所してくるようであれば、一度お会いしてみたいですな」

 どうやら宗一郎、マリアの母親アレクサは、あの事件で逮捕され、収監されたものと思っているらしい。
 あながち嘘ではないのだが、逮捕したのは司法警察ではなく、ダンテ・アリギエーリ。
 収監先も拘置所や刑務所ではない。

 マリア:「それが、できれば。(ママは差別主義者だから、多分、面と向かって挨拶しても【お察しください】)
 勇太:「そろそろ行きましょうか」
 イリーナ:「そうね」

 勇太の両親は再びタクシーに乗り、仮住まいの家に帰って行った。
 勇太達はまた駅構内に入る。

〔まもなく2番線に、快速、磯子行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕

 パァァンと電子警笛を鳴らしながら電車が入線してきた。

〔おうじ、王子。ご乗車、ありがとうございます〕

 ホームドアと電車のドアが開く。
 やはり乗客は少なくて、稲生達はブルーの座席に座った。

〔2番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕

 かつては東北本線の汽車も停車した王子駅。
 しかし、今は汽車が走った列車線とは分離され、電車線の一中間駅として機能している。
 それでも本線であることに変わりは無い。
 そんな線路は起伏に富んでいて、電車もそんなに高速では走らない。

〔次は上中里、上中里。お出口は、右側です〕
〔The next station is Kami-Nakazato.JK35.The doors on the right side will open.〕

 イリーナ:「どこで降りるの?」
 稲生:「御徒町にしましょう。休日ダイヤは京浜東北線の快速も御徒町には停車するので、そこから都営大江戸線に乗り換えができます」
 イリーナ:「さすが勇太君ね。路線図も見ずに検索できる」
 稲生:「学生時代、こっちの電車にはよく世話になりましたから。冥界鉄道公社が勝手に乗り入れてきたせいで、ダイヤをメチャクチャにされたこともありましたし」
 イリーナ:「ああ。そんなこともあったわねぇ……」
 稲生:「埼京線では久しぶりに205系に乗ったと思ったら冥鉄の幽霊電車だったし。あの探偵さんと芸能事務所の社長さん、どうしてるだろう?」
 イリーナ:「さ、さあ?コロナウィルスで色々と大変なことになってるんじゃない?感染まではしていないと思うけどォ……」

 あえて占わないイリーナであった。

[同日15:14.天候:晴 東京都台東区上野 JR御徒町駅→ジュエリータウンおかちまち]

〔おかちまち~、御徒町~。ご乗車、ありがとうございます。次は、秋葉原に止まります〕

 稲生達を乗せた電車が御徒町駅に到着する。

 稲生:「それじゃ、都営大江戸線に乗り換えましょう」

 電車を降りて改札口に向かう。
 1番後ろの車両に乗っていたので、必然的に北口から出ることになる。
 JR御徒町駅から昭和通り(国道4号線)に向かって、宝石商が立ち並び、まるでそれの商店街のような感じになっている。
 稲生には全く縁の無い所かと思いきや……。

 イリーナ:「ねぇ、あそこ。あそこから魔力の気配がするわよ?」

 イリーナが都営地下鉄大江戸線の上野御徒町駅の先を指さした。
 イリーナに言われなければ、稲生達はそこへ行こうとはせず、地下鉄への階段を下りていたところだろう。

 イリーナ:「マリアは感じない?」
 マリア:「……言われてみれば、邪悪な魔力の気配を感じます」
 稲生:「ええっ!?ま、まさか、“魔の者”の眷属!?」
 イリーナ:「いえ、魔道士の気配ね、これは。東アジア魔道団かしら?」
 マリア:「中国でウィルスばら撒いただけでは飽き足らず、日本でも何かしようってのか」
 稲生:「日本でも随分ウィルスばら撒かれましたけどね。……って、マリアさんは真相知ってるの!?」
 マリア:「私に限らず、魔道士全員知っている」
 イリーナ:「ゴメンねぇ。情報の対象がマスター(一人前)以上なもんでぇ……」
 稲生:「早くマスターになれるよう頑張ります!」

 インターン(見習い)の稲生。
 それぞれ魔法の杖を手に、魔力の気配のする方へ向かう。
 それは1つの寂れた宝石店からであった。

 エレーナ:「何だぜっ!いつになったら入荷するんたぜっ!?」
 店長:「ですから、コロナウィルスのせいで国際便が軒並み運休……」
 エレーナ:「Amazonマーケットプレイスの出品者みたいなこと言ってんじゃねーぜ!?フザけてると、この店潰すぜ、あぁっ!?」

 ボコッ!(マリア、魔法の杖でエレーナの後ろからど突く)

 エレーナ:「いでっ!?何すんだぜ、コラ!?……って、あーっ!?」
 マリア:「オマエこそ何やってんだ?」
 エレーナ:「うるさいぜ!ここで私とエンカウントするとはいい度胸だぜっ、あぁ!?オマエのマテリア、私が頂くぜ!」
 稲生:「魔法石をFF7みたいな言い方するんじゃない。作者がスクエニに怒られる」
 イリーナ:「それじゃ私が、チート魔法見せてあげようかしら?エレーナちゃん?」
 エレーナ:「じょ、冗談っスよ!たかがローマスター(Low Master 魔道士だが、導師ではない)の私が、グランドマスター(Grand Master 大魔道師。弟子持ちの導師)に楯突くわけないじゃないっスか!」
 イリーナ:「分かればよろしい。ここで何をしていたの?」
 エレーナ:「今月に入ってから、新しい魔法石が入ったって言うんで注文してたんです。そしたら、入荷待ちだとか言いやがりまして……」
 稲生:「ちょっと待って。ここ、宝石店でしょ?ここで魔法石なんて手に入るの?」
 エレーナ:「ああ。御徒町や秋葉原には、裏でそういうの売ってる店あるんだぜ。で、いつまで経っても入荷の連絡が来ねぇと来た。『どうなってやがるんだ、クォラッ!』ってなるのが普通だろ?あぁ?」
 稲生:「なるほど。で、店長の言い分は?」
 店長:「本来でしたら、15日前後に届くはずなんです。ですが、この新型コロナウィルスのせいで、航空便も船便も軒並み運休になってしまって、商品が入って来ないんです」
 稲生:「運休してるの、旅客便だけじゃないんだぁ」
 エレーナ:「こっちは先に金払ってるんだぜ?届かねぇんだったら、金返せだぜ?!」
 店長:「いえ。先方からは間違いなく発送したとの連絡は入っています。だから、いつか必ず届くはずなんです」
 エレーナ:「やっぱこの店潰すか、あぁ?」
 イリーナ:「やめときなさい。この騒ぎの中、ホイホイ注文するあなたもあなたでしょう?」
 エレーナ:「いや、そりゃそうですけど……」
 稲生:「気の短い魔道士さんと売買契約してしまった店長さんもかわいそうだと思います。せめて、入荷の目途が立ったらすぐに連絡するということでどうですか?」
 店長:「はい、それはもう!」
 エレーナ:「稲生氏!勝手に話を進めるんじゃねーぜ、あぁ!?」
 イリーナ:「はいはい。これ以上もめると教会関係者に嗅ぎ付けられるからね、さっさと出ましょう」
 マリア:「だいたい魔法石って、人間界で買う物じゃないだろうが……」

 そんなことを話しながら店の外に出る。

 エレーナ:「じゃあ、オマエは人間界で必要になった時、どうやって手に入れるんだぜ?」
 マリア:「……モンスター倒して、ドロップアイテムとして手に入れる?」
 エレーナ:「それは魔界の話だぜ!」
 稲生:「まあまあ。それより僕達、これからワンスターホテルに行く所なんだ。エレーナはどうする?」
 エレーナ:「ん?あ、もうそんな時間か。私も買い物終わったから、そろそろ帰るとするぜ」
 マリア:「師匠。私達、買い物はどうしますか?ワンスターホテルの周り、デパートとか無いですよ?」
 イリーナ:「こっちの商店街の方が開いてる店はあるのね。ちょっと探してみましょうか」
 エレーナ:「私は向こうのカフェで休んでるんで、終わったら声掛けてください」
 稲生:「ああ、分かった」
 マリア:(先に帰らないのか、アイツ)

 エレーナが行ってしまうと、件の宝石店から店長が出てきた。

 店長:「先ほどはありがとうございます」
 イリーナ:「もう少し、お客は選んだ方がよろしいですわね」
 店長:「いえ、あれでもあの方はお得意さんなんです。機嫌を損ねさえしなければ、なかなかの上客でして……。あ、良かったらこれ、御礼です」

 店長からもらったのは魔法石だった。

 イリーナ:「これは『自動通訳』の魔法石ね。自動通訳魔法具に使うヤツ。これも消耗品だから、補充用として持っておくといいかもね」
 稲生:「こういう所で手に入れるんですね」
 マリア:「良かったな、勇太。これで1つ、『クエスト』達成だ」
 稲生:「あ、これ、『クエスト』だったんですか!?」
 イリーナ:「ちゃんと採点しておくからね」

 期せずして『クエスト』を達成した稲生であった。
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“大魔道師の弟子” 「仮住まいの実家」

2020-04-27 10:46:22 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月25日12:03.天候:晴 東京都北区王子 JR王子駅→稲生家(仮住まい)]

〔おうじ、王子。ご乗車、ありがとうございます〕

 田端駅まで快速運転していた電車も、そこから先は各駅停車となる。
 幕式表示だった頃の209系なら、行き先表示の種別部分を各駅停車にするだけでクルクルと幕が回っていたのであるが、フルカラーLEDとなった現在の車両はパッと変わるだけである。
 電車のドアが開くと、ホームに降り立つ魔道士達。
 やはりここも乗客は少ない。

 稲生:「家はこっちです」

 王子駅の北口改札を出ると、明治通り沿いに歩を進める。
 王子駅前公園に差し掛かると……。

 顕正会婦人部員:「冨士大石寺顕正会でーす!顕正新聞、無料配布してまーす!」
 稲生:「うわ、ここにもいた……!」

 見たところ、ざっと3人くらいはいる。
 公園やバス停に並ぶ人々に声を掛けている。

 ケンショーグリーン:「クフフフフ……。そこの白人の御嬢様方、顕正会の欧州弘通にご協力を。クフフフフ……」

 ジャキッ!(マリア、殺気を漲らせて魔法の杖を横田の首に突きつける)

 マリア:「あ?何に協力しろって?あ?」
 ケンショーグリーン:「嗚呼ッ!こ、ここ、これはダンテ一門の皆様……!そ、そそ、その……何ですね。今日は、いい天気で……!」
 稲生:「仮にも魔界共和党総務理事さんが、ここで何をしているの?」
 ケンショーグリーン:「クフフフフ。稲生さん、いい質問です。確かに私は、向こうの世界ではかような肩書を預かっております。ですが、ここでは顕正会男子部員として活動しているのです」
 稲生:「今さら?」
 ケンショーグリーン:「そう、今さら……って、大きなお世話です!」
 稲生:「信心に目覚めたのなら、宗門に……あ、いや……」

 こんなセクハラ野郎、宗門に来られても迷惑だと口を閉じた稲生だった。

 ケンショーグリーン:「さあ稲生さん!阿部日顕が死んだ今、顕正会に戻るチャンスですよ!?」
 稲生:「顕正会で不幸になったヤツに言うかなぁ、そのセリフ!?」
 ケンショーグリーン:「私は幸せです。コホン。では、ここで私の体験発表を1つ。先ほども若い女性とお知り合いになれました。これは男子部員としての功徳であります!」
 稲生:「はあ……。僕が現役だった頃と比べて、だいぶ白髪がお増えになったのに、随分とお盛んなことで」
 イリーナ:「魔界共和党の時は白髪染めしてるのよね」
 稲生:「あっ、そういえばそうだ!」
 ケンショーグリーン:「続きを聞いてください。その若い女性というのは、10代のお美しい……嗚呼、お美しい……」

 すると、駅とは反対方向から30代の女性と10代後半の女性が血相を変えて走って来た。

 顕正会女子部員:「班長、あいつです!女子トイレで私に付きまとって来たの!」
 顕正会女子部班長:「ちょっと待ちなさい!どこの組織の人ですか!?本部に言いますよ!」
 ケンショーグリーン:「それでは皆さん、また後で!!」

 ピューッと脱兎の如く逃げ去ったグリーンであった。

 イリーナ:「マリア、どうする?またボコす?」
 マリア:「いや、それはあの女達に任せます。何だか疲れた……」
 稲生:「早く家に行って、昼食にしましょう。こっちです。帰りはこのルートを通らない方がいいですね」
 マリア:「全くだ」

 こうして3人は、稲生家のマンションに到着した。
 タワーマンションではない。
 どういう経緯で宗一郎の友人が購入したのかは不明だが、一応は住む目的のようであったようだ。

 稲生勇太:「駅前の公園に顕正会員達がいて大変だったよ」
 稲生佳子:「何かトラブルに巻き込まれた?」
 イリーナ:「うちのマリアが危うく某理事をボコボコにするところでしたわ~」
 マリア:「師匠っ!」
 佳子:「ええ?」
 マリア:「何でもありません!」
 稲生宗一郎:「先生、昼間から何ですが、よろしかったらワインでもどうですか?」
 イリーナ:「あらぁ~?さすが気が利きますわねぇ」
 マリア:「また飲む気ですか!」
 宗一郎:「また?」
 マリア:「さっきも新幹線で……フガッ!?」

 マリア、イリーナに口を封じられる。

 イリーナ:「このコにも一杯頂けないでしょうか?」
 宗一郎:「もちろんですよ」
 マリア:「フガガ、モガ!(私を巻き込まないでください!)」

 昼食会なので、そんなに豪勢な料理が沢山出てくるわけではない。

 勇太:「いっそのこと、都内に住んじゃったら?」
 宗一郎:「元は埼玉支社長だったからな。今でも時々埼玉支社に行く必要があるので、家は埼玉県にあった方が良い。それに、今再建中の家も少し都内に近い所になった」
 勇太:「川口市か」
 宗一郎:「昼食会が終わったら、タクシーを呼ぶので、それで向かいましょう」

[同日14:00.天候:晴 埼玉県川口市某所 稲生家再建地]

 昼食を終えた稲生達はタクシーに乗り、再建中の工事現場に向かった。
 5人いるので普通のタクシーには乗れない為、大型のタクシーを注文した。

 宗一郎:「ちょっとここで待っててもらえる?」
 運転手:「はい、分かりました」

 通りの狭い一方通行の道沿いにある為、タクシーは近くに止めさせる。

 宗一郎:「ここですね」

 土曜日である為、工事は行われている。

 イリーナ:「これはまた立派なお家が建ちそうですね。規模は前の家と同じくらいで?」
 宗一郎:「そのつもりで注文しました。あと2ヶ月で、出来上がります」

 注文住宅だと、どうしても完成するのに時間は掛かる。
 ましてや稲生家のように大規模なものだと……。

 宗一郎:「今度の家は3階建てでしてね。どうしても、平地面積が前の家と同じように確保できなかったので……」
 勇太:「あ、本当だ。奥行きが……うん、前と半分くらいしかない」
 マリア:「3階建てなら、うちの屋敷と同じだ」
 稲生:「マリアさん、規模が違います」
 マリア:「ん?」
 宗一郎:「普段使わない勇太の部屋は3階な。客間は1階の奥に造る」
 勇太:「前の家と大して変わんないじゃん。僕の部屋が3階になったくらいで」
 マリア:「ダディ。その……勇太の部屋の近くには、シャワールームがありますか?」
 宗一郎:「その予定です。家の1階にはもちろん風呂がありますが、3階にも一応シャワーだけ作っておきます」
 勇太:「水圧確保が大変そう」
 宗一郎:「だから普段は電源を切っておいて、勇太達が来る頃に電源を入れておけば大丈夫」
 勇太:「それだけのポンプ!?」
 イリーナ:「完成したら、新築祝いを持ってお伺いしますわね」
 宗一郎:「ありがとうございます。その頃までには、コロナウィルスが収束してくれるといいのですが……」
 イリーナ:「希望を持つことは、けして悪いことではありません」

 イリーナはそれだけ言った。
 恐らく、イリーナの占いでは……。
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