報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「斉藤家に到着」

2020-04-08 19:53:41 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月14日18:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 斉藤家]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は大口クライアントの1人で、大手製薬会社社長の斉藤秀樹氏の家に招かれた。

 新庄:「到着しました。お疲れさまでした」
 愛原:「ありがとうございました」

 スライドドアが自動で開く。
 助手席の後ろに座っていた私が一番先に降りることになるが、助手席の霧崎さんがそれより先に降りた。
 玄関のドアが開いて、中から他のメイド達が出て来た。

 新庄:「御嬢様のお荷物だ。しっかり持って」
 メイドA:「はい」
 霧崎:「皆様、どうぞ。こちらへ」
 愛原:「お邪魔します」

 何度かこちらの御宅にはお邪魔させて頂いているのだが、何度来ても豪邸には慣れないものだな。

 斉藤秀樹:「やあ、愛原さん、来てくれましたか!」
 愛原:「社長、この度はお招き頂き、ありがとうございます」
 秀樹:「娘が世話になりましたからね。これくらい当然ですよ。どうぞ、お上がりください」
 愛原:「失礼します」

 私は早速靴を脱いでスリッパに履き替えた。
 途中にあるリビングに行くと、壁には絵の他に……。

 高橋:「先生、ショットガンが飾ってありますよ」
 愛原:「あ、本当だ」

 古い型のショットガンである。
 恐らく、ウィンダム辺りだろう。
 ポンプアクションタイプで、私のような素人が使おうとする場合、リロードするのにちょっと手間が掛かるのが難点……って、そんなことを話せるのが既にヤバいな。

 秀樹:「ああ、これですか。用心の為に飾っているものです。もちろん、本物です。ああ、当然許可は取ってありますよ。誰でも取れないように、固定してあります。固定具を外すには、ちょっとした仕掛けを解く必要があります」
 愛原:「社長、失礼ですが、これではまるで今後それが必要になる展開のフラグのように思われますが?」
 秀樹:「それが無いことを祈りましょう」

 ゲームや映画だとガチだよ。
 ダイニングの方からはいい匂いがした。

 秀樹:「夕食の方、今用意している所です。もうしばらくここでお待ちください」
 愛原:「ありがとうございます」
 絵恋:「お父さん、リサさんが今日泊まるわ。いいでしょ?」
 秀樹:「ああ、いいとも。ゆっくりしていってね」
 リサ:「はい」
 愛原:「うちのリサがお世話になります」
 秀樹:「何でしたら、愛原さん達もお泊りになっても結構ですよ」
 愛原:「いやいやいや、それはさすがに厚顔無恥というものです」
 秀樹:「遠慮なさらなくて結構ですよ。私も今日と明日は自宅待機ですから」
 愛原:「そりゃ明日は日曜日ですから……はっ!もしかして?」
 秀樹:「ええ。お気づきの通りです。もう既に私達、経済界の間では、ゴルフすら自粛の対象ということですよ。そしてこの波は、明らかに酷くなる」
 愛原:「リサのウィルスは役に立てそうにないですか」
 秀樹:「それはまだ分かりませんね。『BOWが病気になったのを見たことが無い』だけで、全く罹らないとは限らないのですから」

 実験ではリサの場合、インフルエンザはもちろん、エボラ出血熱ですら持ち前のTウィルスやGウィルスで撃退できたということだが……。
 問題はそれを普通の人に使えるよう、どう調整したらいいのか、か。
 ヘタすりゃ投薬した途端、ゾンビ化なんてあり得るもんな。

 絵恋:「リサさん、私の部屋に行きましょ。荷物置いて来るのよ」
 リサ:「うん」

 絵恋さんとリサは連れ立って、階段の方に向かった。
 その横にはホームエレベーター(家庭用エレベーター。トイレくらいの広さ)もあるから、それで上がったかもしれない。
 確か、絵恋さんの部屋は3階だと聞く。

 秀樹:「愛原さんも高橋さんも、本当に遠慮なさらなくていいのですよ?」
 愛原:「そうですねぇ……」

 その時、私は高橋が上の空だということに気づいた。
 高橋の視線を追うと、霧崎さんがリサの荷物を持って3階に向かう所だった。
 他のメイドさんは食事の支度をしているが、霧崎さんは絵恋さん専属なので仕事が違うのだろう。

 愛原:「では、お言葉に甘えて、一泊だけ……」
 秀樹:「どうぞ、ごゆっくり。後で部屋を用意させましょう」
 愛原:「着替えとか、後でコンビニで買ってくるか」
 高橋:「そうっスね」
 秀樹:「寝巻なら洗濯済みの浴衣がありますので、それをお貸ししますよ」
 愛原:「随分用意がいいんですね?」
 秀樹:「こういう立場だと、急な来客とかたまにありますのでね。……あ、ちょっと」
 メイドB:「はい、旦那様」
 秀樹:「食事の支度が終わったら、客間の用意をしてくれ。こちらの方々が今夜、お泊りになるから」
 メイドB:「かしこまりました」
 愛原:「客間はどちらにあるんですか?」
 秀樹:「1階の奥です。和室タイプですので、布団を2組用意します」
 愛原:「なるほど……」

 私は一瞬迷ったが、この話を切り出した。

 愛原:「ここのメイドさん達は泊まり込みですか?それとも通いで……」
 秀樹:「今、食事の用意をしているのが通いです。泊まり込み……つまり、住み込みなのが、運転手の新庄君と娘の世話係の霧崎君ですね」
 愛原:「そうですか」
 秀樹:「うちの使用人で、何か気になることでも?」
 愛原:「あ、いえ……」
 秀樹:「せっかく来て頂いたのですから、もっとざっくばらんな話でも構いませんよ?」
 愛原:「失礼ですが、霧崎さん、何かワケありのようにお見受けするのですが……」
 秀樹:「ああ、そのことですか。さすがは洞察力に優れた名探偵ですな。霧崎君に限らず、あそこで食事の用意をしている2人も……あまり大きな声では言えないワケがあるんですがね」
 愛原:「えっ?」
 秀樹:「私だって根っからの罪人、悪人を1つ屋根の下に置くつもりはありませんよ。彼女らは不幸にも、人生のレールに置き石をされたことで脱線・転覆した列車に乗ってしまったのです。その列車の復旧作業を私は手伝ったに過ぎない。新庄君もですよ」
 愛原:「えっ!?」
 秀樹:「愛原さんが高橋さんというワケありの人材を登用したのと同様、私も似たようなことをしただけのことなのです」

 高橋の場合は押し掛け弟子みたいなものだが……。

 高橋:「通りで皆して、『臭い』と思ったぜ……」
 愛原:「社長、いち早く気づいたのは私ではなく、むしろ彼だったりするんですが」
 秀樹:「優秀な助手を登用できるのも、その探偵の優秀性を表すステータスですよ」
 高橋:「さすが社長。少しリスペクトっス」
 愛原:「もっとリスペクトして差し上げろよ!」
 秀樹:「まあまあ。……そろそろ食事が出来上がるようです。どうぞ、ダイニングの方へ」
 愛原:「あ、はい。ありがとうございます」
 メイドB:「旦那様、食事の御用意が整いました」
 秀樹:「うん、ありがとう。娘達を呼んで来てくれ」
 メイドB:「かしこまりました」

 私達はリビングの隣のダイニングに移動した。
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“私立探偵 愛原学” 「斉藤家へ向かう」

2020-04-08 15:17:47 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月14日17:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 昨日は斉藤社長に頼まれ、病院でワクチンを打っている娘の絵恋さんの様子を見に行った。
 ワクチンの副作用なのか、夕方まで昏々と眠っていたが、目が覚めた時にはケロッとしていた。
 これで一応、科学的には絵恋さんのBOW化は防げたということになる。
 リサとしてはBOWの友達ができなくなって寂しくないかと思うが、案外そうでもないらしい。
 往々にして独占欲の強いBOWは『仲間が増えた』ことより、『ライバルが減った』ことの方が都合良く思うとのこと。
 リサとしては絵恋さんが人間に戻ってくれる方が、『ライバルが減り』、且つ『獲物が増えて』一石二鳥と考えるのだろう。

 高橋:「先生、車が着いたみたいですよ」
 愛原:「おう。じゃあ、行くか。じゃあ高野君、悪いけど後は頼むよ」
 高野:「了解です。お気をつけて。マサも失礼の無いように」
 高橋:「分かってるよ」

 因みに事務所の外では、既にリサが待っていた。
 自粛の為に着る機会が無くなってしまった学校の制服を着ている。
 始業式から、学校が始まれるといいんだがな。
 エレベーターに乗り込み、1階へ下りる。
 因みにリサは泊まる気満々のようで、着替えの入ったバッグも持っている。

〔1階です〕

 高橋:「先生、エレベーターのドアが開いた途端にゾンビがなだれ込んで来る恐れがありますので、後ろに控えてください」
 愛原:「今現在、蔓延しているのはコロナウィルスであって、ゾンビウィルスじゃないからな?」

 因みに仮にゾンビがいたとしても、奴らは呻き声を上げていたり、ドアを叩いてたりしているので、大抵はドアが開く前にそこいるのが分かる。
 例外なのはドアの前で寝ているゾンビが、開いた途端に起き上がって襲ってくる場合だ。

 愛原:「ゾンビなんかいねーよ」
 高橋:「ですね」
 愛原:「仮にいたとしても、こっちにはラスボスクラスのBOWがいるから安心だ」

 私はリサの肩をポンと叩いた。
 リサはニヤッと笑って、

 リサ:「むふっ、任せて!」

 と、右手でガッツポーズをした。

 リサ:「タイラント君はもちろん、ネメシスだって私の思い通り」
 愛原:「それは素晴らしい」

 しかし、私は何故か背筋が寒くなった。
 一番怖いのは、いかにも化け物の姿をしているゾンビやハンターよりも、普段人間の姿をしているBOWなのだと改めて認識させられる。

 絵恋:「リサさん、お迎えに登場!」
 リサ:「サイトー、来てくれたー」

 同じく学校の制服を着ている絵恋さんが、リサの両手をがっちり掴んだ。
 何でも、実家でその制服を洗濯するらしい。
 普通はクリーニング店に出すものだが、そこは大富豪。
 自宅にそういう設備があるらしい。
 リサの服もついでに洗ってもらうということで、着て行くというわけだ。

 新庄:「これはこれは愛原所長、お久しぶりでございます」

 車からお抱え運転手の新庄氏が降りてくる。
 60歳を過ぎている為か、白髪が目立つ。
 元々はタクシーの運転手をしていたが、斉藤社長にひょんなことからヘッドハンティングされ、お抱え運転手として働いているらしい。
 もちろん、タクシー運転手の給料よりも高額の給料で。
 少し人数が多いせいか、車はロールスロイスもどき光岡・ガリューではなく、アルファードだった。

 霧崎:「お荷物、お持ちします」
 リサ:「ありがとう」

 助手席から絵恋さん専属メイド、『切り裂きパール』……ではなく、霧崎真珠さんが降りて来た。
 ドキッとなる高橋。
 メイド服萌え……ではなく、ちゃんとその中の人を性の対象として見ているんだよな?
 そうしてもらわないと、こいつのゲイがいつまで経っても治らない。
 高野君もショートヘアであるが、彼女がショートボブであるのに対し、霧崎さんはベリーショートに近い。
 つまり、ボーイッシュということだ。
 多分このボーイッシュなヘアスタイルが、高橋のゲイ心をくすぐったのかもしれない。
 いつものメイド服を着ているが、メイドカフェだとミニスカートが多いが、こちらはロングスカート。
 だがそれをいいことに、スカートの中にナイフとか隠し持ってるんだよなぁ……きっと。

 新庄:「では、どうぞお乗りください」

 新庄運転手がスライドドアを開ける。
 電動なので、スーッと自動で開く。
 確かこういう車の場合、真ん中の席が上座だったか。
 となると、やはりここは御嬢様の絵恋さんが……。

 絵恋:「リサさん、私達は後ろに座りましょ!」
 リサ:「ん!」
 愛原:「いいのかい?絵恋さんは御嬢様だから、新庄さんの真後ろじゃないのかい?」
 絵恋:「いえいえ。愛原先生は父の招待客なんですから、むしろ愛原先生がこちらですよ」
 愛原:「そうなのか。では、お言葉に甘えて……」

 その時、私は気づいた。

 愛原:「あ、いや、高橋君がそこに座ってくれ」
 高橋:「えっ?でも先生……」
 愛原:「いや、いいんだ。たまには進行方向左側に座ってみたい」
 高橋:「はあ……」

 さすがはミニバンの中でも高級車。
 シートは白い本革張りだ。

 新庄:「それでは出発致します」

 新庄運転手がスライドドアを閉めて、運転席に乗り込んだ。
 そして、車が走り出す。
 いや、私があえて高橋に運転席の後ろを譲った理由はこれだ。

 高橋:「…………」(霧崎真珠を斜め後ろからガン見している)

 そんなに気になるなら、ガツンと告ればいいのに。
 後で聞いてみるか。
 因みに当の霧崎さんは気にする様子が無い。
 運転席の後ろなら、助手席を斜め後ろから見れるからってことに気づいたのだ。

 絵恋:「リサさん、水着持ってきた?また地下のプールに入れるようにしてもらったから、一緒に泳ぎましょうね!」
 リサ:「ん!」

 大富豪の家にしては敷地面積は意外と狭いのだが、代わりに地上3階建てで地下1階まであり、エレベーターもある。
 3LDKの賃貸マンションに住むのがやっとの私には、雲の上の御殿だ。
 
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