報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「魔道士達の紀行……いや、奇行?」

2020-04-24 20:21:53 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月24日19:00.天候:晴 長野県北部山中 マリアの屋敷1F西側 大食堂]

 イリーナ:「さーて、今宵も晩餐を楽しみましょうか」
 マリア:「お気楽ですねぇ……」
 稲生:「しょうがないですよ」

 稲生は食堂内の40インチテレビを点けた。

〔「新型コロナウィルスの感染者が増加し続け、このままのペースで行きますと、国内の感染者は……」〕
〔「新型コロナウィルス感染拡大の影響で、政府は更なる自粛要請を……」〕
〔「埼玉県内の自宅で療養をしていた新型コロナウィルスの感染者がその後、容体急変で死亡した件に対し、埼玉県は……」〕

 稲生:「どのニュースチャンネルにしても、こればっかりですもん。外に出られないですよ」
 マリア:「これも“魔の者”の揺さぶりですか?」
 イリーナ:「うんにゃ。いくら“魔の者”でも、ウィルスまでは作れないわよ。その証拠に、あれが世界中に蔓延してから、むしろ奴らは大人しくなってる。もし違うなら、これに乗じて、この前のアレクサ戦よりも激しい戦いを仕掛けて来るはず」
 稲生:「“魔の者”も、ウィルスには弱いってことですか」
 イリーナ:「どうだかね。そもそも人ならざる存在なわけだし……」

 イリーナはマリアのメイド人形に注いでもらったワインを口に運んだ。

 イリーナ:「それより、お家の再建の方はどうなの?」
 稲生:「それが、住所が変わりそうです。というか、違う町に再建することになりました」

 稲生の言葉に、マリアが目を丸くした。

 マリア:「前の場所じゃないのか?」
 稲生:「ええ。何しろ、家のあった場所が爆発でボコボコに穴が空いた上、うちの爆発のせいで近所が大変な目に遭ったことになっているので、あのまま住み続けられませんよ」
 マリア:「私の毒親が本っ当申し訳ない!」
 稲生:「それはもういいですよ。保険金降りたのと、大師匠様からの御見舞金だけで注文状宅が建てられそうですから」
 イリーナ:「このウィルス騒ぎで何だけど、今一度お見舞いに行きたいわね」
 稲生:「でも、どこにウィルスが潜んでるか分かりませんからねぇ。この山奥の屋敷は、明らかに安全地帯ですから……」
 イリーナ:「心配しなさんな」

 イリーナは食堂の角に置いてある水晶玉を指さした。

 イリーナ:「どのルートで行けば感染しないか、あれで占ってみるから」
 稲生:「な、なるほど」
 マリア:「こういう時、大魔道師は便利ですね」
 イリーナ:「マリアも早く、占いの技術を向上させなさい。この前のテスト、順位は下から数えた方が早かったわよ?」
 マリア:「さ、サーセン」
 稲生:「あ、先生。1つ、申し上げておきたいことが」
 イリーナ:「なーに?」
 稲生:「白馬から新宿へ行く高速バス、全便運休(※)です」

 ※https://www.alpico.co.jp/traffic/news/155/

 イリーナ:「ええ。別のルートを探しましょうね」
 マリア:「師匠。そもそも私達って、ウィルスに感染しますか?」
 イリーナ:「“魔女の宅急便”のキキも風邪を引いたでしょ?(※)」

 ※(風邪ではなく、生理との説もある。風邪の割には咳や鼻水、くしゃみなどの症状が無かった為)

 マリア:「ジブリアニメを参考にしていいんですか?」
 稲生:「まあ、ハリーポッターよりは分かりやすいですけどね」

 とはいえ、高速バスのルートが塞がれたとあらば、あとは鉄道くらいしか手段を思いつかなかった稲生だった。
 そしてイリーナは、正しく新幹線ルートを占ったのである。

[同日21:00.天候:晴 マリアの屋敷2F東側 稲生の部屋]

 稲生勇太:「……そういうわけだから、母さん。近いうち、そっちに行くよ」

 稲生は部屋に戻ると、実家に電話していた。

 稲生佳子:「大丈夫なの?先生の御屋敷の中は安全なんでしょう?ウィルスが収束するまで、そこにいた方がいいんじゃない?」
 勇太:「先生の占いで安全なルートを通るんだ。それなら大丈夫だよ」
 佳子:「せっかく慣れた町を離れるのは残念だけど、しょうがないからね。ホテル暮らしなんかすぐに飽きるから、マンションに移って良かったわよ」
 勇太:「2LDKSのマンションだったっけ」
 佳子:「お父さんのお友達がマンションを買ったはいいけれど、直後に外国に長期出張になっちゃって、その間空き部屋になるからって、安く貸してくれたのよ。2人で住むにはちょうどいいけど、勇太達が泊まるには狭いと思う」
 勇太:「いいよ。僕達、ホテルに泊まるから。ちょうど建ててる最中の家を先生が見たいって言うから。……うん。それじゃ」

 稲生は電話を切った。

 稲生:「……っと、こんなところか。あとはホテルを予約するか。今は自粛でどのホテルも閑古鳥だからなぁ。ワンスターホテルなんか、すぐに宿泊できるだろう」

 稲生は引き続き、手持ちのスマホでワンスターホテルに掛けてみた。

 オーナー:「お電話ありがとうございます。ワンスターホテルでございます」
 稲生:「あ、もしもし。僕、稲生です」
 オーナー:「稲生さん?お久しぶりですねぇ!」
 稲生:「お久しぶりです。実は近いうち、上京することになりましたので、予約をしたいんですけど……」
 オーナー:「ありがとうございます。お日にちとお部屋は如何なさいますか?」
 稲生:「部屋はツインが1つとシングルが1つで。日にちは……」

 簡単に予約できた。
 どうやら、本当に閑散としているらしい。
 心配になって、稲生は聞いてみた。

 稲生:「どうですか?今、コロナウィルス関係で、どのホテルも苦境に陥っていると聞きますが……」
 オーナー:「御多分に漏れず、うちもそうです。ただ、うちの場合、エレーナが営業活動してくれているおかげで、経営が傾くほどの落ち込みではございません。いつでも御予約をお取りできる程度の空きが常にある程度で……」
 稲生:「そうなんですか」

 航空便も最低限の本数しか運航しなくなったわけだが、それに乗って未だに来日するダンテ一門の魔道士がいるだろうか。
 それとも、魔界の出入口利用希望者か。

 オーナー:「ですので、うちは軽症者受け入れの要請はお断りする方向で考えていますよ」
 稲生:「なるほど。ということは今、エレーナは元気にしているということですね?」
 オーナー:「ええ。魔界の病院を退院して、今は元気です。今日は非番なので、また魔界に行ってますが」
 稲生:「活動の拠点を魔界に移しましたか」
 オーナー:「魔道士とて、コロナウィルスは怖い存在ですから。人間界に住んでいた魔界の住人も、こぞって魔界に『コロナ疎開』して行ったくらいです」
 稲生:「それ、逆に魔界が危なくなってないですか?」
 オーナー:「ですので、エレーナは『コロナウィルスに効く薬』を王宮に卸す交渉をしているみたいです」
 稲生:「ちょっと待ってください。まだ、『コロナウィルスに効く薬』は臨床検査中で、日本ではまだ承認出てないはずですけど?」
 オーナー:「この前なんか、マスクやら消毒液やら、どこで仕入れたんだか、大量にホテルに持ち込んで大変だったんですから」
 稲生:「マイケルさーん、転売厨の魔女発見!どうしますかぁ?」

 転売ヤーだと確定したわけではないが、稲生は間違いなくエレーナが転売目的で闇仕入れしたと確信したようである。

 稲生:(あの守銭奴魔女!)

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