報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「探偵のお仕事?」

2020-04-20 11:11:58 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月5日10:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅]

 高橋:「よお」
 霧崎:「時間通り……だね」
 高橋:「『探偵たる者、常に時間に正確であれ』ってな」
 霧崎:「ふーん……。真面目にやってるんだ」
 高橋:「一応な。真珠は早ェな?」
 霧崎:「『メイドたる者、常に時間より5分、10分早く』だよ」
 高橋:「なるほど。しかし、真珠のその恰好……」
 霧崎:「どこか変?」
 高橋:「いや……よく似合う。早く行こう」

 高橋と霧崎さんは地下鉄の入口に入って行った。
 その様子を少し離れた所で見るは、私、愛原学と何故か付いてきたリサ。
 リサ曰く、『助手の高橋兄ちゃんの代わり』とのこと。
 どうせ学校も自粛が続いていてヒマなので付いてきただけだろう。
 緊急事態宣言も現実味を帯びて来たし(日付に注目!)。

 愛原:「霧崎さん、見た目がボーイッシュなんだけど、私服は普通に女性っぽいのを着てたな?」

 下はジーンズであったが、ゲイ心のある高橋から見れば、相当なギャップ萌えであったことだろう。
 一瞬であったが、私は高橋が鼻の下を伸ばしたのを見逃さなかったよ。
 私達もワンテンポ遅れて地下鉄に向かう。
 で、この展開が起きる前、何があったのか?
 話は今月1日に遡る。

[4月1日14:00.天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 愛原:「良かったな、高橋?オマエの口座に報奨金が振り込まれてて」
 高橋:「あざっす……いえ、ありがとうございます!先生のおかげです!」
 愛原:「思ったよりもいい金額だ。善場主任に口添えしておいて良かったな」
 高橋:「さすが先生です!」
 愛原:「その金はオマエの物だ。オマエが自由に使っていい。ということは、だ。今頃は霧崎さんにも報奨金が渡されているということになるな」
 高橋:「そ、そうっスね」
 愛原:「早速誘ってみたらどうだ?店は探したんだろう?」
 高橋:「は、はい!」
 愛原:「奥に行ってゆっくり話して来い。どうせまた今日もヒマだから」
 高橋:「サーセン!失礼します!」

 高橋は自分のスマホを片手に応接室へ向かった。
 そして私はすかさず自分のスマホを取ってリサに電話した。

 愛原:「ああ、もしもし、リサ?俺だけど……」
 リサ:「なーに?先生」
 愛原:「この前話した作戦、決行するぞ?まずはオマエから絵恋さんを誘うんだ。そして霧崎さんの、絵恋さんの世話という業務を休ませてやれ」
 リサ:「うん、分かった。私がサイトーの家に遊びに行くことにする」
 愛原:「頼んだぞ。あとは真実を話して、協力させてやれ。絵恋さんはオマエの言う事なら何でも聞くからな」
 リサ:「りょーかい」

 そしてリサは、私の言う事を何でも聞く(制御されたBOWは自分が主人と認めた者に対して忠実。中には忠実過ぎて、逆に暴走してしまう個体も。タイラントとか、ネメシスとか)。
 私は電話を切ると、応接室に足を運んだ。

 高橋:「別にいいじゃねーかよ。なあ?」

 どうやら霧崎さんを誘い出すのに、悪戦苦闘しているようだ。
 ここまでは想定内。

 高橋:「絵恋の世話なんて、あいつも中学生だぜ?そんな手取り足取り……、いや、でもよぉ……」

 どうやらここで電話を切られたようだ。
 ん、もう少し早く手を打っておくべきだったかな。
 だが、今現在、外堀埋めは鋭意進行中。
 外堀が埋まったら、今度は高橋のターンだ。
 それまでの辛抱だ。

 高橋:「くそっ!」

 高橋が悔しそうに応接室から出てくる。

 愛原:「どうだった?」
 高橋:「先生!どうしたもこうしたも無いですよ!けんもほろろに断りやがったんスよ、あいつ!」
 愛原:「何て?」
 高橋:「『御嬢様のお世話で忙しい』とか、『ナイフくらい自分で買う』とか!」
 愛原:「なるほど。『あんたのことが嫌いだから』とか、『もう2度と電話するな』とかは言ってた?」
 高橋:「いや、それは言ってなかったっス」
 愛原:「それならまだ大丈夫だ。後でもう一度電話してみろ?今度はきっと上手く行く」
 高橋:「ええっ?」
 愛原:「そうだな……。あと1時間くらいしたら、もう一回掛けてみろ?騙されたと思って」
 高橋:「はあ……。まあ、先生がそう仰るのなら……」

 それから1時間後、高橋はもう一度電話をしに応接室へ向かった。
 それを確認してから、私もリサに電話してみた。

 愛原:「リサ、どうだった?」
 リサ:「バッチリ!サイトーに事情を話したら、『パールの為だったら、私も一肌脱ぐわ』だって」
 愛原:「ほお、それはそれは……」
 リサ:「それでね、サイトーから依頼」
 愛原:「依頼?」
 リサ:「高橋兄ちゃん達のデートがどんなものなのか、見て来て欲しいって。契約書は後でファックスするって」
 愛原:「おいおい。中学生に依頼を受けるプロの探偵なんて聞いたことないぞ」

 よしんば本気だとしても、中学生の依頼じゃ、ほぼボランティアだな。

 リサ:「私も先生の御手伝いするから」
 愛原:「リサは絵恋さんと一緒に遊べばいいだろう?」
 リサ:「無理。サイトー、週末はお父さんに連れられてPCR検査受けに行くって」
 愛原:「金持ちほど先にPCR検査受けられるものなのか、やっぱり」

 Tウィルスの抗体を持っていれば新型コロナウィルスにも罹らないというのはデマかなぁ……?
 神奈川の山奥に行った時、色々と検査やら実験やらに参加したけれども、あれから何の音沙汰も無いしなぁ……。
 あの時点では、まだ私達は感染すらしていなかったが。

 リサ:「もしかしたら、学校が始まるまで別荘に避難するかもしれないって」
 愛原:「『コロナ疎開』はやめなさい!」

 金持ちほど自衛手段は多々あるからな。
 もっとも……。

 リサ:「あ、誰か来た。お客さん?」
 愛原:「いいよ、俺が出る」
 配達員:「こんにちは!ヤマト運輸です!」
 愛原:「はい、ご苦労さん」

 私は伝票にサインをすると、荷物を受け取った。


 配達員:「ありがとうございましたー!」

 私は段ボール箱を中に運び入れる。

 リサ:「なーに?」
 愛原:「斉藤社長から差し入れだよ」

 私は段ボール箱を開けた。

 愛原:「マスク100枚」
 リサ:「おー!」

 そのお金持ちにぶら下がる私も私か。

[4月5日10:07.天候:不明 東京墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅→都営新宿線987K電車5両目(高橋と霧崎は6両目)]

〔まもなく1番線に、各駅停車、新宿行きが10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください。急行電車の通過待ちはありません〕

 高橋と霧崎さんは並んで電車を待っていた。
 私とリサは階段の影に隠れて、電車を待つ。
 そして、電車がやってきた。
 京王電鉄の車両だ。

〔1番線の電車は、各駅停車、新宿行きです。きくかわ~、菊川~〕

 高橋達とは隣の車両に乗り込む。
 そして、いつでも隣の車両が確認できるよう、その乗車位置も連結器の近くだ。
 先客がいることもあるが、とにかく3人掛け席の所にいれば良い。

〔ドアが閉まります。駆け込み乗車は、おやめください〕

 車外スピーカーから短い発車メロディが鳴ると、その後で電車のドアとホームドアが閉まる。
 それから少しブランクがあって、電車が走り出した。

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Morishita(S11).Please change here for the Oedo line.〕

 リサ:「先生、兄ちゃん達はどこまで行くの?」
 愛原:「アキバでいい店を見つけたって言ってたからな。恐らく、岩本町駅で降りるだろう。ちょうどここなら、あの2人に見つからず、監視することができる」
 リサ:「うん」

 助手のデートを監視するのはあれだが、依頼人からの依頼とあらば致し方無い。
 うん、そうなんだ。
 絵恋さんからはガチで契約書が届いたよ。
 しかも、報酬がとても中学生には出せないような額。
 依頼人の名前は絵恋さんだけになっているが、きっとこれは裏に斉藤社長もいるのではないか。
 そう思った。

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