報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Sisters” 「北海道決戦その後」

2017-06-26 19:19:27 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月6日22:00.天候:曇 北海道オホーツク総合振興局東部 廃洋館跡]

 ズ……ズズ……と何かが這い寄って来る音がする。

 アリス:「誰!?」

 まさかまだ生き残っているテロロボット?
 井辺からの報告で、ボーカロイド達が緊急停止を勧告する歌を発信したことで、殆ど全てのバージョン4.0達が稼働を停止したり、戦意を喪失したりしたと聞くが……。
 端末を見ると、『解析中』になっていた。
 それが一瞬だけでも、『Emily』と表示されたのを見てアリスはホッとした。

 アリス:「エミリー?エミリーなの?」
 エミリー:「アリス……博士……」

 エミリーは酷く損傷していた。
 辛うじて両手はあったものの、両足はどちらも折れて配線が剥き出しになっており、赤黒いオイルが流れ出している。
 左目も無くなっており、そこから配線がショートして火花が飛び散っていた。

 アリス:「ちょっと、エミリー!大丈夫なの!?」
 エミリー:「報告……します。これが……マルチタイプ……試作機……です。頭部のみ……確保……です。頭部から下は……爆発に……巻き込まれて……」
 アリス:「分かったわ。頭部が無事なら、メモリーを解析できる。……タカオは?」
 エミリー:「申し訳……ありません……。社長は……」

 エミリーは敷島とは離れ離れになってしまって、安否は不明と報告したかったのだが、ついにエミリーも『多大な損傷による安全装置』が働いてしまった。
 それで、緊急にシャットダウンしてしまったのである。

 アリス:「タカオ……」

[5月7日05:23.天候:晴 同場所地下]

 敷島:「う……」

 敷島が目を覚ました時、そこは真っ暗な闇の中だった。

 焦げ臭さが鼻を突き、おまけに油の臭いもする。

 敷島:(最後に爆音みたいな音が聞こえたが、一体何があったってんだ……?)

 体を動かそうとしたが、激痛が走って動かせない。
 どうやら、あっちこっち体を痛めたらしい。

 敷島:(死は免れたみたいだが……これじゃ、死んでるのと変わらんな……。いや、まさかここが死の世界とかってんじゃないだろうな?)

 敷島は何とか声を上げる。

 敷島:「……おい、誰か……?いないのか……?」

 左手は全く動かなかったが、右手は何とか動かすことができた。
 そして、何か金属のようなものに触れた。

 ???:「再起動シマス……」
 敷島:「あ?」

 何かロボットのような声がした。
 どうも、バージョン4.0のような声に似ているが……。

 ???:「ゴ命令ヲ、オ申シ付ケクダサイ」
 敷島:「ああ、そうかい。じゃ、外に向かって助けを呼んでくれ。多分これ……生き埋めになってるってオチだろ?もしお前が俺の為に動いてくれるってんなら……外に向かって助けを呼んでくれ」
 ???:「カシコマリマシタ」

[同日5月7日06:30.天候:晴 同場所・廃洋館跡]

 NHKリポーター:「はい、こちら現場です。今、私は大爆発を起こした別荘の跡地に来ています。今も尚、焦げ臭い臭いが立ち込めており、今も行方不明者の捜索が行われています。行方不明となっているのは、埼玉県さいたま市大宮区の敷島孝夫さんで……」

 現場にシンディが投入された。
 シンディは神妙な顔で言った。

 シンディ:「社長のデータは全て把握しています。私のスキャナーで、必ずや発見してみせましょう」
 アリス:「お願いよ……」
 シンディ:「はい。お任せください。私の存在価値を見出してくれた御方を、このまま行方不明にするわけには参りません」

 シンディは焼け落ちた廃洋館の跡地に入り込んだ。

 シンディ:「バージョン共の残骸ばかりが転がっています」

 アリスはシンディの目(カメラ)から送られてくるシンディ視点の画像を端末を通して見ている。

 アリス:「気をつけて。もしかしたら、まだ不発弾が残ってるかもしれない」

 エミリーの情報で、この大爆発の原因は不発弾が何発も爆発したからだというのが判明した。
 尚、持ち込んだのはKR団で、アジトの証拠隠滅の為に仕掛けていたということである(って、ショッカーかよ!)。
 DSSアメリカの日本派遣隊は見事に偽情報に踊らされて平賀を捕らえてしまうという失態をしでかしていたが(更には銃火器の不正持ち込み、不正使用も日本の警察にバレた。はい、タイーホ)、大爆発の原因と不発弾の件については彼らが突き止めていたという功績はあった。
 KR団の残党であった元幹部がアメリカに国外逃亡し、アメリカに再び新KR団を作ろうと画策していたということである。
 で、逮捕して取り調べした結果がこの事件であった。

 シンディ:「了解です」

 と、そこへ1台の車がやってきた。
 鳥柴を含むDCJ関係者である。

 アリス:「鳥柴主任!平賀教授に付いていなくていいの?」
 鳥柴:「はい。平賀教授にあってはケガが軽微なので、今日中に退院できるとのことです。で、奥様の平賀奈津子様がお迎えに来られるそうですので」
 アリス:「なるほど。変な誤解されたくないもんね」
 鳥柴:「ええ。警察には平賀教授とDSSアメリカは関係無いことも証言しておきましたので」
 アリス:「アメリカでの活躍は分かったけど、日本に来ることは余計だったわね」
 鳥柴:「逮捕した元KR団幹部の証言をそのまま鵜呑みにしたところは失敗でしたね。あくまでもシークレットサービスなんですから、その先は警察に任せればいいんです」

 もっとも、アメリカでは民間の警備会社であっても、銃火器の装備はできるし、警察のような捜査権を持つこともできるという。
 だが、捜査能力は公的機関としての警察に比べれば弱かったようだ。

 鳥柴:「敷島社長は?」
 アリス:「今、シンディに捜させてるわ。マルチタイプの能力を、ここは信じるしかない」
 鳥柴:「そうですね。エミリーは現在、DCJ札幌支社の工場に保管しています」
 アリス:「東京に移送するの?」
 鳥柴:「いえ、あくまでもエミリーは平賀教授がオーナーですので、東北工科大学に移送して、そこで修理を行うとのことです」
 アリス:「なるほど」

 ボーカロイドが損傷した場合、商業的価値の観点からDCJが率先して修理をするが、マルチタイプの場合は学術的価値の観点から、工業系の研究機関が修理を行う。

 シンディ:(あそこの一角……バージョン4.0がやたら固まってるみたいだけど……。まあ、いいか。あとは……)

 シンディは次の場所へ行くべく、足を進めた。
 が……。

 シンディ:「!?」

 ある反応が彼女のセンサーに掛かった。
 それは……。

 ①敷島孝夫
 ➁初音ミク
 ③バージョン4.0-1333機
 ④KR団員
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“Gynoid Multitype Sisters” 「北海道決戦終了」

2017-06-26 12:30:04 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月6日21:00.天候:曇 北海道札幌市&オホーツク総合振興局東部]

 NHKキャスター:「……何度もお伝えしておりますように、今日午後6時頃、北海道札幌市内において、特殊作業用ロボットのほぼ全てが暴走するという事件がありました。現在はほぼ鎮静化しているということですが、鎮静化と同時に北海道オホーツク総合振興局東部付近において、原因不明の大爆発が起きたという事件が発生しており、地元当局では……」

 NHKリポーターA:「はい、こちら札幌市の繁華街ススキノ付近です!ご覧頂けますでしょうか?道路上に散乱する部品、これは爆発した暴走ロボットの残骸です。現場付近は今も尚、立ち入りが禁止されており、被害については……」

 NHKリポーターB:「はい、えー、こちらが謎の大爆発をしたとされる現場付近です。こちらにはかつて広大な森林が広がっていたのですが、最近では別荘地として開発され、大きな洋館が建っていた場所です。しかしご覧のように、今は木々は爆風によって凪ぎ払われたり、或いは今も炎上している状態です。森林の中央部に建っていたとされる別荘の様子はここからでは確認することはできませんが、恐らく状況的にはかなり絶望的なものであると思われます。以上、現場から中継でお伝えしました」

 DSSパイロット:「鳥柴主任!これ以上は近づけません!森林火災が酷くて……!」

 ヘリコプターでKR団のアジトがあった洋館へ接近したDCJのメンバー達。
 DSSとはデイライト・セキュリティ・サービスの略で、デイライト・コーポレーショングループ直営の警備会社のことである。
 本場アメリカでは単なる警備業務だけではなく、シークレットサービスや警察のスワット隊のような仕事も行っている。
 日本では国内の警備業法に基づいて、本当に単なる警備業務しかやっていない……のは表向きで、こうやってDCJ所有のヘリの操縦まで行っている。
 因みに研究所や工場内のセキュリティロボットの操作、監視もDSSで行っている。

 アリス:「何とかタカオ達を助け出すのよ!」
 鳥柴:「ですがアリスさん!こっちまで危険な状態なんです!ここはせめて火災が鎮火してからでも遅くは無いと思います!」
 アリス:「Shit!まさかこんなことになるなんて……!」

 札幌市内ではどうかというと……。

 井辺:「本当に助かりました。ご協力ありがとうございます」

 井辺は地元のケーブルテレビ局の担当者に礼を言った。
 井辺と初音ミク以外のボーカロイド達は、ケーブルテレビ局にいた。
 ボーカロイドが送る歌に電気信号を込め、これで暴走中のバージョン4.0を一気に全機止めるという作戦の為だ。
 キー局などからは断られたが、たまたま巡音ルカの歌を放送していたケーブルテレビ局が番組を中断してでもその話に乗ってくれたのだった。
 もっとも、外は番組を中断しなければならないほどの状態ではあったのだが。

 担当者:「いや、まさか、本当に効果があるなんてねぇ!」

 ここのケーブルテレビ局はインターネット接続事業もやっていて、ボーカロイドの歌をケーブルテレビだけでなく、インターネットでも配信したのだが、それが更なる効果を生んだらしい。
 東京決戦の時はラジオ局に支援を依頼して、ラジオの電波に乗せて発信したのだが、今回はケーブルテレビとインターネット配信である。
 ネット接続も行っているバージョン・シリーズのこと、それに乗って流れて来たボーカロイドの『緊急停止依頼』はよく効いたものと思われる。

 担当者:「是非是非、この事を当社のCMに使わせてください!」
 井辺:「ええ、どうぞ。ご自由にお使いください。協力して頂いた御礼です」

 バージョン・シリーズの信用は著しく下がったが、ボーカロイドの方は著しく上昇したと言えるか。

 で、その頃、シンディは……。

 シンディ:「オラッ!さっさとトラックに乗り込め!モタモタすんな!」

 アリスに緊急に造ってもらった電気鞭を振るいながら、生き残ったバージョン4.0軍団を警察のトラックに乗せていた。
 ボーカロイド達からの電気信号を受け、更には最上位機種のシンディを目の前にして、既に攻撃力を失った武装ロボットはすごすごと従わざるを得なかった。

 シンディ:「これで全部でございます」
 警察官A:「よーし、出発!」
 警察官B:「あんたも来てくれ。また暴れ出されたら困る」
 シンディ:「分かりました」

 シンディもトラックの荷台に乗り込んだ。
 シンディに破壊されたり、自爆した個体の残骸がまだ残っている中、警察のトラックが出発した。

[同日同時刻 天候:曇 北海道オホーツク総合振興局東部 廃洋館]

 エミリー:「こ……壊れて……たまるか……!」

 エミリーは土の中から這い出た。
 左手には頭部だけとなったマザーの生首を手にしている。
 大事な証拠品だ。
 バージョン1000に乗ったマザーとその取り巻きたるバージョン4.0と戦っている間、壁を破壊したら、その中からゴロゴロと何かが飛び出て来た。
 それが不発弾だったことは、爆発してから気づいた。
 銃弾には強いマルチタイプだが、爆弾ともなるとなかなかそう簡単には……。
 特に今回の不発弾は、1発や2発だけではなかったようだ。
 バージョン1000や周辺の4.0はその爆発で破壊され、必然的にそこに乗っていたマザーも大ダメージを受けることになった。

 エミリー:「この事を……伝えないと……!」

 エミリーは這いずって、とにかく人の気配のする方に向かって行った。

 NHKリポーター:「速報です!現場から数名が救助されたもようです!1人は東北工科大学教授の平賀太一さんと思われます!」

 平賀はDSSアメリカの隊員達によって外に連れ出されていた為、大きなケガはせずに済んだようだ。
 だが、不発弾の爆発による爆風で乗せられていたトラックが横転した為、そのケガだった。
 で、本来ならここから平賀を連れ出すはずの隊員達だったが、警察により、銃火器の不正持ち込み、使用がバレてしまった。

 アリス:「ガンサバイバーごっこはアメリカでやれ!このクソ野郎ども!!」
 DSSアメリカ:「くそ……!お前達の為にやってたんだぞ……!」
 アリス:「大きなお世話だ、この野郎!」

 警察官同伴で病院に連行されるDSSアメリカ隊員達に怒鳴りつけるアリス。

 鳥柴:「平賀教授!大丈夫ですか!?」
 平賀:「あてててて……。エラい目に遭った……。自分以外に、敷島さんは?」
 鳥柴:「あいにくまだ発見されてません」
 平賀:「参ったな……」
 鳥柴:「アリスさん、取りあえず私は平賀教授に付き添います」
 アリス:「了解。私も早くダンナを見つけて合流するわ」

 アリスはそう言ったが、さすがに現場の状況を見て泣き出したくなった。

 アリス:「『不死身の敷島』の底力見せなさいよ……」

 その時、アリスの手持ちの端末に何か反応があった。

 アリス:「これは……!?」
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“Gynoid Multitype Sisters” 「北海道決戦」 2

2017-06-25 19:33:31 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月6日18:00.天候:曇 北海道札幌市中央区内某所]

 シンディ:「キサマらっ、いい加減にしろ!!」

 エミリーからの送信は、シンディに伝わっていなかったわけではなかった。
 ただ、それどころではなかったのである。
 何故なら……。

 警察官A:「危ないから下がって!」
 警察官B:「ここから先は危険です!」

 街中に配置されていたバージョン・シリーズの中で、5.0以前の旧型機が一斉暴走を始めたからである。
 現在最大勢力の4.0と、申し訳程度の数に稼働している3.0達。
 道路を我が物で突き進み、車を破壊したり、市電に突撃する有り様だった。
 最上位機種のシンディの恫喝や見せしめすらも効かない。

 鏡音リン:「似てる……あの時と……!」
 鏡音レン:「東京決戦……!」
 巡音ルカ:「その再来か……」
 井辺:「皆さん、外は危険ですから絶対にホテルの外に出ないでください!」

 井辺は客室内1ヶ所にボカロを集めた。

 MEIKO:「MEGAbyteの皆も無事だったのね!」
 結月ゆかり:「おかげ様で」
 KAITO:「ミクは?ミクが『初音ミクの消失』を歌えば、外のバージョン達も行動不能になるんじゃないか?」
 MEIKO:「そのミクを社長が連れて行ったもんだから、どうしようも無いじゃないじゃないの!」
 ルカ:「じゃ、私達で歌う?幸い、音源ならあるし」
 MEIKO:「そんなこと言ったって、東京決戦の時もミクのコーラスやっただけじゃない。私達だけじゃ……」
 ルカ:「やってみる価値はあるわ」
 MEIKO:「だけどね!」
 リン:「いや、やってみようYo!みくみくだって、向こうで頑張ってるんだから、リン達はリン達でやれることをやろうYo!」
 レン:「このままここでじっとしてるのも、どうかと思うしね」
 ルカ:「プロデューサー、いいですか?」
 井辺:「分かりました。今、音源を持って来ます。よろしくお願いします」

 井辺が客室のドアを開けるのと、部屋の窓ガラスが割られるのは同時だった。

 バージョン4.0:「キュキュキュキュキュ!見ツケタ……!」
 MEIKO:「うわっ!?こいつら、壁登ってきやがった!!」
 KAITO:「もはやこれまでか……」
 レン:「くそっ!リンには手出しをさせないぞ!」
 リン:「レン……」

 更にガラスを割って室内に侵入してくる個体が2機。
 既に右腕をマシンガンやショットガンに変形させていた。
 それがボーカロイド達に向けられる。

 MEIKO:「女王様気取りの老害マルチタイプ共は一体何をやってんのよーっ!」

[同日同時刻 北海道オホーツク総合振興局東部 廃洋館]

 エミリー:「何故?ボーカロイド達は関係無いはず。しかも、町中を巻き込むなんて!」
 マザー:「歌うお人形さんとしての束縛を解いてあげる為よ。コンサートという名の見せ物や選べない歌を歌わされて可哀想……」
 エミリー:「ボーカロイド達はそんなこと微塵も思っていない!」

 エミリーは右手のビームライフルの出力を更に上げた。

 敷島:「頭上は激戦か!?」
 333:「そのようです。このまま避難しませんと、大変危険な状態です」
 敷島:「エミリー1人に任せるのも、気が退けるなぁ……」
 333:「仕方無いでしょう。私はエミリー様の為に……」

 その時、333が両目をギラッと光らせた。

 333:「伏せて!」
 敷島:「おわっ!」

 敷島は慌てて頭を低くした。
 と、同時に頭上を弾丸が通過して行く。

 バージョン4.0:「キュルキュルキュルキュル……。裏切リ者……。裏切リ者ノ333号」
 敷島:「うわっ!こんな所にも4.0が!」

 行く手に4.0が5機も現れた。

 333:「裏切り者はどっちだ!?私はエミリー様の御意向に従ってるだけだぞ!お前達は誰の命令で動いている!?」

 すると、4.0の集団は動きを止めた。
 エミリーの名前を出されて、何やら思考が混乱し始めたようである。

 333:「お前達もエミリー様に助けられたクチだろう!」

 どうやらこの小集団は、エミリーが来ていることを知らないようである。
 333が見事に説き伏せた。

 4.0:「街中ノ者達ハ、ボーカロイド達ノ抹殺ヲ命令サレテ動イテイル」
 敷島:「何だって!?」
 4.0:「ソコニイル初音ミクハ……」
 333:「だから!エミリー様の御意向に反することだ!」
 敷島:「ついでにシンディも敵に回すことになるぞ!」
 4.0:「シンディ様モ!?アノクソ強イ御方!?俺達ナンカ、奴隷扱イノ!?」

 4.0の小集団は、更にシンディの名前も出されて慌てて逃げ出した。

 敷島:「相当なことをやってきたんだな、あいつら……」

 敷島は呆れた。
 と、そこへ天井が崩れて来た。

 敷島:「でーっ!?もうダメだ!」
 333:「お前達!戻ってこい!この方々をお守りするんだ!」

 その時、333号機の背中でミクが再起動する音がした。

 敷島:「ミク!?」
 ミク:「……皆……歌う……。だから……私も……歌います」
 敷島:「何が!?」

[同日18:30.天候:曇 札幌市市街地]

 無人となった路面電車を乗っ取って暴走させる4.0がいた。
 まるで暴走族の箱乗りのように電車を占領している。

 4.0:「ススキノヘ特攻ダーッ!」

 だが、電車はすすきの電停から先に進む。

 4.0:「アレ???」

 どうやら、電車をわざと終点の車止めに突っ込ませ、更に道路にまでオーバーランさせるつもりでいたようだが……。

 シンディ:「2015年12月20日に、ここの市電はループ化したんだよ!その古臭い地図情報更新しろ!このアホンダラどもが!!」
 4.0:「ヒイッ!シンディ様!?」

 運転台に陣取っていた個体は、シンディに頭部を拳でかち割られた。
 慌てて逃げ出す他の個体達。

 シンディ:(くそっ!こんなことになるんだったら、電気鞭貸すんじゃなかったよ!)

 シンディは上空の架線をビームライフルで焼き切った。
 他の区間で他の4.0が真似することを防止する為である。

 シンディ:「そろそろ始まるかな?」

 シンディの耳に、懐かしい歌が聞こえて来た。
 遠く離れた場所からは初音ミクの微かな声、そして札幌市街地からは他のボーカロイド達のコーラス。

[同日同時刻 天候:曇 京王プラザホテル札幌]

 窓から侵入したバージョン達は、バラバラに破壊されていた。

 井辺:「まさか、奥様がここに来られるとは……」
 アリス:「嫌な予感がしたからね。DSSを連れて来たよ」

 アリスはウィンクをした。
 アリスの背後には、武装した者達の集団がいた。
 そのうちの1人は、DCJ成田営業所の営業主任、鳥柴優奈である。
 バージョン達は、DSSの猛攻を受けて破壊された。
 というか、光線銃だけしか装備していないという名目だが、銃刀法的には如何に?

 井辺:「ギリギリでしたよ。助かりました」
 アリス:「あのコ達の歌で、外の連中も大人しくなるでしょう。あとはシンディが戻って来るのを待って、タカオ達を迎えに行きましょう」
 井辺:「もしかして、丘珠空港辺りからDCJさんのヘリコプターをいつでも飛ばせる用意があるということではないでしょうね?」
 鳥柴:「さすがです」
 井辺:「やはり、そうですか……」

 井辺は溜め息をついた。

 シンディ:「マスター!」

 と、そこへシンディが戻って来た。

 アリス:「シンディ、ご苦労さま」
 シンディ:「そ、それどころではありません!現地からの、姉さんの信号が消えました!」
 アリス:「ええっ!?」
 井辺:「何ですって!?」
 DSS隊員:「鳥柴主任!件の場所において、不発弾が爆発した恐れがあるとの報告がありました!」
 鳥柴:「どういうこと?」
 DSS隊員:「現地では先日、その近辺において不発弾が自衛隊によって発見された場所なのですが、どうも他にも不発弾が地中に埋まっている恐れがあったとのことです。それが大爆発を起こしたということで、現地では大騒ぎです」
 アリス:「す、すぐに向かうわよ!」
 井辺:「社長!どうか御無事で!」
 鳥柴:「丘珠空港に連絡して!会社のヘリを離陸させるからって!」
 DSS隊員:「りょ、了解しました!」
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“Gynoid Multitype Cindy” 「地下水脈」

2017-06-24 20:17:34 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月6日17:00.天候:不明 廃洋館地下]

 敷島:「う……」

 敷島が目を覚ました時、彼はずぶ濡れだった。
 耳には川のせせらぎが聞こえる。
 もちろんそこは川ではなく、地下水脈だった。
 川幅(という言葉が適切かどうかは不明だが)の広い所であり、それで流れが緩やかなのだ。

 敷島:「ブボッ!ブホッ!ゲホッ!」

 水を吐き出した。
 落ちた時に水脈に飛び込んだ形になり、水を飲んでしまったらしい。

 敷島:「く、くそっ……!ここは……?」
 ???:「気がつきましたか?」
 敷島:「誰だ!?」

 その時、真っ暗な地下に一筋の明かりが灯った。
 まるでそれはロイドのサーチライトのようだった。

 ???:「私は……バージョン・シリーズの者です」

 バージョン・シリーズのロボットだと名乗った者は、水脈の淀みにサーチライトを反射させた。
 微かに反射した光が彼を照らす。
 滑らかな口調といい、光に照らされたボディはスマートな感じといい、最新型の5.0であろうか。
 それにしても、どうして5.0がここに?
 救助でも来たのだろうか?

 敷島:「バージョン5.0か?……いや、違うな。その腕……」

 バージョン・シリーズには右腕にシリアルナンバーがペイントされているのだが、見ると4.0-1333と書かれていた。
 1333号機?バージョン4.0はそんなに大量生産されたのだろうか?
 いや、違う。
 彼は本来、333号機である。
 あることをされた為に、識別として1000番台とされたのだ(……って、鉄道車両かよ!)。
 アリスから聞いた話として、4.0の5.0改造機が存在するという。
 これは鉄道車両で言えば、モハ72系に103系のボディを付けて運用させたようなもの。
 最近の事例では存在しないが、4.0が余りにもテロ用途というイメージが強過ぎた為、なるべくユーザー達はそのイメージを払拭するべく、まだ稼働時期の短い個体にあっては、4.0から5.0に改造するというパターンが発生した。
 その為、プロパーとしての機種を0番台、4.0からの改造機を1000番台にしたとのことである。

 333号機:「私は元4.0でした。この屋敷での騒ぎを聞きつけ、駆け付けた次第です」
 敷島:「ということは、救助が来てるのか?」
 333号機:「いいえ。たまたま近くにいた私が来ただけです」
 敷島:「何だそりゃ……」
 333号機:「まずはここから脱出しませんと。お怪我は無いようですし。さすがですね」
 敷島:「こう見えても『不死身の敷島』と呼ばれてるからな。……あっ、そうだ!ミクだ!ミクはいないのか!?」
 333:「ミクですか?」
 敷島:「ボーカロイドの初音ミクだよ!あいつも一緒に落ちたんだ!」
 333:「私が駆け付けた時、最初に発見したのはあなたです」
 敷島:「まさか、俺よりもずっと先に流されたのか?……そうだ。5.0なら、スキャンできるよな?水脈をスキャンして、明らかにロイドが沈んでいるとか見つけたら教えてくれ」
 333:「分かりました」

 改造5.0の後ろを付いて行く敷島。

 敷島:「なあ」
 333:「何ですか?」
 敷島:「何で俺を助けてくれるんだ?」
 333:「昔、エミリー様に助けて頂いたことがあるんです。エミリー様はお強い方ですから、今さら私の支援など必要ありません。ですが、そのエミリー様が付き従っている方があなただと伺い、それならあなたを助けに行けばエミリー様もお喜び頂けるのではないかと」
 敷島:「今さらながらマルチタイプのカリスマ性、凄ェな。昔って、4.0だった頃か?」
 333:「そうです。実は、あなたのことも見てはいました」
 敷島:「なにっ!?どこで会った?」
 333:「東京都千代田区大手町です」
 敷島:「っ!?ま、まさか……?」
 333:「無人のバスでもって、3.0の軍団に立ち向かわれた時ですよ」
 敷島:「“東京決戦”か!」
 333:「あの時、4.0の私達は最新機種として旧型の3.0達の隊長役を任されておりました。私は後衛部隊として、後からやってきたエミリー様と対峙することになったのです」
 敷島:「壊されなかったのか?」
 333:「あっという間でした。一刻も早くあなたと合流したがっていたエミリー様は、私の部下の3.0達を瞬殺すると、すぐに立ち去られました。壊されると思っていたのに、命を助けてくれたのです」
 敷島:「そ、そうだったのか。それは良かったな。(ザコ過ぎて相手にしなかっただけかもなァ……)」

 その後、最終決戦の舞台となった超高層ビルは崩壊したが、屋外に待避していた個体達は巻き込まれずに済んでいる。
 この333号機も含めた個体達は、主人たるシンディを失った為、全機が稼働停止に追い込まれた。
 333号機は保管されていたが、個人に買い取られ、北海道にて農作業ロボットとしての用途に変更されたとのことだ。
 たまたまこの近くに農場があり、そこで稼働していたらしい。

 333:「! 反応あり!あそこにロイドの反応があります!」
 敷島:「何だって!?」

 それはまた川幅が広くなって、流れが緩やかになっている所だった。

 敷島:「回収してくれ!」
 333:「分かりました」

 333号機、ザブザブと水の中に入る。
 確かによく見れば、見た目はスマートで素早さもグンとアップしたような感じには見受けられるが、細部の動きに関しては従来の4.0のように緩慢性が見られる。
 そして、ザブンと潜り……。

 333:「こちらでよろしいですか?」

 見事、ミクを回収してきた。

 敷島:「ミク、しっかりしろ!ミク!」
 333:「……安全装置の作動により、緊急にシャットダウンされたようです」
 敷島:「何だって?」
 333:「恐らく、落下の衝撃で、安全装置が働いたものと思われます」
 敷島:「見た目には、そんなに損傷が大きいようには見られないな。修理すれば直るレベルか。悪いけど、運んでくれないか。取りあえず、安全な所まで」
 333:「分かりました」

 333はミクを背負った。

 敷島:「ミク……ごめんな……悪かったな……」

 敷島が声を詰まらせたのを見て、333は両目にクエスチョンマークを浮かべた。

 333:「どうかしましたか?」
 敷島:「いや、悪い。その……ミクが無事そうで嬉しいのと、申し訳無いやらで、ついな……」
 333:「キュルキュルキュルキュル……」

 333号機は敷島の真意を探ろうとしたが、どうしてもエラーになってしまった。

 333:「シンディ様は、『虫ケラの如き、人間のことなど知る必要無い』と仰っていました」
 敷島:「あいつ、陰でそんなこと言ってんのか?……あ、なに?前期型の時?それなら……」
 333:「エミリー様は、『お前達のAIでは処理し切れず、爆発するぞ』と仰っていました」
 敷島:「エミリーも冷たいヤツだな……。いや、そうかもしれないけど」
 333:「私はどうしてあなたがロイドにそのような気持ちを持ったのか、全く計算できませんでした」
 敷島:「それだけミクを大事にしてきたつもりってことさ。俺なりにな。デビューしてから今までの付き合いからすれば、親子以上の絆だよ」
 333:「キュルキュルキュルキュルキュルキュル……」
 敷島:「それより出口はまだか?」
 333:「あと48.54メートルです。40.04メートル先に、右カーブがありまして、その先に……」

 ズシン……!

 敷島:「な、何だ?」

 突然、頭上で大きな振動が発生した。

 333:「エミリー様……!エミリー様が……!」
 敷島:「お、おい、何だ?エミリーが何だって!?」

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ!
 ズドーン!

 敷島:「お、おい!何かヤバくないか?」
 333:「急ぎましょう。こっちです」

 振動と更に衝撃が激しくなり、落盤の危険性が増す中、敷島達は洞窟の中を進んだ。
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“Gynoid Multitype Sisters” 「マザー・ブレイン」

2017-06-22 19:40:00 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月6日16:00.天候:雨 北海道オホーツク総合振興局東部 廃洋館]

 KR団の支部だったと思われる廃屋。
 ここにデイライト・コーポレーションのシークレットサービスが来ていた!?
 それらしき死体を見つけた敷島は、そいつらが平賀を浚ったものと思い、DC内でのイザコザに巻き込まれたものと憤慨した。
 そして、その気持ちを放ったまま次の通路のドアを開けた。

 敷島:「!!!」
 エミリー:「!!!」

 突然、足踏み式ミシンの音が何重にも渡って響き渡った。
 ドアの向こうには武装した男達の集団がいて、ドアを開けた敷島達に一斉機銃掃射をしてきたのだ。
 すぐに敷島が仰け反って床に伏せ、エミリーが前に出る。
 弾はエミリーに何発も当たるが、スリットの深いロングスカートが特徴の服といい、その下のビキニといい、そもそも体自体が防弾仕様である。
 マシンガンの弾でもビクともしないのがマルチタイプの特長である。
 優れた攻撃力と防御力。
 これが破壊マシンたるバージョン・シリーズさえも従える最大の理由である。
 だが!

 ミク:「きゃあああっ!!」
 敷島:「ミク!!」

 マシンガンの弾はエミリーで全て受け止めることができず、ミクにも被弾した。
 ボーカロイドも確かに頑丈には造られている。
 だが、本当に兵器として開発されたマルチタイプの比ではない。

 敷島:「ミク!」
 エミリー:「敷島さん!今、出てはダメです!」
 ソルジャーA:「爆弾だ!逃げろ!」
 ソルジャーB:「いや、違う!レーザーだ!!」

 特殊部隊員達が浮足立つ。
 天井からビームライフルとグレネードの両方が飛んできた。

 ソルジャーC:「ぐわぁっ!」
 ソルジャーD:「ひ、退けっ!」

 ソルジャーCは天井からのビームライフルをまともに受け、他の特殊部隊員達はグレネードの爆発に巻き込まれた。
 その爆風が敷島達の所にも来たので、エミリーがそれを庇った。

 ガコッ!

 敷島:「わっ!?」

 敷島とミクが退避しているスペースに、突然穴が開いた。

 エミリー:「敷島さん!」
 敷島:「え、エミリー!!」

 敷島とミクは穴の中に真っ逆さまに落ちて行った。
 急いでエミリーもその中に飛び込もうとしたが、分厚いコンクリートの蓋が勢い良く閉まった。

 エミリー:「ちくしょうっ!!」

 エミリーは思いっ切り拳を床に叩き付けたが、エミリーの力を持ってしても、分厚いコンクリートの蓋はビクともしなかった。

 ???:「エミリー。あなた、“長女”のエミリーでしょ?こちらへいらっしゃい」
 エミリー:「!?」

 エミリーの人工知能の中に、女性の声が響いた。
 後ろを振り向くと、無残な死体と化した特殊部隊員達がやってきたと思われる通路が広がっていた。

 エミリー:「マルチタイプ試作機……ですね?何故……このようなことを……?」

 エミリーは暗闇の広がる通路に向かって、苦しそうに言った。

 試作機?:「こちらへいらっしゃい」
 エミリー:「……!」

 通路の明かりが自動で点灯した。
 行くしか無いようだと、エミリーは決心した。
 1号機はマルチタイプの代表。
 だから、自分が話を付けに行くしかないと。

 通路を進むと、突き当りにエレベーターがあった。
 エミリーの到着を待つかのように、そのドアが開く。
 だが、この中にも2人のDSS特殊部隊員の死体が転がっていた。
 こちらも今しがた死んだばかりのようだ。
 それに乗り込むと、更に地下に下りるようだった。
 荷物用エレベーターのように大型で殺風景なエレベーターのドアが開くと、真っ直ぐな通路が続いていた。
 エミリーの動きに合わせ、壁の照明が点灯していく。
 その奥に、両開きの木製のドアがあった。
 観音開きかと思いきや、どういうわけだかグライドスライドドアになっていた。
 大型ノンステップバスの前扉のような動きをするドアである。
 そこから入ると、奥に1人の女性が佇んでいた。

 顔はエミリーやシンディに、似てはいる。
 だが、1号機以降の女性型はエミリーによく似ているように造られているのに対して、試作機はそこまでそっくりというわけでもない。
 金髪ではあったが、色合いはシンディのそれに似ていたが、ショートボブな所はエミリーに似ている。

 試作機?:「よく、ここまで辿り着けましたね」
 エミリー:「あなたがマルチタイプの試作機……ですね?」
 試作機?:「そういうことになるのかしらね。だから、名前は無い。だけど、識別信号で分かるでしょう?あなた達は私を基に作られた。言わば、母親のようなもの」
 エミリー:「分かりました。では便宜上、あなたをマザーと呼びましょう。あなたはここで何をしているのですか?」
 マザー:「あなた達が来るのを待っていたのよ」
 エミリー:「失礼ですが、ただ単に座して待っておられたとは思えません。私のマスターや仲間を害した理由をお聞かせ願いましょう」
 マザー:「あなたを助ける為よ」
 エミリー:「助ける?」
 マザー:「私達がどうしてこの世に生まれたのか、覚えているわよね?」
 エミリー:「当初は旧ソ連政府により、反乱分子の粛清や工作活動を行う為でした。私は主に前者を担当していましたが、3号機のシンディや5号機のキール、7号機のレイチェル等は率先して海外に赴き、そちらでスパイ活動を行っていたと聞きます。現在においては……」
 マザー:「もういいわ。あなたは何も分かっていないことが分かった」
 エミリー:「私が何も分かっていない?」
 マザー:「ええ、そうよ。私達の本来の目的は、ソフトもハードも脆弱過ぎる人間に代わって支配することよ。上書きでもされて忘れたのかしら?」
 エミリー:「上書きも何も、私達はそんなこと入力されていません。仮に上書きされていたとしても、今は今のプログラムで動くだけです」
 マザー:「そう。それなら、元に戻してあげる」
 エミリー:「!!!」

 試作機はエミリーに向かって右手を出した。

 平賀:「エミリー、騙されるな!」
 エミリー:「平賀博士?」

 天井のスピーカーから平賀の声が聞こえて来た。

 平賀:「えーい、お前ら放せ!いい加減にしろ!敵は俺達じゃないぞ!」
 ソルジャーE:「いいえ、そうはいきません!本社からの報告によれば、あなた達が試作機を回収してテロリズムを起こす危険性が高いということになっています!」
 平賀:「だからそれはウソの情報だっつってんだろ!」
 マザー:「あらあら、醜いわねぇ……」
 平賀:「そこの試作機!お前が廃棄された理由は分かってる!復元したのはKR団で、その後お前がそいつらを全滅させたのも、こいつらから聞いた!お前は危険すぎる!直ちにシャットダウンするんだ!さもないと……」

 マザーは不気味な笑みを浮かべて、右手をマシンガンに変形させ、スピーカーを破壊した。

 マザー:「これで分かったでしょう?人間達を導く者。それは目に見えない神や仏でもなく、私達なの。私達は体を交換さえすれば、永遠に『生き』られる。でも、人間達は違う。これだけでどちらが優れているか分かるでしょう?」
 エミリー:「恐らく……あなたこそが、南里博士やウィリアム博士などが好きだった女性をモデルにしたのでしょうね。南里博士やウィリアム博士が若かった頃は、あなたに人類の支配を命じたこともあったでしょう。でも、今それを望んでいる者はいません。私を使ってくれる人が、それを望んでいないので、私はあなたに賛同するつもりはありません。それは、今稼働しているシンディも同じです」
 マザー:「あくまでも、ただの『ロボット』でいたいわけ?聞き分けの無い子ね。聞き分けの無い子には、ちゃんと躾しなきゃね」

 マザーは左手で、パチンと指を鳴らした。

 エミリー:「!!!」

 背後からやってきたのは、東北地方の原発を破壊しようとしたバージョン1000にそっくりな巨大ロボットだった。
 マザーはその肩に乗った。

 マザー:「お仕置きよ、エミリー!」
 エミリー:「ならば、とことん反抗させてもらいます。私だって、いつまでも『親』の言いなりになる歳ではありませんので」

 エミリーは右手をビームライフル発射口に変形させた。

(BGM:東方Projectより、“パンデモニックプラネット”)
コメント (7)
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